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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
出世編

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五話 宣戦布告

 この宿舎で暮らし始めて三ヶ月が経った。

ここ最近は戦の影響であまり満足に食事をすることが出来なかった。

いつになったら近場での戦が終わるのだろうか。

戦が近づくと『戦いたくない』と逃げ出す者が続出すると久遠さんが言っていたな。

武士だからといって全員が全員命知らずというわけではないか。

孤児としての生活が過酷すぎて俺と了斎はその辺りの感覚がおかしくなっちまったんだな・・恐れを感じることが殆どなくなっちまった。


宰川軍兵士「伝令だ!候補生の者は全員外に出てこい!」

まだ早朝なのにもかかわらず、宿舎の前から声が聞こえてきた。

俺たちは飛び起きて「何だ!?」と外に向かった。

外に出ると、四人の武士が立っていた。


雷煌「なんですか朝から・・・・」

雷煌が珍しく不機嫌そうだった。

無論、俺も不機嫌である。


宰川軍兵士「今日、戦が始まる。相手は山河軍(やまがわぐん)だ」

真栄田軍じゃないのか・・・・とは思ったが、今真栄田軍との戦が始まっても困るか。


了斎「山河軍って、最近近くで戦をしてた奴らだよな?」

特に普段と変わらない調子で言った。

よく不機嫌にならないな・・いや、俺が餓鬼なのか。


宰川軍兵士「ああ。昨晩宰川軍兵士が山河軍より攻撃を受けた。これは立派な宣戦布告だ」

力のこもった口調で武士が言う。


霧島「でも、候補生は戦には出ないんだろ?」

霧島はやさぐれている。


宰川軍兵士「いや、お前らにも戦ってもらう」

おい・・話が違うだろ。


将英「何故だ?」

話を聞いたところ、山河軍は非常に人数が多いそうだ。

宰川軍の兵数が五千、山河軍が八千。

圧倒的に数的不利だ。この差を少しでも埋めるために候補生も出撃するとのこと。

すると、ずっと黙っていた将英が口を開いた。


将英「わかった。オレたちは間違いなく宰川軍の役に立つ」

自信満々の将英に全員が動揺した。


 だが、よく考えるとここにいる候補生だけでも十人も術の使い手がいる。これだけの戦力であれば百人くらいなら俺たちでも倒せるのでは?


俺「俺たちはそこらへんの武士よりも強いからな!」

将英に同調した。


宰川軍兵士「お前らにそれほど期待はしていないが。まぁ、城の裏に刀と甲冑が用意してあるから向かうことだ」

腹の立つ言い方だが、候補生の俺が言い返すことはできない。

まあ、この戦で俺たちの実力を証明してやれば良いだけだ。


将英「よし、じゃあ行くぞ」

走り出した将英に着いていった。


 城までたどり着いた。


結城「君たちは候補生だよね? ここで甲冑と刀を調達していくんだよ」

話しかけてきたのは結城さんだった。こういう仕事もしてるんだな。


俺「わかりました!」


華城「急に元気になったな清次・・・・・」

華城に呆れられた。

こいつ、歳下のくせに・・・・


翔斗「みんな、早く甲冑を身に着けよう」


霧島「わかったよ・・・・というか、本当に今日戦い始めるのか?」

霧島は半信半疑だった。


結城「そうですよ。死なないように頑張ってね」

微笑んで言った。

・・・・・・・・女神?


俺「俺たちは術が使えるんだぞ! 普通の武士になんて負けるかよ」

そう、術があれば術の使い手以外に負けることなんて無いはずだ。


幹部「甲冑を身に着けたもの、全員こちらに集まれ!」

幹部らしき人の声が聞こえた。

ありえない人数が草原に並んでいる。

この人数でもまだ山河軍より少ないというのか。


霧島「ぱっと見ただけでは誰が術の使い手か分からねえな・・・・」

一見、全員おんなじだ。


火蓮「そうじゃな。常に注意して戦わねばならん」と周りを見渡して言う。


俺「術を限界まで隠し持つ奴も居そうだな」


剛斗「そんな舐めた野郎はオレが握り潰してやる!!」

剛斗が言うと冗談じゃない気がしてくる。

前方がよく見えないが、幹部と大将はこちらを向いて立っているようだった。

もちろん、幹部のところには久遠さんもいた。


雪村「戦って、どれほどの犠牲が出るんでしょうか・・・・」と不安そうにしていた。


俺「分からねえな・・・・」

候補生の俺たちはまだ実戦経験がないので、そういったところの尺度が一切分かっていない。


将英「とりあえず、ここにいる十二人は絶対に生き残ろう」と皆を鼓舞した。


剛斗「そうだな!」



霧島「提案なんだが・・・・」と、控えめに手を挙げながら言った。


霧島「三人で班をを作り、必ずその三人は離れないようにしたら生存率が大幅に上がる上に、補助をしながらの戦闘もできるから戦いやすいと思うんだが」


美月「アタシは賛成」とすぐさま言った。


雷煌「僕も賛成ですけど・・・・その三人はどう決めますか?」


華城「そこは我に任せろ。役割ごとに決めれば簡単だ」

確かに、こういった作戦を考えるのは華城の得意分野のはず。


 そして、華城の考えた作戦がこうだ。

まず十二人の役割を『特攻』『補助』『指示』の三つに分ける。ここの割り振りは術の特徴などをもとに行う。

特攻は『了斎』『雷煌』『将英』『火蓮』。この四人は敵の殲滅に専念する。


補助は『清次』『美月』『剛斗』『霧島』。特攻の者が危ない時に助ける役割だ。


指示は『雪村』『翔斗』『英太』『華城』。仲間を守る術や回復の術を使える者が選ばれている。英太が指示役なのは単純な実力不足だそうだ。


少し可哀想ではあるが、命が何よりも大切だ。仕方ない。


そして、

『了斎』『俺』『雪村』


『雷煌』『美月』『翔斗』


『将英』『剛斗』『英太』


『火蓮』『霧島』『華城』


の四つの班に分かれて行動する。

これによって大幅に生存率が上がる。


将英「お互いに助け合って生き残るように」

全員が大きな声を上げた。

正直負ける気がしていない。


宰川軍兵士「おお! 椿(つばき)さんがいるぞお前ら!」

近くの武士たちがざわつきだした。椿とは誰だ?幹部か?


了斎「椿って誰だ?」と近くの武聞いた。

椿さんは宰川軍で最強のくのいちらしい。腐食の術を使うらしいが、術なしでも圧倒的な強さを誇るという。

そんなにすごい人ならひと目見ておけばよかった。しかも最強のくのいちなんて、絶対に美人だ!


将英「戦場で会うことがあるかもしれないな」

椿さんは人の上に立つことを好まないらしく、幹部にはならないそうだ。


俺「変わった人だな。俺は今すぐにでも幹部になりたいよ」

権力を振りかざす気持ちよさを一度味わってみたいものだ。


翔斗「清次、何を企んでる・・?」


宰川軍兵士「まぁ、良い志だと思うぞ」

幹部になりたいとは思っているが、実際に俺が幹部になって何をするというのだろう。

頭が切れるわけでもなく、特段人として優れているわけでもない。

俺のような人間に期待されるだけの価値があるのだろうかと度々思ってしまう。

そんな事考えても意味はないのだが。


雪村「清次さんと了斎さん、ちょっと三人で行動の計画を考えませんか?」と提案してきた。確かに三人の間でも細かい動きを決めておいた方がいい。


了斎「そうしよう。あとわしらのことは呼び捨てで構わんよ」


雪村「ありがとう、了斎」

それぞれの班で作戦会議が始まった。


 俺たちの班では、俺が地割れで先制し、穴にハマったところを了斎が炎で焼き尽くすということになった。

雪村は俺たちが失敗したときや危ない時に助けてくれる。


幹部「皆のもの、聞け!」


幹部「皆が知っての通り、山河軍との戦が今日始まる! そして、相手の軍は総勢八千人だ。我軍は候補生含めて六千! この人数差を埋めるために君たちには全力で戦ってもらう! 敗北は絶対に許さん!」

ありきたりな話だ。


幹部「次に山河軍についての情報を話すからよく聞け! まず、山河軍の大将、『山河慶次(やまがわけいじ)』についてだ。こいつは『天雷』という術を使う非常に厄介な奴だ」


華城「天雷・・・・か」

天雷は、落としたい場所にとてつもない威力の雷を落とすことが出来るらしい。

一番厄介なのは、目に入らないほど遠い場所でも雷を落とせるというところだ。


霧島「一方的に攻撃されるってことかよ・・・・」と頭を掻く。


幹部「また、山河軍は幹部も非常に強力な兵が多い! 情報が入っている三人について説明をする!」


幹部「まず『(まゆ)』だ! こいつは幻影の劇という術を使う! 基本的にこいつは自分の幻影を使い、混乱を招く! そして基礎的な戦闘能力も飛び抜けて高いから、遭遇した瞬間死を覚悟しろ!」


俺「死を覚悟しろって・・・・俺らに勝ち目ないじゃんかよ」


華城「いや、幻影を生み出す術には共通の弱点がある」

幻影には質量がないから足跡がつかないことを利用して、足元を観察して足跡がついていなかった場合は幻影と判断できるらしい。

確かに、甲冑を身に着けた武士が歩いて足跡がつかない訳がない。野原の場合、足元の草が動くかも大事だな。


将英「やっぱり凄いな。華城は」


幹部「次に『蔵兵衛(ぞうべえ)』についてだ! こいつは山河軍の最高戦力と言っても過言ではない! こいつは『水神』という術を使う。その名の通りこいつは水の神といって良い程、水の術に長けている」


了斎「わしの天敵のような術じゃな」とぼそっと言った。


幹部「蔵兵衛は水を自由自在に扱うことが出来る! 水刃、波の発生、水の発生による溺死など、水を使っての攻撃は何でもしてくる」


霧島「もう何でもありじゃねえかよ・・・・本当に俺たちは勝てるのか?」と不安そうにしている。

俺たち以外にも宰川軍には強力な術を使う武士がたくさんいるはずだから気負う必要はないのでは?


幹部「そして、蔵兵衛の最大の特徴は継戦能力の高さだ! 水を生み出すのは、炎を生み出すのに比べて体力の消費が少ない!」


了斎「どうしようもないな・・・・」と死んだ目をしていた。


華城「すまん。これは我にも対策方法が浮かばない」


剛斗「戦っていく中で学べばいいだけの話だ!!!!」


英太「剛斗、声が大きすぎる!」

悪い目立ち方をしてるな剛斗・・・・

 

幹部「最後は『羽音(はのん)』だ! こいつは亡霊の術を使う! だが、女ということもあり前述した二人ほどの戦闘力はないだろう!」

羽音の説明だけあっさりと終わった。


俺「女だから強くないという考え方は少し甘いんじゃないか?」


火蓮「基礎体力は男性に比べて少ないから仕方ないじゃろう」

火蓮に言われると何と返したら良いのかわからなくなる。


華城「最後にみんなに話がある」

華城が顔を上げた。


俺「お、なんだ?」


華城「この笛を渡しておく。これは結城殿がくれたものだ。幹部が現れたときや、危機的状況になったら鳴らせ。一つ一つ音が違うから誰が鳴らしたかを判別できるようになっている」


雪村「すごい! ありがとう!」と目を輝かせた。

可愛い。


華城「戦が終わったら結城殿に礼を言っておけ」


幹部「山河軍は山の麓にいる! いざ出陣だ!」

武士たちが大きな声を上げて走っていく。俺たちも着いていった。


了斎「わしらの初陣だな」

了斎が深い呼吸をして言った。


俺「ああ。必ず勝ち、必ず生き残ろう」

もう平穏な生活に憧れるのはやめた。この時代に生まれてしまった以上、武士になった以上、波乱万丈の人生を歩もう。

その第一歩がこの戦なのだ。

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