六十六話 反転
私「・・・・はい?」
確か術師団の人だよね・・?
アストリア「止めて、と言ったんです」
私「はい・・・・」
イサベル「どうして来たんだよ?」
アストリア「お前が原因だろうが。自分でもわかってんだろ?」
一気に口調が変わった。
イサベル「何?」
アストリア「僕は術師団の通信士。契約した術師の会話はすべて筒抜けだって知ってるよな? お前が急に意味わかんねぇことを言い始めるから術をフル活用して止めに来たんだよ」
華城「裏切りの提案はイサベルが勝手にしたってことか?」
アストリア「そうです。今回は大丈夫だと思ったんですけど・・やっぱりコイツは駄目ですね。しっかりと刑罰を与えさせていただきます」
イサベル「何で!? ここでコイツらを騙せたら、術師団は苦労せずに宰川軍を倒せたのよ」
アストリア「誰も望んでねぇのに勝手に総意見てぇな言い方してんじゃねぇよ。これ以上星界術師団の格を下げるような真似をするな。まぁ、これからは術師じゃねぇけど」
本気で怒ってる・・元々イサベルはそういう人なのかな?
イサベル「わかった! 本当に今回で終わりにするから!」
アストリア「何回目だよそれ。僕はもううんざりなんだよ。どうして三十六にもなって人の指示を守れない? 勝手な行動を取る? 痛い目に遭うのは分かってるだろ」
華城「術師団的には、不可侵条約を守り続けるつもりってことでいいか?」
アストリア「もちろんです。この馬鹿が裏切りの提案をしたのは術師団ではなく、コイツ自身の意志ですのでそこはご理解を」
私「分かりました・・」
アストリア「はい、お前はもう処分が確定してるから行くぞ。力だけはあるから今まで目を瞑ってたが、お前がいると作戦実行に支障をきたす」
イサベル「分かったよ・・じゃあここで全員殺してやる!!!」
華城「伊海殿、今すぐ逃げろ!」
私「はい!」
晃牙「俺、残る」
華城「駄目だ! 術師が本気を出したらどうなるか分からない!」
走って逃げ始めると、先に壁が現れた。
華城「クソ、こっちだ!」
右を向くと、また壁が現れる。
晃牙「こっち」
後ろを向いても壁が現れた。
私「こちらしか残されていません!」
左を向くと、すぐに壁が現れた。
華城「イサベルの術だろうな・・この壁は地面を盛り上げて作っているようだ」
私「どうしますか?」
壁がジリジリと迫ってくる。
華城「まずい、このままじゃ潰されるぞ」
晃牙「時空、操れない・・出れない!」
*
信雄「あれ・・何ですか?」
俺「壁? 土が隆起してるな・・」
何かを囲うように壁が出来上がっている。
信雄「土を操る術を持っているのは僕と霧島さんだけです。でも僕たちがここにいるということは・・」
俺「あれをやってるのは他の野郎だな」
だが、誰だ?術を使っているなら梶田軍兵士ではないな。
術師団のやつの術かもしれんが・・一応向かうべきだ。
俺「信雄、今すぐ行くぞ!」
信雄「もとよりそのつもりです」
瞬間移動を連続で使い、壁のところまでたどり着いた。
信雄「どうしますか」
俺「見ろ、あっちにイサベルがいる。話を聞いてみようぜ」
信雄「確かに、あの人なら状況を把握しているかもしれないですね」
イサベルに話しかけようとしたが、アストリアと取っ組み合いになっていて話ができる状況ではなかった。
俺「おい! どうなってんだ!!」
信雄「どうしてアストリアさんがここに?」
アストリア「あなた達の仲間が壁で囲まれて危ないです! 助けてください! イサベルは僕が抑えます!!」
待て、どうして術師同士で争ってるんだ?
まず、イサベルが何で壁で囲ったのかも分からねぇし・・
俺「考えてる暇はないな。今すぐこの土を動かすぞ」
信雄「はい!」
俺「その前に・・っと」
笛を鳴らしておいた。
これは間違いなく緊急事態だ。人手がいる。
俊平「どうしたの?」
急に地面から出てきた。
俺「早いな、助かる。この壁で味方が囲まれてるんだ。俺と信雄で穴を開けるから土を硬化して塞がらないようにしてくれ」
俊平「状況がわからないけど・・わかった、やるよ」
俺・信雄「せーの」
一気に土を動かし、人二人分ほどの穴を開けることが出来た。
俺「今だ!」
俊平が土を硬化させ、穴がきれいに残った。
俺「おい! ここから外に出れる! 今すぐ来い!!!」
穴を覗き込んで叫んだ。
中にいるのは晃牙と伊海と華城。何でこの三人なのかは知らねぇけど・・
華城「ありがとう霧島!!!」
少し待つと、三人が穴から飛び出してきた。
華城「詳しい状況は後で説明する。とにかく、ありがとう」
俺「気にすんなよ」
信雄「霧島さんだけの手柄じゃないですよ?」
華城「もちろん分かってる」
伊海「とりあえず、イサベル様の方へ行きましょう」
俺「了解!」
駆けつけると、まだアストリアとイサベルは取っ組み合いとなっていた。
俺「とにかく、イサベルをやれば良いんだな?」
アストリア「駄目です!! 今宰川軍がコイツを攻撃すると不可侵条約を破ったことになってしまいます! なので、僕が・・くっ!」
力で負けてるな・・ただ、俺たちが助けることもできない。
信雄「どうするんですか・・」
イサベル「クソォォォ!」
アストリアを振り切ってイサベルが杖を拾った。
イサベル「これで全員死ぬ・・殺してやる!!」
すると、四方八方に動物が現れた。
豚、牛、熊、虎・・・・
アストリア「コイツの術です! 容赦なく殺してください!!」
俺「動物を殺すのか・・・・」
人を殺すよりも心が痛むが、術で生み出された奴らなら良いよな・・
アストリア「クソ・・これ以上余計なことをするな!!」
俊平「豚は大丈夫だけど、虎と熊を刀で相手するのは・・・・」
俺「誰か助けに来てくれねぇと・・」
宰川「大丈夫か!!」
馬に乗って走ってきた。
俺「遅かったな、虎と熊を殺さなきゃいけねぇんだ。手伝ってくれ」
宰川「分かった。じゃあ・・・・俺が引き付けるから一方的にたたけ」
俺「良いのか?」
宰川「即時回復がある。死にゃあせん。行くぞ!」
俺「御意!」
宰川殿が走って虎の方に突っ込んでいく。
宰川「ぐぁぁぁぁ!!」
そりゃあ痛えよな・・
俺「おい! 背後から斬るぞ!!」
俊平「了解!」
宰川殿のところに集まる猛獣をひたすら斬リ続ける。
俺「おい、次々と来るじゃねぇか・・・・アストリアはどうしてんだ?」
雷煌・久遠「何があったんですか!?(何があった!?)」
二人も来てくれたか。心強い。
俺「宰川殿のところに集まる猛獣を殺すことだけを考えてくれ。その後の指示はきっと華城が出してくれる」
久遠「分かった!」
雷刀があれば虎と熊も簡単に殺せる。
殺しきれるかは別として・・・・
宰川「そろそろ限界が来る! 何か次なる一手を!!」
いくら宰川殿といえど、永遠に耐えることは出来ないか・・・・
霧で宰川殿を群れから出した。
俺「一旦待機だ」
宰川「ああ。感謝する」
清次・了斎「どうしたんだ?」
待ってました・・・・
俺「おそらくイサベルが俺たちを裏切った。アストリアと取っ組み合いの最中だよ」
了斎「何でアストリアと?」
俺「裏切りはイサベルの独断らしくてな」
清次「分かった。この猛獣らの相手はお前らに任せるぞ」
了斎「わしはここに残る。豚も牛も丸焼きにしよう」
清次「え、俺一人?」
宰川「そうだ。さっさと行け!」
清次「分かったよ・・」
*
よくわかんねぇ状況だなぁ。イサベルの裏切りも意味わかんねぇし・・さっきまで仲良く喋ってたじゃねぇかよ。
俺「おい、アストリア! どういう状況だ?」
取っ組み合いしてんぞ・・
アストリア「手は出さないでください! でも、そろそろコイツを止めないと・・・・」
手を出さずに止めるって・・?
無理だろそんなの。
俺「おい、イサベル! 何のつもりだ!」
イサベル「何のつもりだ、だって? ウチとお前らは元々味方でもなんでも無いでしょ?」
俺「宰川軍へ加勢すると言っていたはずだが?」
イサベル「ウチは言ってないよ。術師団の指示だからね」
俺「そんな頓知は通用しねぇよ」
イサベル「お仲間は大丈夫なわけ? ここでおしゃべりしてる暇ないんじゃないの?」
俺「俺の相棒が行ってる。大丈夫なはずだ」
少しでも会話に意識を向けさせよう。
イサベル「すごい信頼感だねー。羨ましい」
俺「三十六年生きて、信頼できる仲間を見つけられないお前が哀れだよ」
イサベル「へぇ~。お前、死ねば?」
よし、良いぞ。この調子で・・・・
アストリア「後ろ!!」
後ろから熊が襲いかかってきた。
俺「クソ、俺の方にも出しやがったか・・」
ただ、こんなの針で殺せばいいだけだ。
イサベル「うそ、そんなあっさり・・」
俺「術師の中でも強いほうじゃねぇのか? お前。この程度でどうやって俺を殺すんだよ」
だんだんアストリアが優勢になってきている・・いいぞ!
イサベル「クソが・・・・・・」
俺「多分、俺が本気を出したらお前なんて一撃だぞ? アストリアが言うから殺さないでいてやるけどよ」
イサベル「あーもううるせぇ!」
俺を取り囲むように無数の虎が現れた。
俺「なーるほど?」
アストリア「大丈夫ですか!!」
間違いなく大丈夫ではないな。
俺「大丈夫かは知らねぇけど・・まぁ、やるだけやってみるか」
地割れを起こした。
俺「今だ! アストリア!!」
地割れでイサベルがよろけた瞬間、アストリアが杖を取り上げて羽交い締めにした。
俺「よーし、俺の役目はここまでかな・・こんな数の虎相手できねぇし・・・・」
美月「清次、何してるのよ!!」
俺「美月か」
美月「何が起きてるのか分からないけど、虎を殺せばいいのよね?」
俺「ああ」
美月「じゃあ、殺すわよ! 諦めるなんて許さないから」
この数の虎に囲まれてよく諦めずにいられるな・・
俺「はぁ・・忠勝と戦うからここで体力は使いたくなかったんだけどなぁー」
やるしか無いか。
無心で虎を斬り続けた。
だんだん周りの音が聞こえなくなってくるが、こんなのもう慣れっこだ。
美月「そんなに出来るなら最初からやってよ・・・・」
アストリア「多分、もう少しであの人が来ます。それまで耐えてください!!」




