二十三話 想定外
皆で会議室に来た。
霧島「承諾してもらえてよかったじゃねぇか、真栄田」
と意地悪な笑顔で言った。
真栄田「だが、これはあくまで対等な立場での同盟だ。吾輩が宰川軍に従うことはないし、吾輩が宰川軍に命令することもない」
真栄田もその辺りの線引きは出来ているみたいだ。
まぁ、真栄田も一応大将だからな・・本当はしっかりした人に違いない。
翔斗「新入りはどれくらい武士をやっているんだ?」
新入りって良い方は先輩風を吹かせすぎている気がして嫌だが・・他の呼び方もないので新入りでいいか。
蒼月「拙者は流浪していたのが四年、宰川軍に入って三年でござる」
霧島「三年か。幹部になるにはちょうどいい時期だったんじゃねぇか?」
確かに、幹部になるには通常三年かかると言っていたな・・
蒼月「まあそうでござるな」
信雄「僕は二年です」
武士になってから二年ってことは・・武士になった時は十一歳!?
とんでもない才能だな・・・・
霧島「全然俺たちよりも歴長ぇじゃん・・・・」
そりゃあ俺たちはまだ新参者だ。
美咲「私は八年かな」
八年。すごいな・・
了斎「長っ・・・・まあ二十六だし不思議じゃないか」
失礼なこと言うな・・・・
俺「俊平は?」
俊平「四年かな」
俺と同い年で四年目。俊平も武士を始めた時は十一歳か。
やっぱり早けりゃ早いほど優秀なのかな・・?
霧島「全員俺たちよりも経験豊富か」
了斎「そりゃあそうだ。わしらは武士になってまだ数ヶ月だぞ」
正論。
蒼月「本当におかしい。おかしいでござる」
まあ、数ヶ月で幹部ってありえないよな・・
俺「それは俺たちも思ってる」
というか、俺たちが一番思ってるよ。
火蓮「全部清次のおかげじゃ」
俺「そんなことないだろ!」
俊平「清次がすごいのか~」
俊平が真っ直ぐな瞳で見つめてくる。
俺「い、いや・・・・」
宰川「よし。皆揃っているな?」
会議室に入りながら言った。
久遠「ではさっさと会議を始めるぞ」
俺「よし!」
そこまで気合を入れることでもないが言っておいた。
華城「まず、山河軍との戦い方についてか」
宰川「ああ。与根川が敵にいる以上、今まで以上に複雑な戦況になるだろうな」
罠を仕掛けてくる面倒な野郎、与根川太一。
正直一番敵に回したくない奴だ。
了斎「真栄田は奇襲の提案をしてたよな」
真栄田「ああ。あいつらが罠を仕掛ける前に城に突撃するべきだと思う」
ただ、それが可能なのかどうかが問題だ。
既に罠の準備をしている可能性すらあるからな・・
久遠「俊平が加わったのもあって、奇襲はかなりかけやすくなっている。オレも奇襲に賛成だよ」
宰川「なるほど・・だが、奇襲では一切の失敗が許されない。すべてが計画通りにいくことでようやく成功だ。その時次第でなんとかなるものではない」
久遠「普通の戦に比べたら、まあ難しいよな」
圧倒的な力でねじ伏せるという戦法が通用しないからな・・
霧島「でも、うちにはあの『華城参謀』がいるんだぜ?」
華城「待て、過大評価しすぎだ」
と慌てている。
俺「そんなことないだろ、もう俺らはほとんどお前に任せる気だぞ」
なんてったって、参謀だもんな。
将英「宰川殿はどう思う?」
宰川「一旦、奇襲以外の手を考えてみないか?」
やはり宰川殿のいいところはこの堅実さだ。
久遠「そうだぞ。奇襲は作戦を立てる華城への負担が大きい」
掌返しした!!
華城「我は別に大丈夫だが・・・・」
将英「いや、一人に任せっきりは申し訳ない」
優しい。
華城「そうか・・・・」
了斎「罠を無視して特攻・・?」
とぼそっと言った。
俺「殺す気か!」
無茶だろ。
翔斗「清次の地割れで罠を壊せないか?」
久遠「確かに・・・・」
結局俺がいっぱい仕事するのか・・?
華城「それどころか、了斎と火蓮の炎で・・」
美月「過剰に罠を恐れすぎてるんじゃないかしら」
久遠「それはあるな・・」
霧島「久遠さんと雷煌と蒼月は雷が落とせる。罠を一気に破壊するのも苦労しないのでは?」
罠さえ壊してしまえば戦略の幅も広がる。
久遠「獅電、どう思う?」
獅電「罠の破壊と戦を別日にしたらどうだ?」
霧島「確かに・・一気にやる必要はねぇもんな」
久遠「罠を破壊してから一日で仕掛け直す事は流石にできない。そのうちに正面から攻め落としてやるか!」
さすが獅電さんだ!
剛斗「それに決まりでいいよな!!!!」
いくらなんでも盛り上がりすぎ・・
宰川「問題ない。それで計画を続けよう」
俺「真栄田軍はもちろん協力してくれるよな?」
真栄田「当たり前だ。そのための同盟だしな」
久遠「よし、行動は早ければ早いほど良い。五日以内に罠を破壊しよう」
華城「与根川軍領地は北東にある。道中に野原があるから途中で拠点は作れるな」
地図を見ながら言った。
将英「人数はどうする?」
久遠「素早く行動するために人数は絞ろう。宰川軍は豪以上のみでいいんじゃないか?」
戦力としても十分だと考えられる。
宰川「真栄田軍も幹部のみでいいだろう」
霧島「お前んとこは武士の質が低いからな」
霧島の言葉には容赦ってものがない。
久遠「この城の護衛は獅電がいるから大丈夫だな」
雷煌「獅電さんは今回も戦わないですか?」
獅電「ああ」
信念を曲げない獅電さんは流石だ。
宰川「よし、明日与根川軍領地に調査員を送る。そこで罠の位置などを調べてもらおう」
俊平「オレも調査に行きます。地中の移動で気づかれずに調べられると思うので」
久遠「よし、決まりだ。調査が終わったらまた戦略を練ろう」
真栄田軍兵士「伝令です!!!」
顔を真っ青にして兵が入ってきた。
宰川「何事だ?」
真栄田軍兵士「真栄田殿のご息女が・・与根川軍に攫われました!!」
真栄田「何だと!?」
真栄田が大きな音を立てて立ち上がる。
真栄田「警備はどうしたんだ!?」
と怒鳴る。
真栄田軍兵士「警備員はもう既に全員・・・・」
なんてこった・・・・
与根川軍・・そこまで卑劣な手を使ってくるとはな。
真栄田「とにかく、今すぐにでも連れ戻す!!」
獅電「落ち着け、真栄田」
真栄田「落ち着いていられるか! 娘は吾輩の宝だ!」
宰川「それは俺も理解できるが、今焦って突撃しても無駄死にするだけだぞ。お前の娘を連れ戻すというのであれば我軍も協力する。だから感情に任せて特攻はするなよ」
と冷静に諭す。
華城「発覚したのはいつだ?」
真栄田軍兵士「十七時ごろです。ここへの移動で二時間ほどかかってしまいました」
まずいな・・・・
宰川「そうか。二時間以上経っているとなると、既にお前の娘は城まで連れて行かれている可能性があるな」
将英「どうする宰川殿、作戦を変更するか?」
宰川「変更しない。変わらず明日調査員を送る」
真栄田「何故だ?」
華城「お前の娘を隠している場所も調べなければいけない。さらに罠の位置も知っておかないと八方塞がりだ」
確かにここで特攻したら敵の思うつぼだ。
華城「では、基本は今まで通りの路線で行く。だが、真栄田の娘の奪還という任務も増えることになるな」
獅電「申し訳ないが、真栄田にはしばらく待ってもらうことになる。但し、人質として利用できる娘を無意味に殺すことはないだろうから安心しろ」
翔斗「敵軍のやつに好き勝手やられている可能性は?」
獅電「否定できない」
親として一番きついのはそこだろうな・・・・
強姦に夜這いなど、規則というものが存在しない場所ではどうなっているかわからない。
信雄「好き勝手って・・どういうことですか?」
霧島が「信雄、知らないほうが良いこともある」と信雄の手を握った。
宰川「よし、今日のところは終わりにしよう。情報がない以上、有効的な作戦は考えられない。調査結果報告をもとにまた明日奪還作戦を立てよう」
同期で宿に戻ってきた。久しぶりに感じるのは、ここ最近城で寝泊まりしていたからだろうか。
宿主「君たちか。今日は三部屋空いているからね」
入ってすぐに宿主が出迎えてくれた。
俺「はーい」
宿主「食事はどうする?」
将英「食事は城で済ませてきた。明日の朝はお願いして良いか?」
宿主「よし、わかった」
宿主は反乱の件には触れてこなかった。
俺「三部屋となると・・」
霧島「三・三・四か?」
了斎「そうだな。五号室は他に比べて広いから、五号室を四人部屋にしよう」
華城「もう組み合わせは何でも良いや。二号室が霧島、清次、将英。三号室が火蓮、雷煌、翔斗。五号室が我、美月、剛斗、了斎だ」
適当な口調で言った。
全「はーい」
美月「やっぱり華城はアタシと同じ部屋が良いのね」
翔斗「またそうやって茶化す・・」
美月は翔斗に呆れられていた。
二号室に来た。
俺「明日に俺たちの家完成するんだけどな・・」
将英「暮らすのはまだ先になりそうだ」
俺「俺たちに平穏な生活はまだ早いらしいな」
もう半ば諦めているところはあるが。
霧島「てか、与根川の野郎本当に下衆だな・・」
と拳を握りしめる。
霧島の拳には血管が浮かび上がっている。鍛錬を続けるとこうなるんだよな・・
将英「きっと、普通に戦ったら真栄田軍に勝てないと分かってるんだろうな。だからああいう卑怯な手段を使う」
将英の口調は穏やかだが、静かな怒りも感じる。
俺「だが、あいつは甘かった。『宰川軍と真栄田軍が手を組む』という可能性を考えていなかったんだからな」
この二軍が手を組んだら与根川ごとき・・・・
将英「ただ、与根川軍の情報がほとんどないのが不安なところだな」
霧島「もしかしたらとんでもない術を使うやつかもしれねぇ」
と言いながら太ももを叩いた。
将英「獅電さんが爲田城に残るとなると、圧勝というのは厳しいかもしれないな・・」
将英はどちらかというと悲観的だ。
俺「まあ、真栄田軍幹部のお手並み拝見といこうぜ」
だんだん口数が減っていき、俺たちは眠りについた。
*
美月「華城、何か情報はないの?」
華城「もうない。あったら会議の時点で話しているだろ」
華城が悪態をついた。
美月「そう・・というか、新入り幹部のみんなは?」
わし「先代幹部の家で暮らすことになったらしい」
反乱者の討伐によって大量の空き家ができてしまった。
美月「へぇ・・なんか複雑ね」
華城「まあ仕方ないことだ」
わし「でも、結構な数の家が余るよな。使い道はどうするんだろうか・・」
幹部を増やすとしても、また家が全部埋まるほど増えるとは思えない。
わしらが住むわけでもあるまいし・・・・
華城「また今度考えよう」
と寝転んだ。
わし「皆、平気そうだな」
美月「どうしたの了斎、怖い?」
顔を覗き込んできた。
わし「怖いと言うか、娘さんが大丈夫か不安でな」
好き勝手されているかも・・という言葉がずっと頭の中を巡っている。
剛斗「了斎は優しいな!! 大丈夫に決まってんだろ!!」
本当に楽観的だな・・
華城「命は大丈夫だろう。精神的苦痛を与えられている可能性は大いにあるが」
美月「流石に真栄田が気の毒ね・・・・」
*
おいら「今日の清次、寝癖凄かったな」
雷煌「そうですね・・」
雷煌が真面目な口調で言うので、火蓮が吹き出した。
火蓮「朝から仕事ばかりだったし、仕方ないじゃろう」
おいら「あの見た目で面接にいることに違和感は無かったのかあいつは」
雷煌「それにしても、新入りのみんなは優しそうで良かったです!」
火蓮「同期は意地悪ばかりと思っておるのか?」
とにやついて言った。
おいら「そういうところだぞ火蓮」
雷煌「同期の皆さんも優しくて大好きですけど・・また違った優しさというか・・」
ほら、雷煌が困っちゃったじゃないか。
火蓮「雷煌は妾が大好きなのか!!!」
ああ、もう駄目だ。
実は一番おかしいのって火蓮なんじゃないか?
剛斗「っしゃ!!! オレは寝る!!! お前ら静かにしろ!!!」
廊下から剛斗の声が聞こえた。
やっぱり一番おかしいのは剛斗か・・・・
雷煌「ですって。寝ましょう」
と布団を被った。
火蓮「そうじゃな」
おいら「おやすみ」




