八十二話 大会議
虎影を待つ間、凜花はずっと不安そうな表情をしていた。
これで虎影が失敗したら凜花の精鋭入りは厳しくなるからな・・
四分ほど経った。
俺「おい、大丈夫か・・?」
華城は手に持った懐中時計を無言で見つめている。
虎影「戻ったぞ」
ここまで走ってきた虎影の口には刀掛けがくわえられていた。
全「おぉ・・!」
華城「よくやった。えらいぞ」
華城が虎影の首元に抱きついた。
虎影が満足げな鳴き声を上げる。
凜花「えらい! よく頑張ったね~」
凜花が虎影の頭を撫でた。
華城「だが、大事なのはここからだ」
俺「というと?」
華城「言っただろう、総合力を見ると」
そう言って華城は城に向かって歩き始めた。
大事なのは時間じゃなかったのか・・?
華城「まず、時間に関しては合格だ。刀掛けの状態も・・少し唾液が付いているが、傷はないな。合格。最後は城の中の状態だな」
歩きながらずっと独り言を言っていた。
宰川「全く変化なしだな」
華城「想像以上だ。凜花を合戦時の連絡要員として採用する」
大広間の席に座リながら言った。
凜花「やった!! じゃなくて・・ありがとうございます!!」
華城「あの大きさの虎が周りを散らかさずに物を見つけ出すとはな。正直、出来ないと思っていた」
霧島「お前、無理だと思ってんのにやらせたのかよ」
華城「発言時は挙手をお願い申し上げる」
霧島「チッ、あいつ・・」
伊海「では、合戦時の連絡方法については凜花殿の術を活用するということでよろしいでしょうか」
宰川「ああ。決定だ」
拍手が起こった。
華城「医学を学ばせるという件だが、場所はどうする?」
宰川「学習するための場所を建てようとは思っているが・・名前をどうするかだな」
ストーンハート「そんなのなんでも良いだろ」
宰川「人が多い時に決めておきたいだろ? 何か案のあるものは挙手してくれ」
ストーンハート(それはハードルが高いだろ・・)
俺「考えるの時間の無駄だし、華城の名前を取って華城塾でいいんじゃねぇか?」
手を上げながら言った。
華城「それは無」
宰川「良いな! それで決まりにしよう!」
よし!
華城が何か言おうとしてた気もするが、きっと気のせいだ。
伊海「賛成の方は拍手をお願い致します」
大きな拍手が起こった。
華城「じゃあ。華城塾で決定とする」
宰川「しかし、塾を開くのはもう少し先になる。まず遙華に医学を教える必要があるからだ」
俺「具体的にはどれくらいの期間が必要なんだ?」
華城「一日何時間教えるかによるが・・最低一ヶ月といったところか」
ストーンハート「意外と短いんだな」
華城「別に我は医学の専門というわけでもないからな。教えられること自体が多くない」
俺「一ヶ月だったら一日何時間くらいだ?」
華城「分からない。八時間くらいじゃないか?」
えぇ・・・・俺だったら途中で投げ出しちまうだろうな。
遙華「八時間で問題ありません。私にご教授ください!」
真っ直ぐな目をして言っていた。
霧島「おいおい大丈夫か・・? 華城はありえないくらい厳しいぞ」
遙華「・・望むところです」
華城「わかった。我も忙しくなりそうだ・・」
確かに、教える側の負担もとんでもないだろう。
ただ、俺はわかっている。華城の体力はとんでもないと。
きっと平気でやってのけるんだろうな。
宰川「では、最後の議題に入ろう」
俺が手を上げた。
俺「その前に、ちょっと話し合っておきたいことがあるんだ」
伊海「宰川殿、よろしいでしょうか」
宰川「ああ。話してみろ」
俺「豊が死んだ時に、アストリアが言ってたことがあるだろ?」
アストリア「あー・・治療の術はその人の寿命を削って治してるという話ですか?」
俺「ああ、それだ。その件がどうしても頭から離れなくてな・・」
華城「具体的にどんな点が気になる?」
俺「その事実を踏まえて、これから治療の術の使用を控えることはあるのかっていう点だ」
華城「なるほど・・」
了斎「まず、その・・寿命を削って治すってのは確定してるのか?」
神楽が手を上げた。
神楽「確定しているとは言えませんが、今まで治療の術が使えないという事はありませんでした。初めての事例であり、アストリアさんの話も踏まえると・・限りなく事実に近いと思います」
了斎「そうか・・」
宰川「今のところ、判断材料があまりにも少ない。一度の治療でどれほど寿命が縮むのか分からないし、傷の大きさによって変動するのかも分からない」
華城「継続して治療の術は使い続ける。これが今のところの最善策だと我は思っている」
獅電「だが、『一度の治療が寿命に与える影響は大きい』と発覚してからでは遅いぞ」
宰川「うーむ・・・・」
ストーンハート「術師団側の意見を言わせてもらうと、術師団員で治療の術の影響で死亡したと思われる者は存在しないぞ」
俺「お前ら全然戦ってねぇだろ。あてにならねーよ」
武士の合戦には目もくれず悠々自適に暮らしやがってよ。
久遠「清次、言いたいことは分かるが、落ち着け」
宰川「多数決を取るとしよう。今の俺たちには最善策を取ることしか出来ないからな」
伊海「承知しました。では、今後も治療の術を使用することに賛成の方は挙手をお願い致します」
華城「七、八割といったところか」
伊海「では、反対の方は挙手をお願い致します」
宰川「・・なるほど。では、今後も治療の術は継続して使用していくが、何か新たな情報が判明したら再検討する。それでいいか?」
拍手が起こった。
伊海「では、最後の議題に入ります。宰川殿、こちらに留まる期間は、どれくらいでお考えでしょうか」
宰川「そうだな・・華城が医学を教えるために最低でも一ヶ月。領地の現状や他の軍の威力偵察に約一ヶ月。その他街の整備にも時間を使いたい。だが、後の二つはおそらく同時進行が可能だ。つまり・・約二ヶ月ほどの滞在になるだろう」
俺「威力偵察って?」
華城「梶田軍兵士を一定数送り込み、軍勢や規模、軍の特徴などの情報を得る。そして、再構成された班によって本格的な合戦を開始するという流れだ」
俺「軍全体で戦うことは無いのか?」
華城「残る軍は小さなものが多い。おそらく同時に攻め落とすことが出来るだろう」
宰川「人数も一気に増えたからな。多少は効率を求める余裕が出来た」
俺「なるほど」
伊海「他に、何か議論したいことがある方は居ませんか?」
全「・・・・」
伊海「本日は、皆様のおかげで、たくさんの貴重な意見をいただくことができました。 これにて、本日の会議を終了とさせていただきます」
約二時間に渡る会議が幕を閉じた。
俺「華城、お疲れさん」
俺は真っ先に華城のもとへ向かった。
華城「あー疲れた。肩揉んで」
俺「何で俺が・・・・」
華城「片方ずつでいいから」
そういう問題じゃないんだけどな。
久遠「いいな、オレの方も揉んでくれ」
俺「美咲に頼め!」
久遠さんには絶対しねぇ。
久遠「議事録書くの大変だったんだぞ・・?」
俺「それとこれとは別」
久遠「これでも一応、先輩なんだぞ」
俺「はぁ・・雷煌! 久遠さんに電気流していいぞ」
困った顔をした雷煌が近づいてきた。
雷煌「どうしてですか?」
俺「しつこいから」
雷煌「えー・・」
久遠「オレが悪かったよ」
勝ったな。
剛斗「オレが揉んでやってもいいぞ!!!!」
久遠「遠慮しておく。骨が砕けそうだからな」
英断である。
遙華「華城さん、聞きたいことがあるんですが・・」
華城「何だ?」
遙華「私たちの勉強場所についてなのですが・・」
華城「あー、我らの家の広間でいいだろう」
俺「えぇ!? 絶対嫌だぞ」
華城「毎日出張して教えるの面倒くさいだろ・・」
俺「それくらいは我慢してくれよ・・広間って俺たちも使う場所じゃねぇか」
華城「美月の部屋は?」
俺「なおさら駄目だ。美月の部屋に他の女を入れるとかお前、人の心がないのか?」
華城「じゃあもう残された選択肢は一つだ」
遙華「何でしょうか?」
華城「遙華が住む家」
霧島「うっわ、いやらしーお前」
いつの間に近くに来てたんだ。
華城「じゃあ広間」
俺「絶対嫌」
華城「遙華の家」
霧島「いやらし」
華城「広間」
俺「絶対嫌」
華城「遙華の家・・・・」
俺と霧島は雷煌に強すぎる電気を流された。
雷煌「人をいじめるのもいい加減にしてくださいね!!」
歳下にめっちゃ怒られちった・・・・
華城「もう・・広間でいいだろ? どうせ皆は外にいる時間が長いし」
俺・霧島「はーい」
了斎「みんなー!」
俺「どうした?」
了斎「昼飯を食べに行こう」
俺「よし、乗った」
霧島「乗った!」
久遠「オレも」
同期と久遠さんで飯を食べに城下町に向かった。
外食の良さを知ってしまったらしばらくやめられなさそうだな・・
久遠「皆、オレについてこい。とっておきの場所があるんだ」




