五十四話 梶田軍攻略
久遠「なにか問題が起こらない限り、明日に梶田軍の根城に到着できるだろう」
ようやくか・・
今まで戦の前に不安を感じたことはなかったんだが・・今回はなんだか不安だ。
まぁ、適度な緊張感は必要だと獅電さんに言われた。このままやっていこう。
霧島「伊海の結界は活用しねぇのか?」
美月「確かに気になるわね」
ただ、術を封じる結界を作ったところでこちらの術も封じられてしまうのでただの戦になるだけだ。
それなら結界を作らず、術を扱って戦うほうが良いのでは?
伊海「外部からの干渉を不可能にする結界がございます。そちらを使うことで安全に戦うことが出来るかもしれません」
そんな結界もあるんだ。
宰川「なるほど。敵軍幹部との戦いでは外部からの干渉を封じるために使えそうだ」
俺「お、良いじゃん」
久遠「軽っ・・・・
華城を中心に戦略を練り続け、朝飯を食べてから数時間が経っていた。
久遠「そろそろ出発しないと明日に響く。さっさと出発しよう」
宰川「そうだな」
移動を続け、梶田軍の根城を発見した。
真栄田が居なくなったことで、遠くの城に気づけなくなってしまった。
だいぶ近くまで来ちまったな・・・・
俺「今日中に着くとはな・・どうする?」
華城「ここで寝るのは危険だ。かといって引き返すわけにもいかない」
獅電「夜戦だ」
また夜戦か・・・・旧与根川軍防衛線に続いて夜戦が多いな。
宰川「問題はない。了斎、鏑矢を放て」
了斎が鏑矢を放った。
きっと、この戦が一番の山だ。この戦で俺はきっと仲間を失う。
将英「この同期の十人が揃うのはこの戦で最後かもしれないな」
了斎「縁起でもないことを言うな。きっと大丈夫さ」
大丈夫だといいが。
こちらも陣形を組み、敵が揃うのを待った。
梶田軍兵士「うぉぉぉ!!」
なるほど、基本的な戦い方は濱田軍と変わらない。
最初に槍部隊が特攻してきた。
了斎「まずは槍部隊か・・・・っておい! こいつら炎を全部!!」
了斎と火蓮の飛ばす火球を、槍部隊の全員が避けた。
俺「まずいな・・」
地割れを起こし、こちらに突っ込んでこれないようにした。
俺「蒼月、雷煌、久遠さん!!」
三人が一斉に雷を落とし、轟音が鳴り響く。
いくら梶田軍とはいってもこれなら・・・・
雷煌「僕たち今・・雷落としましたよね?」
久遠「ああ、間違いなく」
敵が全く死んでいない。
何が原因で雷が効かなかったかは分からないが、攻撃を絶やしてはいけない!
獅電「風刃はどうだ?」
将英が風刃を放ち続けるが、全て槍で受けられている。
豊「正々堂々、刀でやり合おうということじゃな・・」
と言って、豊さんが敵の方へ走っていった。
俺「おい大丈夫か爺さん!!」
獅電「俺も行く」
流石だ。鍛え上げられた梶田軍も、獅電さん相手には全く戦えていない。
俺「俺たちも行くぞ!」
乱戦が始まった。もはや陣形など無いものになった。
でも大丈夫だ。
鍛えられているとはいえ所詮豪の武士と同等。俺たち幹部には太刀打ちできないはずだ!
俊平「清次! これに登って!」
俊平が岩を指さした。
俺「わかった!」
岩をよじ登り、敵の届かないところで針を出し続けた。
剛斗「危ねぇぞ!!!」
槍で突こうとしてきた敵を剛斗が殴り飛ばした。
そうか、槍だとここまで届いちまう・・
俺「剛斗! そこの針を再利用しろ!」
剛斗「よっしゃぁ!!!」
剛斗が針を投げ、敵を薙ぎ倒していく。
蒼月「清次、亀裂のような地割れは起こせるでござるか?」
俺「わからない! やったことない!!」
蒼月「やってみるでござる!」
俺がいつも起こすのは網目状の地割れだ。亀裂のような地割れは使わない。
だが、蒼月にはきっとなにか策がある。やってみよう。
俺「どうだ!?」
蒼月「よくやったでござる!」
蒼月が強風を巻き起こし、亀裂に次々と敵を落としていった。
繭「よし! こっちこっち!」
繭はかなり余裕そうにしている。流石の戦闘力・・・・
二時間ほど合戦が続いた。
宰川「退けー!!!!」
今日はここまでだ。無理やり今日終わらせるのは危険なので、明日もう一度攻めに来る。
華城「おそらく敵は追ってこない。あいつらの方が苦しい状況だろうからな」
俺「そうか」
馬で二十分ほど走ってきた。
華城「おそらく、今日殺したのは二百人ほどだ」
少ない・・・・
了斎「あいつら、術への耐性が極端に高い」
風刃も炎も雷もほとんど効果がなかった。
伊海「それも当然と言えます。星武の乱で武士陣営の中心は梶田軍でした。術師との戦の経験を元に、ずっと術への対策をしてきたのだと思います」
俺「そういえば、梶田軍に術を使うやつは居なかったな」
伊海「ええ。術への耐性とひたすら高め続け、術を使わずして戦う術を身に着けたのが梶田軍です」
華城「きっと明日はもっと対策をしてくるだろう。今日はただの試運転のようなものだ」
将英「きっと、直接攻撃をするような術は梶田軍に通用しない。地割れや繭の幻影のように、間接的に攻撃をする術のほうが有効だ」
華城「今までよりも頭を使って戦うようにしろ。蒼月、亀裂に風で敵を落とすのはかなり良かった」
蒼月「清次のおかげでござる」
俺は蒼月に言われた通りやっただけなんだけど・・・・
宰川「明日もやることは変わらない。とにかく敵の数を減らす。強敵が現れたら笛を鳴らす。以上だ」
全「了解!」
ふさふさの草の上に寝転がり、俺たちは眠りについた。
・・・・朝だ。
今日は俺が一番乗りか・・・・すっきりしたいし、近くの川にでも行ってこよう。
澄んだ川の水は、見ているだけで心が浄化される。
体を軽く水で流し、魚を何匹か捕まえた。
春日「あれ、清次じゃん!」
俺「春日も早起きか」
春日「体洗いたくてさー」
俺「じゃあ、俺はあっちに行ってるので洗ってていいですよ」
春日「え? 私気にしないから良いよー」
俺が気にするんだよ。
春日さんが体を洗い終わったので、二人で魚を捕まえ始めた。
春日「これさ、私の鋼糸で編み作ったらもっと簡単なんじゃない?」
俺「やってみて」
網で次々と魚を捕まえていく。
俺「これで全員分くらいはありそうだ。皆のところに戻ろう」
戻ると、半分くらいの人は起きていた。
俺「魚捕まえてきたから、朝飯はこれでいいんじゃないか」
蒼月「美味しそうでござるな」
木の枝に火をつけ、串に差した魚を一人一匹ずつ焼いた。
霧島「火蓮ー、火力弱くないか? 全然焼けないぞ」
火蓮「妾のをやる」
火蓮は意地悪だが、結構優しい。
魚を食べ終わった。
華城「では、また二十分ほどの移動だ。気を引き締めていこう」
根城に再びやってきた。
俺はかなり術に頼った戦い方をしてきた。
だが、武士としての誇りを捨てたわけじゃない。
武士になってからの一年と数カ月間、鍛錬をしなかった日はない。
そして、それは同期も同じだ。術が効きづらいからって負ける訳にはいかない!
剛斗「オレが全員やってやるぜ!!!」
剛斗が一人で特攻した。
今までなら止めていた。だが、お互いの信頼も日に日に厚くなっている。きっと大丈夫だ。
美月「アタシたちも行くわよ!!」
全「おう!」
再び乱戦が始まる。
豪の武士「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
梶田軍兵士「おいおい、何ボーッとしてんだ」
八人の敵に囲まれた。
俺「ボーっとしていたわけじゃない。待ってたんだ。君たちが集まってくるのをな」
針を出し、八人を同時に刺した。
梶田軍兵士「ぐぁぁぁぁぁ!!」
また血の雨が降り注ぐ。これを浴びるのは少々心が痛むんだよな・・・・
梶田軍兵士「よぉ! よくやってくれたじゃねぇか」
さっきよりも強そうな奴が出てきた。
俺「先程の木偶の坊よりは強いみたいだな。でも先程は八人、今は六人。本気で勝てると思っているのか?」
梶田軍兵士「俺たちを舐めんじゃねぇ!!」
中々度胸のある奴だ。囲んでこないとはな。
俺「その気概に応えて、俺も術を使わずに戦ってやろう。格の違いというものを見せてやる」
まず一人目の喉元を切り裂いた。
俺も吹き飛ばされちまいそうな量の血が噴き出る。
俺「きったな・・最悪」
梶田軍兵士「この野郎ぉぉぉぉ!!!!」
お、まだ来るのか。
向かってきた奴の指を噛みちぎった。
梶田軍兵士「う、うあぁぁぁぁ!!」
俺「どうだ? 斬られるより痛いだろ」
楽にしてやるために首も斬った。
残るは四人。
梶田軍兵士「貴様が強いのはよくわかった。だが、貴様には致命的な欠点がある」
俺「そうか。別に教えてくれなくていいよ」
口元を切り裂いて何も喋れないようにしておいた。
残るは三人か。
梶田軍兵士「化け物だ! 三人で行くぞ!」
三人できてくれるのであれば都合がいい。
時間もかからないしな。
三人の胴を斬った。
俺「良い動きだった。相手が俺じゃなかったらいい勝負だったかもな」
*
華城「どう思う? 宰川殿」
俺「やはり、清次を軍に特例で入れた判断も、幹部にした判断も間違っていなかった。しばらく注目していなかったが、獅電と張り合えるほどの実力になっている」
華城「あぁ、我もそう思う」
類稀なる才能と努力の賜物だな。
*
ハハ!! 梶田軍が強いのは確かみたいだが、オレに勝てるような奴は居ねぇか!!
梶田軍兵士「刀の使い方も知らないガキに負けるはずが・・」
オレ「うっせぇ!」
構えている刀ごと殴ったので、手から血が出てきちまった。
オレ「神楽!! 助けてくれ!!!」
走って神楽の方に向かった。
神楽「あらら・・無茶な戦い方は控えてくださいね」
オレ「お、おう・・・・!」
?「私の可愛い子たちをいじめてくれたのは君たちですか・・・・」




