三十九話 効かない
僕は神田川の西にある平野、掃討班でもかなり祭りの会場に近いところに居た。
祭りの方から笛の音が聞こえ、何度か爆発音も聞こえた。
想定外の場所での戦闘・・今は誰が応戦しているのかな・・・・
豪の武士「雷煌さん!! 助けてください! 翔斗さんが!!」
戦場に着くや否や、豪の人が走ってきて言った。
僕「翔斗さんがどうしたんですか!?」
豪の武士「華城さんを敵の術から守ったとき、盾が効かずに術をくらってしまったんです!」
僕「分かりました。僕がすぐに行くのであなたは戦闘に戻ってください!」
翔斗さんを探して走り回った。
遭遇する敵はほとんど腹を斬って殺した。
ただ、今もなお船がこっちに到着し続けている。皆さんが来てくれたらもう少し楽になるんですが・・
了斎「雷煌! どういう状況だ?」
了斎さんがこっちに走ってきた。
僕「旧与根川軍は山から川を下ってここまで来たみたいです。僕は翔斗さんを探すので了斎さんは船に乗った敵を対処してください!」
了斎「雷煌も人に指示が出せるようになってきたな。任せておけ」
了斎さんが船の方へ向かった。
探し回っていると、翔斗さんが倒れているのが見えた。
僕「翔斗さん!」
返事はない。
外傷はないみたいだけど・・・・
僕「翔斗さん! 起きてください!!!」
体を揺さぶるが、翔斗さんは反応しない。
まさか・・死んでる?
?「ハハ、残念だったな。一度君には眠っておいてもらうよ。面倒だからね」
後ろから老けた武士が迫ってきていた。気づけなかった・・・・
僕「なっ・・・・」
どんどん意識が薄くなっていく。
僕「翔斗・・さ・・・・・・」
*
雷煌に船を対処しろと言われたが、わしは何をしたら良いのだろうか。
乗り込んで戦うか?いや、危険過ぎる。
華城「了斎、お前が東二と戦った時に使った『火球』を使え」
華城が戦いながらこっちまで来ていた。
わし「華城! お前は先陣きって戦う必要ないだろ!」
華城「我の心配はするな! とにかく、船には爆弾が積まれている。火球で爆発させるんだ」
ただ、華城が今五人に囲まれている。あいつの技術を疑ってるわけではないが、守るべきなんじゃないか・・?
クソ・・・・さっさと決めないと・・!
清次「了斎!! 何突っ立ってんだおめぇは!!」
清次が鬼の形相で敵を薙ぎ払いながら怒鳴った。
来てたのか、清次・・!
清次「了斎! お前が今悩んでいる間に何人の人間が死んでいると思ってんだ! いくつの命が失われてると思ってんだ! さっさと動け!!」
わし「華城が!!」
清次「そんなの俺に任せとけ! お前はお前にしか出来ないことをやれ!」
清次がどんどん華城のところへ近づいていく。
よし、きっと大丈夫だ。
わしは船に火球を飛ばし始めた。
何度も爆発が起こり、船と敵はみるみる減っていた。
将英「了斎、宰川殿はどこにいる?」
将英と火蓮が来ていた。
本当は将英の方が遠くに配置されているから、途中で合流して来たのだろう。
わし「わしには分からん」
将英「わかった。引き続き頑張れ」
そう言って二人は走っていった。
*
風刃術で早く来れたとはいえ、既にかなりの犠牲者が出ていることは足元を見れば明らかだ。
オレ「宰川殿がどこに居るか知らないか?」
治療中の豪の武士に聞いてみた。
豪の武士「真栄田さんと共闘しているとしか聞いていません。申し訳ないです」
火蓮「それが知れただけで十分じゃ」
敵軍幹部と戦っているのかもしれない。早く二人を見つけねば。
真栄田「ハハ、お前は幹部の割に大したことねぇな!!」
野太い声が聞こえてきた。間違いなく真栄田だ。
オレ「あっちから聞こえたな、行くぞ火蓮」
火蓮「もちろんじゃ」
走って向かうと、宰川殿と真栄田が幹部と戦っていた。
オレ「宰川殿! 真栄田!」
呼びながら走った。
敵軍幹部「助太刀が来たか・・面倒だな。まあ、所詮宰川の部下だ。大したことねぇんだろうな」
火蓮「お主は何故、大したことない部下を持つような雑魚である宰川殿すら倒せないんじゃ?」
敵軍幹部「クソアマは黙ってろ!」
クソアマだと・・・・?
オレ「今なんつったんだ?」
敵軍幹部「クソアマだよ。耳がついてねぇのか?」
オレ「そうか・・宰川殿も真栄田も、一度下がっておいてくれないか」
宰川「わかった。任せたぞ、将英」
オレ「オレは女をすぐに下に見るお前みたいな野郎が大嫌いなんだ」
敵軍幹部「はぁ? 俺たち男のおかげで生きてられるあいつらに配慮をしろとでものたまうつもりか?」
カスだ。
オレ「お前のその根本的な考えが気に食わんな。そして一応言っておくが、火蓮は女ではない」
敵軍幹部「はぁ? どう見ても女だろあいつは」
オレ「そうか。まあそれもいい。一番腹の立つところをはオレの仲間と宰川殿を侮辱したところだ」
敵の方へ風刃を飛ばした。
敵軍幹部「垂直に斬ってしまえばそんなもの、簡単に対処できる」
敵はもう風刃の対処法を理解したようだ。
敵軍幹部「やっぱり大したことねぇじゃねえか!!」
敵が笑いながら斬りかかる。まずい、速い!!
斬られる瞬間、火蓮が敵の刀を弾いた。
火蓮「将英、妾のために怒ってくれるのは嬉しいんじゃが・・そのような強者に一人でかかるのは悪手じゃ」
宰川「怒っているのは将英だけじゃない。俺も協力する」
宰川殿が刀を抜いた。
真栄田「吾輩は知らんぞ。勝手にやっておけ」
真栄田は後ろの方であぐらをかいていた。
火蓮「将英はとにかく風刃で敵の動きを制限するんじゃ。妾が炎で攻める」
オレ「わかった。宰川殿がとどめを狙ってくれ」
風刃を飛ばし続けた。
火蓮が彩色炎を放つが、敵は「綺麗だな」としか言わなかった。
敵軍幹部「お前ら・・そろそろ気づいたほうが良いんじゃねぇか? 俺に術は効かないって」
術が効かないだと・・?
宰川「どうせハッタリだ。気にせず攻め続けろ!」
こいつは本当に術が効かないとしたら、獅電さんに来て欲しいところだが・・・・
*
俺「いいだろう。星界術師団のお手並み拝見といこうか」
本物の術師と相まみえるのは初だ。戦い方がわからないな・・
望全「ちなみに、あなたのお名前は?」
俺「獅電だ。よろしくな」
望全は第八百二十九位。星界術師団の規模感がわからないから何とも言えないが・・
望全が杖をこちらへ向けた瞬間、足元で爆発が起こった。
望全「ほう・・この爆発を避けるとは。あなたがかなりの実力者だという私の勘はやはり当たっていたようです」
やはり上から目線だ。
ここで一度、武士の底力を見せてやるとするか。
古くから受け継がれてきた刀の技術。それを使いこなすために鍛練を続ける武士の心、武士道。
どちらも、術に頼る愚か者には理解の出来ないものだろう。
俺「お前の勘は当たった。だが、お前は致命的な部分で失敗してしまったようだ」
望全「おや、何でしょうか?」
俺「相手に俺を選んだことだ」
そう言って、望全が反応する前に首を斬った。
俺「星界術師団も大したことねぇな」
ただ、術師団の敵が現れたというのはかなり大きな問題だ。一度司令班のところへ行って報告しよう。




