七十七話 終幕
まさか梶田軍が宰川軍にここまで追い詰められるとは・・・・
梶田「忠次は死亡し、忠勝はお前の救助が必要なほどまで追い詰められた。それもたった一人の武士にな。榊原は連れ去られる一歩手間だった。四天王と言う割には・・酷い有様だ」
五人の側近と自分に向かって言った。
私「誠に遺憾です」
兵士「梶田殿! 忠勝殿が連れ去られたとの目撃情報が・・」
梶田「何?」
兵士・弐「敵軍兵士との戦闘の末、連れ去られた模様です!!」
私「抵抗はしていなかったのか?」
兵士「おそらく・・していなかったかと」
梶田「クソ・・やはり実戦経験が足りなかったか」
私「直ちに救出に行って参ります」
梶田「必要ない」
私「何故でしょうか?」
梶田「忠勝と忠次が敗北するほどの兵士が本部付近にはうじゃうじゃいるだろう。そこに突っ込んで無事で帰れるのか?」
私「兵士の大群を連れて向かえば・・」
梶田「ただでさえ残された兵士は少ないのだ。無駄遣いはできない」
私「では・・どうするのですか?」
梶田「見捨てることしかできぬ」
梶田殿は諦観の目をしていた。
側近「前方より敵襲! 敵数・・六?」
梶田「六人だと? まだ捨て身の特攻をさせる時間ではないと思うが」
私「いえ、六人でも私の討伐に足る戦力であると判断したのでしょう」
私は刀を抜き、戦闘態勢に入った。
?「直政を討伐しに来たのだが・・梶田軍大将もここに居たとはな。まぁ、手がかからなくて助かる」
梶田「待て」
?「あ?」
私「あの男はおそらく獅電。お逃げください、梶田殿」
梶田「ここに来て逃げることなど出来まい」
私「戦うのですか・・?」
梶田「降参だ!!!!」
獅電「いい判断だ」
私「何・・?」
獅電「まだそちらには伝わっていないかもしれないが、俺たちは先程忠勝を本部へ連れ去っている」
梶田「やはり、連れ去られていたか」
獅電「それで、梶田。貴様にはここで死んでおいてもらった方がこの先楽なんだ。だから・・」
獅電が刀を抜いた。
梶田「よせ! 吾輩を殺したら、残った我が軍の兵士が行き場を失うのだぞ」
獅電「受け皿ならある」
私「といいますと?」
獅電「国だ」
私「は?」
獅電「貴様らも薄々感づいていただろう。俺たちが順番に軍を攻略しているのは天下統一のためだ。俺たちは今、国を作っている」
梶田「残った兵士は国の戦力として使うのか?」
獅電「ああ」
私「しかし、私たちは梶田殿に忠誠を誓っている」
獅電「では・・仕方ない。ここに居る全員を殺す。容易なことだ、こちらには星界術師団副団長もいる」
梶田「昨日から現れた妙な男・・やはり術師だったか」
獅電「死ぬ覚悟はできたか? 貴様ら」
梶田「言ったであろう、降参すると」
獅電「では、死ぬのか?」
梶田「ああ」
梶田殿はまっすぐ獅電を見つめていた。
まるでこうなることを分かっていたかのように、淡々としていた。
私「おやめください! 梶田殿失くして梶田軍兵士は生きていけません」
梶田「そんなことはない。全員、とても優秀な者たちだ。吾輩が人生をかけて育ててきただけのことはある。そして、育ててきた吾輩だから分かる。吾輩が居なくなっても、必ずお前たちは生きていける。生きていけるように吾輩が育てたからな」
私「梶田殿・・・・・・」
獅電「残った梶田軍兵士は必ず俺たちが引き取る。心配するな」
梶田「直政、最後の命令だ」
私「はい。何なりと」
梶田「吾輩の首を斬れ」
私「私が・・ですか?」
梶田「そうだ。吾輩は・・お前に斬ってもらわんと、成仏できない気がするからな」
私「本当に宜しいのですか? 最後の最後まで足掻かないのですか・・?」
梶田「ここで足掻いて直政が死んでしまったら、武士全体において大きすぎる損失になる。吾輩の身一つで未来を託す方がよっぽどいい」
獅電「では、斬れ」
私「梶田殿の部下であったことを誇りに、これから生きて参ります。今まで・・本当に、ありがとうございました」
側近の者は全員号泣していた。
梶田軍は永遠だと思っていたが・・やはり別れは訪れるものか。
梶田「お前たちのような部下が居たことを誇りに思う」
梶田殿の首を斬った。
獅電「美咲、本部へ連絡しろ」
美咲「・・・・」
美咲という者は目を手で覆い、泣いていた。
獅電「俺が連絡する」
獅電が笛を鳴らした。
*
僕「また笛・・」
翔斗「次は何の連絡だ?」
僕「こちらアストリア。要件は?」
獅電「梶田が降伏した。今すぐ全兵士に戦闘を中止させろ」
僕「了解」
獅電さんとの
接続を切った。
清次「何だった?」
僕「宰川軍の勝利です。梶田が降伏しました」
全「うおおおおおお!!!」
その場にいる全員が歓声を上げた。
僕「とりあえず・・よし」
僕「連合軍兵士・星界術師団団員の全員に連絡です。梶田軍は降伏し、我々の勝利となりました。今すぐに戦闘を辞め、本部へ戻ってきてください」
そこらじゅうから雄叫びが聞こえてきた。
清次「すげぇ・・勝っちまったぞ、俺たち!!」
伊海「最難関だと思っていましたが・・勝ちましたね・・!」
忠勝「僕たちの負け、か」
清次「ざまぁみやがれクズ野郎」
僕「清次?」
清次「今のは冗談」
忠勝「僕がクズなのは分かってるさ。自分の軍を裏切って命乞いをするなんて・・クズ以外のなんでも無いよ」
清次「まぁ、気にすんなよ。俺はお前以上のクズに散々出会ってきたぜ」
クズだと真っ先に言った清次がそれを言うか。
*
直政が座り込んで泣いている。
地面を流れる血に涙が注がれ、薄くにじんで染み込んでいく。
俺「直政、気持ちは分かるが・・梶田軍兵士に敗北を伝えてくれないか」
直政「申し訳ありませんが、全員に連絡する術など・・」
俺「そうか。では、とりあえず本部に連れて行く。お前ら、馬は居なくなってないか?」
剛斗「おう! 問題ねぇ!!」
俺「総員、帰還準備!」
蒼月「梶田軍の皆はどうするでござるか?」
俺「梶田軍は馬を持ってるか?」
直政「勿論です」
俺「連れてこい。何処かへ逃れた場合はどうなるか分かっているな?」
直政「ええ」
城の方へ走っていった直政たちは、五分ほど待つと馬に乗って戻ってきた。
俺「俺についてこい」
本部に向かって移動を始めた。
道中で出会った梶田軍兵士には直政が敗北を伝え、段々と戦闘が止まっていった。
信雄「ほとんど犠牲を出さずに勝てましたね」
火蓮「戦後処理をするまでは分からん。見つからない所で死んでいるかもしれん」
俺「あれが本部だ。全員、馬を降りろ」
全「はっ」
俺「敵意がないことを示す必要がある。お前ら、刀を捨てろ」
直政「しかし、これは・・梶田殿が私に与えてくださった刀です」
俺「俺が預かっておく。安心しろ、粗末にはしない」
直政「承知いたしました」
俺「戻ったぞ、宰川!」
清次「獅電さん!!!」
宰川「よく戻ってきた。直政を殺したのか?」
俺「殺していない。降伏した梶田を殺し、俺たちが勝利した」
翔斗「その男は?」
俺「直政だ」
忠勝「直政さん!!!」
一気にこちらへ駆け寄ってきた。
直政「忠勝か・・」
忠勝「ごめんなさい、直政さん。僕、死ぬと思った瞬間、怖くなっちゃって・・」
直政「いや、初の実戦の相手を宰川軍幹部に選んだ私の責任でもある。辛かっただろう」
忠勝が直政の胸の中で泣き始めた。
華城「これから順次、皆が本部に戻ってくるだろう。説明は獅電殿に一任しても良いか?」
俺「ああ」
*
そうか、怖かったんだな・・忠勝。
確かに、人を殺すってのはとんでもないことだ。
敵だとしても、そいつには名前があって家族がいる。そして、そいつにも人生がある。
刀を一振りするだけで、そのすべてを奪ってしまう。
ただ、殺さなければ殺される。
弱肉強食の自然界と同様、弱者は強者に狩られるのみ。
それを受け入れるか、抗うかがきっと武士と庶民の違いなのだろう。
華城「忠勝が一度寝返ったことを直政が許すのなら、我らから言うことはない」
直政「少しの間、二人にしてくれないか」
宰川「良いだろう」
二人が離れたところへ移動した。
ストーンハート「おーい!」
遠くから手を振ってきた。
霧島「全然疲れてなさそうだな・・」
アストリア「副団長ですから」
自慢げに言った。
翔斗「あれは・・」
俺「豪の武士が大量に戻ってきたな」
風雅「死者が出てないと良いっすね・・」
そこからさらに十分ほど待った。
美咲「多分あれは久遠」
華城「ということは・・榊原も討伐出来たのか?」
おそらく勝ったのだろうが、久遠さんの班は皆浮かない顔をしていた。
俺「倒したか? 榊原」
了斎「倒した」
やはり元気がない。
嫌な予感がする・・
将英「久遠さんからの報告を聞くんだ」
俺「おう・・」
久遠「宰川殿、報告がある」
宰川「ああ。聞こう」
久遠「オレたちは榊原の討伐に成功した。だが、死者が二名、雷煌が意識不明だ」
華城「二名・・」
俺「誰だ?」
久遠「美月と俊平だ」
美月と俊平・・・・・・?
春日「ごめん、私が弱いせいで・・」
霧島「嘘つけ。クソほど強えんだろ? 榊原ってやつ。仕方ねぇよ。少なくとも春日のせいではねぇだろ」
宰川「雷煌の容態は?」
将英「息はしているが未だ意識は戻らない。しばらく休ませてやる必要がありそうだ」
火蓮「雷煌・・・・」
俺「神楽! 一応、傷があるかもしれないから治してやってくれ」
寿命は短くなっちまうかもしれないが・・大事なのは今の命だ。不確定要素である寿命なんて気にしてられない。
宰川「全員が揃い、戦も終わった。戦後処理に関する会議をこの後開くぞ」
全「はっ!」
武士は、仲間の死を憐れむ時間すら十分にない。
また同期が減ってしまった。
俊平も優しかったんだけどな・・
今までありがとう以外になんと言えばいいだろうか・・
まぁ、あまりクサい事を言っても、美月に笑われそうだな。
きっと短い言葉でも気持ちは伝わるはずだ。
俺「ありがとな」




