七十九話 飲・食・寝
霧島「清次ー」
霧島「清次ー!」
霧島「きーよーつーぐー!!」
俺「はっ!?」
久遠「ようやく起きたか・・飯ができたぞ」
俺は木にもたれかかった瞬間、寝てしまったらしい。
俺「こんな場所で寝てたのか俺・・体いてぇよ・・」
了斎「そんな場所で寝るのが悪い。はい、飯」
俺「おう・・」
春日「え、品数多!!」
蒼月「二時間かけた甲斐があったでござるよ・・」
忠勝「僕たちも大変だったんだよ? 二時間動きっぱなしで・・」
忠勝と直政は、飯の準備中ずっと梶田軍兵士に連絡して回っていたらしい。
直政「それでもまだ伝わり切っていない可能性があります」
了斎「梶田軍の奴らは今どうしてるんだ?」
直政「一度城や町に戻り、今まで通りの生活をさせています」
俺「急に日常に戻るのも奇妙だろうな・・こっちではこんな大変なことになってんのに」
忠勝「まぁ、一応僕たちの今後も伝えておいたよ。あんまり理解できてなかったみたいだけど、とりあえずは納得して戻ってくれた」
俺「ならいいか」
腹が減りすぎて返答も雑になってきた。
宰川「皆、飯は行き届いたか?」
全「はい!」
宰川「実は今日はこんなものもあるんだ・・」
宰川殿が何かを取り出したのを見て、大人たちが大盛り上がりしていた。
俺「何だあれ?」
信雄「げっ、酒ですよ・・」
まったく・・
宰川「酒は百薬の長だ。お前ら、戦の傷はこれで癒やせ!!」
一部の兵士「おおおおお!!」
ストーンハート「俺も飲んでいいやつか?」
アストリア「絶対に飲まないでください」
ストーンハート「えー・・」
宰川「だが、一人ひとりが酒をついでいると時間が足らない。先に食い始めて、飲みたいやつは後からこっちに来い!」
一部の兵士「はっ!!」
宰川「では今日は伊海に頼もうか」
伊海「私ですか・・?」
ゆっくりと伊海が立ち上がった。
伊海「皆様、本当にこの数日間、ご苦労様でした。しばらく休暇に入りますので、心ゆくまでゆっくりとお休みください。それでは、いただきます」
全「いただきまーす!!」
皆がとんでもない速度で飯をかきこむ。
俺「クソ・・腕が残っていれば・・」
了斎「仕方なかろう、お前の責任だ」
俺「俺の責任なのかよ」
神楽が飯を食い終わるまで、俺はちびちびと汁物を啜っていた。
美咲「あ、久遠がお酒飲んでる」
霧島「終わった・・」
久遠さんの酒癖の悪さには定評がある。
暇なのでいろいろな所をうろついてみることにした。
俺「アストリアー、こっちの飯は美味いか?」
アストリア「うん、美味しいよ。どうしたの?」
俺「やっぱり術師の食うものは俺たちとは違うのかと思ってな」
ストーンハート「まぁ、かなり違うな。どちらにも良さはあると思うが」
俺「へぇー。いつかそっちの飯も食ってみたいな」
ストーンハート「それは星界術師団に勝ってからだな」
俺「そうかー・・」
今はこんな和やかに話しているけど、いつかこの二人とも戦うんだよな・・
もし目の前に術師が居て、俺は容赦なく斬ることが出来るだろうか。
できれば知らないでいたかったな。術師にも良いやつが居るって。
神楽「清次さん、ご飯食べますか?」
俺「食う!!!!」
介護飯が終わり、酒飲み以外は箸を置き始めていた。
美咲「何で酔っ払いってあんなにうるさいの・・」
了斎「美咲は飲まないのか?」
美咲「絶対飲まない。百害あって一利なしだよ。皆が大人になっても飲まないようにしな」
俺「へぇ~」
美咲「清次は平気で飲みそうだね」
俺ってどういう奴だと思われてんの?本当に。
そうだ、繭のところに行ってみよう。
俺「繭ー!」
繭「えっと、清次?」
俺「正解!」
羽音「記憶は戻ってないんだけどね」
俺「そうか・・どうだ? 宰川軍は。居心地いいか?」
繭「居心地は分からない。ただ、すごく強い」
俺「そうだ。宰川軍ってすげぇ強いんだぞ」
羽音「偏った情報ばかり教えないでよ?」
俺「強いのは事実だからいいだろ」
そうだ、良いこと思いついた。
俺「繭、この軍で一番誰が可愛いと思う?」
繭「えー・・」
羽音が不満げな顔でこちらを見てくる。
どんな回答をするかなー。
俺「別に男でもいいぞ。俺とか」
羽音「清次はない!」
言い過ぎ。
繭「羽音」
羽音「え?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔で言った。
俺「だよな。俺もそう思う」
空気を読んでおいた。
繭「うん」
俺「それじゃ」
俺、久々に良いことしちゃったかもな。
了斎「そろそろ寝るか?」
俺「眠いなー」
火蓮「酒飲みも疲れて寝始めておる。ちょうどいい時間じゃな」
霧島「よーし、寝よう」
近くの松明の火を消し、草むらに寝転がった。
ふかふかの布団も良いが、草むらが一番落ち着くな・・
久遠「おーいもう寝たのかー? お前たちー」
謎の打撃音のあと、久遠さんは静かになった。
多分獅電さんが蹴り飛ばしたな・・・・
*
僕「ふぁあ~・・」
ねむ。
多分今日から移動だろうな・・濃霧衆の人を連れて行くらしいし。
僕「あ」
忘れてた。父さんにここ数日のことを報告しないと・・起きてるかな?
皆に声が聞こえない程度に離れた。
繋がりますように。
レオナード「朝からなんだ・・」
僕「起きてましたか?」
レオナード「ちょうど起きたところだ」
僕「報告がありまして」
レオナード「あー待って。メモとるから」
僕「はい」
レオナード「オーケー。話していいよ」
ここ数日の動向を全て報告した。
もちろん僕の主観は含めず、事実だけを放した。
レオナード「勝ったのか。術師団員から犠牲者は出たか?」
僕「副団長が守ってくださりましたので、出ておりません」
レオナード「よくやった、と伝えておけ」
僕「はい」
僕「そして・・これから宰川軍領地へ向かい、星界術師団・濃霧衆・連合軍による会談が行われます。帰還はもうしばらく経ってからになるかと」
レオナード「了解。どうせこっちに居ても暇だろうし自由にしろ」
僕「そんな緩くて大丈夫ですか?」
レオナード「いい。元々術師団は個人の技量に任せるスタイルだ」
僕「あと一つ、大事な報告があるのですが・・」
レオナード「何だ?」
僕「イサベルが不可侵条約を破り、副団長に処刑されました」
レオナード「何だと?」
僕「裏切りを伊海軍大将に持ちかけ、断られた後に暴走しました」
レオナード「そうか・・まぁ、早期に対処したのはいい判断だ」
僕「ありがとうございます」
レオナード「報告は以上か?」
僕「はい」
レオナード「では私はもう一度寝る。お休み」
僕「お好きにどうぞ」
接続が切れた。
怠惰だな、父さん・・
華城「誰と話していた?」
僕「いたんですか!?」
華城「一人でコソコソやってるから・・気になってな」
僕「団長に近況報告していました」
華城「そうか。大体の会話は聞かせてもらっていたが・・」
僕「・・エッチ」
華城「何だそれ」
僕「盗み聞きしてどうするんですか?」
華城「どうもしないが・・アストリアは信用できそうだ。全く脚色せずに報告していたな」
僕「当然です」
華城「いや、武士は自分をよく見せようと嘘をつくやつが山ほどいるから・・驚いた」
僕「そうなんですね・・」
華城「いや、無駄話はよそう」
本当に大人みたいだな華城は・・
*
剛斗「起きろ!!!!」
またかよ・・
俺「黙りやがれぇぇぇぇええ!!!」
霧島「最近、清次のほうがうるさくなって来たな」
俺「本気かよ」
宰川「ちなみに、今日の朝飯は無しだ」
俺「本気かよ・・?」
宰川「本気だ」
まぁいいか。昨晩たんまり食ったしな。
皆が目を覚まし、宰川殿の話が始まった。
宰川「今日は濃霧衆の里に向かい、主力の数十人を連れて城へ帰還する。爲田城に着くまで八日かかる予想だ」
また長旅だ。
久遠「総員、移動準備!」
全「はっ!」
馬に乗り、移動時の陣形になった。
宰川「移動開始!!」
ここから里まで一時間強。それほど大変ではないな。
里が見えてきた。嫌な思い出が蘇る・・・・
俺「あークソ腹立ってきた!!!」
俺の腕返せ!!!
信雄「落ち着いてください。怖いです」
宰川「ここからは歩いて移動する。馬を降りろ」
全「はっ!」
獅電「長はあの屋敷にいる。俺と華城以外はここで待機しろ」
久遠「了解」
二人が屋敷の方へ向かっていった。
数分待つと、右京を連れて二人が戻ってきた。
宰川「久々・・というほどでもないが。無事で良かった」
右京「ああ。どうやら勝ったらしいな」
宰川「ああ」
華城「さっそく本題に入るが、濃霧衆の精鋭を何人かここへ集めてくれないか? 城へ招きたいと思っている」
右京「精鋭を?」
宰川「会談を行う予定なんだ。ぜひ右京たちにも来てもらいたい」
右京「そこで細かい話を詰めていくというわけだな。わかった」
華城「話の分かるハゲだ」
右京「いい加減にしろ」
獅電「正直、十人居れば十分だ。本当に精鋭だけを連れてこい」
俺「あと、遙華って人も」
医学を華城が教えるんだよな。
また大変なことを始めちまったもんだ。
右京「分かっておる」
右京が里の中心へ向かっていった。
・・今日は待ち時間が長いな。




