百二十一話 暴れ馬
一週間の移動の末、俺たちは爲田城に帰ってきた。
俺「うおぉ、帰ってきた・・!!!!」
民衆「宰川軍が帰ってきたぞー!!」
民衆「勝ったのか!?」
獅電さんが無言で頷くと、そこら中で歓声が巻き起こった。
華城「いつになったら蒼天幕府という名は浸透するのだろうか」
久遠「まぁここはもともと宰川軍領地だからな。仕方ないさ」
かつてない黄色い声援を浴びながら俺達は城へ戻ってきた。
宰川「では、主力以外の皆は解散!」
全「はっ!」
俺たちは大広間に集まった。
華城「我らは星界術師団に勝利したわけだが、この世から術師を根絶したわけではない。他にも術師団は複数存在するからな」
俺「そいつらはどうするんだ?」
華城「まぁ、星界術師団に比べれば数段小規模な組織だ。我らに突っかかってくることはないだろう」
俺「ま、文句言ってきたら普通に殺そうぜ。俺達もう誰にも負けねぇだろ」
伊海「清次。穏便に、ですよ」
俺「あ、はい」
右京「戦いを終わらせるための戦いだからな。星武の乱は」
宰川「幕府の中である程度自由に活動をさせるといえば納得はしてくれるだろう。最低限の規則はこちらで作ればいい」
華城「戦後処理に関することで我から一つあるんだが良いか?」
宰川「ああ」
華城「今までは天下統一中ということもあり戦の途中で命を落とした味方の墓を立てていなかった。しかし星武の乱も終わり、時間にある程度の余裕が出来た」
坂本「墓を立てよう、ってわけだな」
華城「そうだ。骨を埋めることは出来ない人が多いが・・墓があるのとないのでは全く違うと思っている」
俺「だな。みんな時代を変えるために戦ってくれた英雄なんだし」
久遠「清次の銅像を建てるか?」
俺「勘弁してくれ。街を歩きづらくなる」
久遠「えー」
何で残念そうなんだよ。
華城「宮殿を崩してしまった分の弁償は清次にしてもらう」
俺「は!?」
霧島「冗談に決まってんだろ」
俺「お前らよってたかって俺をいじめて・・」
華城「あの瓦礫の山の処理は追々兵士や建設業の人に依頼する。皆は気にしなくて良い」
伊海「ここからは私達でなはなく兵士や市民の皆様が忙しくなりそうですね」
宰川「ああ。星武の乱に勝利したことも正式に発表しなければならない」
久遠「まぁ細かいことは後で決めよう。居残り組以外はもう帰って良いんじゃないか?」
華城「ああ。皆本当にお疲れ様、ゆっくり家で休んでくれ」
同期組「ありがとうございました!」
城を出る前に並んで礼をした。
俺たちだけじゃここまで辿り着けなかったからな・・宰川殿や華城、獅電さんや久遠さん、伊海には感謝してもしきれない。
代わりに頭を使ってくれる人が居るからこそ、俺たちは思う存分刀を振るうことが出来た。
華城「何だ急に・・」
軽い足取りで家に帰り、真っ先に着替えた。
俺「うわー身軽!!! こんな身軽なのか!!」
普段着って最高だな。快適すぎる。
了斎「な」
広間に全員集まっても、やっぱり足りない感がある。
俺「十二人居た同期組も七人か・・」
霧島「寂しくなっちまったな」
いつも場の空気を良くしてくれていた英太。
純粋で常に思いやりの心をもっていた雪村。
美しく、強かだった美月。
みんなの大切な弟だった雷煌。
兄貴分の将英。
また全員揃った状態で話したいし、戦いたい。
まぁでも・・
俺「了斎が最後まで残ってくれて良かったぜ」
了斎「わしは堅実な武士だからな。わしは清次が死にそうなところを阻止し続けた十年間だった」
俺「おい、言い方」
とはいえ、死に瀕した回数は俺が圧倒的か・・
霧島「全員いるのが一番ってのは大前提だけど、最後まで残ったのがこの七人で良かったな、とは思うぜ」
俺「なんか発言量が多い奴が残る傾向にあるな」
火蓮「清次は喋りすぎじゃな」
俺「おい、霧島も同じようなもんだろ」
剛斗「翔斗は全然喋らねぇな!!!!」
翔斗「皆の会話を聞いているだけでおいらは楽しいんだ。それに、剛斗も声が大きいだけで意外と発言の頻度は低くないか?」
それはよく感じていた。
意外と剛斗は人の話を聞く側に回っていることが多い。
剛斗「そ、そんなことねぇし!!!」
俺「実際、俺と霧島が居なかったらお前ら喋んねぇじゃん」
霧島「そうだ、場を賑やかにしてやってんだよ」
ものは言いようである。
翔斗「ありがたい存在だな」
俺「だろ」
了斎「華城って一見大人しそうだけど、結構喋るよな」
全「確かに」
まぁ知性がとんでもないからな。いつも話で不足している部分を華城が補ってくれている。
火蓮「そんなことはいいんじゃ!! 腹が減った!!」
霧島「まだ我慢だ。華城が戻ってきてからどっか食いに行こうぜ」
俺「え、今日って宴じゃないのか?」
了斎「そういえば聞いてなかったな・・今日なのか?」
霧島「流石に今日は皆忙しいだろうしないだろ」
華城が帰ってくるまで昼寝した。
*
獅電「清次たちの役職はどうする? あいつらも大人になる時だ」
宰川「ああ。まず今回の戦で欠けた部分に入れる人を考えよう」
伊海「老中から直政、若年寄から忠勝の犠牲が出ています」
我「うむ。老中に二人、若年寄に四人を追加しよう」
久遠「まぁ、ちょうどいい塩梅だな」
宰川「美咲は老中で良いんじゃないか?」
我「ああ。この場にいるのに役職なしは違和感がある」
美咲「私でいいの?」
獅電「勤勉で生真面目な美咲なら問題ない」
一同が頷いた。
我「もう一人は個人的に蒼月を推薦したい。これは人間性が理由なのだが、皆のために色々と考えてくれそうじゃないか?」
坂本「霧島はどうだ?」
我「論外」
坂本「げっ」
げっ、じゃない。
久遠「了斎はどうだ?」
宰川「生真面目だから了斎も良いと思うが・・あの子をこき使うのは少々心が痛い」
坂本「どういう理由なんだよ」
獅電「了斎は経験の面で少々不安を感じる。蒼月が適任かと」
宰川「では、蒼月と美咲で決定。若年寄は?」
坂本「お、俺の同僚が今から決まるってわけだな!」
我「仕事だからもう少し真剣になってもらいたいが」
坂本「すまん」
我「将英と繭が生存していたら間違いなく入れていたが・・」
久遠「まぁ、ここの四人は同期組でいいんじゃないか? 大して普段から仕事をするわけでもないし」
右京「同期組から四人・・誰が良い?」
我「同期に関しては我が詳しいから独断で良いか?」
宰川「ああ。構わん」
我「翔斗・清次・了斎・火蓮の四人にしよう」
久遠「まあ妥当というか他が駄目すぎるというか・・」
宰川「まぁ、これでいいだろう」
獅電「清次に仕事を教えるのは久遠の担当で頼む」
久遠「待てと!」
宰川「いや、適任は久遠しかいない」
我「同意見だ」
右京「頼んだ」
坂本「あの暴れ馬を抑えられるのは久遠だけだな」
久遠「はぁ・・わかったよ」
組織図を作り直していると、時刻は六時を回っていた。
我「今日は祝勝の宴もある、そろそろ準備に移ろう」
久遠「きたきたあああああああ!!!」
伊海「久遠さん、坂本さん」
無言の圧である。
坂本「はい、わかってます」
伊海「なら良かったです」




