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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
天下統一編

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七十八話 輪廻

俺「了斎、こんなこと聞いて悪いけど・・美月と俊平はどんなふうに死んじまったんだ?」


了斎「榊原が追い詰められたところで、回転しながら大太刀を振るってきたんだ。二人はそれに巻き込まれて・・」


俺「二人は避けられなかったのか・・」


了斎「美月は避けられずに巻き込まれた。ただ、俊平は美月を助けようとして・・」


俺「そうか・・・・」


了斎「本当にあっという間だった。なんというか・・全員が全員、強く印象に残る死に方をできる訳では無いと分かったよ・・」


宰川「死に場所を自ら選ぶことが出来るかどうかも、強さの基準の一つだ」


俺「どういうことだ?」


宰川「真栄田も豊も、自分の死に場所は自分で決めた。ただ・・力が足りない者は迫りくる死を待つことしか出来ないのだ」


俺「何だよそれ・・美月と俊平が弱かったって言いたいのか?」


宰川「いや、基本は全員がそうだ。きっと俺も自分の死に場所を選ぶことは出来ん。相当な覚悟と実力のある特別な者にしか、自分の死に場所を選ぶことは出来ないのだろう」


俺「死に場所、か・・考えたこともなかった」


了斎「清次はすぐに死地へ突っ込んでいくからな・・死ぬまでわしがそばに居てやらんと」


華城「ああ。頼むぞ」

俺っていっつもこういう扱いを受けるよな・・まぁ仕方ないか。


俺「そんで、榊原はどうやって倒したんだ?」


了斎「二人を殺されて激怒した雷煌が一人で・・・・」


俺「一人?」


了斎「あんなに怒っている雷煌は初めて見た」


俺「いや、そこじゃなくて・・一人で戦わせたのか?」


了斎「一気に仲間が二人死んで、もう足が動かなかったんだ・・」


俺「言い訳すんなよ! 助けなかったんだろ? お前は眺めてるだけだったのか?」


了斎「・・・・」


華城「落ち着け、清次。その場に居た者にしか分からないこともあるだろう」


俺「だけど・・」


アストリア「誰もが清次のように勇敢で、無謀で、命知らずではないんですよ」


俺「・・」


俺「悪かった、了斎」


神楽「宰川殿! 雷煌さんの意識が戻りました!!!」


宰川「本当か!」


俺と了斎は雷煌のもとに駆けつけた。


俺「大丈夫か? 雷煌」


雷煌「はい、なんとか・・」


火蓮「意識ははっきりしておるか?」


雷煌「はい、大丈夫です」


美咲「とりあえず、水を飲んでください」


雷煌「ありがとうございます・・」

ひょうたんに入った水を一気に飲み干した。


久遠「記憶は残っているか?」


雷煌「榊原をがむしゃらに斬りまくってたらどんどん視界が狭くなって・・そこからは覚えてないです」


久遠「大丈夫だ、ほとんど覚えている」


雷煌「榊原は倒しましたか?」


久遠「ああ、雷煌がしっかりと殺していたよ」


雷煌「良かったです・・」


 雷煌の意識も戻った所で、戦後処理の会議が始まった。

今回の議題は主に

・残留した梶田軍兵士の今後

・死者数等、被害状況の確認

・忠勝、直政の処遇

の三つだ。


宰川「では早速、一つ目の議題に入ろう。今後の梶田軍兵士はどうするか。これに関しては、直政と忠勝の意見も聞きたいと思っている」


華城「宰川軍に吸収されるも良し、ここで全員殺されるも良しだ」

華城は相変わらず血も涙もない。


直政「私が最後に梶田殿を斬った時、約束いたしました。梶田軍の未来は私にかかっています。そして、結論を出す前に・・・・あの場で獅電から聞いた『天下統一』という話を詳しく聞きたく存じます」


宰川「良かろう。俺たちが現在天下統一を目指しているのは当然、建国が目的だ。宰川軍がすべての軍を手駒にし、星界術師団含む全ての術師団に対抗できる戦力を手に入れたいと思っている」


忠勝「でも今、星界術師団と手を組んでるんでしょ? 何で戦う相手と手を組んでるの?」


ストーンハート「そこに関しては俺から説明させてもらおうか」


直政「お願い致します」


ストーンハート「術師と武士で伝説の『星武の乱』を再び始めるのであれば、お互いに万全な状態のほうが面白いだろ?」


直政「面白い・・ですか?」

わかりやすく引かれてるな。


ストーンハート「ああ。弱え相手を一方的に倒してドヤ顔するのは好みじゃねぇんだ。やっぱり実力が拮抗した状態で戦いてぇだろ?」


アストリア「梶田軍兵士を楽しそうに葬ってましたけどね・・」


ストーンハート「あれは遊びだからまた別だ」


アストリア「そうですか・・」


直政「では、天下統一が完了するまでは手を組むということですか?」


ストーンハート「いや、協力するのか今回限りだ」


忠勝「どうして?」


ストーンハート「今回はまた特殊でな・・端的に言うと、俺の部下が粗相したからその尻拭いで俺も戦ったんだ」


直政「えぇ・・」


ストーンハート「信じられねぇだろ? 不可侵条約を破ったダメな部下の失態を取り返すために、おたくの兵士を殺させてもらったのさ」


忠勝「じゃあ、残った軍は武士だけで戦わなければならないってこと?」


宰川「そうだ」


久遠「正直、アストリアの術はとても便利だし心強かった。できればこれからも居て欲しいんだが・・」


アストリア「僕は別に居てもいいですよ」


俺「え?」


久遠「そうなのか?」


ストーンハート「別にこいつ、宮殿から離れてても上層部の会議に出席できるし・・使っていいぞ」


俺「えぇ・・?」


アストリア「僕、戦闘は出来ないので裏切られる心配もないでしょうし。これからも協力しますよ」


華城「気持ちだけ受け取っておく」


宰川「そうだな」

え、どうして?


久遠「協力・・しないのか?」


華城「術師の力に甘えて天下統一をしては・・いざ術師と戦うとなった時に勝てっこないだろう」


宰川「そうだ。俺たちで新たな連絡手段を考案しよう。幸い、俺たちには華城という天才がいる」

・・言われてみれば確かに。

星界術師団との関係はまた複雑なんだった・・・・


アストリア「了解しました。くれぐれも負けることのないように」


宰川「任せておけ」


 そして、ついに直政が口を開いた。


直政「話を聞き、結論が出ました」


宰川「結論は?」


直政「私らは宰川軍に協力いたします。・・きっと、これが梶田殿の願いだったとも思います」


華城「感謝する」


忠勝「一度梶田軍の裏切った罪は、これからの行動で償うと直政さんと約束した。から・・これから、よろしくお願いします!!!」

こんなに活き活きとしている忠勝は初めて見た。


俺「もう軍を裏切ることはねぇようにな」


忠勝「あ・・うん」


宰川「そして、被害状況の確認だな。豪の兵士に手分けして調べてもらった。報告を頼む」


豪の兵士「はっ。まず連合軍の方から報告させていただきます。負傷者八名、死者六名。梶田軍は死者約二千名でございます」


宰川「死者には美月と俊平、豊も含まれているか?」


豪の兵士「含まれております」


華城「豪が三人死んだということか。数字だけで見れば大勝利だが・・」


ストーンハート「大切な仲間を三人失った心のダメージは計り知れねぇな」


久遠「負傷者の治療は完了してるか?」


豪の兵士「たった今、全員の治療が完了いたしました!」


久遠「わかった。ご苦労」


豪の兵士「ありがとうございます」


 豪の兵士も人数が減って、仕事のできるやつが残った感じがするな・・

正直、この修羅場をくぐり抜けて生き残っている兵士は、幹部でないからと言って侮れなくなってきている。


宰川「そして・・美月、俊平、豊の死亡か・・・・」


華城「この三人を失ったことによる主な問題点は単体戦の弱体化だ」


俺「索敵も厳しいんじゃないか?」


華城「まだ蒼月が残っているから大丈夫だ。確かに目は多いほうが良かったが」


宰川「豊が居なくなり、経験則に基づいた判断が出来るのは獅電のみとなった」


華城は情報に基づいた判断で、久遠さんは状況を的確に捉えた上での判断。

確かに経験という柱は無くなってしまった。


華城「これからは班で分かれての戦闘を増やす。そして、了斎や将英や美咲など、状況判断と指揮を得意とする者は十分存在するからそこの心配はいらない」

華城が言うと安心感があるな。


宰川「そうだな・・だが、班を考えるのは城に戻ってからだ」


俺「単体戦の弱体化つったけど・・直政と忠勝を精鋭部隊に加えれば済む話だろ」


宰川「それこそが第三の議題だ。直政と忠勝の処遇について」


久遠「今までと同様の形をとると、二人は幹部として宰川軍に加わってもらうことになる。繭や羽音と似た感じだ」


直政「しかし、皆様は私たちを信用できるのですか・・?」


獅電「すぐに決める訳では無い。もちろん、こちらで吟味させてもらう」

でも、忠勝を精鋭部隊に加えても実戦には使えないよな・・

人を殺せないってのは武士において、戦闘においてかなりの枷となる。


華城「我が一度案を出し、採用されたものがあった」


久遠「どういうことだ?」


華城「武士に稽古をつけるという話、覚えているか」


火蓮「覚えておる。反乱に対抗するための嘘だとは言っておったが・・その場の会議では即採用されておったな」


華城「そうだ。我々としては直政たちを兵士としてではなく、武士に稽古をつけ、鍛える『先生』、師範になってもらいたい」


直政「先生・・ですか」


華城「やはり、宰川軍をより強力なものにするには所謂捨て駒の存在も必要だ。今回の戦で実感した」


俺「まぁ、威力偵察に向かわせるってのは大事だよな・・」


華城「そうだ。だが、あまりにも弱い者を使っていると威力偵察から戻って来られる者が居なくなる。そこで・・必要最低限の、いや、可能であればそれ以上の力を持った武士が大量に必要だ」


久遠「残留した梶田軍兵士では駄目なのか?」


華城「足りない。結局残った梶田軍兵士も半数は領地の防衛に回す。となると残るは二千人ほどだ。だがやはり五千人は欲しいだろう?」

わかんねぇ・・


宰川「直政と忠勝は先生になりたいか?」


直政「私たちは指示に従うのみです。意見を聞く必要はありません」

宰川軍はそういう軍じゃないんだけどな・・


宰川「では、二人には先生をやってもらう」


直政「承知いたしました!」

誠実だなー。


獅電「そこの話を詰めるのは城に戻ってからだ。いつも話が脱線しすぎている」


華城「すいません」

華城が謝った! 新鮮。


宰川「では、明日は濃霧衆の長と話をしに行くぞ」


春日「え~。もう疲れたよ・・また今度で良くない?」


信雄「ばか」

春日がげんこつを食らっていた。


華城「いや、春日の言う通りかもしれない」


俺「何?」


華城「城に招いてじっくりと話す方がお互い楽じゃないか?」


美咲「確かに・・どうせ濃霧衆の人もこっちに来るんだもんね」


華城「ああ」


アストリア「副団長もいますし・・いっそ、お偉方を全員城に集めて話し合えば良くないですか?」


俺「さんせーい」

様々な場所から賛成の声が上がった。


宰川「静粛に!」


宰川「城へ帰還してから話し合うとしよう」


歓声が上がった。


久遠「それでこそ宰川殿だな」


宰川「わがままな奴らだ・・」


久遠「じゃあ、締めに入ろう」


宰川「ああ。皆、本当によく頑張った! 祝勝会はまだ後日だが、今日は好きに食って楽しめ!」


また、どっと歓声が上がった。


直政「宰川軍は・・いつもこんな感じなのですか?」


俺「そうだよ。梶田軍とは違うか?」


直政「そうですね・・こんなに緩いとは」


俺「まぁ、肩の力抜いて楽しもうぜ。忠勝もな」


忠勝「あ、うん・・」


 だんだんと日が暮れ始めていた。

本当にこの数日間で色々あったな・・

俺が攫われたのが昨日って・・信じられるか?俺は信じられない。


蒼月「ご飯の支度をするでござるよ~」

その一声で、豪の兵士がせわしなく動き始めた。


俺「はぁ・・疲れた・・」




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