五十九話 要塞
俺「見つかりませんね、忠勝・・」
体の痛みも増してきた。今遭遇してもまずいか・・?
獅電「忠勝と戦うのは明日にしよう。万全ではない状態であいつに勝てるはずがない」
俺「じゃあ、このけがを・・」
獅電「風雅たちの居場所がわからないから無理だ。我慢しろ」
薄情じゃない・・・・?
俺「じゃあ・・肩貸してください」
獅電「好きにしろ」
獅電さんと身長があまり変わらなくてよかった。肩が借りやすいな・・
俺「じゃあ、とりあえず見つけた敵を倒していきましょう。俺はなるべく刀を使わず術だけで済ませます。今の状態でいい動きができるとは思えないので・・」
獅電「ったく、術にばっかり頼りやがって・・わかった。だが、お前はもう少し自分が重要な存在であることを理解しろ。もし危ない行動をとって死ぬようなことがあれば俺が殺す」
俺、死んだら殺されるの?
まぁ獅電さんに殺してもらえるなら俺は良いかな・・・・じゃなくて。
俺「あっちに五人居ますね」
ひたすら敵の足元に針を作っていく作業だ。俺が仕留めきれなかった敵は獅電さんが殺してくれた。
今日の残りの時間はこれで敵を地道に減らしていこう。焦る必要はないんだ。
*
戦況に動きがない。
久遠殿らは変わらず敵を減らしてくれているようだが、清次や獅電殿が見当たらないとなると、四天王の出現も視野に入れる必要がある。
我「撤退命令を出す」
翔斗「どうして急に?」
今日だけで四天王との決着をつけるのは無茶だ。四天王が現れていないとしても、敵が減った明日に四天王を探す方が得策だ。
我「予感だよ」
宰川「そうか・・」
我「ただ、最終決定権は宰川殿にある。我個人の意見として聞いてくれ」
正直、我の意見が絶対というような最近の空気感が苦手だ。
我は多少周りに比べて頭が良かっただけの凡人なんだが・・
宰川殿が笛を鳴らした。
我「どうして鳴らした? 我の意見でしかないと言ったが・・?」
宰川「これは華城の意見を聞いた上での俺の判断だ。当然責任は俺がとる。今回以外でもそうだが、華城は気負いすぎる節があるぞ」
翔斗「責任感が強いし真面目なのは良いことだと思うが・・もう少しおいらたちを頼ってくれて良いんだぞ」
我「そ、そうか・・」
なんだか照れくさい。
宰川「とりあえず、皆が戻ってくるのを待とう」
*
私「蒼月! 今だ!」
再び轟音が鳴り響き、榊原のもとに雷が落ちた。
榊原「効かねぇって」
クソ・・!
こんな重い甲冑の奴に普通の刀が通用するはずもないし・・
そうだ、光刀!!
光刀の切れ味はこの刀の比じゃない。あの甲冑を上回るかは分からないけど・・
私「ねぇ! コイツ、美月の光刀だったら効くんじゃない?」
将英「一理あるな」
攻撃を避けながら言った。
豊「じゃが、今から美月を探すことはできんぞ。一人でも欠けたらきっと誰かが死ぬ」
私「だからといって、この消耗戦を続けるの? たまたまふらっとここに美月が現れるのを待つっていうの?」
蒼月「それが最善策でござるよ! 信じて戦い続けるでござる!」
どうしよう・・刀をぐるぐる巻きにしようとしてもすぐに切られる。
榊原自体を巻こうとしても切られる。
なにか私に出来ることは・・?
私「良いこと思いついた!!!!!!」
将英「何だ」
私「説明してる暇なんかない! とにかく三人は戦い続けて!」
ふっふっふ・・・・私って天才だ。
糸で布を作ってから、榊原の背後に回り込む。
私「ほれっ!」
榊原の目を布で塞いで、更に上から糸で巻いた。
榊原「うっ! クソ! おい!」
哀れ~。
将英「なるほど。行動を制限できないならば視界を遮るか。考えたな」
ほら、天才でしょ?
私「よし、今のうちに・・」
榊原の両足も鋼糸で縛った。
私「これで動けないはず!」
蒼月「動けなくなったのは良いのでござるが・・ここからこやつを倒す術がないでござる」
榊原「おい! 今すぐにこれを取れ! さもなくば!!」
私「うるさい! こっちは大事な話してんの!」
鼻を殴ってやった。
豊「このまま放置したら餓死するんじゃないか?」
将英「敵軍に見つかって解放されるかもしれないだろ」
豊「そうじゃな・・」
私「四人でこいつ引っ張って運ぶ?」
蒼月「そうでござるな・・宰川殿のもとへ運ぶでござるよ」
榊原「おい、待て! 何をする気だ!!」
私「聞いてなかったの? まぁ、宰川殿に会ってからいろいろ話してあげる!」
大太刀も腕に巻き付けて動けないようにしておいた。
将英「クソみてぇなやり方だが・・時にはこういったやり方も必要か」
クソだって!?
私結構真剣に考えたんだよ・・
私「じゃ、皆で引っ張るよ~」
榊原「おい! お前ら! ただで済むと思うなよ!!」
私「ちょっと黙ろう!」
口元も新たに塞いだ。
鼻は出てるから息はできるよね。
将英「春日、後ろ!」
私「おぉ! 危ない!」
当然、梶田軍兵士も襲ってくる。
私たちに勝てっこないけどね。
豊「あっちを見ろ!」
豊さんの目線の先を見ると、騎馬隊がこちらに向かって走ってきた。
見た感じ二十人以上は居るな・・
私「将英!」
大人数で向かってくるなら風刃が一番。
将英「俺だけじゃ無理だ!」
流石に全員は殺せないか・・
蒼月「拙者が出来るだけ接近を遅らせるでござる!」
蒼月が強風を吹かせ、騎馬隊の動きを遅らせた。
豊「まずい、五人程度しか倒せていないな」
やっぱり風刃は梶田軍に対して有効打じゃないか・・
蒼月「春日殿、榊原は?」
私「え? ここに・・・・」
足元に榊原が居ない。
私「逃げられた!?」
蒼月「叱るのは騎馬隊を倒してからでござる!!」
蒼月が走っていったので、私も着いていった。
私「ほらっ!!」
馬の脚を縛って走れないようにした。
人を巻きつけることはできなくてもこれなら出来る!
少し苦戦したけど、騎馬隊は倒せた。
将英「それで・・榊原はどうしたんだ?」
私「私がよそ見してる間に連れて行かれたみたい・・」
蒼月「油断大敵でござるよ。せっかく連れていけそうだった所で・・」
私「ごめん・・」
あんな重いやつをどう連れ去ったんだろう・・五人くらいで一気に引っ張っていったのかな。
豊「これ以上責めても意味はない。明日、榊原と再戦じゃ」
将英「ああ。美月に予め光刀へ変えてもらうか、美月とともに行動するかだ」
笛の音が聞こえた。
私「これは、宰川殿の笛?」
蒼月「撤退命令でござるな! まだ日は暮れていないでござるが・・」
将英「とにかく宰川殿のもとへ戻ろう。四天王との遭遇も報告しなければならない」
私「そうだね!」
誰も死んでないと良いんだけど・・それは無理があるか。
真栄田が居なくなった今、元幹部の私たちは生き残ることが最低の義務だと思ってる。
甘ったるいことなんて言ってられないね・・私は、真栄田の分まで頑張らないといけない。
女としての魅力がなくてお先真っ暗だった私の人生を照らしてくれた、真栄田の分までね。
私「よし。頑張ろ」
蒼月「急にどうしたでござるか?」
声に出ちゃった。




