七十三話 一匹狼
宰川「では、今日の動きを大まかに再確認するぞ。ストーンハートと星界術師団団員はとにかく向かってくる敵の殲滅を担当する」
星界術師団員「お任せください!」
ストーンハート「任せとけ。昨日戦ってわかったが、アイツら大したことねぇぞ」
おそらく、ストーンハートが強すぎるだけだ。
最終的にはこの人とも戦うことになると・・勝ち目はあるのだろうか?
宰川「そして、本部・・まぁ、ここに留まる者だな。ここには俺・華城・翔斗・アストリア・伊海・治療班を配置する」
アストリアを本部に置くのは英断だと言える。見た限り、戦闘に向いているわけでも無さそうだったしな・・
そして、他はいつも通りだ。治療班がここに留まるようになったのは、ストーンハートの存在によって負傷者が出づらくなったからだろう。
宰川「そして、繭と行動するのは・・了斎・羽音・久遠・将英だ」
記憶喪失の繭の近くには、やっぱり頼れる人がいるべきだ。
状況把握に長けた久遠さんと将英が居るなら安心だな。
了斎「了解!」
羽音「私を繭のそばに置いてくださって感謝致します!」
華城「最終的に繭は羽音に任せるほか無い。頼りにしている」
宰川「豪の武士と共に敵の殲滅に専念してもらうのは、火蓮・剛斗・信雄・蒼月・美咲だ」
まぁ、団体戦で有利な人たちだ。信雄が居れば安定感も増すだろう。少し指示が心配だが、美咲が何とかしてくれるだろう。
剛斗「キタァ!!!!!」
剛斗の口を将英が塞いだ。
宰川「そして最重要任務、四天王の討伐だ。まず榊原の討伐は春日・晃牙・俊平・美月・雷煌に任せる!」
春日「よし・・榊原を逃した失態は、しっかりと榊原の首で取り返す!」
晃牙「頑張る」
雷煌「話を聞く限り、僕と美月さんが居たら大丈夫そうですね」
宰川「そして、忠勝の討伐」
声の調子が少し重くなった。
宰川「獅電・霧島・清次・・・・・・豊」
豊「そこまで詰まらせることも無いわい。ワシも当然、負ける気はないからのう」
霧島「ほんとに頼むぜ爺さん」
豊「任せておけ」
獅電「・・・・」
華城「連絡方法に関しては、アストリアから説明してもらう」
アストリア「はい。僕の術は遠く離れている人同士を繋げ、連絡することが可能です。何か連絡事項があった場合、笛を鳴らしてください。笛の音を確認したら、僕が笛を鳴らした人に繋げて連絡内容を聞き、ほかの武士に連絡致します。ただ、連絡したい人が明確な場合は、僕と繋がった直後に連絡したい相手の名前をお伝え下さい」
そんな便利な術が存在するのか・・存在して良いのか?
華城「まぁつまり、榊原を討伐する班が忠勝を発見した場合は獅電殿に連絡しろということだ」
分かりやす。
獅電「直政を発見・または遭遇した場合は?」
宰川「直ちにアストリアへ連絡を頼む。剛斗たちを向かわせる」
獅電「了解だ」
宰川「今日で決着が付く可能性が高い。そして、最後に言いたいことは一つだ。絶対に生きて戻ってこい!!!!」
全「はっ!!」
華城「総員、移動開始!!!!」
馬に乗り、各班が移動を開始した。
俺「前に忠勝が居たのはあの辺ですよね・・場所変わってるかな」
霧島「当たりめえだろ。場所を変えない馬鹿がどこに居る」
獅電「いや、確認するに越したことはない。あの男はかなり怠惰に見えた。木陰から場所を変えていないかもしれない」
俺に追い詰められたことから城に引っ込めている可能性もあるが。
いや、あれは追い詰めたと言えるのか?結局俺も追い詰められてたしな・・
俺「豊さん、光刀にしてもらわなくてよかったのか?」
豊「そのままの刀でよい。ワシは、術に頼らず戦いたいんじゃ。忠勝というものも術は使わんのじゃろ?」
俺「ああ、使ってなかった」
最初に忠勝と遭遇した場所へやってきた。
霧島「あれは流石に違うやつだよな? 服装が身軽すぎる」
俺「いや、アイツだ」
霧島「アイツ?」
俺「あれは・・忠勝だ」
獅電「やはり場所は変えていなかったか・・」
忠勝がこちらをに目を向けた瞬間、こちらへ走ってきた。
獅電「気づかれた!」
反応が遅れてしまった。今から逃げようとしても間に合わない。
忠勝「また会えて嬉しいよ」
忠勝は初めから俺しか狙っていない様子だった。
豊「お主の相手はワシがいたす!」
忠勝「ちょっと邪魔!」
豊さんが跳ね除けられ、忠勝は俺のもとまで一直線で向かってきた。
俺「何で!!」
忠勝「ん?」
俺「何で俺ばかり狙う? 何でお前は俺に執着する?」
忠勝「だって君、僕に負けるわけがないって言ったでしょ? だから本当か確かめるために来たんだけど・・」
あのときの俺はそう思ってたんだろうな。
でも今の俺には右腕しかない。
霧島「お前、宰川殿の言葉を忘れてないだろうな? 絶対に戦わないのなら同行を許可すると言ってたんだぞ」
俺「ああ、分かってる」
獅電「清次が『分かってる』という時は、大体分かってないときだ」
バレちまったか・・
俺「だって、言われっぱなしで終わるわけにはいかねぇだろ・・?」
忠勝「言われっぱなしなのは僕の方なんだけどなー」
鬱陶しいな。
豊「清次、ワシがお前の左腕となろう」
豊さんが刀を抜きながら出てきた。
俺「豊さん!!」
獅電「駄目だ。清次の戦闘は許可しない」
俺「獅電さん! 俺の気持ちがわからないんですか?」
獅電「分からない。何故大将の指示を無視する?」
俺「・・・・」
霧島「なんか言えよ、清次?」
忠勝「大将の許可が云々は知らないけど、僕は清次を生きて返すつもりはないよ」
俺「上等だよ。やろうじゃねぇか」
獅電「許可しない」
俺「どうして獅電さんは宰川殿の指示をそこまで忠実に守るんですか!」
獅電「宰川軍兵士として、大将の指示に従うのは当然のはずだ。清次はそれを承知でこの軍に入ったんじゃないのか?」
霧島「よく考えりゃいつもお前って独断で行動してるよな。それで迷惑をかけた記憶はねぇのかよ?」
俺「俺には大将の指示よりも大切なものがあるんだよ」
霧島「は?」
忠勝「良いね! もっとそういうのちょうだいよ」
俺「それは、自分に嘘をつかないことだ。俺は一度忠勝に『負けるわけがない』と嘘をつき、結局連れ去られた。でもな・・その発言を嘘から真実に変える方法がある。ここで忠勝を殺すんだ」
獅電「はぁ・・・・」
俺は、自分以外にならいくらでも嘘をついてやる。
ただ、自分にだけは嘘をつかずに生きていきたい。
たとえ、ここで命が絶えようとも。
獅電「この班の指揮を任された俺からの命令だ。清次と豊で忠勝に勝利しろ」
忠勝「そうこなくっちゃ!」
俺はすぐに斬りかかった。
霧島「獅電さん! 何で行かせたんだよ! アイツは馬鹿だから死ぬぞ!」
獅電「あの状態になった清次はもう誰にも止められない。今までもそうだっただろう」
霧島「クソ・・危なくなったらすぐに俺が助けるからな?」
獅電「ああ。決して無理をさせてはいけない」
霧島「まぁ、アイツのことだから無理するだろうけど」
*
オレ「榊原の位置、分かったよ!」
地中を移動しながら索敵し、榊原の位置を特定した。
春日「どこ?」
オレ「ついてきて!」
正面衝突を覚悟し、馬で移動した。
春日「あれだね・・」
榊原を発見した。
美月「うっわ・・何なのよアレ」
圧倒的な存在感と威圧感だ。見ているだけでも足がすくむ。
晃牙「大丈夫」
そう言って晃牙さんがオレの両肩を掴んだ。
オレ「え・・?」
春日「俊平、顔が強張ってるよ。安心して! 三人でも勝てそうだった相手なんだから」
美月「アタシが居るんだから、安心しなよ」
雷煌「僕も居ます!」
そして何より真栄田軍一の精鋭、晃牙さんが居る。
オレ「・・うん、頑張るよ」
榊原との戦い方はこうだ。
春日さんが鋼糸で榊原の行動を制限し、雷煌と美月が攻撃を試みる。
万が一、二人の攻撃が効かなかった場合は晃牙さんとオレで時間を稼ぎ、残りの三人が新たな攻撃手段を模索。
最も重要なのはオレと晃牙さんでどこまで持ちこたえられるか。
オレの岩が通用するかは分からないけど、頑張ろう。
雷煌「一旦、アストリアさんに報告しますね」
雷煌が笛を鳴らした。
雷煌「あ、きた」
アストリア「こちらアストリア。要件は?」
雷煌「榊原を発見しました。今から戦闘に入ります」
アストリア「了解。何か問題が起こったら直ちに連絡をするように」
接続が切れた。
美月「笛が鳴ったから多分警戒してるわよね・・」
春日「でも、アイツはそんなに動きが早くない。動きを注視していれば攻撃には当たらないと思うよ」
とはいえ、油断は禁物。
美月「一応、ここに指揮はアタシに任されてるのよね・・皆、準備はいい?」
オレ「バッチリだよ」
雷煌「はい!」
春日「はーい」
晃牙「ああ」
美月「攻撃開始!!」




