六十三話 敵か、
了斎の兄・・・・?
俺「本気で言ってんのか!?」
俺たちの両親が殺されてすぐに了斎の兄さんはどこかへ行ってしまった。
それからずっと会ってなかったんだよな・・・・
了斎「忠次から聞いた情報だから真偽は定かじゃない。ただ、アイツが土壇場でついた嘘ではないと思うんだ」
宰川「それは何故だ?」
了斎「わしが早田了斎と名乗ってすぐに忠次は『君の兄に会った頃がある』と言ったんだ」
俺「了斎の兄さんは別に特別有名な人でもねぇし・・本当に会ったことあるんじゃないか?」
霧島「俺もそう思うけどな。了斎の兄貴の話をしてるとき、あいつは嘘をついてる顔じゃなかった」
翔斗「それで、肝心の居場所は?」
了斎「南東にある村に兄さんが居るらしいんだ」
南東の・・村?
宰川軍領地の近くですら無いのか。どうしてそんなところまで一人で・・
それは会ってから質問するか。
雷煌「南東の村? 来る途中に見かけませんでしたか?」
華城「ここからの距離が不明だ。故に断言はできないが、見かけていてもおかしくない」
そんなに大きな村は見かけなかったから、小さな村にいるのか?
もしくは離れているだけで大きな村なのか。
火蓮「水を差して申し訳ないんじゃが・・了斎の兄に会って何か情報は得られるのか?」
蒼月「情報は得られないかもしれないでござるが・・了斎と兄のわだかまりが解けたら十分だと思うでござるよ」
了斎「もう一つ忠次から聞いたことがある」
宰川「そんなに話し込んだのか・・? ・・わかった、聞こう」
了斎「以前、梶田軍兵士が村を制圧するために向かったらしいが、兄さんが一人で、槍一本で村を守りきったらしい」
了斎の兄さんなだけあってやはり強いか。
将英「守りきったというのは・・追い返したってことか?」
了斎「いや、村を訪れた梶田軍兵士を全員殺したらしい」
俺「一人で!? 槍一本だろ?」
了斎「ああ。村に何人の梶田軍兵士が訪れたのかは分からないが、忠次の口ぶり的に十人は超えていそうだった」
宰川「梶田軍兵士を十人以上討伐・・か」
華城「武士じゃないにしては上等だな」
俺「了斎の兄さんの考えが分からないから俺たちには何もできねぇよな・・もし軍に加わってくれるなら頼もしいけど」
了斎「ただ、兄さんはとても村を大切にしているみたいなんだ。武士にはならないと思うんだけどな・・」
美月「会って聞けばいいわよ。兄さんに会うためにはまず勝たなきゃ」
その通りだ。
宰川「ああ。了斎の件はひとまず置いておこう。他に報告は?」
春日「私たち!!」
宰川「わかった。報告を頼む」
春日「榊原っていう四天王の奴と戦ったの。めちゃくちゃ重い甲冑をつけて大太刀を持ってて・・要塞って言われてるのも納得の頑丈さだった」
技巧派の忠勝とはまた一風変わった戦い方だな。
翔斗「さっき聞いた感じだと、そいつを取り逃したようだったが・・」
春日「そうなの。普通に攻撃しても全く効かないから私の鋼糸を使って目を覆ったの。そのまま手足も縛って捕虜にしようと思ったんだけど・・」
豊「運ぶ途中で向かってきた騎馬隊員に連れ戻されてしまった」
霧島「何やってんだよ! 馬鹿なのかお前ら?!」
霧島が勢いよく立ち上がった。
将英「霧島、今ここで怒っても仕方ないだろ」
霧島がゆっくりと座った。
蒼月「申し訳ないでござる」
華城「では、最終的に倒した四天王は忠次のみということか」
獅電「一人倒せりゃ上出来だ」
おそらく今回の勝利条件は四天王全員の討伐だ。
俺「四天王があと三人残ってる上に、三人とも忠次より厄介なんだろ? 困ったもんだな・・」
雷煌「そうですね・・忠次さんも強かったですけど、良くも悪くも正統派の武士だったのであまり策には困りませんでした」
霧島「忠次の倒し方は正統派じゃなかったけどな」
久遠「どんな倒し方をしたんだ?」
信雄「了斎さんが敵の背後から一突きです」
突きで殺したのか!?
確かに了斎は突きが得意と言ってたが・・忠次並の敵にも通用するのか。大したもんだ。
剛斗「突きでやったのか!! 了斎、オレにもやってみてくれ!!」
馬鹿、アホ、命知らず。
了斎「もちろん」
ばか!
伊海「今は会議中ですよ。後にしましょう」
なんで突き自体は受け入れてるんだよ・・
了斎「わ、わかった。ごめん」
なんで納得するんだよ・・・・
剛斗「やっぱ良いや、やらなくて」
なんでお前がやる気失ってるんだよ・・・・・・
獅電「粗方報告は終わったか?」
晃牙「まだ、残ってる」
獅電「何だ?」
剛斗「繭が死んだ理由にも関わってくる話だ!!!」
そんな勢いでする話か・・?
宰川「大事そうだな。その場に居たのは誰だ?」
晃牙「俺、繭、羽音、剛斗、治療・・・・班」
俺「一番説明が得意そうなのは神楽か」
神楽「私が説明致します」
皆が少し体を乗り出した。
神楽「私が剛斗さんの傷を治療していると、濃霧衆という忍者衆の者が現れました。どうやら濃霧衆の者が数名戦場に居たらしく、剛斗さんはそれに気づかず倒していたようです」
俺「忍者の奴が何でここに居るんだ?」
風雅「漁夫の利を狙ってたみたいっすよ」
忍者らしい理由だな・・手出ししないでくれよ。
俺「そうか・・」
伊海「その忍者と遭遇しているところを見て、私が結界を作成しました」
久遠「外部からの干渉が無い状態で戦ったんだな」
神楽「はい。初めに剛斗さんが向かっていったのですが、毒で倒れてしまったので繭さんと私で救出に向かいました。そこで繭さんが鎖で縛られてしまいました」
風雅「そこで焦った羽音さんが助けに向かったっすけど、危ないと判断して途中で入ってきた晃牙さんの助けに向かってもらったっす」
俺「晃牙さんは結界の中に入れたの?」
晃牙「うん、空間・・いじって、入れる」
俺「あ、へぇ~」
すげぇ・・
神楽「やはり晃牙さんの実力は圧倒的でして・・あっという間に敵を倒してくださいました。私と風雅で繭さんの治療を試みたのですが、変化はなく・・」
俺「それで死んじまったのか」
晃牙「俺、助けるの、遅かった。ごめん」
雷煌「晃牙さんが謝ることではないですよ! きっと羽音さんも晃牙さんを悪くは思っていないです」
晃牙「そうか・・」
繭と羽音は二人で話し続けている。
霧島「結構説明に時間かかってるな」
翔斗「無理もない。あいつの『人生』を説明してるんだからな」
霧島「まぁそうか」
真栄田が居なくなってから、会議の明るさが全体的に落ちた気がする。
なんだかんだ真栄田は宰川軍にとっても大事なやつだったな・・・・
火蓮「清次、どうして俯いておるんじゃ?」
何ですぐに気づくんだ・・?
俺「いや、なんか・・真栄田が居なくなってから会議が暗いなーって」
美月「確かに・・」
剛斗「オレがいるだろ!!!」
華城「お前だけなんだよ」
剛斗「酷くね!?」
霧島「やっぱり真栄田・剛斗・春日のおちゃらけ三人組が丁度良かったんだな」
皆が大きく頷いた。
春日「私を剛斗と一緒にしないでよ!? 私はちゃんと真面目だし・・」
そんなこともないだろ。
久遠「んーーー?」
明らかに納得してないな。
俺「まぁ・・そういうことにしとくか」
剛斗「おう・・!」
春日「私が変な人みたいじゃん!!」
獅電「ここに居るやつは全員変だ。まともなやつは武士の道など選ばん」
獅電さんの一言は、この場にいる全員に刺さってしまった。
春日「庇ってくれてるのかわからないんだけど・・」
蒼月「そんなことより・・皆、腹が減っているであろう? 拙者らが今から作るでござるよ」
俺・了斎「待ってました!」
久遠「本当に二人は飯が好きだな」
当たり前だ。十年間まともな物を食えなかった分、これから取り返さなくちゃならねぇんだ。
羽音「みんな、繭から話が」




