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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
出世編

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一話 残された道

世界観を守るために横文字は使わないようにしていますが、戦国時代には存在していなかった概念や言葉が出てきます。

実際の戦国時代ではなく、物語内の世界においての『戦国時代』と思っていただければ幸いです。

五人の武士が俺たちの前に立ちふさがる。


真栄田軍(まえだぐん)兵士「お前ら何歳だ? やけにいい服を着てやがるな」


俺「それが何だ!」


クソ、路地裏まで追い詰められたから逃げられない・・


真栄田軍兵士「簡単な話だ。お前の持ってる金目のものを全て俺たちに渡せば良いんだよ!」

偉そうにしやがって・・!

カツアゲだ。俺たちが孤児になってからは、もはや日常となっている。

ただ、今までと違う点は、相手が武士なところだ。今まではただのごろつきだったから石を投げて対抗できたが・・・・

こいつらは刀を持っている。下手に反抗したら何をされるか・・・・


了斎「清次(きよつぐ)! わしを置いて逃げろ!」

了斎が二人の武士に体を拘束されていた。


俺「了斎(りょうさい)!!!」

すぐさま走って助けようとした。


武士「何勝手に動いてんだ!」


俺「ぐっ・・」

武士に腹を蹴られた。

地面に付いてる血は・・俺が吐いたのか?


武士「さっさと金目のものを渡せって言ってんだよ。早くしないと・・もっと痛い目を見るぞ?」

仕事も無い。親も居ない俺たちが金目の物を持っているわけがないだろ!


俺「俺たちは何も持ってないんだよ!!!」


 そう叫んだ瞬間、視界がぼやけた。

意識はあるが、体が思うように動かない。

視界と意識がはっきりとしたとき、俺は了斎(りょうさい)に抱えられていた。

何が起こった?


了斎「大丈夫か? 清次」

了斎は無事そうだ。でも何で・・


俺「武士の奴らはどこだ!?」

とにかくあいつらに見つからないようにしないと。


了斎「落ち着け、この辺りは安全だ」

確かに、周りに人影はない。


俺「何が起こったんだ?」


了斎「清次が叫んだ瞬間、辺りで大きな地割れが起きた。敵がよろけている隙を見て俺が溝に落とし、清次を連れてここまで逃げてきたんだ」

地割れだって?

あんな都合のいい時に起きるはずがないだろ。


俺「騒ぎにはなってないのか?」


了斎「もちろん騒ぎになっているよ。でも、わしらには関係ないことだ」

まあそれもそうか・・


俺「まあ、武士には術を使う人がたくさんいるしな・・術で助けられたのかな?」

ただ、術って炎とか水とかじゃないのか?地割れなんて起こせる人がいるのか・・


了斎「そうかもしれん」

了斎がまだ息が上がっている。俺を抱えて走るなんてよく出来たな・・


俺「俺ら、これからどうするんだ?」

頭を抱えていると、背後から足音が聞こえた。

まずい、先刻の武士が追ってきたか。


?「やあ、こんなところでどうしたんだ?」

先刻の武士とは声が違った。逃げた俺らを見て追ってきたのか・・?


俺「なんだよ・・・・」

俺はほとんど人を信用できなくなっていた。


?「いや、こんなところで少年が二人でいるなんて危ないと思ってな」

やけに明るい口調で武士が言う。


了斎「は?」

何だ?俺たちを騙そうとしてるのか?


?「は? って・・・・家はないのか? 君たち」

困った表情で武士が言う。


了斎「ないけど・・・・あんたはカツアゲをしに来たわけじゃないのか?」


?「なんでカツアゲをオレがするんだ?」

武士がより困惑してしまった。

駄目だ、まずはこの人について教えてもらわないと・・


了斎「まず、あんたが何者か教えてくれ」

了斎が座り直しながら言った。

森の中だから尻が痛いな・・


?「オレか? オレは宰川軍(さいかわぐん)幹部の久遠(くおん)だよ。見回りをしてたら森に逃げる君たちを見て、追ってきたんだ」

やっぱり追われてたのか。

宰川軍は、このあたりでは真栄田軍と並ぶ有力な軍で、俺たちはずっと宰川軍領地にある町で暮らしていた。


俺「そういえば、何で宰川軍の領地に、真栄田軍のやつが居たんだ・・?」

あれは服装からして真栄田軍の兵士だった。青を基調とした服装で・・宰川軍は赤色だ。この人のように。


久遠「なに、真栄田軍の兵士が??」


了斎「地割れに巻き込まれて圧死したみたいだが・・服装の色が真栄田軍だった」


久遠「わかった。城に戻ったら伝えておくよ。ただ、それ以外で騒ぎが起こっていないということは・・真栄田軍から抜け出したやつって可能性もあるな。軍に入っているものがわざわざカツアゲなんてするだろうか」

やっぱり武士になったらある程度、安定した生活はできるんだな。


俺「うーん・・」


俺と了斎は目を合わせ、小さく頷いた。


俺「頼む! 俺たちを助けてくれ!」

情に訴えかける以外の手が残されていなかった。


久遠「助けてくれって・・・・どうしたらいいんだ?」

久遠が頭を搔く。


俺「あんたたち宰川軍は俺たちをどう使ってくれても良い! ただ、俺たちを武士にしてくれないか!!」

二人で深く頭を下げた。

軍に入ったら、衣食住は保証されたようなものだ。

今後もずっとその日暮らしを続けるくらいなら武士になりたい。


久遠「いいぞ、喜んで軍に入ってもらおう。まあ、候補生からだけど・・・・君は術の使い手のようだし、宰川殿も喜ばれるだろう」

あっさりとした回答に、俺と了斎は驚いた。


俺「ありがとうございます! ただ、術の使い手って・・・・」

地割れを起こしたのは他の武士のはずだ。


久遠「自覚がないのか? 君が地割れを起こしていたじゃないか」

あの地割れを俺が?


了斎「起こした? 清次が?」

了斎も困惑していた。一体何言ってんだこの人は・・


久遠「ああ、オレは実は一部始終を見ていたんだ。武士に追い詰められた君が地割れを起こしていたところもね」

地割れを俺が・・・・?


 確かに、視界がぼやける前の感覚は初めて味わうものだった。

初めて術を使ったからなのか・・・・?


了斎「術を持ってるのは悪いことではないのでは?」

良い悪いの前にまず信じられないのだが・・・・


久遠「そうだぞ少年、武士として生きるのであれば尚更だ」

確かにそうだろうけど・・もし俺が術を使えるってのが勘違いだったら?

失望されて追い出されるに違いない・・・・


 術を使うというのは他の武士に差をつける最も有効的な手段らしい。

ただ、術の適性はほとんど生まれつきで決まるらしく、いつまでも術が使えない人のほうが多いそうだ。


了斎「なってもいいのか? 武士に」

了斎が改めて聞いた。


久遠「もちろんだとも。着いて来い」

久遠さんが歩き始めたので、俺たちも着いていった。

すぐそばに大人が居るのはとても心強い。

大人と一緒にいるってこんなに安心感があるのか・・・・


了斎「わしは術を使えないのだが・・・・同行してもよいのか?」

了斎を巻き込むような形になっちゃったな・・

まぁ、十年も一緒に暮らしてきた俺たちは二人で一つみたいなもんだ。気にすることでは無いな。


久遠「清次君の友人だろ? 共に生きるのが筋ってものだ。さあ、後ろに乗れ」

久遠さんが馬に乗りながら言った。


了斎「そうか・・・・かたじけない」


久遠「構わんさ」


 ついていけない速度で話が進んでいく。

俺は本当に術が使えるのか?使えるとしても、故意に使えないのであれば戦闘にも役に立たないのでは?


久遠「ちなみに、君の名はなんだ?」


了斎「了斎だ」


久遠「了斎? 名字は?」


了斎「早田(はやだ)


久遠「あの早田家の子か!」

『あの』ってなんだ?有名人か?


俺「有名なのか?」

話を聞くと、早田家というのは有名な家系で、炎の術を代々受け継いできたらしい。聞いたこともなかったが・・・・

了斎は術など使えないが、それはまだ鍛練を重ねていないからなのだろうか?


俺「俺たちは両方術使えるのか?」


久遠「ああ、おそらく。天才が二人も入るとなれば宰川殿も喜ぶと思うぞ」

まだ術を使ってないだろ・・気が早すぎる。


了斎「大袈裟だな」

悪い気はしねぇけど・・

 

 何はともあれ、俺たちの新しい人生がこれから始まる。武士として生きる不安はあるが、もう道は残されていない。

俺と了斎で最強の武士になってやる。


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