二十七話 反撃の狼煙
蒼月「清次、朝でござるよ」
俺「んー・・・・」
了斎「蒼月、顔に水かけていいぞ」
その了斎の言葉で一気に目が覚めた。
蒼月「流石にそれは良くないでござるよ・・」
俺「良いやつだな蒼月!!」
歳上なことを忘れてひたすらに頭を撫でた。
蒼月「恥ずかしいでござる」
久遠「お前らいい加減にしろよー! 今日がいちばん大事なんだぞ」
俺「朝ごはんはまだっすかー? 久遠さーん」
久遠「まだだ! 全く、もう少し緊張感を持ってほしいものなんだがな・・・・」
宰川「この方がこいつららしくて良いじゃないか」
久遠「宰川殿は甘やかし過ぎだ」
宰川「ハハ、皆反乱を鎮めてくれたんだ。甘やかすくらいがちょうどよかろう」
久遠「それもそうか・・?」
ずっと豊さんは縁側で茶を飲んでいる。普通の老人にしか見えないが、本当に強いのか?このじいさんは。
雷煌「おはようございます、清次さん!」
いつまで経っても雷煌は礼儀正しいな・・
俺「ああ、おはよう。ついに今日だな」
雷煌「ですね・・正直ちょっと怖いです」
俺「敵軍幹部と対峙する可能性があるもんな・・これ以上犠牲者を出すのは御免だ、絶対に勝つぞ」
雷煌「はい!」
俺「火蓮!」
火蓮「なんじゃ?」
俺「雷煌が勝てるか不安そうにしてるんだ。安心させてやってくれ」
火蓮「なんじゃ、こわいのか雷煌」
火蓮が悪い顔をして近づいてくる。
雷煌「清次さん!! いつまでそうやって子供扱いを・・」
俺「雷煌が子供のうちは続けるかな」
雷煌「火蓮さんも悪いです! 何でそんな乗り気でやるんですか・・」
火蓮「妾は安心させてやってるだけじゃぞ、悪いなんて酷いな」
将英「はいはい、雷煌をいじめるのはそこまでにしろ。朝飯だぞ」
俺「はいよー」
戦がある日の朝ごはんは基本的に豪華である。戦の最中にそのような煩悩に苛まれてしまうと集中力が下がってしまうため、『腹が減っては戦はできぬ』という言葉は的を射ていると思っている。
春日「え! 宰川軍のご飯めっちゃ美味しいじゃん! 何で真栄田軍は糞みたいなものしか出さないわけ?!」
真栄田「料理人が居ないんだよ・・・・」
春日「何でなの! そろそろ雇いなさいよ!」
俺「全然慕われてないんだな、真栄田って」
真栄田「そんな事は無いぞ。心根では皆大切に想ってくれておる」
霧島「へー」
驚くほど適当に流した。
朝食を終え、五時になるまで作戦の改善案を皆で出し合った。
久遠「よし、では出発するぞ。準備はできてるか?」
全「はい!!!」
豪の武士も加わり、五十人ほどで野原を駆けていく。
反乱の際に豪の者も減ってしまったな・・・・
雷煌「また三時間の移動ですね・・」
蒼月「大変でござるな」
久遠「更に今日は暗くなるからな。大変だぞ」
美月「そうね」
爲田城から少し離れたところに来た。
久遠「では、もうここから班別行動に移る。次に皆が揃うのは奪還が成功し、城に帰る時だ。正直ここで『武士として命を捧げ・・』と言いたいところなんだが、オレは何よりお前ら仲間を失いたくない。誰ひとり欠けずに圧勝する、これが命令だ! 行くぞ!」
全「うぉー!!!」
大きく声を上げたかったが、気づかれてしまうので皆控えめだった。
三班で移動を開始した。ここから南西にしばらく移動すると倉庫や広い道が見えてくるはずだ。
ちなみに、三十人前後いる豪の武士は一班の援助をすることになっている。
将英の風刃術は静かかつ迅速に移動することが出来るのでこういった場面に最適だ。
将英「倉庫が見えてきたな。オレと雷煌と豊さんは幹部が出てこないか見張っておく。清次は道の破壊、火蓮と了斎は倉庫に放火だ。清次は一人で行動することになってしまうが、万が一敵に遭遇した場合はすぐにオレたちのところに戻ってこい」
俺「わかった。行ってくる」
与根川軍と山河軍を繋ぐ道はかなり整備されていた。こんなの短期間で仕上げられるものではない。俺らが思っていた以上に前から同盟を結んでたのか・・?
まあいい。これを破壊して荷馬車が通れないようにするだけだ。
轟音とともに大きな地割れが起こった。きっと敵には気づかれちまうけど問題ない。
山河軍兵士「おい何だ今の音は!」
山河軍兵士「こいつ・・連合軍じゃないぞ! 敵だ!」
やはり敵が出てきた。だが五人くらいしか居ないからさっさと殺しちまうか。
俺「俺は腹が減っただけなんだ。飯をくれたら帰るよ」
山河軍兵士「う、嘘をつくんじゃない! この地割れはなんだ!」
俺「なんだろうなぁ? 俺にもわかんねえよ」
煽りすぎたかもしれないが、敵の判断能力を下げるには十分だったようだ。
山河軍兵士「いい加減にしろ!!」
五人が正面から斬りかかってくる。
俺「斬りやすくしてくれてありがとうよ!」
五人の腹を掻っ捌いた。
山河軍兵士「ぐぁぁぁ!!」
くっそ・・幹部になったから新しい甲冑をもらったってのにもう汚れちまったか。
紫の光が俺に近づいてくる。
増援か?
雷煌「清次さん! 大丈夫ですか?」
俺「雷煌か。俺は大丈夫だ。道も壊したから将英たちのとこに戻るぞ」
雷煌「はい!」
*
火蓮「これが倉庫じゃな・・中身を頂きたい気持ちもあるんじゃが」
わし「食い物はもう十分あるだろ、じゃあやるぞ」
火蓮「じゃな」
倉庫を業火が包み込んでいく。
わし「これで大丈夫だ。そして、敵軍への宣戦布告としても十分だったみたいだな」
敵軍のやつが出てくるのが見えた。
山河軍兵士「お前ら・・真栄田軍か!?」
火蓮「なんじゃ、六人しかおらんのか。つまらんのう」
与根川軍兵士「ハハ、笑わせるな。お前らは与根川軍に勝てると思ってんのか」
わし「思ってる」
与根川軍兵士「舐めるな!」
太刀筋がぶれている。こいつは虚勢を張っているだけなのか?
与根川軍兵士「うあああ!」
敵の悲鳴が響き渡る。わしと火蓮相手は流石に厳しかったみたいだな。
火蓮「雑魚ばかりじゃな」
山河軍兵士「お、お前らぁぁ!」
残った二人が向かってくる。
とりあえず相手の腕を切り落とし、刀を落とした。
山河軍兵士「や、やめろ!!」
火蓮「先にかかってきたのはお主らじゃよ」
敵の刀を腹に刺しておいた。
わし「わしら・・すごい悪人のようなことをしてるな」
火蓮「一方的な殺戮ならそうかもしれんが、これは戦じゃ。殺し方をどうこういう者はおらんじゃろ」
それもそうか。
わし「将英たちのところに戻ろう」
*
ずっと見張っているが、幹部が出てくる気配がない。
雷煌「倉庫が燃えてますね! 二人は大丈夫でしょうか・・」
オレ「きっと大丈夫だ」
豊「ワシがあそこに突っ込む。もし敵が居たらこっちに誘導するから加勢するんじゃ」
オレ「それは危険すぎる」
豊「なに、気にするでない。捨て駒として扱ってくれといったじゃろ。それに、あそこは嫌な気配がする」
豊さんが走っていった。
雷煌「命知らずですね・・」
清次「あれが歴戦の猛者か」
小馬鹿にした口調で言う。
山河軍兵士「うあああ!」
倉庫の方から悲鳴が聞こえた。
オレ「今の悲鳴は・・敵のやつだな。二人ともうまくやってるみたいだ」
清次「そうだな」
豊さんの向かったところから音が聞こえてきた。
清次「おいまさか・・本当に敵が居たのか?」
オレ「すぐに向かうぞ!」
豊「誘導してくると言ったじゃろ」
すぐ隣に豊さんが居た。
オレ「はっ!?」
豊「もうすぐあいつらがくる。物音を立ててすぐに帰ってきたんじゃ」
山河軍兵士「見つけたぞ! 真栄田軍だな!!」
清次「それがどうした?」
山河軍兵士「それがどうしたじゃねぇ! 何だあの火は!」
雷煌「山火事じゃないですか?」
山河軍兵士「餓鬼・・調子に乗ってんじゃねえぞ!」
清次「幹部ではないみてえだな」
山河軍兵士「何、失礼な! 俺たちは幹部だ!」
にしては弱そうだ。繭や羽音ではないようだな。
オレ「さっさと殺して繭たちを見つけるぞ」
雷煌「はい!」
四人で特攻した。
風刃で出血させたが、流石に敵は丈夫だ。普通に向かってくる。
雷煌「はぁ!!!」
横から出てきた雷煌が雷刀で斬った。
オレ「よくやった雷煌」
雷煌「豊さん! 無理しないでください!」
豊「ハハ、優しい若者じゃな。心配するな、この程度の武士に負けるほど弱っちゃいないさ」
豊さん見た目に合わない俊敏さで敵を斬った。
清次「すっげぇ・・」
清次は目を奪われているようだった。
了斎「おーい! 幹部はまだ来てないのかー?」
了斎と火蓮が戻ってきた。
清次「ちょうど今始末しちまった」
オレ「幹部の中でも弱いやつだったみたいだ」
了斎「そうか・・ここに繭たちは居ないのか?」
オレ「きっとそうだな。他の班に加勢するぞ」
火蓮「じゃが、どこ班のところに行くんじゃ?」
雷煌「二班はまだ潜入できてないと思いますし、一班には既に十分兵が・・」
オレ「いや、ここに居ないってことは一班が繭たちと戦ってる可能性が高い。一班のところに行くぞ」
全「了解!」
*
剛斗「オラァ! 与根川軍ってこんなに弱えのか!!」
みるみる敵が減っていく。やはり幹部以外は相手にならないか・・・・
蒼月「美月殿! 危ないでござるよ!」
飛び上がった美月に斬りかかる武士を蒼月が殺した。初めての共闘とは思えない連携だ。素晴らしい。
美月「ありがとう蒼月!」
再び美月が戦闘を始めた。それにしても月華流ってこんなに美しいものなのか・・戦場だが目を奪われてしまう。
?「一旦下がれ!」
褐色の肌の男が奥から出てきた。きっとこいつが繭だな。
?「我軍の者が世話になった。君たちは何者だ? 何が目的だ?」
オレ「宰川軍幹部の久遠だよ。君たちが真栄田の娘を攫ったと聞いて来たんだ」
繭「なぜ真栄田軍との問題に絡んでくる?」
美月「いちいちそんなことを説明してられるか!」
美月が斬りかかったが、軽く吹き飛ばされた。
やはり幹部は一筋縄では行かないか。
オレ「蒼月、せーので落とせるか?」
蒼月「できるでござる」
オレ「せーの」
繭のもとに雷を落とした。
普通の人間なら死ぬ威力だが・・・・
繭「落雷か。我軍の大将に似ている」
オレ「やっぱり山河軍か」
繭「くっ・・・・!」
繭が斬られている!?
繭の後ろを見ると、晃牙が居た。雷を見て戻ってきてくれたんだな。
オレ「よし、今だ皆!」
集中攻撃をしようとしたが、繭の体に刃が通らなかった。
まさか!
晃牙「伏せろ!」
晃牙が言ったが、既に豪の兵が数人死んでいた。
オレ「それは繭の幻影だ! 本物は今斬ってきたやつだ!」
蒼月「待つでござる。今斬ってきた者も足跡がないでござるよ」
オレ「クソ! 本物はどれなんだよ1」
周りに繭のような人間が何人も居る。この中から本物を見つけて殺さなきゃいけないのか・・・・
晃牙「あれ、本物」
晃牙が指さした。
オレ「なんで分かるんだ・・?」
晃牙「時間、遡った。幻影の起点、探した。あいつ、本物」
感心している暇はなかった。
オレ「そうと分かったならいくぞ!」
本体を斬りにいったが、薙ぎ払われてしまった。
剛斗「駄目だ! 正攻法では倒せないぞ!!」
オレ「せめて清次たちが来てくれたらな・・・・」




