九十三話 達成
栗斗軍の領地へたどり着いた。
既に戦闘は終わっているようだ。
俺「んで、坂本は?」
霧島「わかんねぇ。いっぺん笛を鳴らしてみるか」
俺たちが笛を鳴らして待つと、数分後に坂本たちがやってきた。
坂本「おぉ、何か大所帯になってるな・・」
獅電「どうだ? 戦は終わったか?」
坂本「ああ、終わった。尾田軍はどうなった?」
獅電「尾田軍・坂本軍兵士の両方とも、宰川軍の配下に加わり、協力することになった」
坂本「そうか・・何か俺めちゃくちゃ睨みつけられてる気がするが・・」
霧島「ったりめぇだろ! お前、自分の軍の全員を裏切ってるんだぞ」
坂本「それは悪かったって・・お前ら、許してくれるかぁ?」
坂本軍兵士「はぁ・・・・大将、俺たちのことを裏切るのはこれで最後にしてくださいよ?」
雷煌「これで最後? 今回が初めてじゃないんですか?」
坂本軍兵士「ほら言われてるじゃないですか・・俺たち部下を見捨てるってのは大将の常套手段です。今まで何回もそれで・・」
将英「何故そんな坂本にお前たちは仕えているんだ?」
一番気になるのはやっぱりそこだ。
坂本軍兵士「なんというか・・私たちがいなければ、この人は駄目だと思ってしまうのです。大将は守りたいと人に思わせる何かをもっているんですよね・・」
霧島「へー」
おい流すな!結構重要なところだったろ今の。
獅電「栗斗軍兵士とは話がついてるか?」
坂本「栗斗軍? ここに居た奴らは皆殺しちまったぞ。コイツらが」
晃牙と繭を指さした。
繭「説明不要だとは思いますが・・坂本の指示です」
霧島「だろうな。何で全員殺させた?」
坂本「話すの面倒じゃん」
俺「確かに」
話を聞かないやつなんて殺して正解か。
久遠「納得するな清次」
了斎「そんじゃ・・同盟を組んでた三軍の兵士で、生き残ってんのはここに居る奴らだけってことか?」
坂本「そういうことになる。大将も残ってるのは俺だけだな」
霧島「何で一番性格悪いコイツだけ生き残ってんだよ・・」
坂本「まぁ良いじゃねぇか。これからもよろしくな」
白い歯を見せて笑った。
獅電「俺は全くお前を信用していない。軍に協力はしてもらうが、お前に権力は殆どないと思え」
坂本「えー」
えーじゃないだろ。一応負けてるんだぞ俺たちに。
俺「それじゃあ・・司令部のとこに戻リますか?」
獅電「ああ、戻ろう」
久遠「総員、整列!!」
全「はっ!!」
久遠「よーし・・こうしてまた大仕事がまた一つ終わったと。そろそろ統一も見えてきたんじゃないか?」
獅電「分からない。戻ったら華城に聞いてみよう」
久遠「では、只今より司令部が居る爲田城へ帰還する!! 決して途中ではぐれることのないように! 何か異常事態が発生したら宰川軍幹部に伝えろ! すぐに対応する!」
全「はっ!」
久遠「進め!!!!」
*
今日の生徒への指導が終わり、道場の掃除をしていた。
忠勝「みんな大丈夫かなぁ・・一人も欠けずに帰ってきて欲しいんだけど」
私「それは少し厳しいと思うが・・そうだな。無事であってほしい」
忠勝「今日の指導はちょっと気持ちが入ってなかったよね? 直政さん」
私「ああ、やはり動向が気になってしまってな・・集中力が切れてしまう時もあった」
忠勝「まぁ・・しょうがないよ。今日は休みにすればよかったかもね」
私「今後、大事な日はそうしても良いかもしれないな」
無事でありますように。
*
皆を見送り、我らは城で戦の終わりを待っていた。
伊海「術師団の力を借りられないのは辛いですね・・少しは私たちも状況を知りたいのですが」
我「仕方がない。きっと皆なら大丈夫だ」
兵士「失礼します!!」
大広間に走り込んできた。
宰川「どうした?」
兵士「派遣された兵士たちが、帰還した模様です!!!」
右京「何! 今すぐに向かおう」
この雰囲気は・・勝ったな?
幹部を先頭に、大量の兵士が走ってきていた。
久遠「止まれー!!!!」
幹部の皆が馬を降りた。
宰川「まず質問する。勝ったか?」
春日「答えるまでもないっしょ!」
獅電「勝利だ」
右京「ほ~・・・・」
一気に肩の力が抜けた。
宰川「よくやった、残った兵士はどうした?」
獅電「尾田・坂本軍の兵士は配下に加わることになった。栗斗軍兵士は全員殺した」
我「全員?」
春日「って坂本が言ってたよ」
我「坂本が???」
清次「おい、挨拶しろよ」
若い男を押して、こちらへ出してきた。
坂本「坂本軍大将の坂本だけど・・何? その目」
獅電「コイツは平気で人を裏切る大悪人だ。実力は確かだろうが、あまり信用はしない方がいい」
宰川「そうか。それで、これから宰川軍に協力する気はあるのか?」
坂本「あるっていうか・・そうするしかないだろ。負けたし」
正直者だな。
我「申し訳ないが、するかしないかはっきりとしてくれ。我は坂本の決断を尊重する」
本人にする気がないのであれば、ここでしっかりとけじめを付けてもらう。
坂本「分かった!!! もうわかったよ、全力で協力する。何があっても俺はお前らの味方でいるよ」
清次「何があっても、とか適当なこと言うなよ」
坂本「いや、俺はもう腹をくくった。きっと、俺が変わるきっかけは今しかない。協力させてくれ。俺たちの持ってる技術も知識もすべて宰川軍のために使うよ」
我「信じて良いんだな?」
坂本「任せてくれ。男の約束だ」
宰川「分かった。ここで長話をするのも悪いから城へ戻ろう。兵士たちは各自、城に戻ってよい!!!」
全「はっ!!!」
坂本「俺んとこの兵士はどうする?」
宰川「悪い、場所がないから家が完成するまでは野原で寝てもらう」
坂本「俺も?」
清次「お前、一応大将だろ。城とかに泊まれよ」
坂本「感謝する」
重要人物だけ残り、話しながら城へ歩き始めた。
我「栗斗の使う術は何だった? かなりの破壊力だと聞いていたが」
霧島「擬態だってさ」
我「擬態? どこが破壊力の高い術なんだ」
霧島「わかんねぇ。誰かがめちゃくちゃ脚色して広めたんだろ」
我「なんだ・・面白くない」
清次「面白くないってなんだよ、良いことだろ?」
我「まぁ・・そうだが」
*
大広間に集まり、会議の前に飯の時間となった。
宰川「もう分かってると思うが・・祝勝会だ」
全「うおおおおおお!!!」
久遠「酒は!?」
美咲「また飲むの・・?」
久遠「良いだろ、勝ったんだしさぁ!!」
完全に飲み会のときの久遠さんになっている。もうこうなってしまったら手に負えない。
華城「静まれ!」
華城「大事な話がある」
俺たちは息を呑んだ。
華城「今回、三軍に勝利したことで残された軍が一つとなった」
全「おぉ!!」
俺「ようやくか・・・・」
華城「ようやくだと思うかもしれないが、過去の天下統一と比較すると異例の速さだ。これは間違いなく、幹部・そして兵士たちや協力してくれた濃霧衆の力のおかげだ。一度、戦い続けた自分らを称えるために拍手を」
拍手が起こった。
華城「そして、残った軍の名前は・・伊海軍だ」
そういうことか・・
宰川「一応、伊海軍と宰川軍は対等な関係であり、どちらも支配されていないことになる。だが、このままだと天下統一が完遂できない」
俺「どうするんだ?」
伊海「合併です」
周囲がざわめき始めた。
華城「静かに」
伊海「私は元々、最終的に宰川軍と一つになるつもりでした。もちろん、伊海軍という名で天下統一をしたかったという思いもあります。ですが・・それ以上に私は大切な仲間である皆さんであれば、天下統一を譲っても良いと思ってしまったのです」
かなり苦しい決断だったと思うが・・俺たちに出来るのは、その伊海の覚悟を裏切らないようにすることだけだ。
宰川「感謝する」
霧島「ん? ってことは・・・・」
華城「たった今ここで、宰川軍の天下統一が達成された!」
全「うおおおおおお!!!」
伊海は優しい笑顔で拍手していた。
伊海「これからもよろしくお願いいたします」
華城「当然、国となってからも伊海には高い役職についてもらう」
伊海「ありがとうございます」
右京「濃霧衆も、宰川軍が国を作るってんなら全面協力するぞ。正直俺たちは衆の名前とかにこだわりや誇りがなくてな・・国を守る極秘部隊として自由に使ってもらって構わんぞ」
華城「非常にありがたいよ。もちろん、お言葉に甘えて使わせてもらう。ハゲ」
右京は満足げに頷いた。
もう華城の毒舌にも慣れているようだ。
俺「京夏は?」
京夏「私は・・宰川殿の仰せのままに」
宰川「真栄田の意志を継ぐものとして、もちろん役職にはついてもらう」
京夏「感謝致します」
久遠「もうさ、細かい話は明日とかにして、食おうぜ!!」
空気読め久遠さん・・!!!
宰川「それもそうだな。悪い、皆! 好きに食って好きに寝て、疲れを癒やしてくれ!」
全「いただきます!!!」
賑やかな夜の宴が始まり、城の中は完全にどんちゃん騒ぎだった。
俺「忠勝! 正直、俺たちのこと心配してたか?」
忠勝「別に普通かな。どうせ勝つと思ってたし」
直政「とは言っているが・・実際、今日は指導にあまり熱がこもっていなかったよ。心配していたんだろうな」
俺「何だ、やっぱり気にしてるじゃん」
忠勝「直政さん!!!! 言わないでよ・・ていうか、直政さんだって心配してたじゃないですか」
獅電「そうなのか?」
直政「まぁ・・多少は気にかけていたが、それほど・・」
忠勝「嘘だ、今日そわそわして掃除早く切り上げてたもん」
春日「まあまあ、仲良くしなよ。皆結局大切なんだよ、仲間が!!」
うるっせぇ~。
*
何故か俺は宰川の席の目の前だ。
宰川「これから宜しく頼む。坂本」
俺「ああ、頼むぜ、旦那」
久遠が酒を吹き出した。
俺「は!?」
久遠「旦那って呼ぶやつ初めてみたぞ!!! おいこいつやべぇぞ!!!」
コイツが一番おかしいだろ・・・・
美咲「気にしないで。酒癖悪いだけだから」
宰川「別に俺は旦那でも構わん。呼びやすいのであれば」
俺「おう! そんで・・あんたは?」
右京「右京だ。どう呼んでもらっても構わない」
俺「じゃあ・・うっきょでいいか?」
美咲「何でそんな距離感近いの・・?」
俺「これから長い付き合いになるんだぜ? さん付けなんてしてられねーよ」
華城「一理あるな。結局雑になっていくのであれば最初から崩した呼び方でも良いかもしれない」
右京「だからといってハゲはねぇよなぁ」
華城「二文字で呼びやすいから良いだろ」
右京「正直、俺は宰川の方が怪しいと思っているがな」
宰川「なに!?」
俺「確かに、毛減ってきてんね~」
宰川「なっ・・どうすれば増える?」
京夏「父は海藻を海辺のところから輸入してたくさん食べていました」
華城「あいつはもう手遅れだっただろ。出会った時点でツルピカだ」
将英「言ってやるなよそういうことを・・・・」
京夏「もちろん私も言いましたよ。『もう生えることはない』よ」
久遠「そんなに言える仲だったのか?」
京夏「いえ、本人はかなり傷ついたみたいで・・しばらく元気がなかったです」
右京「可哀想に」
その後もくだらない雑談が続き、楽しい夜は終わりへと近づいていった。




