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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
天下統一編

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五十三話 全力寄り道

 夜飯の準備中、俺たちはやることがなかったので極限まで快適な野宿環境を整えてみることにした。


霧島「信雄が生やした木を剛斗が抜き、美月の光刀で斬れば丸太の椅子の完成だ」

こういうしょうもないところでやたら頭が働くんだよな・・・・


俺「完璧じゃねぇか・・やってみてくれ」

信雄が木を生やすと、剛斗が根本を蹴って木を倒した。

本当に軽々やったな・・


美月「半分にしてからのほうがいいわよね・・こうかしら?」

月華流で舞い上がり、木を立てに真っ二つにした。

その後五等分に斬り、椅子が完成した。


翔斗「これだけでも地べたとはだいぶ違うな」


霧島「だろ」

より快適にするには何が大事か・・・・

そうだ、石畳!


俺「俊平! 地面を硬化させて石畳みたいに出来るか?」


俊平「出来ると思うけど・・・・」

周辺の草が消え、地面が石に変わった。


了斎「これは石畳とは呼べないな」

だんだんいつもの調子に戻ってきていた。

俺たちが馬鹿すぎて飲み込まれたみたいだな。いいことだ。


美咲「皆、もっと思う存分水が飲みたいんじゃない? 私の水術で井戸を作ってみたいの」

また狂った提案だ・・・・

だが気になってしまったからしょうがない。やろう。


風雅「でも地面掘れないっすよね」


霧島「俺の術で土は操作できる。もうここに深い穴を掘っておいたぞ」

仕事早っ・・・・・・!


華城「桶はどうするんだ? 桶がなければ作れたところで水を上げられない」


俺「それはもう・・華城の知識に任せることしか出来ない」


華城「は?」


春日「私の糸で上げ下げはできる! でも桶ってどう作るの?」


美月「また木を切るの・・?」

だんだん呆れ始めていた。


俺「たくさん水飲みたいだろ・・?」


美月「仕方ないわねー」

木をいい感じに切ってくれたので、器用な華城と神楽が急ごしらえの桶を作ってくれた。


剛斗「井戸づくりは任せろ!!」

俊平の出した岩を砕き、泥で破片をくっつけ始めた。


剛斗「乾かねぇ!!!」


将英「風刃術で良いんじゃねぇか?」

風刃による強風で一気に乾かした。思っても居なかった活用法だ。


なんやかんやあって、井戸が完成した。


美咲「底に水が湧くようにしてるから、いつでも飲めるよ」

すごい!!


火蓮「ちょうど喉が渇いておった」

美咲の生み出す水は冷たく、最高に美味かった。


獅電「・・・・俺も飲む」


華城「後は寝床だけか。草を敷いてその上に寝るなんて御免だぞ」

十年野宿を続けた身としては、むしろその方が落ち着くんだがな。


獅電「柱を立て、布を張らせる。春日の鋼糸で固定すれば人が寝ても落ちないはずだ」


信雄「その柱は?」


獅電「信雄が生み出した木で作る」


信雄「今日だけで何本を木を生やすんですか・・・・」


美月がぐったりしていたので、獅電さんが光刀でひたすら木を切った。


俺「柱は完璧ですね」


霧島「布なんてねぇぞ。どうすんだ?」

何故俺たちはそれに気づかなかった。


春日「私の鋼糸があるでしょ!」

確かに布をその糸で作れば!!


翔斗「織り機など無いぞ」

あーもう・・・・


春日「術でやるんだから、織り機なんていらないよ!!」

瞬く間に人二人分ほどある布を春日が作った。


全「すげぇ!!!」

どうやってるんだ!?!?


春日「凄いでしょ! 私は凄いの!!」

調子に乗りすぎているが。


全員分の寝床が出来た。

年長組以外は基本的に二人で一つだ。


雷煌「凄く良いですけど、こんなの毎回は出来ませんよね・・」

作業を初めて二時間ほど経っていた。


俺「たまに気が向いたらやろうぜ」


雷煌「ですね」

そう言ってにこっと笑った。


蒼月「夕飯、出来たでござるよ。順番に取りに来るでござる」


いろいろあって疲れたので、さっさと飯を食って俺たちは寝ることにした。


俺「よいしょ・・あっ・・・・・・」

寝心地が良すぎる。気持ちいい・・・・

これはやめられない。毎回作ってもらいたいくらいだ。


了斎「何だこれ・・布団よりも良いんじゃないか?」

本当にそう言っても過言ではないくらいに気持ちいい。

頬を撫でる程度の夜風も非常に心地いい。これが天国か・・


気絶するように俺たちは眠りについた。


剛斗「朝だ朝だ朝だ朝だ朝だ朝だ!!!!!」

・・・・・・最悪の目覚めだ。


俺「分かったから!!!」

今日からもう梶田軍との戦に向けて移動を始めなければならない。

今回も一週間ほどの長旅になるそうだ。


蒼月「朝ごはんは昨日の余り物でござる。少ないが、食べるでござる」

まあ、一晩放置したらこんなもんだよなといった程度の朝飯を平らげ、宰川殿の話を聞き始めた。


宰川「伊海からの情報が真実だとすると、梶田軍との戦いは今までの比ではないほど過酷な争いになると思われる。全く隙のない作戦を立てるべきだ」


霧島「情報はあるのか?」


久遠「伊海殿からの情報がある」


伊海「軍勢は八千人ほどで、人数は中堅と言えます。ただし、先日も申したように一人ひとりの鍛え上げられ方が尋常ではなく、戦闘特化の軍です」

 

華城「弱点は?」


伊海「戦略の甘さでしょう。我軍も何度か戦火を交えたことがありますが、大きな損失は出さず引き分けで終わっております」

逆に言うと、甘い戦略でもやっていけるほどの武力ってことか。

中々楽しそうな相手じゃないか?


久遠「今までは短期決戦を基本理念としてきたが、今回はじわじわと削る戦になるだろうな」


華城「ああ。それが一番の有効打だ」

こちらは誰一人死人を出さず、攻撃しては引いてを繰り返すことで相手を徐々に弱らせる。

かなり卑怯な戦術だが、正面衝突で勝てないことが分かっているのなら、知恵を使うまでだ。


宰川「豪の者は数人で一人を相手するように。とにかく生存が大事だ。そして今回の戦では神楽と風雅も出陣する。動き回って助けてもらうからな」


神楽「もちろんです」


俺「この二人を出すのは危ないんじゃないか?」


久遠「この二人には繭がつくから安心しろ」

一人で数人分の活躍ができる繭なら、きっと大丈夫だ。


風雅「お願いします、先生!!」

もうすっかり師弟関係だな。


霧島「あ~、喉乾いた」

とぼやきながら井戸の方へ歩いていった。

自由人すぎる。


久遠「そういえば、美咲が水を出せばいいのに何でわざわざ井戸まで作ったんだ?」


美咲「皆が喉乾く度に私が術使うの面倒じゃん」

美咲はあっけらかんとしている。

意外と変わった人だよな。


宰川「陣形を変えるべきだと思うか?」


久遠「そうだな・・治療班の動き方を変えたからまとめて変更するべきだと思うが」


獅電「練り直そう」

果たして、俺一人で梶田軍の何人と渡り合えるのだろうか。

そこがわからないと引き際が判断し難い。


華城「我は治療班のみの変更で問題ないと思うが」


宰川「何故だ?」


華城「精鋭だけに絞ったこともあって陣形が結果に与える影響は小さくなっているといえる。今改めて陣形を組む必要はない」

確かに、結局自由に動けるしな・・


豪の武士「複数人で固まって戦うと言っていましたが、私達はどのような位置につけば宜しいでしょうか?」


将英「前線には立たなくて良い。幹部に任せておけ」


豪の武士「はっ!」

困ってたら助けてもらいたいくらいだな。

正直、戦力としては豪はおまけ程度だ。


久遠「気になる点があったら随時質問をするように。では出発するぞ!」


全「了解!」


馬に乗って移動を始めた。

一週間か・・別に刻一刻を争う状況ではないので、やりたいことはやって良い気がしている。

できるだけ早く天下統一したい、というだけだ。


という考えに至った結果・・・・・・


俺「おい! あの町超でけぇぞ! 寄ってこうぜ!!」


了斎「馬鹿、そんなことしている暇があるか」


宰川「いや、あるぞ」


了斎「え?」


宰川「ここまで発展している町も珍しい。何か俺たちにとって利となる出来事が起こるはずだ」

やっぱり宰川殿、様々だぜ・・・・


久遠「験担ぎでもしていくか!」


 町に入ろうとすると、すぐに警備員に目をつけられた。当然である。

海に近い町はこんなに家の様式が違うんだな・・木造の家が殆どないぞ。

きっと、食べ物も上手いはずだ。


警備員「そんな大勢で来て、何をするつもりだ?」

かなり怪しまれてるな・・


宰川「旅の途中でいい町を見つけたんでな。買い物だけして去るつもりだが、他にも気になるところがあれば見て回ろうと思っている」

半分嘘、半分本当といったところか。


警備員「なにか問題が発生した場合、直ちに処罰する。行動には気をつけろよ」

お、意外と簡単に入れるんだな。

まぁ、俺たちも悪いことをするつもりはない。問題など起こらないだろう。


宰川「各自で好きに回って良いが、三時間経ったところでここに戻ってこい」


全「了解!」


俺は同期組と回ることにした。


火蓮「とにかくご飯じゃ」

その通りだ。


華城「どの店も美味そうだ」

ハズレは無いだろうが、だからこそ迷ってしまう。


翔斗「食に関してはおいらに任せておけ。見極める力はあるはずだ」

この体型の翔斗が言うと説得力がある。


しばらく見て回った結果、翔斗が『ここだ』と言った店で食うことにした。


俺「これとこれを・・・・」


全員の注文が終わり、目の前に料理が並んだ。


雷煌「美味しそう!!!」


了斎「なんだこれ・・本当に食って良いものなのか?」


美月「とりあえず食べるわよ」


全「いただきまーす」


まずは一口。


俺「あむ・・・・・・・・うまい!!!」

名前も分からない料理だが、とてつもなく上手い。


霧島「元の食生活に戻れる気がしないな・・」

たまには贅沢も良いもんだな!


互いの料理を一口ずつ食べ合っていると、すぐ料理が無くなってしまった。


全「ご馳走様でした!」


了斎「ふぅ~満足満足」

腹がはち切れそうだ。


華城「金はこれでいいか?」

銅貨を出すと、料理人が驚いた顔をした。


料理人「どこの通貨だこれは?」

まさか・・やったか?


翔斗「通貨が・・・・違う?」


料理人「これはこの町では使えないな」

やったなこれ。


剛斗「どうすんだ!! 食い逃げするか!?」

言ってしまったせいでその選択肢が潰れたじゃないか・・・・


華城「少し待っておけ」

華城が走って行ってしまった。

追いかけようと思ったが、追うと本当に食い逃げになってしまう。


料理人「お金を調達しに行ったのか? まあいい、待っておこう」

うーん・・かなりまずいことになってきた。


火蓮「どうしても払えなかったら、清次を差し出そう」


霧島「清次一人じゃ足りないだろ」

どういう意味だよ。


一時間ほど待つと、華城が袋を持って帰ってきた。


華城「はい、支払いはこれでいいか? もちろん釣りはいらん」

だいぶ良さそうな硬貨を料理人に渡すと、料理人が腰を抜かした。


料理人「こんなにもらって良いのか!?」


華城「知らん。とりあえず一番良さそうな硬貨をやるから我らは帰るぞ」


料理人「も、もちろんだ!」

一体何をしたんだ華城。


将英「その袋は何だ?」


華城「刀を売った」

え?


俺「ん・・? でもお前、刀持ってるだろ」


華城「ああ。刀を売った金で色んな人に賭け事を仕掛けた。それで巻き上げた金がこれだ。ちなみにその金で新しい刀も買った」

何してんのこいつ。


翔斗「馬鹿だろ・・・・・・」


華城「我が居なければお前らは今頃泥棒だぞ」


俺「それもそうだけど・・」

そもそも賭け事でそんな勝てるもんか・・?

知恵を生かしたのか?


将英「これ以上この町にいるのはまずい気がする。宰川殿のもとへ戻ろう」

面倒事が起こる前に逃げればいいだけか。

もうこの町に来ることは無いだろうしな・・


余った金を困っていそうな人たちに全て渡し、宰川殿のところへ戻った。


宰川「戻ってきたか。獅電達はまだだ」

久遠さんと獅電さんはまだ出かけているようだ。


霧島「何してんだろうなあの二人」

正直気にはならない。


久遠さんたちも帰ってきたところで、俺たちは移動を再開した。


宰川「飯は美味かったか?」


剛斗「おう!」

海外との貿易を本格的に検討したくなる味だった。

それをするのは天下統一のあとか・・


獅電「良い酒だった」


雷煌「やっぱり飲んでる・・・・遅さ的にそうだと思いましたよ」

久遠さんも若干顔が赤くなっている。


その後の六日間は、寄り道の分を取り返すかの如く全力疾走で駆け抜けた。

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