八十一話 影
朝からやけに広間が賑やかなので、自然と目が覚めた。
俺「朝からうるせえぞー」
霧島「まぁまぁ落ち着け。一旦外を見てみろ」
格子戸から顔を出し、外を見てみた。
俺「すげえ! 雪が降ってる!!!」
一気に目が覚めた。
華城「清次が一番はしゃいでるじゃないか・・」
俺「今年始めてじゃねぇか? しかも、去年は積もってなかったし・・」
了斎「そうだな」
正直遊びたい。
だが、俺は十六歳。なんなら今年の十一月に十七歳になる。
遊ぶ訳にはいかない・・!
俺「今日の朝飯はどうする? 家政婦は明日からまた来てくれるらしいけど」
華城「まぁ、外食でいいだろう」
俺「外食!?!?」
火蓮「喜び過ぎじゃ。貧乏人」
うわっ、最低・・
俺「そうか、武士は無料で食えるんだっけ・・」
華城「その制度なら去年廃止した」
雷煌「そうなんですか?」
華城「まぁ、城に来ればただ飯が食えるからな。普通の飯屋くらい自分で払えということだ」
俺「ちなみに誰が廃止させたんだ?」
華城「我」
俺「だと思ったよ」
霧島「じゃ、身支度してさっさと行こうぜ。腹減ってきた」
全「はーい」
城下町に向かって歩き始めた。
翔斗「たまにはゆっくりと歩くのも悪くないな」
賑やかな夜の町も好きだが、朝の静かな空気感もいいな。
霧島「この時間から開いてる飯屋ってあるのか?」
俺「もう八時だし、流石に開いてるだろ。ほら」
ちょうど視界に入ってきた蕎麦屋の看板を指さした。
雷煌「そば食べたいです!!!!」
火蓮「蕎麦に決まりじゃな」
霧島「お前、雷煌の意見ばっかり・・」
華城「時間がない。蕎麦屋で良いだろう」
霧島「まぁ」
霧島もそば食べたいんだろうな。
店に入り、全員が客席に座った。
店主「うちは日替わり蕎麦しかないけど、いいかい?」
俺「はい、大丈夫です!」
霧島「清次が敬語使った・・?」
俺「そりゃ俺だって店主には使うよ」
手際よく店主が蕎麦を作っていく。
店主「はい、いっちょ上がり。いや、九丁かね?」
絶妙に面白くないのも店主らしくて良いや。
全「いただきます!」
店主の見た目からして信頼していたが、蕎麦はとても美味しかった。
剛斗「うめぇ!!!!」
雷煌「すごく美味しいです!」
店主「ハハハ、気持ちのいい食べっぷりだ」
五分足らずで全員が完食した。
華城「ごちそうさまでした、代金はこれで。お釣りはいらないよ」
俺も言ってみてぇよその台詞・・
全「ごちそうさまでしたー!」
店主「あいよ! またいらっしゃい!」
いや~、美味しかった。
店で食う飯、良いな!それ一本で稼いでるだけのことはある。
翔斗「城に行くか?」
華城「ああ。今が八時半か。ここから城まで歩くとおそらく三十分以上かかる」
俺「つまり・・?」
華城「指を失う覚悟を決めてくれ」
霧島「本気で言ってんのか?」
華城「本気な訳無いだろ。十五分もあれば着く」
霧島「やめてくれ、そういうの」
華城が満足げに笑った。
意地悪だな。
無事、九時前に城についた。
華城「定刻になるまで、大広間で待とう」
大広間には既に伊海軍幹部・濃霧衆の全員が集まっていた。
星界術師団が遅いってのは、まぁ印象通りだな・・
獅電「間に合うか心配だったが、来たか」
俺「流石に遅れませんよ」
久遠「皆、ここに並んで座っておけ。華城はこっちだ」
全「了解」
俺「なんかいつもと違うな・・」
獅電「今日は人数が多いからな。基本的には主要人物のみで話し合いが行われる。何か意見があれば挙手だ」
俺「わかりました」
獅電「足は崩して良い」
ありがてぇ・・・・!
アストリアや直政たちが入ってきて、全員が揃った。
伊海「それでは、定刻となりましたので、ただいまより連合軍・星界術師団・濃霧衆による会議を始めさせていただきます」
伊海はこういう役回りが似合うな。
伊海「本日は皆様お忙しい中ご参加いただき、ありがとうございます。
はじめに、今回の参加者をご紹介致します。
宰川軍総大将・宰川上午殿。
宰川軍参謀・華城殿。
梶田軍代表・直政殿。
濃霧衆代表・右京殿。
星界術師団代表・ストーンハート殿。
星界術師通信士・アストリア殿。司会進行は私伊海が務めます。」
拍手が起こった。
話すのうま!って・・大人なら当たり前なのだろうか。
ちなみに、議事録を書くのは久遠さんの仕事らしい。
華城は字が汚いから久遠さんで良かったと心から思う。
宰川「何か質問や意見があれば挙手を頼む」
伊海「一つ目の議題である「濃霧衆及び梶田軍兵士の扱い」については、華城殿にご説明をお願いいたします」
華城「ああ。今のところ、濃霧衆の精鋭は連合軍の主力部隊に加わり、他の者には領地の防衛に回ってもらおうと思っている。これに関してなにか意見は?」
遙華が手を上げた。
華城「どうぞ」
華城は雑だな。
遙華「里の住む人々や濃霧衆に、医者になりたいという方が多数います。ですので、領地の防衛か医学を専攻するかを選べるようにしていただきたいです」
華城「了解。それで決まり」
雑すぎる・・けど、これくらいの速さじゃないと終わらないんだろうな。
右京「俺の立場はどうなる?」
華城「右京が濃霧衆、そして里の長であることには変わりない。今後も濃霧衆の統率を頼む」
右京「ああ。任せておけ」
華城「梶田軍兵士には基本的に領地の防衛をさせるが、戦の度に二百人程度招集する。所謂特攻部隊・騎馬隊として戦うことになるが・・」
直政「問題ありません。皆、命を捧げる覚悟はできております」
華城「そして、直政と忠勝には優秀な武士を育てる師範となってもらう」
直政「はっ」
華城「宰川軍候補生の制度はこのまま維持するが、試験での成績優秀者上位九十八名は二人の道場で指導を受ける」
一日七人ずつを一週間で四十九人。それに二を掛けて九十八人ってことか。
宰川「道場は現在建設中で、来月に完成予定だ」
直政「承知しました」
伊海「二つ目の議題は、合戦時の連絡方法についてでございます。これは、宰川殿に説明をお願い致します」
宰川「ああ。前回の戦ではアストリアの術によって戦闘中の連絡が容易であった。しかし、常にアストリアの助けを受けることは出来ない。ましてや、星武の乱の際はアストリア含め術師が敵に回ることとなる。それまでに連絡方法を確立したいと思っている」
ストーンハート「その話、俺が居る状態でするのか?」
獅電「悪いが離席してくれ」
ストーンハート「お前らまじかよ」
ストーンハートとアストリアが待機室の方へ案内されていった。
華城「やはり、離れたところでも会話ができるというのはかなり便利だ。前回の戦でもその利点が遺憾なく発揮されていた」
俺「でも・・」
獅電「清次、挙手」
俺「あ、はい!」
わかりやすく手を上げた。
華城「どうぞ」
俺「でも、宰川軍に連絡や通信の術を使えるやつは居ないんだろ? 離れた状態で連絡なんて出来ないんじゃないか?」
右京「確かに、離れた状態で『会話』をするのは難しいかもしれないな」
何か策がありそうな言い方だ。
俺「会話以外なら出来るのか?」
右京「忍の重要課題は敵に見つからず行動をすること。だが、敵の接近は伝えなければならない・・そこで便利な術を持った者を見つけたんだ」
俺「どんな術だ?」
右京「知性を持った動物を生み出すことが出来る術だ」
俺「動物を生む?」
右京「ああ。知性といっても単なる『お手』『おすわり』ではない。会話だ」
宰川「何だと? そんな物語の中のような話、信じられんが」
右京「まぁ、そう思うだろう。そのために今日、精鋭としてその術を持った者を連れてきた。おい、皆に挨拶するんだ」
?「はい!」
濃霧衆の中の一人が立ち上がった。
?「ボクは濃霧衆の凜花です! ボクの術はきっと役に立つと思います!」
華城「見せてもらえるか?」
凜花「見せれます! でも、ここだとちょっと危ないかも・・」
結構大きい動物出すんだな。
宰川「皆、一度城から出るぞ」
全「はい!」
外の広場で凜花を囲むように俺たちは並んだ。
凜花「こわっ・・」
久遠「すまん。安全のために一応だ」
凜花「じゃあ・・やりますね」
凜花の足元が黒くなり、そこから虎が飛び出してきた。
観衆「おぉ!」
華城「大事なのはその虎が知性を持っているかだ。出しただけでは判断できない」
凜花「はい、みんなに挨拶だよ!」
?「信用されてないようだな。俺は虎影だ。おい、これで分かってくれたか?」
虎が宰川殿の前に向かって歩いていく。
宰川「ほう・・まさか本当だったとはな」
右京「もう少しコイツと遊んでもいいぞ」
虎影の頭を撫でながら言った。
ストーンハート「俺としりとりするぞ、虎影!」
虎影「りんご」
ストーンハート「御殿。俺の負け。終わり」
遊ぶ気無いのか。
華城「大事なのは知性だけではない。虎影が優秀か否か、そこが肝だ」
俺「でも・・どう判断するんだ?」
華城「虎影、五分以内に城の中から刀掛けを探し出し、ここまで持って来い」
華城は本当にこういうところで頭がよく回るよな・・
虎影の能力を計り、刀掛けを探す手間も省ける。
虎影「刀掛け。承知した」
虎影が城に向かって駆けていった。
霧島「華城、お前さぁ・・まぁいいか。実際に能力は判断できるし」
翔斗「ずる賢いという言葉が似合うな」
俺「どうしてすぐにそんなことを思いつく?」
華城「ここであいつの総合力がわかる」
俺たちの言葉には耳も傾けずに言った。




