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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
出世編

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二十五話 用意周到

 俺は今日は早く起きた。

なぜなら今日は、与根川軍領地まで向かって罠を破壊する日だからだ。

向かうのは、俺と霧島と雷煌と久遠さんと蒼月の五人。

基本的には気づかれずに壊すことが出来るだろうが、万が一気づかれたとしてもこの五人なら殺すことが出来る。


久遠「はぁ~」

あくびをしながら久遠さんが起きた。


久遠「お、清次はもう起きてたのか」


俺「朝から仕事ですから」


久遠「そうだな・・」

軽い朝食を済ませ、俺は少し庭で体を動かすことにした。


久遠「皆が準備できたら呼びに来る」


俺「わかった!」


 大掛かりな罠であれば地割れで壊すことができる。小さくて目に見えないようなものは針を突き上げて壊すことが出来る。

地割れでも壊せなかったら・・・・いよいよ雷の出番だ。急に雷を落としたら怪しまれるだろうから・・久遠さんに雨を降らせてもらうか?蒼月の風雷術も使って悪天候を再現するのもありだな・・・・

刀を振りながらそんな事を考えていた。


久遠「清次! 城に戻ってこい!」

久遠さんに呼ばれ、俺は広間まで戻った。


華城「では、今日の作戦を結決行するにあたって注意すべき点を話しておく。まず、敵に見つからないことだ。全ての罠を壊せとは言っていないから、確実に壊せるものを順に狙っていけ。もし見つかったら、そいつが声を出す前に暗殺することだ。清次の生み出した針が最も効果的だろう」


俺「だが、敵軍の兵を殺すところを見られた場合はどうするんだ?」


華城「逃走しろ。奴らがここまで追ってくることはない。罠を無駄にすることになるからな」


久遠「よし。逃げる際は霧島の瞬間移動を使うぞ」


霧島「暗殺の際は事前に霧を発生させたほうが良いかもしれないな」


華城「ああ。その辺りは現地で判断してくれ」


霧島「わかった」


華城「気をつけろよ、清次。無茶して死ぬんじゃないぞ」


俺「任せとけ」


宰川「命令だ。誰一人欠けずに戻ってこい」


俺・久遠・霧島「はっ!」


 俺たちは城を出発し、与根川軍領地まで向かった。もちろん正面から行くわけには行かないので遠回りだ。


俺「到着までどれくらいかかりそうだ?」


久遠「長く見積もって三時間」


蒼月「長いでござるな・・・・」


久遠「まあ仕方ないだろ」


しばらく走っていると商人に遭遇した。


商人「やあ、君たちはなんでここを走っているんだい?」

無視しようと思ったが、話しかけられてしまった・・


久遠「どうも! あっちの方の村に腕利きの刀鍛冶が居るって聞いてさ。五人で向かってるんだ」


商人「そうか、ついでに俺から何か買っていかないかい?」


久遠「どんな物を売ってるんだ?」


商人「食べ物や道具・・何でもあるよ!」


久遠「お、じゃあ食べ物を見せてもらおうかな」

久遠さんの演技が自然過ぎる。常習犯なのか?

ぼろが出ないように他の四人は喋らないようにした。


久遠「じゃあこの肉とこれとこれを頼むよ。代金はこれでいいか?」


商人「毎度あり!」

商人は笑顔で去っていった。


久遠「そういえば、調理できないな・・」


俺「じゃあなんで買ったんだよ!」


久遠「いやなんか流れで・・」

演技とかじゃなかったんだ。


蒼月「拙者がなにか作るでござるよ」


霧島「蒼月って料理できるのか?」


蒼月「ああ。流浪していた頃は毎日野営していたでござるからな」


久遠「宿とかには泊まらなかったのか・・」


蒼月「刀を持っているから危ないと断られていたでござる」


久遠「そうか・・でも、まだ腹は減ってないよな」


俺「もう少しあとでいいんじゃないか?」


 二時間ほど移動した、


久遠「よし。いい感じの森だな。ここで昼飯を食うか?」


雷煌「そうですね!」


俺「蒼月、いいか?」


蒼月「もちろんでござる」

手際よく蒼月が汁物とご飯を作ってくれた。


俺・雷煌・久遠「いただきまーす!」


霧島「美味そう」


一気にかきこみ、再び走り始めた。


久遠「見えてきたな」


雷煌「今ってどこですか?」


霧島「このあたりだな」

霧島が地図を指差した。

何気に霧島は地理が得意だ。


久遠「この辺一帯に雨を降らせる。準備はいいか?」


俺「蒼月、風を吹かせることって出来るか? 少しでも気をそらせたいんだ」


蒼月「了解でござる」

一気に辺りの天候が悪くなった。


久遠「じゃあ、順番に罠を壊してくか。清次、頼んだぞ」


俺「おう」

霧島が霧を生み、俺が罠を破壊するという流れを十回ほど繰り返した。


俺「小規模なものは針で壊すぞ」


霧島「もう霧は良いよな」

だんだん面倒になってきた。


久遠「与根川軍は見張りが甘すぎるな・・気づかれる気がしないぞ」


霧島「だな」

ほとんどすべての罠を壊した。最後の一つを壊そうとしたその時、与根川軍兵士の声が聞こえた。


与根川軍兵士「おい! 罠が破壊されているぞ!!」


霧島「まずい、逃げるぞ」

霧島の瞬間移動で逃げた。


霧島「あっぶねぇ・・一応気づいたやつは殺すか?」


俺「そうだな」

針を出して暗殺しておいた。悲鳴が聞こえたが気にしないことにする。


久遠「帰ろう。もうすぐ日が暮れるぞ」


俺「疲れたな・・」


蒼月「ここからまた三時間でござるよ」


俺・霧島「はぁ・・・・」


帰りの三時間は何も起こらなかった。


了斎「おーい! 清次ー!」

城にいる了斎たちが呼んでいた。


俺「よし、早く城に戻って晩飯食うぞ!」


雷煌「お先に失礼します!」

雷煌が雷刀術の高速移動で城に入った。


俺「移動できる術って良いよな・・」


久遠「だな・・清次は足元に針を出して出来るんじゃないか?」


俺「久遠さんは俺に死んでほしいのか?」


久遠「冗談だよ」


霧島「俺も行ってくる」

霧島も瞬間移動で城に戻っていった。


俺「三人になっちまったか」


蒼月「拙者らも急ぐでござるよ」

穏やかだな蒼月は・・・・


馬を小屋に返し、城に戻った。


雷煌「あ、清次さんたちも帰ってきましたよ!」


宰川「無事だったか」


俺「命令だからな。怪我するわけにはいかねぇだろ」


宰川「よくやった。罠はどれくらい壊した?」


俺「残り一個のところで気づかれちまってな。残して逃げてきたよ」


宰川「そうか、よくやった。夕食を食べて少し休んだら会議をしようか」


大広間に来た。


久遠「随分賑やかじゃないか」


華城「豪の武士と真栄田軍幹部が集まってるからな」


俺「ここにいる皆で奇襲するってことだな」


華城「一部は城の防衛で残るけどな」


俺「そうか」


色々な武士を見ると、なんとなく見た目で強さが分かるようになってくる。

数人、かなりの強者がいるようだが、それはきっと真栄田軍幹部だ。


宰川「夕食は真栄田軍の幹部もこっちに呼んで食べよう」


俺「皆はもう幹部と喋ったのか?」


了斎「ああ。清次たちが帰ってくるまでやることがなかったからな」


俺「まあそうか」


翔斗「昼飯は食べたか?」


久遠「ああ、道端に商人が居たから買ったんだ」


雷煌「蒼月さんが作ってくれたんです!」


翔斗「へぇー、蒼月は料理ができるのか?」


霧島「すっげぇ美味しかったぞ」


蒼月「それほど上手いわけでもないでござる」

照れくさそうに笑った。

本当に美味しかったけどな・・


久遠「清次、地割れを連発してたが体力は大丈夫か?」


俺「ああ、小さな地割れしか起こしてないから問題ない」


久遠「よかった」


夕飯が出来上がったので俺たちは食べ始めた。


全「いただきます!」


久遠「なんか気まずいし、食いながら真栄田軍には自己紹介してもらうか」


宰川「わかった。ではまず晃牙から・・」


 しばらく、幹部の自己紹介が続いた。

意外と真栄田軍の幹部は少なく、十一人しか居なかった。

その中でも『晃牙』『春日』『豊』はとても優秀な武士のようだ。

豊さんの年齢を聞いた時はかなり驚いたが・・・・


晃牙「晃牙。よろしく」


俺「短っ・・・・使う術とかは無いですか?」


晃牙「時空術」


真栄田「ハハ、すまんすまん。こいつはずっと山籠りしてたから人と話すのが苦手なんだ」


真栄田「こいつの時空術は近い未来と過去を遡って見る事ができるんだ! だから敵の太刀筋もある程度見える。他にも、道をいつ誰が通ったかも幻視できるんだ」

意外と真栄田は説明がうまい。


雷煌「なるほど・・試しに今何か見せてくれませんか?」


晃牙「もうすぐ、あの少年、催す」


俺・霧島「え・・?」

晃牙さんがそう言って数秒経つと豪の少年が『便所に行ってきます』と立ち上がった。


全「すごい!!!」

皆盛り上がっていたが、晃牙さんの表情は全く変わらなかった。


春日「春日だよ! よろしくね!!!」

かなり明るい女性がしゃしゃり出て言った。


俺「すごい圧ですね・・よろしくお願いします」


春日「宰川軍ってこんな若い子ばかりなんだって嬉しくなっちゃった! 可愛いねー!!!」

と言って美月の髪をぐしゃぐしゃにする。


火蓮「あの・・術はどんなものを使うんじゃ?」


美月「え! 君、見た目は女性っぽいのに声が・・君って男の子!?!?」


火蓮「い、いやっ・・・・」

火蓮が押されている。珍しい!


雷煌「春日さん、火蓮に性別の話はちょっと・・・・」


春日「聞いちゃいけないこと言っちゃった? ごめんねー!!」

無神経~~

駄目だ、うまくやっていける気がしない。


春日「私が使うのは鋼糸術だよ! こんな感じー!」

春日さんが糸で晃牙さんを縛り上げた。晃牙さんにこんなことして大丈夫なのか?


全「おー!!」

皆は普通に拍手して盛り上がっていた。

晃牙さんの表情は全く変わらない。


真栄田軍幹部?「もう十分じゃ、春日」

ずっと気になっていた老人が言った。


春日「はいはい、今やめるって!」

この老人こそが豊さんだったのだ。


豊「ワシは豊じゃ。もう君らと違って若くないけど、負けないように頑張らんといかんな」


俺「豊さんはおいくつなんですか?」


豊「六十八歳じゃ。どうせもうそろそろ死ぬ身じゃからな、捨て駒として扱ってくれ」


霧島「何年武士やってんすか?」


豊「四十年くらいになるな・・もう数え切れないくらいの武士を見てきた」


霧島「すっごいっすね・・・・」

珍しく霧島が敬語を使っている。


俺「術は使うんですか?」


豊「使わん。最近の武士は術にばかり頼ってみっともない」


俊平「はは、オレは術なしでも豊さんには勝てると思いますけどね」

何気に一番とんでもないことを言ってるぞ俊平・・


豊「ハハ、それを言われたらもうワシに返す言葉はない」

意外と器が大きい人だった。自覚があると言ったほうが良いのか?

きっと真栄田軍で一番強いのは晃牙さんだ。春日は強いのかよく分からんが・・・・今までに宰川軍を苦しめてきた三人だから強いのは間違いないか。


 残りの真栄田軍幹部の紹介も終わり、同時に夕食も終わった。


宰川「明日の奇襲の作戦を会議室で立てる。皆すぐに集合だ」


剛斗「よしきた!!!!」


春日「私たちも参加すんの?」


華城「もちろんだ」


春日「やったー!」


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