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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
天下統一編

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五十二話 煙と共に浮かぶもの

 臨戦態勢の皆が俺と了斎のところへ集まってきた。

 

華城「どうした?」

宰川と久遠も来ていた。


俺「真栄田と濱田の一騎打ちにより決着がついた。連合軍の勝利だ」

 

宰川「一騎打ちなんて危険な真似をよくも・・・・真栄田が勝ったのか」


久遠「ここには真栄田は居ないようだが・・まさか、自慢しに行ってるんじゃないだろうな?」

・・・・説明しがたい。


俺「真栄田は一騎打ちの末、死亡した」


華城「何だって?」


久遠「待てよ獅電、助太刀には入らなかったのか?」

もちろん、助太刀に入るか最後まで迷っていた。


俺「・・・・一騎打ちだ。俺は真栄田の決断を尊重したかった」

真栄田が負ける可能性も考えていたが、あそこまで覚悟を決めている人間を止めるのは失礼だ。

それなら、生き様を貫いて死んでもらいたかった。


宰川「了斎、辛いのは分かる」

俺の足元で了斎はずっと俯いて座っている。


了斎「助けても良かったんじゃないか・・・・?」

震えた声で言っていた。


俺「真栄田は前々から自分に劣等感を感じていた。あいつはここでけじめを付けたかったんだろう」

真栄田は、俺だけに傍観者としての過去を語っていた。

確かに格好悪いと思ったし情けないと思った。

その情けない野郎があそこまで腹をくくっているのをみると、止めることなんて出来なかったんだ。


華城「終わった後で『ああしたらよかった、こうしたらよかった』と言うのは簡単だ。重要なのは次に同じような状況になった時、悔いの残らない選択が出来るかどうか」


宰川「俺が濱田の首を持って城へ行く。集まった皆への説明は獅電に一任する」

そう言って宰川が城まで馬で走っていった。

真栄田がこの旅の何処かで武士としてのけじめを付けようとしているのは分かっていたが、初戦でやるとは・・・・


      *


 三門目の大砲を破壊したあと、笛の音が聞こえた。


俊平「何かが起こったみたい。行こう!」

すぐに笛の方へ走り出した。


俺「華城!! 何があった?」


華城「真栄田と濱田が一騎打ちをした。結果は見ての通りだ」

華城の指さす方を見ると、真栄田が血を流して倒れていた。


俺「・・・・真栄田?」

死んだのか?


俺「真栄田が負けたのか? 一騎打ちで?」


獅電「戦は我々の勝利、一騎打ちは引き分けだ」

両方とも死んだのか・・・・


了斎がずっと膝を抱えて座っている。


俺「泣いてんのか? 了斎」

確かに衝撃的だが。


了斎「泣いてない」

目の周りが真っ赤だ。

まぁ、深くは追求しないでおこう・・・・


俺「立て、了斎。その座り方してっと体痛めるぞ」

手を持って了斎を立たせた。


美月「宰川殿は今どうしてるの?」

普段と全く変わらない調子で言った。

本当に美月ってどんな事態でも動じないよな・・・・


獅電「濱田の首を持って城に向かった。勝利宣言だ」


俺「それにしても、初戦で一騎打ちを仕掛けて死ぬとかアイツ無責任すぎんだろ」

残された部下の気持ちも考えてやれよ。いつまでも自己中心的なやつだな・・


俊平「宰川軍と真栄田軍の終わらない戦いに今、決着がついたね・・」


春日「元々私たちは勝ちなんて思ってなかったよ」

背後から春日たちが現れた。


豊「そうじゃな。度量も能力も宰川に負けておったわい」


獅電「きっと、元々真栄田は分かってたんだ。真栄田軍の兵士を宰川に預けた方がいい方向に向くとな。だが、その提案を宰川が断ることも分かっていたはずだ。だから死をもって俺たちにその意志を伝えたんだ。こうなることは決まっていたのかもしれない」

真栄田・・・・馬鹿。

本当に本当に馬鹿。

不器用すぎんだろ・・こんな伝え方はあんまりだ。

責任感はあったのかもしれない。部下を思う気持ちも持っていたのかもしれない。

でも、皆を悲しませないでくれよ・・・・こんな序盤で。


晃牙「俺たちは今後も君らに協力する」


春日「悪いね、うちの馬鹿大将が迷惑かけちゃって」

さっぱりしてるな・・でも、


俺「自軍の大将をそんな悪く言わないでほしいな。自分自身のためにも・・」


華城「いつまでも我らは真栄田の敵で居てやる。だからお前らはいつまでも真栄田の味方で居てやってくれ」

慰める訳では無いが、いつも華城の言葉は俺らの心を救ってくれる。

 

久遠「優しいんだな、華城」

久遠さんはかなり寂しそうな顔をしていた。

元気だして欲しいが・・この状況では無理があるか。


戻ってきた皆に獅電さんが説明し、宰川殿も戻ってきた。


濱田軍兵士「一騎打ちなんて聞いてねぇぞ・・」

宰川殿が連れてきた兵士が言った。


獅電「文句なら真栄田に言うんだな」

一気に兵士の力が抜けた。


宰川「これからこの地は連合軍のものだ。統治者を今後ここに呼ぶからそいつらの指示に従うように」


伊海「真栄田殿は後ほど私たちで弔いましょう」


将英「真栄田が居なければ宰川軍は落ちぶれていく一方だったはずだ。最大の天敵の存在があったからこそ強さを維持できた。大切な存在だし、感謝するべきだ」

将英の言う通りだな。


 俺たちは戦場を出発して、夜になるまで走り続けた。

もう少し感傷に浸っていたい人もいるかもしれんが、俺たちにそんな時間はない。

 

華城「今日はここで寝泊まりをするとしよう。広く見晴らしもいい」

草原の真ん中に俺たちは止まった。


雷煌「まずやるべきは・・」


獅電「真栄田の火葬だ」

了斎が木とともに真栄田の遺体に火をつけ、激しく燃え上がった。


今までありがとな、真栄田。お前の意志は俺たちが継ぐよ。


宰川「お前の残した財産である部下と娘は俺と伊海に任せておけ。必ず守り抜く」


煙をしばらく眺め、日が沈み始めていることに気づいた。


蒼月「豪の皆と拙者は夕飯を作ってくるでござるよ」

そう言って蒼月が立ち上がった。

すっかり蒼月は料理長のような立ち位置になってるな。


火蓮「清次は平気そうじゃが・・悲しくはないのか?」


俺「俺は所詮クソだからな。そういうとこの感情が欠落しちまってんだ」


霧島「雪村たちが死んだときはあんだけ悲しんでたのによく言うもんだな」

げっ・・


俺「霧島が一番平気そうだな」


霧島「今更人一人が死んだところで何が悲しい? この戦でも何百人、何千人が死んでるんだ。そいつらの命を軽く見るなよ」


翔斗「そうだな・・」


宰川「次の戦は・・」


華城「梶田軍だ。伊海軍の隣に位置する軍だな」


久遠「強さとしてはどうなんだ?」


伊海「間違いなく格上です」

そんな断言できるほど強いのか?


宰川「具体的にはどういった感じだ?」


伊海「人数が多いのはもちろんですが、一人ひとりの熟練度が違います。豪の武士よりも強い人が何千人もいるようなものです」


美咲「駄目じゃん・・」

長期戦になるのも覚悟すべきだな。


宰川「そうか」


真栄田の死を悔やんでいる暇は無いようだ。

今回以上の犠牲を出す戦がこの先に待ち受けている。


獅電「ここが正念場だ。力の温存など考えず全てを出し切れ」


全「了解!!」



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