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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
天下統一編

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五十七話 悪人と悪人

雷煌「皆さん! 後ろ!!!!!!」

背後から斬りかかってきた敵を何とか抑えた。


わし「クソ、急に来たから自分の手も切ってしまった・・」

手のひらから血が出ている。


霧島「そんくらい耐えろ」


?「雑な罠だったよ・・本当に」


わし「まさかお前、さっきまでこの中に居た奴か?」


霧島「そういえば、木の中に残ってたのは甲冑だけだ。刀は無かった」


美咲「燃えカスは服が多少燃えただけってことね・・」


わし「よく抜け出せたな」


?「梶田四天王がこの程度で死ぬとでも?」

やはりか。


霧島「お前は四天王の誰だ? それが分かれば気兼ねなく殺せる」


?「忠次だ」

忠次は梶田四天王の中でも最古参で、梶田の第一の功臣だ。

そりゃあ一筋縄ではいかない訳だな。


わし「感謝する。皆、離れてろ」

霧島が皆を連れて瞬間移動してくれたので、わしは地面に火を放った。

このあたりは焼け野原になるだろうが・・勝てたらいいのさ。


忠次「そうだ、俺も君を気兼ねなく殺したい。名を教えてもらおうか」


わし「わしは了斎。早田了斎だ」


忠次「そうか。君の兄には会ったことがあるよ」


わし「わしの・・・・兄?」


忠次「名が何だったか・・確か」


わし・忠次「香座」

わしの兄は、両親が死んだ翌日にわしの元を離れて行ってしまった。

ずっと、『あんな奴のことは忘れてしまおう』と思っていた。なのに・・・・

気になる。香座が今どうしているか。

そして聞きたい。どうしてあの日、別れの言葉も言わず行ってしまったのか。


忠次「そうだ、思い出した。確か二年前・・いや、三年前だったか? 男気溢れる奴だったよ」


わし「どこで出会った? 何をしていた?」


忠次「落ち着け落ち着け。この熱くて仕方ない火を消してくれないと話せない」

忠次は敵だ。火を消した瞬間、すぐに反撃してくる可能性は?

でも・・知りたい。兄の行方を。


わし「・・わかった」

辺りの炎を自分の手元に集約させた。


忠次「脚が酷い有様になっちまった・・そんじゃ、話をしようじゃないか」

忠次が座り込んだ。正気か?

座ったところを見て、すぐに霧島たちが走ってきた。


霧島が忠次を斬ろうとする。


わし「待て!!」

霧島の手が止まった。


霧島「は? 火も消してどうしたんだお前・・」


わし「忠次がわしの兄に関する事を知っているんだ。わしは忠次と話をしたい」


美咲「信用できないね。その話を釣り針に私たちを仕留めようとしてるはず」


わし「分かってる。でも・・兄さんとは十年以上会ってないんだ。一回でいいから顔を合わせたい・・」


雷煌「・・分かりました。もし忠次さんが再び刀を持ったら僕がすぐに斬り捨てます。なので、それまで話をしてていいです」


霧島「雷煌はいつも甘いな・・・・わかったよ。好きなだけ話せ」


忠次「この南東に村がある。二、三年前に我が軍の武士が制圧のため村に向かったが、誰一人として帰ってこなかったんだ。違和感を覚えた俺が数人の武士を引き連れて村に向かうと、一人の男が槍を持って出てきてな・・話は通じる奴だったから帰ってこなかった武士について聞くと、『わしが全員殺した』と言ったんだ。村を襲われると確信して、槍一本で村を守りきったらしい」


霧島「お前、兄弟も強えのか」


わし「その後兄さんはどうしたんだ?」


忠次「俺たちは敵意がないということを伝えて、死んだ武士の遺体だけ持ち帰ったよ」


わし「どうして、そんなに遠い村に兄さんが居るんだろうか・・」


霧島「会って聞け。聞くことは聞いたし殺すぞ」

大抵の武士は相手の話を聞かずに殺そうとする。権力を持っていれば尚更だ。でも忠次は兄さんの話を聞いてくれた。

悪い人とは思えない。


わし「こんなに教えてくれたのに殺すのか・・・・」


美咲「仕方ないでしょ。良い人かどうかは関係ないよ」

わしの考え方が甘いと言われたらそれまでだけど、どうしても冷たく感じてしまう。


信雄「武士同士で決着をつけるのであれば、刀以外はありえません」


忠次「一度でも人を殺したことがあるのなら悪人だ。全員が悪人だ。仲間の死を嘆き、敵であれば躊躇なく罵声を浴びせ刀を振るう。これのどこが善人なんだ・・」

忠次の言葉は自虐にもわしらへの批判にも聞こえた。


霧島「善悪なんて単純な物差しでは何も測れないくらいこの世は複雑になってんだ。武士の使命は大将をお守りすること、それだけだ。他のことは考えなくて良い。余裕が生まれて、相手が良い人だから・・なんてことを考え始めるから辛くなるんだ」

もちろん、最大まで無駄を排除したらそうなる。模範的な武士はきっと霧島の言うような人なんだろう。


霧島「でもそんなの無理に決まってんだろ! たまたま敵になっちまっただけで殺す羽目になるんだ。少しでも立場が違えば仲良くできてたかもしれない。そんな相手を殺して何も感じずにいられるはずがねぇだろ」

気兼ねなく殺せると言ったが、霧島も人間だ。

好意的に接してくれる相手を殺して良い気がしないのも当然。


忠次「悪人なのは間違いないが、特定の人にとっての善人になることなら出来る」


信雄「大将ですね。ここで貴方に勝てば宰川殿にとっての善人になれます」


忠次「そして、それは俺も同じ」

信雄と忠次の剣戟が始まった。

だが、さすが信雄・・四天王に引けを取っていない。


雷煌「心を鬼にするって、こういうことなんでしょうか」

そう言い放ち、雷煌が刀を雷刀に変えた。


ああ、やる気なんだな・・


雷煌が忠次の背後を狙うが、軽々とかわされてしまった。


美咲「甲冑を捨てた分身軽だね」


わし「なるほど・・」

ということは、重い一撃にはめっぽう弱いということだな。


美咲は二刀流だから手数で攻める。だがわしは一撃一撃の重さで攻める。


美咲「私が気を引くよ」


霧島「俺も協力する。了斎がとどめを刺せ」

わしは体が小さいのも相まって刀に全体重を乗せやすい。きっと忠次を殺せるはずだ。


美咲「信雄、雷煌! 下がってて!」

忠次の攻撃は全く美咲に当たっていない。良いぞ、二刀流の防御力の高さが活かせているな。


信雄「ご武運を」

雷煌と信雄がわしの後ろまで下がってきた。


焦ってわしが突撃してはいけない、戦況を見極めよう。

今は駄目だ。忠次が十分に二人と戦えてしまっている。

なにか状況が変わる一撃を入れてくれ・・!


霧島「美咲!!」

どうやら、状況の変わる一撃を忠次が入れたようだ。


美咲「霧島、私の事はいいから!!」

美咲の二本の刀は、美咲の体に突き刺さっていた。


 気づいたら脚が動いていた。

今特攻するのは間違った判断だと分かっているのに・・・・


霧島「てめぇ、よくも・・!!!」

忠次が霧島を斬ろうとしたところで忠次の背中を突いた。


霧島「突きだと?」


わし「わしが一番得意なのは突きだ。きっともう忠次は動けない」


忠次「うぐっ・・ああ・・・・」

膝をついてもがき苦しんでいる。


わし「兄さんについて教えてくれて感謝する。ただ、善人はわしの方だったみたいだ」


忠次「ああ、そうだな・・・・・・」

霧島はすぐに美咲の方へ走っていった。


わし「今まで戦ってきた中で、忠次が一番強かったよ」


忠次「君の目指すものは何だ?」


わし「当然、天下統一だ。わしらにとってはそれも通過点なのだが」


忠次「そうか・・その若さで俺に勝てるほどの実力があるのなら、武士の未来は安泰だな・・・・」

忠次がみるみる弱っていく。


わし「負けて悔しくはないのか?」


忠次「悔しいさ。でも、俯瞰してみると、宰川軍が勝つほうがが武士全体にとって良いことなんだろう・・」


わし「宰川軍は、武士の未来を照らす光だ。わしは決して忠次の思いも忘れない!」


忠次「そろそろ、武士も世代交代のようだな・・」


わし「ありがとう」

忠次の首を斬った。


信雄「忠次さん、死にましたか」


わし「ああ」


雷煌「泣いてます?」


わし「泣いてはおらん・・!」


信雄「じゃあ、目元を流れているのは汗ですね。美咲さんが危ないので行きますよ」



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