五十五話 愛
あ・・・・?何者だ?
今ここにいるのは治療班と繭と羽音とオレだけ。
敵の実力次第では全滅もあり得る・・!
繭「可愛い子?」
親?
?「はぁ・・せっかく私が育ててあげたのに」
華奢な女だ。
強そうには見えねえけど!!
繭「言ってる意味がわからない」
?「私は濃霧衆の鶴歌」
気だるそうに女が言った。
オレ「忍者?」
鶴歌「そうだよ。戦が始まったって言うからどさくさ紛れにいっぱい殺してやろうと思ったのにさ・・なんですぐ殺しちゃうの?」
繭「ここは戦場だ。貴方の気持ちに寄り添う余裕はない」
繭が幻影を生み、戦闘が始まった。
そもそも、忍者が戦に混じってきてるのがおかしいんだよ!!
オレ「武士の邪魔をすんじゃねぇ!!」
その瞬間、オレたちの周りに結界が現れた。
オレ「何だこれ!?」
繭「落ち着いて、きっと伊海さんの術だ」
風雅「強敵が現れたら外部との干渉を断ち切るって言ってたっすね!」
そういう事か!
鶴歌の顔を殴ろうとしたとき、クナイを数発飛ばしてきた。
オレ「ハハ! こんなのがオレに効くとでも?」
羽音「自慢の筋肉密度のおかげで全然通してないね・・」
繭「もう大丈夫!!」
幻影を生み、鶴歌の背後に回り込んだ。
よくやった!このままオレが・・
鶴歌「残念、気配を察知するのは得意なんだ~」
繭が蹴り飛ばされた。
羽音「繭!!」
オレ「止まれ!!」
鶴歌が鎖鎌を取り出し、羽音めがけて振った。
羽音に当たる直前に鎌を掴んで鶴歌の方へ投げたから大丈夫だが、羽音は腰を抜かしている。
神楽「繭さん! 大丈夫ですか!! 羽音さんも!!」
オレ「しばらく一人で持ちこたえる! 安心してろ!!」
鶴歌「一人でそんな耐えられるの? そろそろ君、死ぬよ」
徐々に意識が薄くなっていく。
*
私「剛斗さん!!」
何故だ・・?今剛斗さんは何もされていなかった。
風雅「クナイっすかね・・?」
そうだ、クナイ・・!
クナイに毒が塗ってあったのか。
繭「もう大丈夫、わたくしが行く!」
繭さんが刀を抜いて走っていった。
剛斗さんの救出は私の役目だ。
鶴歌「首をわざわざ取られに来たの?」
鎖鎌をこちらに向けて振ってきた。
繭「刀の強力さを知らなかったのが敗因だ」
そう言って鎖を切った。
鶴歌「そんな馬鹿な!!」
繭「神楽、今だ!」
剛斗さんを抱えて風雅のもとへ走った。
風雅「解毒は出来ないっすけど・・」
私「とにかく傷口を直そう!」
まだ毒が完全に回っていないはずだ。今適切な対処をすれば助けられる・・!
繭「あ”ぁ!!」
声が聞こえた。
羽音「繭!!!」
繭は鎖で縛られていた。
私が立ち上がった瞬間、羽音さんが走っていった。
風雅「一人で行くのは危なすぎるっす・・!!」
ただ、私が行っても足手まといだ・・・・
晃牙「大丈夫か?」
結界を無視して入ってきた。
神楽「どうやって入ったんですか!?」
晃牙「空間を少しいじった」
そういえば時空術を使うって聞いたな・・
風雅「繭さんと羽音が危ないです!」
晃牙さんは「わかった」と言って鶴歌の方へ向かった。
*
鶴歌「また新しい噛ませ犬が来たの?」
相当な余裕。
持っている武器からして相手は忍者。
時間を少し操ったら簡単。
鶴歌がクナイを飛ばした瞬間、クナイの時間を巻き戻した。
鶴歌「どうして・・!?」
飛ばしたはずのクナイは鶴歌の手の中。
動揺するのも当然。
落ちている繭の刀を鶴歌が拾った。
鶴歌「わかった・・刀で決着をつけよう」
剣戟が始まるが、決着は一瞬。
当然。普段から刀を使っている俺に勝つ事はできない。
神楽「晃牙さん!! 倒したんですか?」
俺「倒した」
風雅「繭さんは大丈夫っすか?」
俺「鎖で首を縛られた。おそらくもう死んでいる」
口からいろいろな物を吐き出してしまっている。
羽音「繭・・・・」
神楽「ものは試しです。二人で一旦治療してみましょう」
二人が手を当てて暫く経っても、変化はない。
神楽「治りませんね・・」
剛斗「倒したか!」
すっかり元気。
俺「倒した、ただ、繭、おそらく・・助からない」
剛斗「死んじまったか・・!?」
繭「羽音・・・・・・」
声が出た。
羽音「繭! 大丈夫!? 今すぐ華城さんたちも呼んでくるから!!」
繭「違う、羽音・・・・」
羽音「違くない! 今すぐ呼ぶから! 大丈夫だから!!」
俺「少し話、聞いてやれ」
繭「ありがとう、晃牙さん・・」
羽音「どうしたの・・?」
繭「愛してる」
良かった。伝えられたか。
羽音は静かに泣き続ける。
俺「結界、ある。ここ安全。神楽、風雅、剛斗、結界から出る」
剛斗「晃牙さんは出ないのか!」
俺「俺、居ないと、羽音、出られない」
風雅「確かにそうっすね・・じゃあ、晃牙さん、俺たちを出してくださいっす!」
三人を出し、結界の端で繭と羽音を見守った。




