四十二話 レオナード
一人で探し回ってようやく宰川殿を見つけた。
俺「宰川殿!! 無事で良かった!」
将英「清次か。お前も無事で良かったよ」
俺「将英も居たか!」
火蓮と真栄田も近くにいるみたいだった。
俺「敵軍幹部と戦ってたらしいが・・倒したか?」
火蓮「もちろんじゃ。一緒に遊んでおった」
俺「遊んでた・・?」
間違いなく真栄田のせいだ。
宰川「華城が待ってるからさっさと行くぞ」
五人で華城と了斎の待つところへ移動した。もちろん将英の風刃術だ。
俺「華城、無事で良かった・・」
了斎「大袈裟だな。わしが居るから大丈夫だ」
華城「良い知らせが一つと、悪い知らせが二つある」
宰川「良い知らせから聞こう」
華城「旧与根川軍との戦は・・・・我々の勝利だ!!」
華城が言った瞬間、主力の皆が走ってきた。
俺「良かった・・!」
聞いた瞬間、一気に足の力が抜けた。
華城「清次、立て」
華城に手を引っ張られた。
了斎の方を見ると、そっと胸を撫で下ろしていた。
本当に良かった・・予想外の攻め方をされてしまったが、終わり良ければ全て良しだ。
了斎「獅電さんは!?」
興奮気味に聞いた。
獅電「俺はここに居る
後ろの方から獅電さんが出てきた。
俺「何でそんな後ろにいるんですか!」
心配した・・・・生きててよかった。
まぁ、獅電さんが負けるはずが無いな。
獅電「・・・・」
獅電さんは何も言わなかった。
華城「悪い知らせの一つ目だ。治療班が壊滅した」
俺「は・・!? 治療班?」
華城「ああ。避難した市民を治療しているところを襲撃された」
そんな淡々と・・・・
俺「もう助からないのか・・?」
華城「ああ」
久遠さんは良いのか・・?結城さんが死んでしまって・・
了斎「久遠さん、大丈夫か?」
久遠「母上・・・・・・」
久遠さんは俯き、手の甲に血管を浮かべた。
宰川「親を失う辛さは俺も清次も了斎も雷煌も、きっと他の武士も痛いほど理解っている。だからこそ伝えたい。何かを得て学ぶことより・・」
獅電「何かを失うことで学ぶことの方が多い。お決まりの台詞だな」
昔から宰川殿はこの言葉をよく使うらしい。
久遠さんが涙を流すことはなかったが、ずっと何かを堪えているような表情をしていた。
春日「泣きたいときは泣いていいよ。涙は心の汗って言うでしょ、たまには流しておかないと」
久遠「ありがとう」
久遠さんが涙を流した。
俺「でも、流したまま拭かないでいると風邪引きますよ」
服をちぎった布で久遠さんの涙を拭いた。
霧島「あの二人が死んじまったってことは、治療・蘇生の術を使うやつはもう居ないのか」
宰川「ああ。俺の知ってる限りでは居ない」
華城「これからはより慎重に戦う必要があるな」
華城「悪い知らせの二つ目は、獅電殿に話してもらう」
獅電さんが数歩前に出た。
獅電「俺が待機していた山に術師団の者が現れた。それだけだ」
術師団って・・ずっと武士と対立してる奴らか?
真栄田「つまりどういうことだ?」
華城「獅電殿が術師団の者を殺した。そのことが術師団に伝わったら宰川軍は目をつけられるに違いない」
霧島「おいおいおい・・本物の術師ってめちゃくちゃに強いんだろ? 大丈夫なのか?」
華城「術師団にもし狙われたら、かなり苦しい状況になるだろう」
という言葉の割に華城は焦っていない様子だった。
獅電「だが、術師と戦ってわかったことがある」
俺「何ですか?」
獅電「武士と術師が冷戦状態となっていたこの数十年間で、間違いなく武士と術師の差は縮まった」
雷煌「でも・・昔は武士が百人でかかっても勝てなかったって・・・・」
獅電「昔の話だ。この数十年間で時代は一気に変わった。そう、武士が術を使うようになったんだ」
確かに、術という存在は今や大名同士の合戦で欠かせないものだ。
術を使う武士と、刀のみで戦う武士では圧倒的な戦力差がある。
獅電「術師団が高みの見物をしている間に武士は戦を繰り返し高め合ってきた。もう術師に負ける時代は終わりだ」
かなりの自信だ。
俺「その術師団って・・」
華城「星界術師団だ」
宰川「星界術師団だと・・?」
真栄田「一番相手に回したくなかったな・・」
星界術師団は、この辺りで・・というか、この大陸で最も有力な術師団だ。
火蓮「その術師団の奴と獅電さんが戦ったのじゃな?」
獅電「ああ。大したことはなかった」
了斎「それは獅電さんが強いだけでは?」
獅電「言っただろ、武士はこの数十年間で着々と強くなっているんだ。宰川軍幹部、真栄田軍幹部、山河軍幹部の繭は武士の中でも精鋭の中の精鋭。十分に術師と張り合えると言って良い」
華城「油断禁物だ。術師が格上なことは変わりない」
武士が一気に成長したとはいえ、平均的な術の練度は術師がやはり圧倒的だろう。
ただ、術師の奴らは生身で戦うことが出来ない。俺たちにはこの『刀』があるじゃないか。
俺「俺は星界術師団と戦うことになっても負ける気はさらさら無い。術師団団長の首をこの『刀』で掻っ切ってやる」
武士の一番の敵は武士ではない。術師なのだ。
春日「武士同士で争ってる暇なかったじゃん!!」
豊「武士同士で争い続けたからこそ、武士が強くなったんじゃ」
豊さんは武士が成長する過程を見てきた唯一の人物だ。
真栄田「術師団と戦うってんなら、吾輩も手を貸すぞ」
宰川「ああ。よろしく頼むぞ」
二人が握手した。
美月「いつまでここで話すつもりなの? 戦後処理の話は城に戻ってからよ」
宰川「そうだな・・・・」
*
星界術師団内部で、『望全』の死はかなり大きな意味を持つものとなっていた。
団員「レオナード団長! 望全が・・武士に敗北致しました」
と頭を下げる。
私「君が頭を下げることはない、気にするな。望全の順位はこの術師団の中でも高い方ではないからね」
調査隊員「ですが・・通常、術師が武士に負けるなどありえません。何か異常事態が起こったのではないでしょうか」
私「それも可能性としてはあるが、シンプルに武士の戦闘能力が術師を上回っていた可能性のほうが高いな。私たちがダラダラしている間にぐんぐんと武士は成長しているからね」
ストーンハート「よし、調査隊長以外は戻っていいぞ」
ストーンハートは、星界術師団で私に続く権力を持つ副団長だ。
調査隊員「はっ!」
調査隊は足早に城を出た。
イサベル「アンタのそのバカ丁寧な喋り方、気持ち悪いからそろそろやめてくんない?」
イサベルは星界術師団の調査隊長だ。
私「私は団長だ。これくらいじゃないと発言に重みが出ないだろう」
ストーンハート「あと、いちいち団員に順位とか付けるのもやめろ。覚えるのにどんだけ苦労したと思ってんだ」
そんなに言われるか・・
イサベル「そうよ! せめて上位百人だけとかでいいじゃん・・」
私「順位があったほうがカッコいいと思ってな・・」
イサベル「本当に馬鹿ね。なんでアンタが団長なのよ・・」
私「アハハ、じゃあイサベルがやるか?」
イサベル「なんでウチなのよ。ストーンハートが団長をやる方が良いでしょ」
ストーンハート「俺も御免だよ」
そう言って首を横に振る。
私「結局私じゃないか・・」
私「そんな事はいいんだ。武士に団員がやられた件だが・・君たちはどう見る?」
ウィリアム「私は団長の言う通り、武士の成長が原因だと思うが」
指揮官のウィリアムが言った。
ストーンハート「そろそろ真面目に考えなければならないな。術師と武士のパワーバランスが崩れ始めている」
アストリア「そうですよ! いつまで過去の栄光にすがってるんですか」
通信士、そして私の息子であるアストリアが言った。
ウィリアム「そろそろ、武士との『戦い』を再開する時なんじゃないか?」
私「そうだな・・」




