四十四話 来客
宰川「組織図が完成したな。ちなみに参謀は幹部に含まれ、階級は獅電たちと変わらない」
治療班は豪でも幹部でもない、特殊な位置づけとなった。
久遠「精鋭班に入ることになった以上、神楽と風雅の単体の戦闘能力を上げる必要がある。羽音と共に稽古をつけてもらえ」
風雅「了解っす。誰が稽古してくれるんすか?」
久遠「元山河軍幹部の繭だ」
風雅「へぇ~、すごそうっすね!」
風雅は口調の割に意外と従順そうだ。
その方が皆助かるから良いけどな。反発ばかりするようなやつは困る。
例えば俺みたいなやつだ。
宰川「そして、本日より幹部による周辺地域の見回りを再開する」
真栄田「術師団がもし現れたら困るしな」
しばらく手を抜いていたから旧与根川軍の存在にも気づけていなかった。
霧島「そんでいちばん大事なのが?」
久遠「町の整備か・・・・」
久遠さんがため息を吐いた。
獅電「戦でだいぶ荒れてしまった。建物の修復が終わったらようやく道の整備だ」
久遠「建物の修復は中々人手が要りそうだ。豪の武士にやらせるか? それとも・・」
剛斗「オレも協力するぜ!!」
宰川「確かに剛斗なら五人分くらいの働きをしてくれそうだ」
華城「もう一人使えそうな者を知っている」
俺「誰だ?」
美咲「わかった! あの罪人の・・」
思い出した。そういえば祭りの準備を手伝ってくれたな・・だいぶ仕事のできる人だった。
久遠「そうだ。あの男をまた働かせるとしよう」
もう十分罪は償ったと思うから、普通に仕事の依頼として伝えたほうが良いかな。
獅電「よし、剛斗とその男と、ある程度の人数の大工を集めて建物の修復だ」
信雄「与根川軍の領地はどうしますか」
忘れてた・・そこも今は空き地なんだ。
久遠「それは後回しにしよう。場所の利便性的にもあそこはあまり重要じゃない」
信雄「わかりました」
火蓮「皆忘れておったかもしれんが、とてつもなく広い洞窟の使い道は結局どうするんじゃ?」
それも忘れてた・・多分火蓮しか覚えていないだろうそれ。
久遠「参った・・どうしたものか」
久遠さんが自分の額を何度か叩く。
了斎「鍛冶屋は?」
晃牙「洞窟、空気の通り、悪い。鍛冶、向いてない」
俺「そうなんですね・・」
急な豆知識である。
翔斗「地下街を一から作るのも面白そうだがな。行き場のない人や退廃した村の人々をそこで受け入れたり」
春日「私それに賛成! 物の貯蓄も洞窟でしちゃえば盗まれにくいでしょ!!」
春日はたまに良いことを言う。
久遠「よし、そうしよう。但し町の修復が最優先なことは変わらない」
その後も話を詰め、かれこれ二時間くらい会議は続いた。
久遠「よし、今日の会議はここまで。解散!」
が歯切れよく言った。
雷煌「お疲れ様でした!」
二ヶ月前に見回りを再開してからほとんど音沙汰がなくなった。
その間に翔斗も獅電さんも信雄も、そして了斎も誕生日を迎えている。
術師団の内部では色々動きがあるのかもしれんが、俺たちには知る由もない。
羽音と治療班の戦闘能力も『実戦に出すのは少し危険』というくらいまで上がってきた。
まあ、この三人は自ら戦闘することが少ない役割だ。問題ない。
町の修復も順調に進み、現在は久遠さんと獅電さんが元与根川軍領地に住む人々への説明に向かっている。
元与根川軍領地に住んでいた人々は、後々地下街が完成したら引き取ることになっている。
今日も見回りをしていると、怪しげな集団を見つけた。
霧島「あれは武士だよな・・?」
俺と霧島は一緒に行動している。
俺「正面から現れるのは無いよな・・お前の霧で隠れるか?」
霧島「こんなところにいきなり霧が現れたほうが怪しいだろ」
俺「そっか」
俺たちは普通に木陰に隠れることにした。
目の前を二十人ほどの武士が通っていく。
俺「駕籠を担いでる・・大名が直々にここまで来たのか?」
霧島「でもこの人数なら、戦をするってわけじゃなさそうだよな。話しに来たのか?」
俺「とりあえず、宰川殿に報告するぞ」
霧島の瞬間移動を使って気づかれないように移動した。
霧島「よし、城に入ろう」
城に入って報告をしに来た。宰川殿は自室で静かにお茶を飲んでいる。
邪魔して悪いが・・
霧島「宰川殿、どうやら来客のようだ」
宰川「ほう、誰だ?」
茶柱が立っている様子を見つめながら宰川殿が言った。
凄い・・本当に茶柱って立つんだな・・ってそんなことはどうでもいいんだ。
霧島「駕籠を二十人ほどの武士で運んでいた。大名が直々に来たのかもしれない」
宰川「よし、歓迎しよう。今すぐその者たちの元へ行ってこい」
俺「承知した」
*
春日「あれ武士だよね・・なんか担いでるし、変なの」
僕「余計なことはしちゃ駄目ですよ。僕が話を聞いてみます」
春日さんが対応すると何をしでかすかわからない。
駕籠を担いでいる武士の元へ二人で行き、話を聞いてみることにした。
僕「ここは宰川軍の領地なのですが、何か御用でしょうか?」
武士「どけよガキ。殿様の邪魔をするな」
担いでいる武士が怒る。
僕「そうはいきません。宰川軍幹部として話を聞いてからじゃないと許可できません」
武士「はぁ? お前みたいなチビが幹部って・・そんなハッタリにかかるとでも思ってんのか」
武士は全く引き下がらなかった。
でも、殿様を担いでいるから力で解決はできない・・
春日「この子が幹部ってのは事実だよ。私が保証する」
春日さんが前に出てきた。
僕「春日さん、余計なことはしないでって・・」
春日「良いの。一旦下がってて」
不安。
武士「あぁ? お前は何者なんだよ、言ってみろ」
春日「真栄田軍幹部。春日だけど」
いつもの春日さんと違う。かなり怒っているみたいだ。
?「いつまで喋っているの?」
駕籠の中から女性の声がした。
武士「申し訳ございません。お手数をおかけしておりますが、邪魔者を見つけたので現在、対応をしております」
口調が急激に丁寧になった。
まさか、殿様は女性・・?
?「もう良い、降ろして。私が話をする」
若い女性が出てきた。
?「弊軍の所属者の不適切な行動により、皆さまにご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。もし幹部の皆さまがご承知の場合、宰川様に『話したいと申し出ている者がいる』旨、お伝えいただけますと幸いです」
拍子抜けするくらい丁寧・・・・
春日「わ、わかった。今伝えてくるね」
春日さんに手を引かれて城に走っていると、清次さんたちと遭遇した。
霧島「あれ、あいつらと話してたのか?」
僕「はい。宰川殿と話をしたいらしいです」
清次「宰川殿に今報告をしたところだ。宰川殿も歓迎すると言っていた」
春日「じゃあ、今四人であの人のところに行く?」
清次「そうだな。城まで案内しよう」
例の女性のもとまで戻ってきた。
霧島「宰川殿も歓迎すると言っていた。今から城まで案内するから着いてこい」
口調がちょっと強い・・大丈夫かな。
?「感謝致します。あなたたちも幹部ですか?」
清次「ああ」
清次さんたちが歩き始めた。
僕「春日さん、やっぱりあなたに任せるのは不安なので僕に任せてくださいね」
春日「ご、ごめん・・」
春日さんが顔を赤らめた。可愛い。




