三十七話 祭典と再戦
連合軍との戦から三ヶ月。祭りの準備を始めて一ヶ月が経とうとしていた。
だが、俺たちには祭典の前に処理しておかなければならない事があった。
久々に会議が開かれた。ここには宰川軍幹部・真栄田・宰川殿・真栄田軍筆頭武士・山河軍幹部が集結している。なかなかの面子が揃ってるな・・・・
久遠「連合軍との戦の戦後処理のときにオレたちがしたことは死体の処理・山河軍幹部の加入だ。ただし、忘れていることがあった」
霧島「そんなのあったか? 与根川も殺したし・・」
久遠「そこだ。オレたちは与根川を殺した。だが、与根川軍は全滅したか?」
ある程度幹部を殺したが、全滅しているとは断言出来ない。
獅電「してないかもな。戦いに出なかった武士や幹部がいるかもしれない」
了斎「だが、与根川が死んだ今、そいつらを気にする必要はないんじゃないか?」
最近、会議での了斎の発言量が増えてきた。
俺は馬鹿だから下手に発言できないんだよな・・・・話の流れを遮ってしまう。
久遠「いや、山河軍領地に待機していた与根川軍幹部が戦が終わったあと見つかっていない。どこかに潜んでいる可能性があるんだ。オレたちへの復讐を企んでいるとしたら、放っておくことは出来ない」
繭「わたくしも隅々まで探したが、山河軍領地に与根川軍兵士は見当たらなかった。おそらく敗北を知らされた瞬間に逃げたのだろう」
山河軍よりも先に情報が入ってきていたということか? じゃないと山河軍兵士に気づかれず逃げることは出来ないはずだ。
俺「とすると、山河軍よりも先に与根川軍が敗北を知っていた理由は何だ?」
真栄田「情報伝達係を前もって用意していたんだろうな」
華城「山河軍はそれがなかったのか?」
繭「無かった。山河軍内での下剋上を城へ真っ先に戻って伝えた人がいるのは間違いないかな」
内部にいた人間だからこその情報だ。
残った与根川軍兵士がどこかに居るのは確実か・・?
霧島「じゃあ、どうすんだ? 祭りをやめるのか?」
宰川「変わらず開催する予定だ。何より祭りというのは一番の餌になる」
俺「餌?」
何か策があるみたいだな。
美月「詳しく」
宰川「祭りの会場となるのは宰川軍領地から山河軍領地へ続く神田川の流域だ」
神田川はこの爲田城の西を流れる川だ。
雷煌や火蓮の故郷を超えると見えてくる。
宰川「祭りには一万人を超える人間が参加すると思われる。これだけの人数が一箇所に集まるのは敵からしたら絶好の狙い目ってわけだ」
そう言った瞬間、会議室の戸が勢いよく開けられた。
一体何ごとだ?
宰川軍兵士「会議中失礼いたします! 調査員が周辺地域で捜索を行ったところ、戸美草原のほうで拠点のようなものを発見いたしました!」
戸美草原というのは、山河軍とはじめに戦ったときの戦場だ。
位置的には爲田城の北、神田川の東となる。
獅電「やはり敵が潜んでいるということだな。見回りをしばらく行っていなかったから気づくのが遅れたか」
宰川「大丈夫だ、まだ間に合う。作戦を引き続き説明するぞ」
宰川殿が地図を取り出した。
宰川「祭り当日の運営は豪の武士と、ここに居る三人を除く真栄田軍幹部にしてもらう」
ここに居る三人とは、晃牙さん・春日さん・豊さんのことである。
春日「任せてちょうだい!」
軽い。
宰川「残った皆は神田川周辺で身を隠す。そこで旧与根川軍を発見した瞬間笛を鳴らし、掃討作戦を開始するぞ」
戸美草原に拠点があるとはいえ、そちらの方面から攻めてくるとは限らない。だから周辺に戦力をばらけさせるってわけだな。
華城の強烈さで忘れてしまっていたが、宰川殿もかなりの戦略家だ。
全「了解!」
宰川「索敵班は蒼月・真栄田・俊平の構成でいくぞ。この三人は敵を発見することに長けた術がある」
この三人は移動し続けるということだな。
華城「残った皆は一定間隔で身を潜め、敵軍の襲来を待とう」
話し合いの結果、俺は戸美草原で待機することになった。
地割れの術は平地の方が活かせるからな。
久遠「布陣は決まったな。掃討班、治療班、索敵班、司令班の四つで完全に守り切るぞ」
治療班といっても、この班は結城さんと亜美の二人のみだ。
この二人で回復を間に合わせるのは厳しいから、とにかく犠牲を出さず戦っていくことが大切になる。
司令班は華城・宰川殿・護衛の翔斗で構成されている。
久遠「では、当日の動き方は決定だ。祭りの準備に取り掛かろう」
俺たちは自分の仕事場へ散っていった。
今まで通り祭りの準備を続け、ついに祭りの前日となった。
大広間に主要人物が集まり、宰川殿が話し始める。
久遠「明日は待ちに待った祭典だ。そして再戦となる可能性も高い。気合を入れていくぞ」
全「おおおおお!!」
久遠「ここに居る皆は祭りを楽しめなくなってしまい申し訳ないが、勝利したあと、再び祭典を行うから明日は戦いに専念するぞ!」
久遠さんの言葉を聞き、再び雄叫びが上がる。
宰川「では総員、各自持ち場への移動を開始しろ!」
全「了解!!」
今夜は野宿をすることになる。祭りの開始は昼。花火が上がるのは夜だ。
できれば夜までに戦いを終わらせておきたいが・・
ちなみに、今回の戦には獅電さんも参加する。あくまでこれは『防衛戦』だからな。
移動を開始し、掃討班が各地へ向かった。
俺「じゃあな了斎! また明日だ!」
了斎「生き残るんだぞ!」
馬で移動しながら言った。
了斎は神田川の西にある平野での待機となる。
移動を続け、ついに一人になってしまった。
しばらく一人になることがなかったから不安だな・・・・
結局、寝ることが出来ず朝になってしまった。森の中ならまだしも、草原で寝るというのは至難の業だ。仕方ない。
*
ついに当日だ。吾輩が真っ先に敵を発見してやろう・・
影忍術で身を隠しながら移動する。
蒼月「俊平は地下を潜って移動しているでござる。拙者は馬で移動するでござるよ」
そう言って去っていった。
隅々まで探しているが、まだ敵は見つからない。
あっという間に昼になった。既に祭りは始まり、神田川流域は賑やかになっている。
一旦、司令班のもとへ戻り現状を伝えることにした。
吾輩「宰川、まだ敵が見つからんぞ・・本当に居るのか?」
雲行きが怪しくなってきた。
宰川「拠点から離れていることは確認済みだ。潜んでいるに違いない」
宰川はそう言うが・・
翔斗「ただ、索敵班が三人で手分けして探し、掃討班は各地で待機している。なのに音沙汰ないというのは確かに違和感があるな」
吾輩「もう日が暮れているぞ。もたもたしていられない」
本当は見つけているのに笛を鳴らしていないのか?まさか、鳴らせないのか?
華城「嫌な予感がする。我は祭りの中心へ行くから笛が鳴ったらすぐに皆来てくれ」
華城が吾輩らの返答も聞かずに馬で駆けていった。
翔斗「何だ?」
宰川「華城のことだ。俺たちにはわからない何かを感じたんだろう」
華城が感じた『何か』とは一体何だ?
*
まずい、気づくのが遅かった。馬で走ったとしても、中心地へ戻るのには三十分ほどかかる。
つく頃には祭りも大詰め、花火が打ち上がる頃合いだ。
我は、敵軍が夜中に川を下って移動したと予想している。
誰の目にもつかず陸上を移動してくるのは不可能だ。となれば、上空か水上。
上空の移動は非現実的だ。となると、水上を移動した可能性が高い。
小型の船であれば神田川が流れる山から一気に中心地まで移動できる。
旧与根川軍が川を下って移動しているとしたら、そろそろ中心地へ着いていてもおかしくない。
頼む。間に合ってくれ・・!
川を注視しながら走っていくと、微かに数隻の船が見えた。
間違いない!
そう思い、すぐに笛を鳴らした。
*
俺が待機する戸美草原に全く人影はない。
そう思っていると、祭りのところで笛が鳴った。
何だ?今の笛の音は・・
祭りの一環か・・?いや、間違いなく連絡用の笛だ。
余計なことは考えなくて良い。とにかく今は笛の方へ移動するのが最優先だ。
俺は馬に乗って祭りの方へ向かった。
*
俺たち司令班のすることが無い。
敵が見つからない限り、指示を出すことも出来ない。
翔斗「宰川殿、どうするんだ?」
俺「待機を続ける、華城からの情報を待つぞ」
待ち続けると、笛の音が祭りの方から聞こえた。
真栄田「華城だな!」
俺と翔斗と真栄田はすぐに馬で走り始めた。
翔斗「宰川殿も戦うのか?」
俺「もちろんだ。即時回復の力を見せてやろう」




