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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
出世編

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三十話 与根川太一

 華城と美月が城に行ってしばらく経ったがまだ帰ってこない。

まさか、羽音に・・いや、今は目の前のことを考えよう。


蒼月「駄目でござるな・・全ての幻影を同時に狙うことで攻撃を当てることは出来るでござるが、人数が減ることで繭への攻撃も弱くなっているでござるよ!」


霧島「どうしようもないな・・」


剛斗「オレが本体を殴れさえすれば倒せるぞ!!!」


?「繭! 山河軍の皆も止まって!!!!」


オレ「は?」

何だ?何が起こっているんだ?特徴からしてあれは羽音だ。ただ、何故繭を止めた・・・・?


剛斗「華城!!」

よく見ると羽音のそばに華城と美月がいる。全く状況が理解できないんだが・・・・


?「繭! 山河軍の幹部の皆はこっちに集まって! 戦いは終わり!!」


華城「宰川軍幹部もこっちに来い! 豪の武士と真栄田軍幹部は絶対に戦を再開せず待機しろ!」

華城も言っているので騙しているわけではないんだろうが、本当に何が起こってるんだ?


オレ「皆、事情は分からんが行くぞ」


蒼月「行って大丈夫でござるか・・?」


オレ「華城が言ってるんだ。とりあえず行くぞ」


蒼月「了解でござる」


      *


 両軍の幹部が困惑した表情でこちらに向かってくる。無理もない。


我「皆、いきなり呼んでしまって申し訳ない」


繭「羽音、これはどういうことだ?」


羽音「繭! もう武士なんてやめよう」

羽音が繭の腕を掴んで必死に訴えた。


繭「何を今更言ってるんだ・・」


羽音「宰川軍の人が言ってくれたの。武士をやりたくないなら武士を辞めて良いって。この人たちがその手伝いをしてくれるの」


霧島「華城、手伝いってなんだ?」


我「山河軍の皆がこちらに加わり、山河を殺害する」


久遠「待て、全く意味がわからない」


我「羽音の話を聞いたんだ。それで繭も羽音も自分の意志で武士になっていないことがわかった。この二人は恋仲だが、武士になることで二人で幸せになることはできなくなった」


繭「羽音! そんなことまで話したのか」


羽音「私はもう武士を辞めたい!」


久遠「お前らは山河殿を慕っていないのか?」

段々と久遠殿も理解してきたようだ。


山河軍幹部「正直、最近は山河殿への不満も高まっています」


我「全てをひっくり返すなら今だ。山河をこの戦で殺害するのは確定事項だ。そのあと山河軍の皆は行き場を失ってしまうだろ? だから宰川軍に入れってんだ」


久遠「確かに、それなら誰も不幸にならないか・・?」


我「話を聞く限り、山河は外道だ。武士を辞めたい者を圧力で抑え込むなどやって良いはずがない。お前たちも本当はあいつを尊敬していないだろう? では、今我らと手を組み、反乱を起こすぞ」


久遠「なるほど・・」


羽音「ねぇ、繭! 協力しようよ! 私はまだ二人での幸せを諦められない。このままこの軍に居ても何も変わらない!」

羽音が必死に説得した。


繭「わたくしは山河殿を最も尊敬してる」

繭の忠誠心が強いというのは元々聞いていた。


我「お前と羽音の幸せを妨害するような奴を尊敬するのか?」


繭「そ、それは・・・・」


我「じゃあ羽音のためにここで下剋上だ」


繭「・・・・・・わかった」


久遠「協力してくれるか?」


繭「刀を交えたからこそわたくしはお主らを信用できると感じた。ぜひここで協力したい。いや、協力してもらいたい」


我「では決定だ」


久遠「だいぶお互いに損害を出しちまったが、痛み分けってことで恨みっこなしだ。お互い軍に指示を出すぞ」

久遠さんが言うと、それぞれ軍に反乱についての説明を行った。


我「山河の居場所は知ってるか?」


繭「わたくしが知っている。着いてきて」

繭についていった。


蒼月「そういえば、三班は何をしてるでござるか?」


久遠「まだ戦ってるかもな。今はとりあえず山河への攻撃に集中だ」


      *


 亜美を連れて戻ってきた。


俺「火蓮! 今治してもらうからな・・」

亜美が火蓮の治療をした。


俺「よく持ちこたえてくれた! 感謝する!」


将英「我儘はもう終わりにしろよ。今回は仲間に関することだからオレも許可したが」


俺「すまん。わかったよ」


火蓮「清次、ありがとう」

火蓮が俺に抱きついてきた。

どうすれば良いんだ俺は・・・・


俺「えーっと・・・・・・何この状況」


了斎「早くしろ清次!」

まずい。


俺「もう立てるだろ、さっさと倒すぞ」


火蓮「そうじゃな」


山河軍兵士・宰川軍兵士「うおおおおおおお!!」

真隣を大群が通っていった。


俺「何だ今のは!?」


与根川「山河軍と宰川軍が一緒に・・・・」

与根川が独り言を言った。


俺「は!? どういうことだ?」


与根川「わたしにも分からない! とにかくここで争っている暇はない!」


将英「オレらも行くぞ」


俺「おう!」


了斎「何だ? 裏切りか?」


将英「それはないと思うが・・」


 俺たちは大群の後を追った。


      *


久遠「繭、暗殺は出来そうか? 暗殺と言っても皆居るが」


わたくし「出来る。報告という体で近づいてすぐに殺そう。近くにいる山河軍の者には皆で説明する」


華城「では任せた」


 落ち着いて首を狙う。一瞬も隙を与えずに切り落とす。


わたくし「大将! 戦況について報告させていただきます」


山河「ああ。一体何が起こっているんだ?」

そうだ。指を指してそっちを見ている間に斬ってしまおう。


わたくし「あちらの方で与根川軍幹部が・・・・」

山河殿が指さした先を見た瞬間、首を斬った。


山河軍兵士「繭さん!! 一体何を!?」

予想通り皆が言い始めた。


わたくし「皆、一回落ち着いて聞いてくれ」


全ての経緯を説明した。


山河軍兵士「じゃあ、俺たちは宰川軍と一緒にこれから戦うってことですか?」


わたくし「そういうことだ。宰川軍はわたくしらに比べて圧倒的に強い。仲間として信頼してもらって良いぞ」

意外と皆あっさりと受け入れた。やはり山河殿への不満はあったようだ。


宰川軍もこちらに来た。


久遠「じゃあ今から与根川軍を潰す」


山河軍兵士「うぉぉぉぉ!!」


      *


 大群がいるところへ来た。風刃術のおかげで与根川よりも先回りできたようだ。

来ると、繭らしき人物と羽音らしき人物と宰川軍の皆が並んで立っていた。


俺「華城! 今の状況は!?」


華城「結論から言う。山河軍で下剋上が起こった。いや、我が起こさせたと言ったほうが良いか」


俺「は?」


華城「細かい事情は後で説明する。とりあえず今は真栄田・宰川・山河の連合軍だ。与根川を潰す」


俺「与根川なら俺たちを追ってもうすぐ来るぞ」

そういった瞬間、後ろに気配を感じた。


了斎「清次!!」

あっぶねぇ・・飛ばされる直前に針を作って与根川に刺した。


与根川「なるほど・・山河軍が寝返ったのか・・・・」


繭「寝返ったなんて人聞きの悪い言い方は気に入らないな。元々わたくしはお前と共に戦いたいなどと思っていない」


与根川「そうですか・・では、わたしがこの手で全員殺して差し上げましょう」

間違いなく術を使ってくる・・と思った瞬間、真栄田が与根川の後ろから現れた。


与根川「ああああ!」

真栄田が思い切り殴ったが、当たりどころが悪かったようでそれほどの打撃にはなっていなかった。


久遠「真栄田! 何で来た!?」


真栄田「吾輩の『影忍術』を忘れてもらっちゃ困るぜ! 遠くの方だって丸見えだ」


剛斗「全て見てたってことだな。じゃあ今のオレたちの敵が与根川だけだってことも分かってるな!」


真栄田「え!!」


俺・久遠・華城「え?」


真栄田「吾輩・・敵だと思って結構山河軍を殺しちゃったんだが」


俺「馬鹿! 何も分かってねぇじゃねえか!」


真栄田「すまない、繭。戦が終わったらすぐに蘇生してもらうよ」


繭「ああ、知らなかったのなら仕方ないよ」


与根川「おのれ真栄田・・・・どうして見えなかった!」


真栄田「吾輩は影忍術で姿を消せるんだよ。お前の部下が死んだのは全て情報収集を怠ったお前の責任だ!!」

真栄田が与根川の顔面を殴った。


宰川軍「やったれ真栄田!!」

完全に勝利を確信し、皆で応援していた。


真栄田「残念だったな・・・・どうやらお前はここで終わりのようだ」


与根川「まだだ・・・・まだ終わっていない」

そう言うと、そこら中で大きな爆発が起こった。


剛斗「大丈夫か!!」


霧島「俺の瞬間移動で逃がせられる限りは逃したが・・・・何人か爆発に巻き込まれちまったみたいだ」


俺「ここに居ないのは・・」


了斎「春日、雷煌、俊平、豊・・・・・・」


将英「豪の武士も何人か死んじまったか」


俺「あの野郎・・爆弾を仕込んでやがったのか」


久遠「すぐに行くぞ、もう爆弾は残ってないはずだ」


全「ああ!」

再び与根川のところへ向かった。


与根川「あれ、皆逃げられたみたいだね。爆発で死んでおいたほうが楽だったかもしれないのに」


剛斗「クッソ!!!!」


久遠「剛斗! 感情に任せて行くな!」


剛斗「だぁぁぁ!!」

剛斗が地面に叩きつけられたが、すぐに剛斗は立ち上がった。流石の打たれ強さだ。


華城「剛斗、もう考えなしに突っ込むな。危険だ」


剛斗「そうだな!!」


与根川「無駄な抵抗はもうよせ、惨めだ」


華城「仲間を失い一人で戦っているお前が一番惨めだ。降伏するなら生かしておいてやるが」


与根川「殺せるものなら殺してみろ」


華城「清次、きっとあの術は連発できない。だから一気にでなく一人ずつ連続で斬りかかるぞ。他の者にも伝言してくれ」

華城が耳打ちしてきた。


俺「わかった」


作戦が行き渡ったので、最初に将英が斬りかかった。

だが、何度向かっても飛ばされる。挙句の果てには蹴り飛ばされて防がれる始末だ。


与根川「ハハハハ、必死に考えた作戦がそれかい?」


俺「クッソ・・・・」


春日「じゃあ行くよ!!」

春日が上から現れ、与根川を縛り上げた。


与根川「な、何だ!!!」

与根川が必死にもがき、倒れた。


雷煌「行きますよ! せーの!」

豊と雷煌と俊平が木の上から現れ、与根川を斬った。


俊平「やったか?」


真栄田「やったぞ!!」


全「うおおおおおお!!」

場にいる全員が歓喜の声をあげた。


 しばらく喜びを分かち合った。


俺「お前たち生きてたのか?!」


雷煌「勝手に死んだことにされて悲しいですよ!」


俺「す、すまん・・・・」


久遠「だが、爆発に巻き込まれたんじゃないのか?」


春日「私は糸を木に引っ掛けて逃げたよ!」


華城「すごい身体能力だな・・・・」


春日「でしょ!! もっと褒めていいよ!!」


華城「すごい」

珍しく華城が素直に褒めた!


俺「雷煌は?」


雷煌「僕の高速移動を忘れたんですか? 爆風なんかよりも僕のほうが何杯も早いですよ!」


火蓮「流石雷煌じゃ!!!」

火蓮が頭をとんでもない力で撫でた。


将英「火蓮、髪が抜けてしまう。辞めてやれ」


俺「俊平はどうしたんだ」


俊平「地下に潜っただけ。簡単でしょ?」


俺「わかりやすいな・・聞くまでもなかったか」


俊平「そうだよ」


霧島「豊さんは死んでるよな? これは亡霊だよな?」


羽音「いや、私亡霊呼んでないよ!」


霧島「じゃあ本物か」


豊「本物じゃ! 失礼な。ワシはちょうど爆弾の居ないところにいただけじゃ」


霧島「何なんだよこのジジイ」


豊「ジジイとは何じゃ!!!」


将英「喧嘩してないで宰川殿のところに帰るぞ。亜美も結城さんも連れてきて皆を治してやらなきゃ」


久遠「そうだな」


美咲「繭と羽音も来ない? 来たほうが説明もしやすいし受け入れられやすいと思うよ」


繭「でも・・良いのか?」


久遠「もちろんだ。ついてこい」


豪の武士「あの、僕たちは・・」

豪の武士と山河軍のやることがない。


久遠「残った君らは・・治療しやすいように怪我人と遺体をここに集めておいてくれ」


豪の武士「はい!!!」

皆が全力で走っていった。


俺「すごいやる気だな・・」


久遠「あいつらもこれから宰川軍だ。優秀な人が増えそうで楽しみだよ」


華城「では、宰川殿のところへ戻ろう」


俺「だな」

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