二十二話 憩いのひととき
雷煌と信雄のところに来ると、そこには華城もいた。
俺「どうした? なにか聞きたいことがあるのか?」
年少組が集まっている。
華城を年少組に入れるのは少々違和感があるが・・そんな事はいいんだ。
華城「そういうわけではないらしいんだが・・・・」
そう言ってよそに目を向ける。
信雄「僕たち三人だとちょっと話しづらくて・・」
そういうところはちゃんと子供っぽいのか。
俺「信雄って何歳なんだ? 雷煌よりも歳下か?」
信雄「僕は十三歳です」
俺「そうか。華城と同い年だな」
やっぱり華城はおかしいよな・・
雷煌「僕よりも歳下はよほどの事が無い限り入ってこないと思いますよ」
俺「まあそうだな・・というか、雷煌が十二歳にしては強すぎる」
そう言うと、雷煌は照れくさそうに笑った。
信雄「華城さんの方が大人に見えるのはやっぱり落ち着いてるからなんでしょうか・・?」
俺「それだけではないと思うが・・なんというか、会話で使う言葉も華城は大人に近いんだよな」
俺よりも大人だなと思うことがしょっちゅうある。
信雄「へぇ、華城さんって凄いんですね・・」
華城「褒めても何も出ないぞ」
照れてるな。
俺「冷静に考えて十二歳で俺たちと同等の戦力って、雷煌はとんでもないな・・」
俺が十二歳の時なんて・・食べ物を盗んで追っかけられてるだけだったな。
雷煌「流石に清次さんたちは超えられないです」
俺「いや、雷煌が十五歳になる頃にはきっと俺を超えてるよ」
才能の塊だ。
華城「五年後までにこの時代が終わってれば良いんだがな」
確かにな・・
華城のこういうぽろっと言った言葉に時々感心することがある。
華城も根本は平和主義者なのだろう。
剛斗「信雄!! こっちに来いよ!!!」
剛斗の声が聞こえた。
俺「何だあいつ・・まあ良いや、行って来い」
信雄は「はい」と言って、剛斗のもとまで歩いていった。
しばらく三人で世間話をしていると、了斎が
「聞きたいことがあるんだが・・」と言って横に座ってきた。
俺「どうした?」
了斎「反乱の件でどうしても引っかかる部分があるんだ」
そんなのあったか・・?
華城「何だ?」
了斎「華城が本部に行った時、本部に紐を持っている部外者が居たと言ってたよな?」
俺「そういえば言ってたな・・翔斗が『殺害・拘束のために持ってた』って話もしてたな」
そういえばあの時、話が飛躍しすぎてるって思ったな・・
了斎「そうだ。だが、反乱を起こすのであれば爲田城にいるところを確実に狙うって言ってたよな? だったらあそこで紐を持つ必要はないだろ。なぜ華城は本部で紐を持っているというだけでそいつらが反乱者だと思ったんだ?」
確かにそうだ。気にしていなかったが、思い返すとおかしい部分が多い。
久遠「その件、オレから説明しても良いか?」
と言って横から久遠さんが出てきた。
俺「久遠さん? なんでだ?」
久遠「すまんな華城、お前に無理な頼みしちまったせいで疑われちまったか」
華城「気にするな」
一体何を言ってるんだ、この二人は?
了斎「そんで、どうしてなんだ?」
久遠「よし、全部説明するよ」
久遠「実は、反乱に一番最初に気づいたのはオレなんだ。気づいてからすぐに獅電には伝えたんだが、まだ誰が反乱者かは全員は把握出来ていなかったから幹部には言わなかった。そこで、清次たちに鎮める手伝いをしてほしいと思ったんだ」
確かに、戦力として俺たちが居た方がいいのは理解できるが・・
俺「それって関係あるのか?」
久遠「ああ。清次の同期の中でも特に華城は知恵が働くということは知っていたから、信頼も厚いであろう華城に反乱の可能性を伝えてもらいたかったんだ」
まぁ、俺たちは基本的に華城の言う通りに行動してるしな。
了斎「ほう」
久遠「オレが『反乱が起こるかもしれない』というよりも華城が言っていた方が信憑性が高いだろ?」
そうとは限らないが・・
久遠「だから、我はなんとか適当な理由付けをして反乱の可能性を伝えなきゃいけなかった」
了斎「なるほどな・・・・」と頬杖をついた。
俺「それで無理やり紐の話を出したのはわかった。だが、そうなると幹部が紐を持っていた理由がわからないぞ」
雷煌「目印とかですかね?」
俺「あんなに目立つ目印にはしないだろ」
というか、反乱者同士なら誰が反乱者かも把握しているはずだ。目印が要るとは思えない。
久遠「あれは、幹部の術で『紐を持っている者同士で自由に意思疎通出来る』というものだ。それを華城がこじつけに利用しただけだよ」
了斎「何だよ・・」
了斎はもう笑っていた。
話の間抜けさと、華城への疑いが晴れた安心感もあるのだろう。
久遠「だが、結局そいつら幹部は全員反乱者だったんだから、嘘はついてないぞ」
まったくもう・・・・
了斎「殺害の可能性とか言ってたのは、翔斗がただ勘違いしただけか」
華城「ああ。でも都合がいいからそれを利用させてもらった」
俺「そういうことだったのか・・」
了斎「では、本部に居た『部外者』ってのは何だったんだ?」
俺「そういえば本部に幹部じゃないやつが居たって言ってたな」
確かに、いくらなんでもそこまでは説明がつかないはずだ。
久遠「あれはただ手当を受けてた武士だ」
俺「ふざけんな!」
茶化してんのか・・!?
久遠「悪い悪い、結果的に反乱を鎮められたんだから許してくれよ」
了斎が「良いけどさ・・・・」と後ろに倒れ込んだ。
俺「別に俺らは久遠さんも信用してるよ。これからはこんな回りくどいことをするな」
こういう伝え方をされるのは気が気でない。
久遠「ハハ、そうだな」
雷煌「ではこの件は解決ですね」
久遠「だな」
そう言って久遠さんはまた別の場所に移動していった。
了斎「疑ってすまんな、華城」
華城「あれは我にも責任がある。申し訳ない」
俺「まあ、お互い様だな」
それからしばらく沈黙が続いた。
*
俊平「獅電さんとまさか自分が話せるなんて・・・・」
通路でばったり会ってから俊平がずっとこの調子だ。
俊平「獅電さん、本当に術が使えないんですか? 一人で宰川軍の全員に勝てるって聞いたんですけど、それも本当ですか??」
なんでこんなに興奮しているんだ。
俺「術が使えないのは本当だ。宰川軍に勝てるかは知らん」
俊平「そうなんですね・・普段は戦が始まっても戦わないのは本当ですか?」
俺「ああ。無意味に人を殺すのは好きじゃない」
自分の力を誇示するために戦うのも馬鹿らしい。
俊平「凄いなあ獅電さん・・・・」
変な奴だ。
*
美咲「宰川軍の幹部ってこんなに年齢が低いんだね・・・・」
と呟いていた。
俺「先代幹部は大人ばかりだったぞ」
汗臭そうな人が多くて正直嫌だった。
美咲「そうなの?」
俺「うん。俺たちが一気に入ったから年齢が下がった」
同期組で最年長の将英でさえ全体で見れば若いほうだ。
美咲「それは噂で聞いてた。候補生だったのにすぐ幹部に上がったんでしょ?」
俺「うん」
意外と知れ渡ってるんだな・・なんか恥ずかしいな。
美咲「宰川軍って術が使える人が多くない? 他の軍と戦ってると術の使い手はほとんど居ないけど・・」
俺「それは宰川殿が武士を厳選しているからだろうな」
術の使える武士のほうが伸びしろがあるのは間違いない。
美咲「へぇ。確かに豪の人も半分くらいは術の使い手だったかな」
俺「まあ、そういうことだな」
美咲「そういえば、獅電さんは三十三歳って聞いたんだけど本当なの?」
俺「うん」
見た目が若いのは何か理由があるのか、ずっと気になっている。
美咲「年齢差がすごいね・・霧島は何歳なの?」
俺「俺は十四歳」
「わか!!」と美咲が口を覆った。
*
俺「そろそろ夕食か」
剛斗「やったぜ!!!!!!!!!」
うるさ。
久遠「飯食ったら会議だからな。忘れるなよ剛斗」
剛斗「もちろんだ!!!!!」
うるさっ。
結城「はいはい皆さん座ってくださいねー」
夕食が来た。やっぱり豪華!
全「いただきまーす」
将英「そういえば、明日か明後日に家ができるんだよな」
久遠「だな。ようやく」
ようやく・・!
宰川「真栄田」
と急に言った。
びっくりした・・
真栄田「何だ?」
宰川「連合軍と戦うために同盟を結ぶという話、受けさせてもらう」
唐突だ。
真栄田「本当か!」
真栄田は嬉しそうにしていた。
宰川殿は夕飯までずっと返答を考えていたみたいだ。
宰川「連合軍となると流石に我軍だけで戦うのは危険だ。手を組もう」
華城「よし。では会議ではその件についても話す」
真栄田「よっしゃ! さっさと食べようぜ!」
獅電さんと宰川殿以外、大急ぎで夕飯を食べ終わった。
全「ごちそうさまでした!」
「はーい」と言って結城さんが笑った。
俺「俺たちは先に会議室に行っておくから、食べ終わったら来てくれよ!」
宰川「わかったよ」
獅電さんは無言で米を頬張っていた。




