九十二話 邪
同盟を結んでいる軍の大将同士で位置を把握していないはずがない。
なんとしてでもここで吐かせよう。
坂本「知らねぇよ! 俺には伝えられてねぇんだ」
霧島「冗談きついぜ。知ってるだろお前・・?」
俺「吐け」
坂本の指を一本切った。
坂本「本当に知らねぇんだ!!」
俺がもう一本指を斬ろうとした。
雷煌「あ、待ってください!」
俺「何だ?」
雷煌「この地図になにか書いてあるかもしれません」
雷煌がさっき回収した地図を取り出した。
霧島「これが城で・・何だこの印」
赤色で印がつけられていた。
繭「何かありそうだね・・行ってみる?」
俺「お前はこれがなにか分かるか?」
坂本「知らない。行くなら俺も同行するから信じてくれ!!」
俺「わかった。刀は持つなよ」
坂本「ああ」
念のため城内を虱潰しに探し、誰もいないことを確認してから出発した。
繭「おそらくこの辺りだけど・・」
特に目立つものはなかった。
俺「手分けして探そう。坂本は俺について来い」
全「了解」
探し回っていると・・
坂本「ん?」
俺「何だ? 見つけたか?」
坂本「やっぱりそうだ! 間違いねぇ」
俺「早く言え。何がわかった?」
坂本「落ち着け。少しは考える時間をくれよ」
こいつを待っている時間などない。
十数秒、坂本が話すのを待っていた。
坂本「あっちの川の水、よく見てみろ」
俺「普通の川だろ。適当を言うのもいい加減にしてくれ」
坂本「はぁ・・最強の武士もその程度かよ。何もないところで水の流れが変わってるじゃねぇか」
確かに、不自然流れになっている部分があった。
俺「それがどうしたんだ?」
坂本「あそこに石を投げてみろ」
言われた通り、不自然な部分に石を投げると、水中の何かが反応した。
俺「ん?」
坂本「栗斗の使用術は『同化』だ。周囲の物に擬態できる」
俺「つまり・・栗斗は川の中か?」
坂本「間違いねぇ。どうする? 皆を集めてから戦うか?」
俺「必要ない」
川へ近づいた。
坂本「水の中だから会話は多分聞かれてない。奇襲をかけろ」
俺「戦うのはお前だぞ」
坂本を押して川に突っ込ませた。
坂本「はぁっ!?」
?「ぶぼっ・・」
バタバタしながら川から人間が出てきた。
坂本「やっぱおめぇだな! この野郎!!」
栗斗「おまっ・・何をっ・・!」
坂本「どりゃああああああああ!!!」
栗斗の顔に膝蹴りが入った。
霧島「お、今良いの入ったぞ~」
こっちに向かって歩きながら言っていた。
坂本「こいつどうする?」
栗斗の髪を掴んでこちらへ引きずってきた。
俺「仕事が速いな」
坂本「殴り合いの時は鼻を狙えって親父に教わったんだよ」
俺「一旦、皆を集める」
霧島「あーつまれー!!!」
全方位に向かって呼びかけると、皆が集まってきた。
雷煌「この人は?」
俺「酷い有様だが間違いなく栗斗軍大将だ」
坂本「で? こっからどうする?」
栗斗「・・して・・くれ・・」
霧島「なんつった?」
栗斗「殺してくれ・・」
か細い声で言った。
俺「風雅を呼べ、雷煌」
雷煌「はい!!」
再びとてつもない速度で風雅を連れてきた。
俺「栗斗を治療しろ」
風雅「いいんすか?」
俺「良い」
栗斗の顔が治った。
俺「降伏するか?」
栗斗「しない」
栗斗の両腕を斬った。
俺「降伏するか?」
栗斗「しない」
俺「風雅、治せ」
断面が治った。
栗斗「俺は降伏しない」
坂本「もう諦めろ。こいつは折れねぇよ」
俺「そうか」
四肢を切り落とし、城の目の前まで栗斗を引きずった。
俺「坂本、辺りの兵士たちに栗斗軍の敗北を伝えろ。晃牙と繭は坂本の見張り兼護衛だ。同行しろ」
繭「御意」
栗斗をどうするか・・おそらく既に死に至っている。
坂本と栗斗の死体を見せれば俺たちの勝利で終わるが、残った坂本軍兵士と栗斗軍兵士の扱いに困る。
坂本は今のところ三つの軍を裏切ったことになる。部下も栗斗も尾田も。
説得できたとしても、残った兵士の心のわだかまりや怒りは解消できないだろう。
雷煌「どうしますか・・?」
俺「ここから一番近いのは尾田軍の根城だ。栗斗の死体があれば強引に降伏させることも出来る。向かうぞ」
雷煌「待って、繭さんたちは・・」
俺「必要ない。ここにいる俺達で十分だ」
霧島「本当に良いのか?」
俺「あの三人であれば任せても問題ない」
尾田軍の根城に向かって馬で走り始めた。
尾田軍の陣地ではまだ戦が続いていた。
馬を降り、俺たちは栗斗の死体を引きずりながら戦場の中心を闊歩した。
敵兵「お、おいアレ見ろよ・・! 将軍だぞ!!!」
敵兵「何だと!?」
火蓮「集まれ! 獅電さんじゃ」
戦闘中だった火蓮が笛を鳴らし、呼びかけた。
俺「そっちはどうだ?」
火蓮「順調じゃ。幹部から死人は出ておらん」
俺「よくやった。そしてこっちはなんだが・・」
火蓮「それは栗斗なのか?」
俺「ああ。戦を終わらせに来た」
清次「獅電さん!! そっちはもう勝ったんですか?」
俺「一応だ。繭と晃牙が坂本と共に戦を終わりへ導いている」
清次「坂本って・・あの坂本ですか?」
霧島「その坂本だ。だいぶ頭のイカれた野郎でな。説明はできねぇけど、今はこっちに従ってるよ」
清次「そうなのか・・意味わかんねぇ・・」
敵兵「今の聞いたか?」
敵兵「ああ、大将が寝返ったらしいぞ!!」
また周りが騒がしくなってきた。
清次「お前らうるせぇ! こっちは今大事な話してんだよ、殺すぞ!!」
一気に静まった。
俺「それで・・どうして将英班のお前がここに?」
清次「坂本軍の陣地は既に誰もいなかったんですよ。多分他の軍のところに派遣されてると思ってここに来たら大当たりでした」
俺「なるほど」
周囲に居た敵兵が燃え尽きた城の方へ走って逃げていった。
久遠「どうやら、この戦も終わりらしいな」
久遠班の皆がこちらへ歩いてきた。
俺「ああ。死人は出ていないな?」
久遠「無論だ」
霧島「あの兵士たちはどうする? 全員殺すか?」
清次「俺はそれでいいと思ってるけど」
了斎「本気か?」
清次「だってあいつら弱えもん」
たしかに弱い兵士はこちらとしても必要ないが・・・・全滅は少々やりすぎな気もする。
春日「一旦、話をしてみたら?」
霧島「あいつらが話に応じてくれると思うか?」
俺「ものは試しだ。行ってみよう」
兵士が集まっているところに行き、交渉を持ちかけた。
俺「もうお前らに手出しはしない。だが、お前たちはどうするつもりだ?」
敵兵「知りませんよ・・俺らがここからどうしろって言うんですか!! 大将に見捨てられて、城も焼き討ちにされて、戦にも負けて・・こんなのありかよ・・」
涙を流しながら訴えた。
?「お主が獅電か・・名前は知っている」
俺「お前は?」
?「俺が尾田軍大将の尾田道信だ。正直、ここまで惨敗するとは思ってもいなかったんだが・・」
俺「お前らが奇襲をかけてくるから相応の仕返しをしたまでだ」
尾田「ああ、わかっている」
俺「それで、どうする? 部下を死に導いたのは尾田、お前の責任だ。ここで死に、兵士たちを宰川軍に託すか?」
尾田「お前たちについていきたいと思っている兵士はここにはいない」
俺「そうか。坂本軍のお前らもそうなのか? 坂本はもうこっちについたぞ」
敵兵「私たちは将軍の命を全力でお守りすると誓った兵士です。死ぬまでこの気持ちが変わることはありません」
俺「そうか。そんなお前たちに非常に魅力的な話がある」
敵兵「そんな話には乗らない・・」
尾田「待て。最後まで話を聞くんだ」
俺「俺たちが国を作るとなれば、坂本もそこそこの地位につくことになる。その時に坂本は誰が守るんだ? 宰川軍兵士か? 違うだろ、あいつを守るのはお前らの役目だ。坂本を守ると誓っているのなら、俺たちもその気持ちを汲んで仕事を与える」
敵兵「つまり・・これからも坂本軍兵士として仕えることが出来るのですか?」
俺「元・坂本軍だがな。敗北した以上、宰川軍の配下ということになる」
敵兵「悪い話ではねぇぞ・・どうする?」
尾田「その話、尾田軍も乗っていいか?」
俺「ほう?」
尾田「ここで負けても俺は宰川軍内で高い地位につけるということだよな?」
俺は尾田を斬り殺した。
俺「こういった者は人の上に立つべきではない。尾田軍の兵士も今ので分かったろ? コイツは自分が美味い飯を食うために平気でお前たちを引きずり降ろそうとした」
敵兵「・・・・決めました!」
二人の兵士が前に出てきた。
俺「何だ?」
敵兵「我々坂本軍兵士・尾田軍兵士は今後、宰川軍に協力致します!!」
俺「よく言った。ではお前ら準備をしろ」
敵兵「何のでしょうか・・?」
俺「行くぞ、栗斗軍のところに」
全「はっ!!」




