三十一話 それから
戦が終わった。もうかわたれ時だ、太陽が昇ってきている。
久遠「もうすぐ着くぞー」
俺「はーい」
この人数では風刃術も使えないので、普通に歩いて戻った。
久遠「宰川殿! 見たら分かると思うが、オレたちは勝った」
宰川「よくやった! そこの奴らは捕虜か?」
久遠「捕虜じゃない。真栄田から聞いてるかもしれんが・・山河軍で下剋上を起こさせ、山河慶次は死んだ。そして山河軍の残った者は宰川軍に迎え入れると約束した」
宰川「そうか・・それは華城の判断か?」
華城「ああ。勝手なことをして申し訳ない」
宰川「いや、そいつらにもう敵意がないのなら俺は問題ない。君は繭か?」
華城「ああ。こいつが羽音だ」
宰川「そうか。だが、二人と山河軍の処遇はまた後日決めさせてもらう」
繭・羽音「ははっ」
俺らよりも礼儀正しいな・・・・
戦の全貌を話しながら、死者の蘇生・負傷者の治療に向かった。
俺「・・・・ていうか、華城は何故羽音と繭が恋人だと分かったんだ?」
華城「二班の皆は知っていると思うが、会議をしている者を殺した後、会議室のようなところを調査したんだ。そうするとこの二人の接点がかなり多い事を知ってな。それでなんとなく予想したんだ」
美咲「うわぁ・・今回の戦で華城の名が広まる事は間違いないだろうね・・」
感心しているのか引いているのか。
宰川「やはり重要なのは肉体的な強さではなく知力・・それがよくわかったよ」
華城「そんなことはない。我は皆が居なければあっという間に死んでいる」
美咲「でも・・普通の武士には負けないでしょ?」
華城「当然だ」
俺「よくわかんねぇな・・」
華城「術持ちには我も苦戦するということだ」
段々と豪の武士たちが見えてきた。
久遠「着いたぞー。亜美は死者の蘇生を、母上は負傷者の手当を」
亜美「分かりました!」
負傷者が列になって並び、結城さんが治していく。
華城「爆弾で死んだ者は蘇生できないが、十分な人数が残った」
久遠「そうだな」
俺「俺は何より・・・・幹部が誰も死ななくてい良かったよ」
将英「そうだな。オレも清次の我儘を聞いて後悔はしていない」
宰川「何!? 清次が我儘だと?」
過敏に反応した。
俺「い、いや、あれは我儘とかではなくて・・」
了斎「わしが説明しよう」
了斎が一部始終を宰川殿に説明した。
宰川「そうか・・では、清次は三日間飯抜きだ」
俺「絶対に無理だ!」
宰川「水はやるから大丈夫だ」
俺「そんな事あるかよ・・・・」
了斎「反省するんだな、清次」
火蓮「妾も食事抜きで良い」
自分から言うの・・?
了斎「火蓮は関係ないだろ」
火蓮「元々、妾が負傷していなかったらこうはならなかった。妾にも責任があるのじゃ」
宰川「じゃあ二人とも二日間飯抜きだ」
容赦ねぇ~。
俺「一日減った!」
了斎「良かったな。皆、二人が飯抜きの時にうまいもん食うぞ!」
本当に仲間か?こいつら。
俺「勝手にしろ!!」
皆の蘇生と治療が終わった。
宰川「では爲田城に帰還する。真栄田軍には申し訳ないが、幹部以外は海良城へ戻ってもらう」
真栄田軍兵士「了解! 宰川軍の皆さん、ご協力感謝いたします!!」
真栄田軍は爽やかに駆けていった。
久遠「よし、山河軍はこれから宰川軍領地での生活になると思われるから着いてこい」
繭「了解」
俺「戦後処理はまた大変なものになりそうだな・・・・」
爲田城に帰ってくる頃にはすっかり昼になっていた。
住民「皆! 宰川軍が帰ってきたぞ!!」
住民「うおおおおお!! 勝ったんだよな!!!」
住民「すげえええええ!」
住民「流石だぜ!!!」
非常に気分がいい。
自慢気に民衆に手を振った。
獅電「お前ら、帰ってきたか」
獅電さんが城の前で待っていてくれた。
雷煌「獅電さーん!!」
雷煌が飛びついた。
獅電「喜び過ぎだ」
獅電さんは嬉しそうだった。
久遠「獅電、この城は無事だったか?」
獅電「ああ。音沙汰なかった」
久遠「それは良かった・・一旦城に入ろう」
宰川「改めて、宰川軍・真栄田軍・協力してくれた山河軍の兵士全員に感謝を伝えたい。ありがとう!」
拍手が起こった。
獅電「山河軍と言ったか?」
雷煌「山河軍で下剋上を起こさせたんです。あそこに居るのは山河軍の幹部ですよ!」
獅電「裏切る可能性は無いのか?」
雷煌「裏切ったところで僕たちに勝てっこない事はわかっていると思います」
すごい自信。
獅電「そうか」
宰川「できれば今すぐ戦後処理の話をしたいんだが、皆寝ていない上に疲れているだろう。今日は好きなだけ寝てもらって良い。明日、また話し合いを行う」
ようやく寝られる・・・・!
宰川「では、寝たいものはここで寝ていい。皆好きなように過ごしてくれ」
俺「宰川殿、俺たちの家は?」
宰川「もちろん完成している」
俺「今行ってきていいか!?」
宰川「もちろん良いが・・寝なくて良いのか?」
俺「今は家を見ることが最優先だ!!」
宰川「では、案内させるよ」
霧島「ついにだな」
案内人が来て、着いてきてくださいと言われた。
翔斗「昼間だな~・・感覚がおかしくなってきた」
美月「寝てないもんね」
俺「というか、この十人で行動するの久しぶりじゃないか?」
翔斗「確かに。最近は新入りと居る時間が多かったからな」
了斎「新入りも良い人たちだけど、わしにとってこの九人はやっぱり特別だ」
俺「急に何だよ・・・・」
しばらく歩くと、先に家が見えてきた。
将英「あれが家か?」
案内人「はい、凄く大きいですよ」
華城「宿舎の三倍はあるか」
案内人「鍛練のできる空間もありますので是非お使いになってください」
将英「家事をやってくれる人がつくと聞いたが」
案内人「華城様が必要ないとおっしゃっていたので、付けておりません」
美月「要らないの!?」
華城「『十人』で暮らすんだろ」
無理無理無理無理無理無理!!!
翔斗「家事の割り振りは後で決めるか」
華城「ああ」
案内人「では、私はここで」
案内人が去っていった。
将英「とりあえず全部屋回ってみるか」
俺「そうだな」
見ていくと、それぞれの部屋に『清次』『将英』と看板がかけられていた。
俺「将英と剛斗の部屋はちょっと広いし高いな・・」
将英「広くないと困るからな」
俺「まあそれもそうだな」
霧島「ここが台所か」
雷煌「広間すごい広いですね!!」
俺「広間だからな」
美月「いちいちそういう事言わないの」
叱られた。
将英「では、緊急会議を始めるぞ」
とてつもなく重い空気で会議が始まった。
火蓮「また始まってしまったか・・・・家事の割り振りじゃな?」
霧島「ああ。これはかなり重要だ」
華城「正直、術を活かせるもので決定でいいと思うが」
剛斗「オレのすることがないぞ!!!」
華城「まず、風呂を沸かすのは了斎でいいか?」
了斎「ああ。構わない」
将英「家の掃除は二人にしよう」
俺「誰でも良いな・・」
将英「サボらなそうな雷煌と翔斗にしよう」
了斎「清次は絶対にさぼるからな」
悔しいが否定できない。
華城「料理が一番の問題だ」
将英「オレがやる」
俺「え? 将英!?」
将英「オレが作る。お前たちに作らせるのは心配だ」
了斎「出来るのか?」
将英「今日オレが晩飯を作る。そこで判断してくれ」
華城「わかった。食べ物の買い出しは」
将英「オレがやる」
俺「また将英!?」
将英「移動が早いオレが一番じゃないか?」
翔斗「まあそうだが・・良いのか?」
将英「オレは構わない」
華城「洗濯は川への移動もあるから大変だ。二人にしよう」
俺「俺洗濯でいいか?」
将英「まあ、洗濯はサボったらすぐにバレるからな・・良いぞ」
俺「俺がサボる前提で言うな!」
華城「あと一人は・・」
火蓮「妾がやろう」
華城「よし、決定だ」
俺「剛斗って家事出来ないよな・・・・? どうする?」
将英「剛斗は皆を起こす係だ」
剛斗「任せろ!!!」
確かに一番向いていそうだ。
俺「それって家事なのか・・?」
霧島「まあ良いだろ」
華城「我と美月と霧島が残ったか」
翔斗「どうする?」
了斎「洗濯物を干すのは誰がやる?」
美月「アタシがやる!」
華城「わかった。決定だ」
翔斗「華城と霧島か・・・・」
俺「華城って参謀だし忙しそうだから、家事は俺たちに任せてくれていいよ」
華城「いや、それは申し訳ない」
美月「いいのいいの。アンタは優しすぎ!」
華城「そうか・・感謝する」
俺「霧島はじゃあ・・」
翔斗「将英の料理の毒見か?」
将英「オレを信用してくれ」
霧島「それは勘弁だ」
その言い方も失礼だけどな。
翔斗「うーん・・・・どうしたものか」
俺「整理整頓でいいんじゃねえか」
どんどん雑になっていく。
翔斗「もうそれでいいか・・」
将英「妥協も大事だな」
霧島「疲れたから寝るか・・」
華城「ああ。会議終了だ、寝るぞ」
俺「おやすみー」
広い部屋で一人で寝るのは少し寂しいが、窮屈よりはマシだ。
何時まで寝ようかな・・・・




