六十九話 拘束
俺「はぁ~・・・・」
あ、そうだ。休ませてもらってたんだ・・・・心地よくて寝ちまった。
俺「ん・・は?」
俺の両腕と足が縛られている。
しかも腕は後ろで縛られている。最悪だ。
俺「クソ・・クソ!」
必死に解こうとしても無理だ。麻紐できつく縛られている。
・・・・戸を叩く音がした。
遙華「目が覚めましたか?」
またその質問か。
俺「覚めたけど・・これは?」
遙華「これ、とは何でしょうか?」
クソ、しらばっくれやがって・・
俺「この紐だよ。何で俺を縛った?」
遙華「あなたは宰川軍幹部の清次さんで間違いありませんか?」
嫌な予感がする。
俺「俺は梶田軍の忠勝です」
遙華「宰川軍幹部の近くにいたのに?」
クソ、全部知ってやがんのか・・
俺「はぁ・・俺が清次だよ。何のためにこんな事をした?」
遙華「私は濃霧衆の遙華です。勘のいい貴方ならもうおわかりでしょう?」
濃霧衆・・繭を一度殺した奴が居たところか。
俺「鶴歌って奴の話か?」
遙華「濃霧衆が今まで存続できていたのは、私たちを鍛えてくださった鶴歌様のおかげです。あのお方を殺すなど到底許すことは出来ない・・」
俺「あれは繭っていう山河軍兵士がやったんだ。俺たち宰川軍は関係ねぇな」
何とかこれでやり過ごせないか・・?
遙華「繭という男だけで殺したのですか?」
俺「晃牙って人も居たけど、あの人も真栄田軍だぞ? 宰川軍は関係ないんだって」
遙華「では、何故貴方は鶴歌様を知っているのですか?」
俺「それは・・」
遙華「今すぐに繭という男と晃牙という男の居場所を教えなさい」
はぁ?俺も知らねぇよ・・
俺「知るか! 自分で探せタコ」
遙華「そうですか・・」
遙華が小屋を出ていった。
どうする・・地割れを起こすか?
いや、起こしたところで手足が縛られてちゃ逃げられない。
そもそも、不完全な状態で地割れを起こせるかどうか・・
戸が開き、三人の男と遙華が入ってきた。
俺「誰だお前ら?」
?「濃霧衆の忍だ」
俺「はぁ」
忍「貴様が情報を吐かないのであれば、指を一本ずつ斬り落とす」
俺「へぇ~。別に指なんて必要ねぇよ」
忍「情報を教えたら貴様を解放するし、指も失わくて良いのだぞ?」
俺「だから、指いらないって」
術があれば戦えるし。
忍「話が通じないやつだな・・」
俺「わかった、教えるよ。でも、この状態だと教えたくても教えられねえぞ。足だけでも解いてくれ」
忍「どうする?」
遙華「足だけならば良いでしょう」
甘いな、馬鹿ども!
忍が俺の足の紐を短刀で切った。
俺「ありがとな!」
忍の顔に思い切り頭突きを食らわした。
忍「ぐぁぁ!!」
忍・二「何をする!!」
俺「俺が教えるとでも思ったか馬鹿が!!」
顔に飛び蹴りをした。
忍・三「おい、コイツを抑えろ!!」
遙華と二人の忍が向かってきた。
クソ、立ち上がるのが間に合わねぇ!
俺「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
*
アストリア「あれ?」
宰川「どうした」
アストリア「一旦、止まってもいいですか?」
宰川「総員、停止せよ!!」
華城「何があった」
アストリア「清次さんの動きが止まりました」
了斎「どういうことだ?」
アストリア「馬を降り、どこかで留まっている可能性が高いです」
我「なるほど。場所は?」
アストリア「ここです」
華城が持っている地図にアストリアが印をつけた。
華城「嫌な予感がするな・・この辺りには忍者の里がある」
春日「それってもしかして・・」
俺「濃霧衆か?」
久遠「なるほど・・濃霧衆であれば清次を攫うのも理解できるな」
ただ、清次を攫って何をするつもりだ?
あいつは大して情報を持っているわけでもないし、一つの里くらいなら怒りに任せて潰しちまうような奴だ。
俺「濃霧衆の規模って分かってるのか?」
宰川「おそらく千人は超えているだろう」
俺「チッ・・そんなでけぇのか」
華城「できれば穏便に済ませたいが、奪還となると正面衝突は避けられない。そして忍者は今まで戦ってきた武士とは戦い方がまるで違うから決して気を緩めないように」
全「はっ!」
再び俺たちは走り始めた。
アストリア「もうすぐです。かなり近づいてきました」
宰川「総員! 戦闘準備!」
全「はっ!」
俺のほうが忍者よりも身を隠すのは上手そうだ。
屋敷もいくつか見えてきた。もうここからは敵がいつ出てきてもおかしくねぇな・・
そう思った瞬間、嫌な気配がした。
俺「木の上だ!!!!!」
気づいた瞬間叫んだが、間に合わなかった。
数十人の忍者がクナイを投げてきた。
獅電「はああああ!!!」
こちらに飛んできた全てのクナイを獅電さんが弾いた。
宰川「攻撃開始!!」
将英が木の上に風刃を飛ばし始めた。
木の上に居るうちは俺は何も出来ねぇな・・
剛斗「オラオラオラオラァ!!!」
剛斗が木をよじ登っていった。
軽快に木を飛び移りながら敵を倒していく。
俺「やっぱり人間じゃねぇなアイツ・・・・」
美月「剛斗! 降りてきて!!」
剛斗「おう!」
剛斗が降りた後、美月が木をひたすら切り倒した。
久遠「忍者が降りてきたところを討て!!!」
しかし、忍者の逃げ足は俺たちの想像を上回るものだった。
華城「時間と体力の無駄だ。追い払ったのであれば十分だろう」
宰川「これより、清次の奪還に移る。奪還に向かうのは雷煌・豊・了斎・美月・アストリアの五人だ」
獅電「五人で足りるのか?」
宰川「幹部の中でも特に剣術に優れた四人だ。任せたぞ」
雷煌「はい!」
美月「アタシが監視できてなかったのが原因だから・・ここできっちりけじめを付けないといけないわね」
アストリア「大まかな位置しか分かりませんが、おそらくこっちです。付いてきてください」
宰川「濃霧衆への被害は最小限に抑えろ。特に火蓮、屋敷を燃やし尽くすようなことがないように」
火蓮「も、もちろんじゃ」
奪還さえできれば良いんだもんな・・
獅電「だが、この里の長とは話がしておきたい。華城、付いてきてくれ」
華城「何故我が?」
獅電「梶田軍との戦に割り込んできた理由だ。漁夫の利を狙うのであれば決着がついた後で良いはずだろう。ただ、戦の最中に入ってきたのであれば何か急ぐ理由があったのかもしれない」
華城「聞いて教えてくれるとは思えんが・・」
獅電「ただ、なにか情報を持っているはずだ」
華城「わかった。ここの指揮は久遠殿と宰川殿に委ねる」
久遠「了解だ」
*
術師団員「私たちだけで梶田軍と戦うのですか?」
俺「そうだ。任されたんだからな」
術師団員「作戦はどういたしますか?」
俺「いわゆる『梶田四天王』とは戦わない。この人数で勝てるか定かじゃないからな。ただ、俺の術があれば大抵の武士には勝てるだろ? 宰川軍が戻ってくるまで梶田軍の人数を減らして弱らせておくのが俺達の仕事だ」
術師団員「しかし、副団長であれば四天王相手でも問題ないかと」
俺「まぁ、四天王と戦わない理由はそれだけじゃない。ただ・・それを説明するのはまた今度だ」
術師団員「分かりました」
武士と戦うのは初めてだな・・俺の術が通用すれば良いんだが。




