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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
天下統一編

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五十一話 代価

 天下統一に向けての初戦となる濱田軍との戦に向かう。


俺「華城、ここから濱田軍の根城までどれくらいかかりそうだ?」


華城「今まで通りの速度で行くと二日だ」

これが短く感じるようになってしまった。だんだん麻痺してきたな・・・・

ちなみに、濱田軍には宣戦布告済みだ。今頃せっせと戦の準備をしているだろう。

濱田軍の特徴は、豊富な遠距離攻撃手段だそうだ。

海の近くに位置していることもあって鉄砲を所有しており、城を囲むように大砲も配置されているらしい。

そして弓で狙撃するための盾が大量に配置。まあ、地割れで全て崩すとしよう。


久遠「最も注意すべきは大砲ということは言うまでもないが、鉄砲にも気をつけろ。狙撃手という役職を設置している以上、射撃の腕は間違いないはずだ」

弓は一発じゃ人を殺せない。だが、鉄砲は一発で命を奪ってくる。

大砲の破壊の次は鉄砲を持つ奴らを殺すか。


俺「とにかく、遠距離攻撃出来る奴らを先に処理すれば良いんだろ」


華城「そういうことだ」


 宮殿を出発して二日、濱田軍の根城が見えてきた。


真栄田「お前ら、馬を降りて陣形を組め」

俺たちは戦闘時の陣形に組み替えた。

ついに開幕か・・・・


 了斎が根城の方へ鏑矢を放ち、戦が始まった。


久遠「将英と火蓮で先手の槍部隊を攻撃! 清次は敵陣の大砲を破壊しろ!!」


俺・将英・火蓮「了解!」

術を使うものが居ない限り、槍部隊の相手は二人で十分だ。

中心部に向かう俺が一番危険だな・・・・

俺と一緒に大砲破壊へ向かうのは雷煌と美月と剛斗と俊平だ。

問題なくたどり着けると良いんだけどな・・


俊平「オレは先に中心部に向かうよ! 敵の人数を後で知らせに来る!」

と言って俊平が地中を移動していった。

当然、中心に近づけば近づくほど敵は強くなる。幹部が居たら大砲の破壊は後回しになりそうだ。


美月「立ちはだかる敵を倒しながら大砲の方に行くわよ!」

先陣を切って走っていく美月に俺たちは着いていった。

騎馬隊が次々と俺たちの元へ突進してくるが、雷煌と剛斗の活躍によってどんどん倒されていく。


剛斗「馬なんて使ってんじゃねぇ!! 降りて戦ってみろよ!!!」

馬を押し返しながら言っている。本当にどんな怪力なんだ・・・・


地面から俊平が現れ、俺たちの周りを岩石で囲んだ。


俊平「ただいま。簡潔に説明するよ」


俺「どうだった?」


俊平「各大砲の近くに数十人の兵が集まっていた。美月たちが居るから問題ないと思うけど、地割れの判断は丁寧に頼むよ」

普段通り、地割れで先制してから戦闘を開始するという流れになりそうだ。


美月「わかったわ。発射できないように大砲の目の前に岩を出してちょうだい」

賢い。先にそこを封じてしまえば良いのか。


俊平「そうだね。じゃあ行くよ!

剛斗が岩を破壊し、俺たちは真ん中の大砲へ向かった。


強敵との戦闘まで体力を温存しておきたいので、騎馬隊の対応では真っ当に刀を使った。


雷煌「見えてきましたね・・清次さん、地割れを」

俺が地割れを起こすと同時に、俺の目の前に砲弾が飛んできた。

地割れを起こす一瞬の隙を突いてきたか・・死ぬ!


美月「はーあ!!」

目の前に出てきた美月が砲弾を真っ二つに斬った。


俺「砲弾を・・斬った!?」

敵も同じ反応をしていた。


美月「獅電さんが言ってたのよ。光刀なら砲弾すら斬ることが出来るって! 俊平、岩で塞ぐのよ!」

命を救われた・・・・が、立ち止まっている暇はない。狙撃手を斬らねば。


剛斗「オラァ!!!」

剛斗が大砲を持ち上げて城にぶん投げた。


敵「化け物だ!! 逃げろ!」


俊平「逃さないよ!!」

岩で逃げ道を封鎖した。便利な術だ。


俺「さぁ、俺を殺そうとしてくれたのはお前だな」

狙撃手は尻もちをついている。


狙撃手「や・やめてくれ!」

刀を首めがけて振り下ろした時、発砲の音が響いた。

今度こそ死ぬ・・・・!


雷煌「危ないですよ! 鉄砲にも気をつけてください!!」

高速移動した雷煌が弾を斬ってくれたみたいだ。


敵「駄目だ・・コイツらには何も通用しねぇ! お前ら! 突っ込め!!」

刀を持って全員が突進してくる。

愚か者が!


数十本の針を出し、全員を串刺しにした。

血の雨が振ってくる。汚えな・・


美月「危なかったわね、清次」


俺「すまない、次から警戒するよ」


雷煌「頼みますよ!」


      *


吾輩と了斎と獅電は幹部を見つけ出して殺すよう指示されている。


獅電「旗本を探す。敵陣の後方へ向かうぞ」


了斎「了解!」

濱田軍の陣形は魚鱗。兵の密度が高く後方へ向かうのは困難だが、獅電によってほとんど止まることなく走り続けられている。

宰川軍最強の名は伊達じゃないな。


幹部を殺すよう言われているが、吾輩はずっとやろうと思っていたことがある。

そう、一騎打ちだ。


吾輩「濱田本人を探してくる」

影忍術で身を隠しながら走った。


そして、ふんぞり返っている野郎を見つけた。コイツが濱田だな。


吾輩「よぉ! こんな楽しい戦は久しぶりだぜ、感謝してるぞ」

と言うと、一気に周囲の旗本が襲いかかってきた。


吾輩「ハハハ! その程度か!」

向かってくる奴らを一気に相手するが、あまり問題な無さそうだ。

と思った時、こちらへ巨大な火球が飛んできた。


敵「何だ!?」

何事だ!?


吾輩「何だこれは!!」


了斎「わしだよ」

そう言いながら火球を手にした了斎が歩いてきた。


真栄田「お前だったか。これから一騎打ちだ、邪魔はしないでくれよ」


獅電「フン、楽しませてもらおうじゃねぇか」


真栄田「お前が濱田ってことは分かってんだ」

と言って、敵のつけている仮面を取った。


濱田「クソ・・何故だ!?」


吾輩「こんな仮面、逆に目立つとは思わんのか」

濱田は悔しそうな顔をしながら刀を抜いた。


吾輩「戦が終わった後、おたくの兵士たちは使わせてもらいたいんだ。ここでさっさと決着をつけようじゃないか」


濱田「分かったよ」

吾輩と濱田は向かい合い、間合いを見る。


吾輩「はっ!」

さすがに受け止められるか。

その後も剣戟が続いた。


吾輩もここまで弱くなってしまったか・・?


了斎「負けんじゃねぇぞ、真栄田!」

その一言が大きく響いた。何故だ?それほど特別な言葉でもない。


だが、自分の中で何かが燃え盛るのを感じる。

久しぶりの感覚だ。


・・・・ずっと吾輩は何かを傍から見ているだけだった。

自分も参加しているように見せるが、本当は他人事だと思って無責任に考えている。

会議で吾輩が何かを決めることはなく華城や久遠が言ったことに同意しているだけだ。

父から大将の座を継いだ時も、『どうせ自分の軍では無いしどうでもいい』と思っていた。


しかし今は自ら戦いを挑み、自分次第で全てが決まる場所に立っている。

なんて久しぶりなんだ・・・・


吾輩「うぉぉぉぉぉ!!」


濱田「何っ!?」

今までの何倍もの速度で刀を振り続けた。

こいつの防御が崩れるまでこの刀を止めることはない!!!


了斎「無茶だ、体力が切れて動けなくなるぞ!」

問題ない。今の吾輩なら、どこまでも動き続けることが出来る。


濱田「うぉぉぉぉ!!」

お互いの刀が当たり続ける。


鈍い音が鳴った。

何だ?と思って下がると、吾輩の刀が折れていた。


濱田「残念だったな!!」

と言って突っ込んできた。

吾輩もここまでか・・・・?


『負けんじゃねぇぞ、真栄田』

そうだ。負ける訳にはいかない。折れた刀では戦えないなんて、誰が決めた?


・・・・死んだら負けなんて、誰が決めた?


吾輩「死ねぇええええ!!」

濱田の方へ飛び込み、刀を首に刺しながら共に落下した。


      *


わし「勝った・・のか・・?」


獅電「首から血を流して倒れている。死んでないほうがおかしいな」

一騎打ちに勝ったのか、真栄田!!!


わし「やったぞ!!」

・・・・ん?いつまで刺したままなんだ?真栄田。

もう起き上がってもいいんじゃないか?


獅電「俺たちは勝利した。・・・・真栄田の死と引き換えにな」

真栄田を仰向けにしながら言った。


真栄田の腹には刀が刺さっている。


わし「おい、真栄田! しっかりしろ!! 本当は生きてるんだろ!」

体を必死に揺らすが、真栄田は動かない。


わし「今すぐ治療班を!」


獅電「今から呼んできたとしても、真栄田は完全に死亡しているから救えない」

神楽たちが使えるのは治療のみ・・蘇生は出来ない。


わし「真栄田・・冗談だよな? そんな刀が刺さった程度で・・・・」


獅電「現実を見ろ。真栄田斬豪は死亡した」

そんな冷酷な・・・・


わし「だから無茶をするなって・・・・」


わしは真栄田軍が好きではない。

宰川殿と対立し続けてきた奴らだ。

真栄田軍兵士に何度傷つけられ、迷惑をかけられたことか。

もちろん、大将の真栄田だって憎んでたさ。


でも、何故だろう。涙が止まらない。

真栄田と仲間だった期間の方が、敵だった期間よりも圧倒的に短いのに・・・・・・


わし「真栄田・・・・」

死んだところで、悲しくないはずなのに・・


獅電「・・・・・・・・」


城で食事をする時、真栄田が居ると一気に賑やかになり、笑いが増えた。

戦の時も、真栄田軍が味方にいると安心できた。

真栄田軍幹部の春日も、常に明るさを失わずにわしらを盛り上げてくれた。


なんだかんだ、わしは真栄田のことを仲間として見ていたのかもしれんな・・・・


獅電「いくらでも泣いていい」

そう言って獅電さんが笛を鳴らした。


獅電「集まった皆に、真栄田と濱田の死を伝える」

獅電さんが感情を露わにすることはなかった。


獅電「ここで失うのは惜しい人材だが、これは一騎打ちという真栄田による選択の結果だ。きっと、真栄田も満足しているだろう」






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