五十六話 四天王
段々敵が減ってきた。昨日よりも順調だな。
獅電「清次、着いてこい」
どうして俺だけなんだ・・?
俺「はい!」
ひたすら走っていく獅電さんの背中を追った。
ずっと戦ってるのにまだ傷ひとつ付いてない・・やっぱり獅電さんは凄いな。
俺「どうして俺だけ連れてきたんですか?」
獅電「静かに」
俺「はい・・・・」
かなり動きが慎重になってきた。
一体何をするつもりなんだろうか。
獅電「あいつを見ろ。何か気づくことはあるか?」
獅電さんが指した先には、木の下で木の実をかじってくつろいでいる武士が居た。
俺「何してるんですかあいつ・・でも、身分は高そうですよ」
獅電「そうだ。あいつは梶田軍の侍大将、『忠勝』だ。梶田軍でも一番の精鋭である『梶田四天王』の一人だ」
そんな強敵のところになんで二人で来ちまったんだ・・
俺「そうなんですね・・それで、どうするんですか?」
獅電「言わないでも分かってるだろ、忠勝を殺す」
俺「二人で、ですか?」
もちろん、獅電さんを信用していないわけではない。ただ、大事をとって五人くらいで戦ったほうがいいと思う。
獅電「負けることはない。あいつは四天王の枠埋めと言っても過言ではない程度の武士だ」
とはいっても、今まで戦ってきた武士よりも強いことは間違いない。
俺「分かりました。行きましょう」
この大陸に獅電さんを超える武士が存在するとは思えない。きっと大丈夫だ。
なんて言って戦おうかな・・格好いい宣戦布告がしたいんだけども。
俺「おい! 木の実食ってるそこの兄ちゃん! 俺と遊ばねぇか?」
駄目だ・・一番格好悪い気がしてきた。
忠勝「えー・・面倒くさいから嫌だ」
そんな事ある・・・・?
忠勝は、かなり知的な雰囲気で体も小さい。前評判ほどの実力があるようには見えないんだが・・・・
俺「そんな洒落臭いこと言わずに・・・・」
戦は常に先手必勝だ。
亀裂のような地割れを起こした。
木ごと落ちていったぞ。もう死んだんじゃないか?
俺「獅電さん、多分あいつ死にましたよ・・」
そう言って獅電さんの方を向いた瞬間、忠勝が背後から現れた。
忠勝「こんなので僕を殺せると思ってるの?」
ギリギリのところで弾き返したが、殺されてもおかしくない距離感だった。
俺「危ねぇな・・わかった。これはお前と俺の勝負だ。獅電さん、一回下がっててくれませんか?」
獅電「俺も元々手を貸すつもりはない。一人で勝ってみせろ」
手を貸すつもり無かったのか・・・・
俺「さぁ、忠勝、どうする? 俺は決闘を申し込むぞ」
忠勝「面倒くさいし早く寝たいけど・・いいよ。やってあげる」
首を狙ってきたので、弾いて腹を蹴った。
忠勝「反応は早いみたいだね」
偉そうに。
俺「お前もよく蹴りに耐えたな」
忠勝は甲冑を身に着けていない。もろに蹴りを食らったと思うんだけどな・・
忠勝「ありがと」
正面から向かってきたので弾き返そうとしたら、忠勝がすぐに俺の背後へ移動した。
斬られそうになった瞬間、後ろに針を出した。
何とか守れたか・・
忠勝「ふうん、術を使って守るんだ」
俺「文句あるか?」
忠勝「無いけど、卑怯だとは思わない?」
俺「思わねぇな。術を含めて俺の実力だ。術も使えねぇやつが何抜かしてんだ」
少し獅電さんの視線を感じた。
忠勝「そっか」
そこから忠勝の動きが変わった。
今までの数倍は洗練されている。
まずい、このままじゃ・・
俺「クソ・・!」
すでに数回斬られている。
痛ぇ・・でも、ここで負けたら全て台無しだ。
久遠さんと出会ったときの事を思い出せ・・!!
そこら中から血が流れ出る。
忠勝「まだ諦めないの?」
俺「・・・・」
ただ、力いっぱい刀を握りしめた。
忠勝「どうして諦めないの?」
俺「俺はな・・武士であることに誇りを持ってんだよ」
忠勝「へぇ、格好悪いね。この時代を作った元凶は武士なんだよ?」
俺「は?」
忠勝「術師の支配下に加わって、一生下民として働いたら良かったのにさ」
俺「とことん気持ち悪い感性の野郎だなお前は」
忠勝「気持ち悪くて構わないよ」
俺「お前も武士になってる時点で同じなんじゃねぇか? 自分は他と違うなんて思ってるかもしれねぇけど、結局俺たちの本質は同じだ。武士が嫌いなら武士をやめれば良いんだよ」
忠勝「アハハ、勘違いさせちゃった? 僕は武士が好きだよ。一番好きさ。格好悪いところも、頭が悪いところもね。だからさ・・君には誇りを持ったまま死んでもらいたいんだ」
さらに数回斬られた。
俺「誇りも持っていねぇような武士に負けるわけがねぇ!!」
最後の力を振り絞って刀を振り続けた。
大丈夫、俺なら勝てる。
意識が朦朧としてきても問題ない。俺は目の前にいるこいつを殺すだけだ。
俺「お前が捨てた誇りは俺が背負って生きていく!!!!」
*
霧島「了斎、昨日華城が言ってたやつ覚えてるか?」
わし「梶田四天王とかいうやつか?」
霧島「それだ」
梶田軍の中でも精鋭中の精鋭らしい。
梶田軍兵士の平均的な強さからして、四天王はとてつもない実力者なはずだ。
信雄「この戦で勝つには、その四天王を倒すのが最低条件でしょうね」
困ったもんだ・・
美咲「ここには幹部が四人いる。何か予想外の事態が起こっても対応できるよね?」
雷煌「僕のこと忘れないでください!!!」
美咲「ごめんごめん、五人いるね。私たちで四天王を探さない?」
わし「既に四天王と戦っている人もおるかもしれん。途中で見つけたら加勢しよう」
美咲「そうだね。とりあえず、四天王の特徴に当てはまる人を探してみよう!」
五人で敵を討伐しながら前進し、四天王らしき人物を探した。
百人ほど殺したところで・・
霧島「あいつ、だいぶ特徴と一致してるな・・」
わし「どれだ?」
信雄「あれだと思います」
髭の生えた中肉中背の武士が見えた。
わし「確かに・・しかも、甲冑が他の武士とは違うな」
美咲「行くと決まればすぐ行くよ。さあ!」
四人で美咲の後を追った。
霧島「殺すためなら手段は選ばねぇぞ、まず霧で目眩ましだ」
霧島の霧で視界を一気に悪くした。
信雄「あの人を木で囲いますね」
八本の大樹で敵を囲んだ。
?「なんだ!!」
だいぶ焦ってるな・・しめしめ。
霧島に木の上まで移動させてもらった。
霧島「火を放て」
わし「ああ」
敵めがけて火を放った。
きっとこれで死ぬが・・念には念を入れる。
美咲「霧島、降ろして」
降りた後、雷刀で木を斬り、五人で内側に特攻した。
・・・・中には灰と甲冑しか残っていなかった。
美咲「だいぶ残忍な殺し方をしちゃったね・・」
雷煌「皆さん! 後ろ!!!!!!」




