二十六話 決戦前夜
会議室に来た。
ここに来る途中、ずっと剛斗と春日が大声で喋っていた。確かに相性良さそうだもんなぁ、あの二人。
良くも悪くも頭を使って生きていないと言うか。
剛斗の場合戦場でも頭が回らないのは困ったところだが、春日さんはどうなんだろうか?
そんな失礼なことを考えていると会議が始まった。
華城「では、明日の奇襲作戦について話す。これから説明する作戦は全て我が考案したものだから、何か気になる点があったら言ってくれ」
同期組「はーい」
華城「奇襲をすると言っても全員で城に突っ込んだら意味がない。だから三つに班を分けて戦おうと思っている。まず一班は、連合軍の武士に攻撃を仕掛けて宣戦布告する班だ。この班は言ってしまえば囮だが、ある程度敵を殲滅したら他の班に合流してもらい加勢してもらいたい」
俺「人選は?」
華城「最後にまとめて発表する」
俺「了解」
華城「二班は、城に潜入して真栄田の娘を救出する班とする。忍び込む技術や逃げ足が必要になるが、他の班に比べ戦闘の機会は少ないだろう。一班と同じく救出に成功したら他の班に合流してもらいたい」
霧島「真栄田の娘は城の中にいるって確定しているのか?」
華城「調査員によると城内の三階にいるようだ。俊平、合っているか?」
俊平「うん、間違いないと思う」
華城「三階がどのような構造か判明していないが、入り組んだ構造になっている可能性もあるから二班には注意してもらいたい」
真栄田「城にも罠が設置されている可能性は?」
華城「罠が設置されていても問題ないような人選にしてある」
久遠「流石だな」
華城「最後に三班だ。この班には城の南西にある倉庫を破壊してもらい、資源の補給経路を断ってもらう。これによって万が一明日のうちに決着がつかず長期戦になったとしても、食料を切らせて追い込んでいくことが出来る」
宰川「なるほど。隙がないな」
参謀となった華城はより一層有能になっている気がする。
華城「残りの細かい動き方は班員を発表してから説明する」
剛斗「よし、オレはもちろん一班だよな!?!?!?!?」
華城「一班、『剛斗』『美月』『久遠』『蒼月』『晃牙』に真栄田軍幹部を四人加える。班長は久遠だ。最も戦闘が多くなるのはこの班と思われるから戦闘に特化した剛斗と美月を入れた。現地での指示は久遠に任せてあるからしっかりと従うように」
剛斗「やっぱりオレは一班だよな!!!!」
華城「次に二班、『霧島』『信雄』『俊平』『美咲』『春日』『我』だ。班長は我が務める」
俺「待て、華城もやるのか!?」
華城「この役目は戦闘が少ないから大丈夫だ。それに、皆も我が居たほうがやりやすいだろ」
了斎「確かに心強いけど・・」
信雄「僕が入ってる理由はなんですか」
華城「単純に小柄だから見つかりにくいと思ってな」
信雄「なるほど」
華城「もう分かっていると思うが三班も言っておこう。『清次』『了斎』『将英』『火蓮』『雷煌』『豊』に真栄田軍幹部を四人加える。班長は将英だ」
久遠「やけに人が多いな、この班は」
華城「戦闘の機会は一班に比べて低いと信じているのだが、あまり信じたくない情報が入ってきてな」
久遠「どんな情報だ?」
華城「倉庫の付近に山河軍幹部が待機している可能性があるという情報だ」
俺「前にも言ってた『繭』と『羽音』か?」
華城「幹部が居るとしたら、その二人がいる可能性も高い」
霧島「なんで山河軍幹部が与根川のとこに居るんだ?」
宰川「おそらく与根川軍幹部も山河軍の領地に居るのだろう。お互いに幹部を交換して近くに置くことで裏切れないようにしてるんだ」
俺「両方とも人質を取っているようなものか。信用してないんだな・・・・」
真栄田「この世は純粋な者ほど損をする。それぐらい疑り深い方が成功するってことだろう」
将英「翔斗がどの班にも入ってないのは何故だ?」
華城「翔斗には城の防衛で獅電さんとともにここに残ってもらう」
翔斗「そうか」
俺「その二人がいるなら余程のことがない限り大丈夫そうだな」
その後も会議は続いた。
途中から退屈になったのか、春日は居眠りをしていた。
本当に自由人だ。
久遠「全体での話は終わりにしよう。あとは各班で作戦会議をしてもらって良い。地図はここにあるから自由に使ってくれ」
全「了解!」
*
一班の戦略を練るため個室に来た。
オレ「とにかく最初に敵に気づかれるのがオレたちの役目だ。だから出来るだけ派手にやりたい」
剛斗「オレが敵を蹴散らしてやる!! 城に死体を投げつけるのもありだな!!」
オレ「まあ、剛斗は自由にやってくれ」
その方が剛斗の力を発揮できる。
剛斗「おう!!」
美月「アタシの光刀は夜中なら結構目立つかもしれないわね」
オレ「それもありだな」
蒼月「拙者は何をしたら良いでござるか?」
オレ「そうだな・・蒼月は普通の刀での戦闘は得意か?」
蒼月「うむ、術を使わない戦いも得意でござるよ。というか、流浪していた頃は術を使わずに面倒事を解決していたでござる」
オレ「そうか、では基本的に術を使わず美月と共闘だな」
美月「アタシの光刀、試させてあげるわよ」
蒼月「光刀でござるか?」
美月「そう、刀の切れ味を上げられるのよ。しかも戦うのは夜だからもっと効果が強くなるかもしれないわね」
蒼月「便利でござるな・・!」
オレは班長だから無闇に戦闘することは避けたい、班員の状況が見えなくなって指示を出せなくなるなんてのはあってはいけない。
オレ「晃牙は真栄田軍で一番強いんだよな? 正直オレは自由行動してもらってもいいと思ってるんだけど・・」
晃牙「久遠、指示出す、俺、従う。それまで、自由」
あー、本当に話すの苦手なんだ・・・・
まあ言いたいことは通じるし、優しそうだから良いか。
そして何より落ち着いている。
やはり、強い武士に共通している点は『落ち着き』だ。
オレが強くないと言うことではないが、軍の中で筆頭となる武士は基本的に冷静だ。
でも、オレは感情を大切にしたい。人の感情を動かすことが出来るのは『感情』だけだ。『理論』ではない。
獅電や晃牙を否定する気はない。ただ、オレみたいな武士が居ないと皆操り人形のようになってしまう。
美月「久遠さん、なんでずっと手の平を見つめてるの?」
オレ「いや、虫が居たんだ」
剛斗「手に居るんだな!?!?!? オレが殺ってやる!!!」
オレ「いってぇぇぇぇぇ!! お前、何がしたいんだ!?」
剛斗「今のできっと虫は死んだぜ!!!」
美月「どうしようもないわね、こいつ・・」
蒼月「どうしようもないでござるな・・・・」
そう笑っていると、急に晃牙が蒼月の腕を叩いた。
蒼月「いたっ・・何でござるか?」
晃牙「虫。いきなり、ごめん」
晃牙の手を見ると、潰れた虫がへばり付いていた。
オレ「今回は本当に虫だったんだな・・・・」
美月「ん、今回は? 久遠さんは虫じゃなかったの?」
オレ「い、いや! 何でもない。とりあえず明日の動き方は剛斗が特攻、美月・蒼月で共闘、晃牙は何か無い限り自由行動。オレは皆の補助をしながら指示を出すよ。真栄田軍幹部の四人には剛斗の補助をするように伝えておく」
もう勢いで終わらせよう。
蒼月「了解でござる」
剛斗「わかった!!!」
オレ「では解散!」
*
我「では作戦会議を始める」
春日「一体何の作戦?」
我「まず、城への入り方が問題だ」
春日「正面から『おじゃましまーす』でいいでしょ!!」
我「何もかも駄目だ。爲田城と同じ構造であれば櫓の部分から入ることが出来る」
美咲「櫓には見張りが居るよね・・」
我「問題はそこだな」
春日「私の鋼糸術で縛ってあげよう!!」
我「その手があったか」
美咲「櫓に入るときはどうするの?」
我「それは・・・・霧島の瞬間移動だな」
霧島「わかった。夜中に霧まで発生させたらほとんど俺たちのことは見えないだろうぜ」
美咲「完璧!」
我「ただ、遠すぎると霧島の瞬間移動で届かない。回り道していくか?」
霧島「俊平の土遁術って他の人を運べないのか?」
俊平「出来ないね・・オレ一人しか移動できない」
霧島「信雄の植物操作もここでは使えなさそうだよな・・」
春日「城の近くをお花畑にして、敵軍が見惚れているうちに潜入しちゃおう!!!」
我「春日、一回黙ってくれ」
信雄「霧で身を隠しながら行くしかなさそうですね」
我「まあ、問題はないだろう。見つかったら殺すだけだ」
美咲「そうだね!」
ただ、一番の難関は真栄田の娘の奪還だ。城の三階にいる可能性が高いとはいえ、奪還は至難の業だ。城の外に出るだけではいけない。真栄田と宰川殿のもとまで連れて行く必要がある。
また遠回りをしていくかのか・・・・?
我「娘を見つけたあとは・・」
美咲「まず霧島の瞬間移動で外に出るよね。でもそこから宰川殿のもとまでどうやって・・」
我「霧で身を隠しながら回り道を再びやるか?」
信雄「途中で敵に遭遇したら、娘さんを守りながら戦うんですよね」
我「きっとその頃には一班か三班に合流できる。我らだけで戦う必要はないだろう」
俊平「なら、何とかなりそうだね」
我「うむ、では残りの部分では随時我が指示を出す」
全「了解!!」
*
将英「じゃあ始めるぞ」
了斎「あーい」
気の抜けた返事をする。
将英「まず倉庫の破壊と補給経路の断ち切りだ。ここは清次・火蓮・了斎以外に適任がいない」
オレ「へへ、当たり前だろ」
火蓮「妾と了斎が倉庫に火をつけ、清次が地割れで道を閉ざすということじゃな」
雷煌「完璧ですね!」
将英「だが、オレたちが最も危惧すべきは山河軍幹部との戦闘。今のところ確定しているのは繭と羽音の二人だけだが、現地にはもっと幹部が居るだろう。清次たちが補給経路を断っている間にオレたちで幹部の気を引いて時間を稼ぐ。できるだけ早くオレたちのところへ来て加勢してくれ」
俺「わかった」
俺「将英・雷煌・豊さんと真栄田軍幹部の四人。敵軍幹部の一人や二人くらい倒せそうだな」
了斎「というか、そもそも山河軍はあそこに本当に居るのか?」
将英「分からないが、常に最悪の状況を想定しておくのは大切だ」
豊「お前は若い割に考え方がしっかりしとるのう」
将英「お褒めに預かり光栄だ。ここで再び繭と羽音の情報を再び読み上げる。きっと火蓮たちも忘れているだろうからな」
雷煌「助かります!」
将英「繭。幻影の劇といった特殊な術を使う褐色の肌で細身の男。性格は堅実で将軍に対しての強い忠誠心がある」
了斎「わしらの両親の幻影を見せてくるかもしれないという話もあったな」
将英「ああ。華城曰く『足元を見ることで幻影か本物か判断できる』とのこと。足跡がつくかに着目しつつ戦うのが良いだろう」
火蓮「足元を見る余裕が戦闘中にあるかが問題じゃな」
雷煌「ですね・・」
将英「次に羽音、黒髪の女だ。亡霊を呼び起こし戦闘に参加させることが出来る。羽音自体の戦闘能力は大したことないが、蔵兵衛などの亡霊を呼び起こした場合はかなり面倒なことになるだろう」
俺「蔵兵衛の亡霊が出てきたとして・・・・本物の蔵兵衛と比べて強さはどうなんだ?」
将英「それはまだ分かっていない」
俺「そうか・・」
了斎「もう話すことはないか?」
将英「そうだな。幹部をもし倒すことが出来たらすぐに二班へ合流しよう」
火蓮「了解じゃ」
将英「真栄田軍幹部の四人にもあとで話しておく。では解散」
全「よし!」




