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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
出世編

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二十九話 背景

華城「そろそろ幹部の一人か二人は倒していると思ったんだが」


蒼月「既に数人倒しているでござるよ。ただ繭には苦戦してしまっているのでござる」


華城「そうか。少し繭を観察しておく」

そういって華城は取り巻きの処理をしながら繭の弱点を探した。

取り巻きの数は将英のおかげもあって順調に減っているが、いつまで経っても繭が攻略できない。


了斎「クソ、まだ与根川軍の幹部も残っているというのに・・」


久遠「三班の皆は与根川軍幹部を狙え! 弱点を見つけられない限り人数が多くても無駄だ!」

久遠さんの指示を受け、俺たちは与根川軍幹部の方へ向かった。


俺「風刃術、やっぱり便利だな」


竜巻を起こしている奴の所まで来た。


俺「どうも、あんたの竜巻は利用させてもらったぜ。あんたのせいで相当仲間が死んじまったみたいだが、今どんな気分だ? 教えてくれよ」


火蓮「挑発し過ぎじゃ」


俺「これくらいが丁度いいんだよ」

竜巻の使い手は全く動じなかった。これはなかなかの精神力・・


将英「あいつはきっと油断している。余裕があるように見えるが実際は隙だらけだ。余裕なふりをしているだけだろう」


俺「じゃあ首を斬っちまうのが手っ取り早いな」


豊「ワシが気を引こう。時を見計らって雷煌はあいつの首を斬るんじゃ」


雷煌「はい!」

豊さんがどんどん敵を斬り捨てていく。


俺「あのじいさん・・まだまだ現役みたいだな」


火蓮「そうじゃな」

俺たちは段々と豊さんの強さを実感し始めていた。


了斎「馬鹿にならないくらい強いじゃねえか、あのじいさん・・・・」

幹部を圧倒している豊さんの姿は、全く衰えを感じさせなかった。


雷煌「完全に豊さんを見てますね。今だ!!」

雷煌が竜巻の使い手の首を斬った。


豊「よくやった」


雷煌「豊さんのおかげです!」


火蓮「与根川軍はたいしたことないみたいじゃな」

山河軍と比較しても圧倒的に弱かった。


?「わたしの軍が弱いだって?」


俺「はっ?」


?「今の宰川軍は何かがおかしい。優柔不断な宰川とは思えない行動ばかりしているが、一体内部で何が起こっているんだ?」

間違いなく華城の影響だが、こいつに答える義理はない。


俺「お前のような雑魚が知ってどうするんだ? どうせここで死ぬんだぞ」


?「わたしがあなた達に負ける? ハハ、笑わせてくれますね」


了斎「お前は何者なんだよ」


?「良いですよ、教えてあげましょう。与根川軍総大将・与根川太一。この名前をご存知ですか?」


俺「知るかボケ」


与根川「そうですか。ではきっちりここで覚えて帰ってもらいましょう。まあ、あなた達が帰ることはありませんけどね!」

その瞬間雷煌が打ち上げられ、地面に衝突した。


俺「大丈夫か!」

駆けつけた火蓮も地面に叩きつけられた。


了斎「何だ!? 一体何を・・・・」


与根川「教えてあげましょう、わたしの使用術は『重力操作』。わたしはあなた達を触れることなく葬ることが出来ますが・・・・どういたしましょうか」


俺「どうもこうもねぇよ、俺は今決めたんだ。絶対にお前を殺す!」

こんなに癪に障る相手は初めてだ。

俺は常に人を舐め腐っているような人間が大嫌いなんだよ!


俺「死ね!!!」

無数の針を与根川の足元に出した。


与根川「おっと、武器の提供をありがとう!」

針を浮かせて周りに飛ばしてきた。


火蓮「がぁ!! くっ・・・・」

火蓮の腹に針が刺さってしまっている。


俺「火蓮!」


火蓮「大丈夫じゃ・・こんな針一本で妾はくたばらない」


俺「でも、血が・・」


了斎「のんきに心配してないでこいつを殺すんだぞ清次!」

了斎が怒鳴った。


俺「でも・・・・」


了斎「お前なぁ! 優先順位を考えろ! 火蓮を助けたい気持ちはわかる! だが、ここで手当をしてる時間はない! だったら! こいつを殺してこれ以上被害を出さないようにしたほうが良いだろ!」

また了斎に怒られてしまった。俺は結局いつも自分勝手な行動を取って了斎に怒られている。

迷惑かけてばっかだな、俺って・・・・

でも、悪い了斎。俺はもう同期を失いたくないんだ。


俺「すまんな、火蓮。今すぐに亜美を呼んでくる!」


了斎「清次!! いい加減にしろ!」


俺「お前は仲間を見捨てろっていうのか!」


了斎「火蓮の治療は戦が終わってから出来る!」


俺「それまでずっと火蓮が苦しむのは良いのか!」


了斎「仕方ない! 武士の定だ!!」


将英「行け、清次」

将英が俺の肩に手を乗せた。


将英「了斎、オレは清次の気持ちもお前の気持ちもよく分かる。オレはここで清次の我儘を聞いてやりたいんだ」


了斎「将英・・」


雷煌「了斎さん! 僕も居るんですから、亜美さんが来るまで持ちこたえられます!」


豊「おっと、ワシのことも忘れないでほしいんじゃが」


将英「清次、亜美を呼んでこい。オレが誰も死なせない」


俺「ああ!」

オレは亜美を探して走った。一班のところで豪の武士の蘇生をしてると思うんだが・・


      *


剛斗「くっそ! これじゃいつまでも本体に攻撃が当たらねぇ!」


我「お前たちはとことん頭が悪いな・・」


美咲「華城、何か考えがあるの?」


我「ああ。何故お前らは一体ずつ狙っていくんだ? 大勢いるのだから複数人で分かれて全ての幻影を同時に斬れば良いだろ」


久遠「聞いたか皆! 次はそれで行くぞ!」


美月「了解よ!」


俊平「そういえばその手があったね・・」


霧島「華城もやるのか?」


我「我は少し城の方へ行く。どうしても気になるところがあるんだ」

そう、羽音が一向に現れないのだ。


久遠「きっと今は城に山河がいる。気をつけるんだぞ」


我「ああ」

城までひたすら走る。我もなかなか体力がついてきたな。


美月「この際、正面から行くわよ!」


我「美月、何で着いてきた!」


美月「アンタ、自分が今の宰川軍で最もと言っていいほど重要な人物なのを忘れないで! アンタを一人にするわけにはいかないのよ」


我「そうか」


美月「それで、どうして城に来たの?」


我「羽音が出てこない。城の中にいるかも知れないから来たんだ」


美月「確かに出てきてないけど・・戦わなくて済むなら良いんじゃないの?」


我「普段ならそう考えるかもしれないが、幹部になるほどの戦力をこの場面で使わないのは流石に違和感がある」


美月「まあそうね・・・・」


我「一番の理由は、羽音こそが繭の弱点の可能性があるからだ」


美月「どういうこと?」


我「羽音の意思かは分からないがもし幹部が羽音を戦場に出すなと言っているとすれば、羽音は誰かにとっての特別な存在だということだ」

さらに、繭は戦いながら城の方をこまめに確認していた。

何か大切なものが城にあるかのように・・


美月「確かに、普通の仲間だったらそこまでしないわよね・・」


我「そうだ。もし繭と羽音が恋仲にあった場合、羽音の首を持っていくことでかなり有利に出来るはずだ」


美月「あんた、やっぱり賢いわね!」


我「繭と羽音が恋仲でなかったとしても、ある程度効果はあるはずだ」


美月「でも、羽音ってアタシと華城の二人で倒せる・・?」


我「倒せる倒せないではない、倒す」


 城の中を探して回ると、か弱そうな女性が心配そうに外を見つめているのを発見した。


我「お前が羽音か?」

女はかなり怯えている様子だった。


?「あ、あなた達は・・・・」


美月「質問に答えてくれるのであれば、アタシたちはあなたを殺さないわ」


?「答えなかったら・・殺されるんですか・・?」

お、答えてくれるのか?


我「ああ、申し訳ないとは思うが仕方ない」


?「いや、駄目。答えられない」

覚悟を決めたような口調になり、女の震えが止まった。


我「やる気か。だが、戦う前にこれだけは答えてもらいたい。お前は羽音か?」


?「そう。私が羽音」

大当たりだったようだ。


羽音「狭い室内での戦闘は苦手なんだけどなぁ・・・・」

羽音が十体ほど亡霊を呼んだ。

これが亡霊・・・・見た目は半透明といった感じか。力はどうだろうか。


我「はっ!」

三体ほど斬ったが、全く手応えがなかった。空を切っているのとあまり変わらないが・・亡霊だからそれも当然か。


我「美月は亡霊の処理を頼む。我が羽音を」


美月「了解!」

美月が華麗に亡霊を倒していく。室内だが問題はないようだ。

我の術なしの戦いだと羽音を仕留めきることが出来ない。我もまだまだか・・・・


美月「華城! 交代するわよ!」


我「わかった!」

我が亡霊を相手する番だ。美月なら羽音にも勝てるかもしれない。


美月「アンタ、幹部の割にたいしたことないわね。コネで上がってきたのかしら?」


羽音「うるさい!」

美月はかなり余裕がありそうだった。


美月「華城! もう殺しちゃって良い?」


我「何か情報を吐かせられるなら吐かせたいがどうだ?」


美月「とりあえずこうしておくわ」

美月が刀を羽音の腹に刺した。


我「出血多量で死ぬ前に答えろ。繭との関係を」


羽音「繭の親と私の親の仲が元々良かった。それで幼い頃一緒に過ごしてたんだけど、ある日繭の父親が私達を武士にするって言い出して・・私も繭も元々人を殺すなんて好きじゃなかったんだけど武士にされちゃったの。しかも繭の父親が元々幹部で・・私達が術持ちだったのもあって優遇されて幹部になって・・もう武士をやめられないの」

羽音は泣き出していた。


我「もう少し話が聞きたい。美月、結城さんを呼んできてくれ」


美月「わかったわ」

美月が一気に馬で戻り、結城殿を連れてきた。


我「お前の負傷は直してやるが、急に動き出したりした場合は容赦なく斬る」


羽音「わかった・・」

結城さんが羽音の腕、脚を治した。


我「感謝する、結城殿」


結城「良いのよ。私は戻っておくから気をつけてね」

結城殿が宰川殿の元へ走っていった。


我「では聞くが、お前は繭のことが好きか? もちろん恋愛関係でという意味だ」


羽音「好き。でも武士同士で恋愛関係なのを知られちゃったら何をされるかわからないから、ずっと隠してきたの。本当は武士なんて辞めたいのに・・・・」


我「なるほど、繭もお前のことが好きなのか?」


羽音「多分・・・・」


我「今からでも二人での幸せを掴みたいと思っているか?」


羽音「思ってるし、それが実現出来るならとっくにそうしてるよ」


我「そうか・・お前、宰川軍のもとに来る気はないか?」


美月「華城! 何勝手なことを・・」


我「我は参謀だ。忘れるな」


美月「そうだけど・・」


我「我は戦が良いとも悪いとも思わない。だが、戦が好きでないものが戦をするのは悪だ。お前のような普通の幸せを望む人間が武士になり、幸せを失うのは見てられない」


美月「華城・・・・」


我「今すぐ繭を説得しに行く。お前も協力してくれないか」


羽音「わかった・・でもそれが山河殿にバレたらどうするの?」


我「この戦で山河は宰川軍が間違いなく殺害する。間違いなくだ。与根川がどうかは知らんが」


美月「はい、そうと決まったら走るわよ! あと・・斬っちゃったところ、大丈夫?」


羽音「気にしないで」

我らは羽音とともに繭のもとへ向かった。まだ死んでいないと良いのだが。


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