六十八話 全速前進
ゆっくりと戸を開けながら女が言った。
俺「覚めましたけど・・誰? というか、ここは何処ですか?」
今までの経験から、かなりまずい状況だと分かる。
俺が地割れを起こしてから、何があったんだ・・・・?
?「私は遙華と申します。貴方様が倒れているのを見かけましたので、私の家まで運んできました」
俺「へ、へぇ・・・・」
遙華が俺の隣に腰を下ろした。
遙華「お体は大丈夫ですか?」
俺「全身が痛くて仕方ないですよ。ずっと戦ってたんですもん」
遙華「戦っていた?」
俺「俺、武士なんですよ」
服装見たら分かるもんじゃないのか?
遙華「そうなのですか・・大変ですね」
俺「俺が倒れた時、周りに仲間がいたはずなんだけど・・いなかったのか?」
美月と雷煌もやられちまったのか・・?
遙華「見かけませんでした・・」
俺「アイツら、俺をほっといて移動したのか?」
遙華「あはは、それはないと思いますが・・大変でしたね。お体が治るまではここで休んでいただいて構いませんので、ゆっくりしてくださいね」
親切だな・・・・
戦場から結構離れたところにいるのか?
俺「ちょっと、外を覗きたいんですけど」
遙華「駄目です! 近くの人に見られたら侵入者だと思われてしまいますよ」
俺「そ、そうですか・・」
若干、戦っている音が聞こえる気がしなくもない。
意外と近いのか?
遙華「とりあえず、これを食べてお休みください」
粥を持ってきてくれた。
俺「ありがとうございます」
いたって普通の粥だ。美味くも不味くもない。
俺「ごちそうさまでした」
遙華「母から学びましたので、ある程度の手当はできます。体の痛いところを教えていただけますか?」
全身だからな・・答えようもない。
俺「一番痛いのは・・倒れたときに強打した背中ですかね」
遙華「分かりました。一度、服を脱いでいただいて宜しいでしょうか?」
俺体ボロボロなんだけど・・怖がられたりしないかな。
俺「ボロボロですけど・・良いんですか?」
遙華「大丈夫ですよ」
そう言ってにこっと笑った。
こんな優しい人もいるもんなんだな・・母さんのような温もりを感じる。
俺は上半身の服を脱いだ。
俺「それで・・どうしたら良いんですか?」
遙華「そこに寝転んでください。枕もありますので」
うつ伏せになって俺は寝転がった。
遙華「冷やしますね・・眠くなったら、寝ていただいても大丈夫です・・って、もう寝てる・・」
遙華「こうして、ここも、こうして・・できた!」
*
定期的に笛を鳴らしながら、イサベルと話をし始めた。
我「何故、貴様は裏切りの提案をした?」
イサベル「逆に、何で断ったのよ、アンタは」
伊海「どのような理由があろうと、私が仲間を裏切ることはありませんので・・」
イサベル「そういうのが聞きたいわけじゃないんだよ。アンタの本心は?」
伊海「本心・・・・ですか」
少し不穏な空気が漂った。
伊海「イサベル様と手を組んでも、宰川軍に勝つことは出来ないと思ったのです」
よく言った!
我「全く持ってその通りだ。我が同じ立場になっても裏切る選択はしない」
イサベル「はぁ? ウチの強さはさっき見たでしょ?」
我「見た上で言っているんだ。こちらの人数が少なかったから追い詰められたかもしれんが、宰川軍の全勢力を使えば屁でもない」
ストーンハート「大した自信だな」
我「・・といっても、宰川軍の勢力の半分くらいは獅電殿なのだが」
アストリア「この前も居た人ですよね? たしかに強そうだったなぁ・・」
雷煌「三十四歳って、既に全盛期は過ぎてる年齢ですよね・・」
ふと横を見ると、遠くから馬の大軍が走ってきていた。
美月「え、あれ大丈夫・・?」
春日「先頭に獅電さんがいるよ。だから味方!」
ようやく戻ってきたか。
獅電さんが皆を連れて戻ってきた。
獅電「笛の回数からしてかなりの緊急事態と思って全員を集めてきたが・・何ゆったりしてんだ?」
宰川殿が咳払いをし、立ち上がった。
宰川「総員、整列!!!」
全「はっ!!!」
久しぶりに宰川殿が威厳を見せたな。
宰川「華城、説明を頼む」
そこは我に任せるのか・・
我「イサベルが裏切ったことによってアストリア含む我らはイサベルと交戦し、ストーンハートの手助けによってイサベルは捕獲された。この後、処分される予定だ」
皆がざわざわし始める。
宰川「静粛に!!」
我「だが、それは大きな問題ではない。今一番の問題は、清次の失踪だ。清次はイサベルとの交戦で意識を失い、倒れていた。本来ならあそこに清次がいるはずだが、何者かによって連れ去られた可能性が高い。アストリアの協力のもと、清次の奪還作戦を開始する!!」
全「はっ!」
我「それで・・ストーンハート殿、ここは任せて良いのか?」
ストーンハート「もちろん。梶田軍を叩き潰してやろうじゃねぇか」
我「イサベルの裏切りによる損害の賠償として、星界術師団副団長をはじめとした術師団員が梶田軍との戦に協力してくれることとなった!!」
伊海軍幹部「戦力としては心強いのですが・・信頼はできるのですか?」
宰川「イサベルの有様を見ろ。俺たちとの条約を守る強い意志がなければ、条約を無視した人間をここまで厳しく罰するとは思えないだろう」
伊海軍幹部「理解しました」
我「だが、梶田軍兵士は術への耐性が飛び抜けて高い。くれぐれも注意して戦うように」
ストーンハート「問題ない。俺の術は物理的な攻撃なんだ」
我「というと?」
ストーンハート「見てろ。瞬き厳禁だぞ」
ストーンハートがイサベルの顔を指で弾くと、イサベルの首が軽く飛んでいった。
悲鳴を上げるものや、感動している者も居た。
我「殺してよかったのか・・?」
ストーンハート「これがアイツに対する罰だよ。お前らも、こうなりたくなければ条約を守るように! 俺もこんなことしたい訳じゃないんだ」
全「はっ!!」
宰川「では、任せたぞ」
ストーンハート「ああ」
我「では総員、馬の準備!!」
全員が馬に乗った。
宰川「只今より、清次の奪還作戦を開始する!! 梶田軍兵士及びその他の敵と遭遇した場合は戦闘を避け、最低限の対応をするように!!!」
アストリア「僕が先頭で良いんですか?」
我「場所が分かるのはアストリアだけだ」
アストリア「了解。じゃあ皆付いてきて!!」
アストリアを先頭とし、宰川軍・伊海軍は走り始めた。




