七十話 変革
俺「良いのか?」
忍「片腕で何が出来るというのだ」
片腕を切り落とされた。ちょっと抵抗しすぎたか・・・・
にしても痛すぎる・・・・ただ、少しでも弱気になると気づかれる。平気なふりをしておこう。
俺「片腕だけになったってことは、俺の腕を縛ることはできなくなったってことだ」
忍「片腕でどうにか出来るのならやってみろ」
俺「馬鹿が! 舐めてんじゃねぇぞ!!」
敵から短刀を奪い取り、腹を滅多刺しにした。
忍「ぐぁぁぁぁ!!!」
?「南西より敵襲! 宰川軍が侵入してきた模様です!」
遙華「何っ!? そんなに早く対応してくるとは・・」
皆が助けに来てくれたのか?
やっぱりここは居ちゃまずい場所だったみてぇだな・・
俺「休ませてくれた恩があるから、あんたは殺さないでおくよ」
遙華のみぞおちを蹴った。遙華はうずくまっている。
俺「さあ、どうする? 宰川軍を倒さねぇとこの里はなくなっちまうぜ?」
忍・三「構わん。俺たちの目的はもとより清次ただ一人だ」
何でだよ?別に俺だけが知ってることなんてねぇぞ・・?
俺「何で俺を狙ってんのか知らねぇけど、おとなしくお前たちに捕まってやれるほど良い子には育ってねぇんだよ!」
馬乗りになって敵の腹を刺した。
クソ・・早く助けに来てくれよ・・!
そろそろ腕の痛みが限界だ。
俺「ふぅー・・」
落ち着け、深呼吸だ。
あ、笛鳴らせば皆来てくれるか?
俺「えーっと・・」
無いや。連れ去られたときに落としたのか?
俺「遙華、ここから出してくれよ」
遙華「出来ません・・うぐっ」
俺「できるできないじゃなくて出せって言ってんだ」
遙華の腹を蹴った。
遙華「ぐはぁ!」
いや・・今の俺なら地割れも起こせるんじゃねぇか?十分体力は戻ってきた。
また気を失うかもしれねぇが・・賭けだ。
俺「はああああああ!!」
地割れが起き、小屋が崩れた。
俺「あぶねぇ!!!」
板に挟まれそうだったが、即座に針を出して板を止めた。
遙華「くっ・・助け・・て・・」
遙華が下敷きになっている。
どうする?見殺しにするか・・?
いや、俺はそこまで落ちてない。こいつを傷つけたのは俺を出してくれなかったからだ。
ここで見殺しにする理由はないな。
俺「クッソ・・感謝しろよな!」
遙華を引っ張り出した。
遙華「ありがとうございます・・」
俺「お前、ここに居たら俺の仲間に殺されちまうぞ。着いてこい」
遙華「は、はい・・」
俺「その前に・・っと、あった!」
包帯を小屋の残骸から引っ張り出した。
俺「これで俺の腕を何とかしてくれ」
遙華「といっても、布が・・」
俺「じゃあお前の服の布ちぎって巻け」
遙華「え・・?」
俺「早くしてくれ! ほんとにいてぇんだよ!!」
遙華が膝くらいまでの服を破き、布と包帯で腕を巻いてくれた。
俺「ありがとう。あ、あとあの短刀はまだ使いたいから・・」
敵に刺した短刀を抜くと、血が吹き出した。
俺「うぉっ!」
アストリア「清次さんですかー?」
俺「来てくれたか!」
雷煌「清次さん!!」
高速移動でここまで来て抱きついてきた。
俺「ああ、大丈夫だ」
雷煌「よかった・・え!? その腕は!?」
俺「やられちまって・・な」
了斎・美月「清次!!」
なんか皆大げさじゃないか?まだ数時間しか経ってないだろ・・一年ぶりの再会みたいな雰囲気出しやがって。
豊「ほほっ、腕以外は無事そうで何よりじゃ」
美月「ごめん、清次。すべてアタシの責任だわ」
俺「・・そうだな、お前のせいだ」
ここで擁護しても美月のためにはならないと思った。
了斎「片腕なくなったのは・・どうするんだ?」
俺「神楽たちに治してもらう。まあ、断面が綺麗になるだけだと思うがな」
雷煌「腕が戻らなかったら、どうするんですか?」
俺「その時はその時だ」
豊「無事、確保じゃな。笛を鳴らすわい」
笛の音が響き渡る。
豊「げほっげほっ」
俺「そりゃそうなるだろ。爺さんは無理すんなよ」
了斎「ところで、その女性は?」
俺「俺を攫ったやつだ」
聞いた瞬間、了斎が刀を抜いた。
遙華「はっ・・!」
俺「待て。実は、俺に手当をしてくれたのもこいつなんだ。見逃してやってくれねぇか」
了斎「・・まあ、清次が良いのなら」
俺「そんで、どうするんだ? 里を滅ぼすか?」
美月「全員殺す意味はないわ。宰川殿のとこへ戻って指示を仰ぐわよ」
俺「了解」
アストリア「オーケー」
俺「ところで・・どうしてあんたも来たんだ?」
アストリア「僕の術で清次さんの場所を割り出したんですよ。もうちょっと感謝してほしいなぁ~・・」
俺「でも俺・・一人で小屋から出たぞ?」
アストリア「あーあ、素直にありがとうって言えばこの刀あげるのになぁ~・・」
これから俺、片腕で戦っていくのかな・・・・
*
オレ「笛か・・緊急事態もしくは清次の確保。将英、今すぐに確認に向かってくれ。緊急事態の場合は狼煙を、清次の安全を確認したら笛を鳴らせ」
将英「了解!」
流石に清次の確保だと思うが、念には念を入れる。
翔斗「おいらたちはまだここで待機か?」
オレ「ああ。情報を待とう」
伊海「先程の轟音はおそらく清次様の地割れです。脱出に使ったか、戦闘に使ったかは不明ですが・・」
オレ「清次のことだ。抵抗の過程で使ったのだろう」
*
我「話を聞くのであれば我でなく久遠殿でも良かったと思うが」
獅電「正直、話し合いとなると久遠よりも華城の方が頼りになるんだ」
我「久遠殿が居たからそれを言わなかったのか」
獅電「そういうことだ」
意外と思いやりはあるらしい。
基本的に長は最も大きい屋敷にいる。
獅電「あの屋敷に居なかったらどうする?」
我「忍者だから大きい屋敷に居ない可能性も十分にある。虱潰しに見ていく他ない」
獅電「そうか」
屋敷の目の前まで来た。おそらくあちこちに忍者が隠れ潜んでいるだろう。
我「正面から入るのはやめておこう」
獅電「ああ」
と思ったが・・
我「駄目だ。正面入口以外に入れそうな場所はない」
獅電「仕方ない」
屋敷の戸を叩いた。
我「宰川軍幹部だ。話があって来た」
こういう時は正直に話した方がいい。
?「何の用だ?」
戸にある穴から男が覗き込んできた。
我「話があると言っただろハゲ。聞こえなかったか?」
?「いいぞ。入れ」
我「これは罠だ。絶対に今入るべきではない」
獅電「ああ。間違いない」
我らは屋根に登り、男が出てくるのを待った。
?「おい、聞こえねえのかー?」
我「聞こえてるぞハゲー」
?「入って良いと言ってるだろー?」
我「我はな・・ハゲは信用しないと決めているんだ」
?「はぁ?」
我「髪の量と度量は比例する。ハゲであるお前を信用することは出来ない」
別にハゲと決まったわけではないんだが・・
?「俺は禿げてねぇ!!」
我「証明できるか? 声を聞く限りだとお前はハゲだ」
?「わかった・・証明してやるよ・・」
獅電「ようやく出てくれるか」
耳打ちで獅電殿が言った。
我「おそらく」
戸が開く音がした。
?「ほらな!! って・・どこに居るんだ?」
我「ここだ」
?「何故屋根に登っている?」
我「お前を信用していないからだ」
?「見ろ、禿げてねぇだろ?」
我「そうだな。我が悪かったよ。そんな事はいいから自己紹介をしてくれ」
?「勝手に入ってきておいて自己紹介をしろとは・・よかろう。俺は右京。濃霧衆及びこの里の長だ」
大当たりだ。
獅電「よし。手を出さないと約束する。話をしよう」
右京「はぁ・・お前ら、武器を降ろせ」
すると、周りに潜んでいた忍者が全員武器を降ろした。
我「こんなに忍ばせていたのか・・流石は忍者といったところか」
右京「お世辞はよせ」
獅電「何故我々の戦に忍者を送り込んだ?」
右京「近頃の宰川軍の動き方を鑑みてだ」
我「どういうことだ」
右京「最近、宰川軍が東回りで軍を制圧していってるだろ? 梶田軍との戦が始まったところで気づいたんだ。次に狙われるのは俺たちだとな」
やはり天下統一を進めているのは勘付かれているか。
しかし、我らが相手にしているのは武士だ。邪魔をされない限り、忍者を狙うことはない。
獅電「だが、何故梶田軍との戦に乱入した?」
右京「最後まで話を聞いてくれよ。俺たちは優秀な忍者が揃っているとはいえ、宰川軍に勝てる確証はなかった。だから、梶田軍の力も借りながら宰川軍を倒したかったんだ・・」
我「それで、その作戦は?」
右京「大失敗だよ。優秀な鶴歌を失った上に送り込んだ忍者は全滅だ」
我「無策で突っ込めばそうなると分かっていたはずだ」
右京「過信しちまったんだ、濃霧衆の強さを・・」
獅電「そもそも、忍者は自ら戦場に出向くのに向かない。いくら優秀とはいえ、野原で戦えば武士が勝つだろう」
全くもってその通りだ。
我「それで、清次を攫った理由は?」
右京「安全策ばかり取る宰川軍が順番に軍を制圧するという危険な橋を渡っている。何か内部で変革が起こったと思い、その理由を探った。すると、清次という男が候補生になったところから風向きが変わっていることがわかったんだ」
そこまで情報を掴んでいるとは・・
右京「そして、変革のもう一つの要因は『華城』という兵士だということも分かった。だがそいつはあまり前線に出ないらしくてな・・だから、前線に出てくる清次を攫い、宰川軍の内情を知ろうと思ったんだ」
我「なるほど、華城・・か。優秀そうなやつだな」
右京「ああ。お前と同じくらいの歳らしい。立派なもんだな」
獅電「こいつがその『華城』だと言ったら、信じるか?」
右京「信じないさ。きっと華城はおとなしくて真面目な奴なんだろう」
我が真面目じゃないと言いたいのか?
我「はぁ・・宰川軍の参謀である我から頼みがある。今すぐに濃霧衆の奴らを集めろ。この戦いを終わらせるぞ」
右京「お前、本当に・・」
我「言ったろ、我が華城だ。察しが悪いハゲだな」
右京「ハゲ?」
我「ちょっと間違えた。とにかく、宰川殿と話をするぞ」
右京「まだ平和的解決で終わると決まったわけではない。しっかりと話し合わせてもらうぞ」
忍者と戦うつもりはない。
そして、梶田軍との戦も保留してある状況だ。無駄な時間は過ごせない。
我「着いてこい。部下も来ていい」
右京「お前と俺が停戦の指示を出せば良いんだな?」
我「ああ」
宰川殿のところへ右京とその部下たちを連れてきた。
我「宰川殿、濃霧衆の長を見つけた。話を聞いた上で、我はこいつらと手を組むのが最善だと思っている」
宰川「先程、清次が無事であるという確認も取れたところだ。じっくりと話をさせてもらおう」
将英「オレが戦いをやめるよう伝える」
右京「俺も同行していいか? 俺の部下は俺が言わないと聞かないだろう」
獅電「五分以内に戻ってこい」
将英と右京が駆けていった。
久遠「そして、そろそろ清次がつく頃か」




