百二十話 結末
清次が崖から一歩を踏み外す直前で、剛斗が走り出した。
剛斗「この野郎おおおおおおおおお!!!」
剛斗が二人を抱えて飛び降りた。
全「は!?」
坂本「待て待て待て待て待て!!!!」
全員が落ちないように下を覗き込む。
剛斗「うおおおおおおおらああああああああ!!!!」
下から響き渡る剛斗の雄叫びとともに、清次が崖の上まで飛んできた。
火蓮「危ない!!」
地面にぶつかる直前に火蓮が下敷きとなり、なんとか衝撃を抑えた。
過呼吸の状態の清次を一旦寝転がらせた。
霧島「剛斗は!?」
下を覗き込むと、大きな物体が崖をよじ登ってくるのが見えた。
我「あれは・・レオナードなのか・・?」
了斎「とにかく、清次が無事か!? 喋れるか!?」
清次「いってぇ・・」
火蓮「大丈夫か!」
清次「ああ・・剛斗が・・」
我「ゆっくりでいい、何があった?」
清次「剛斗が俺とレオナードを掴んで飛び降りて・・水面に当たる直前で・・俺を上まで全力で投げたんだ」
美咲「それでここまで届くの・・?」
我「高さが極端に高いわけではない、剛斗であれば可能性はある」
坂本「それに加えて火事場の馬鹿力だろ? 信じられないほどではねぇな・・」
我は普通に信じられないが。
右京「おい待ってくれ嘘だろ」
崖の下を見ていた右京が呟いた。
宰川「どうした?」
右京「あれ・・剛斗だぞ」
全「はぁ!?」
岩がポロポロと落ちる岩肌を、ひたすらよじ登ってきていた。
霧島「春日、糸で引っ張り上げるぞ!」
春日「了解!」
鋼糸を垂らし、剛斗がつかめるまで降ろしていった。
久遠「いくぞ、せーの!」
皆で引き上げると、手が血まみれの剛斗が現れた。
剛斗「あっっっっっっぶねええええ!!!!!!」
正気かこの男?
我「話は聞いている。とにかく治療を受けて休め」
剛斗「おう!!!!」
どうしてこの状況で元気でいられる??
獅電「レオナードは死んだのか?」
剛斗「水面で血飛沫が見えた! 衝突して普通に死んだだろ!!」
京夏「えーっと・・落ちたはずの剛斗が生きてる理由は・・?」
剛斗「わかんねぇ! オレ体強ぇから耐えたのかもな!!」
霧島「はい、人間じゃありませんコイツ。もっかい飛び降りるか?」
剛斗「殺す気か!!!」
神楽「立ち上がらないでください、剛斗さん!」
剛斗「わ、わりい・・」
シュンとしている。ここまで普段通りだと逆に心配だが。
霧島「んで、今回も馬鹿な真似をした清次は本当に死ぬ気だったのか?」
清次「そりゃそうだろ。あの状況でアイツを殺す方法が突き落とす以外思い浮かばなかった」
我「困った野郎だな・・考える時間は少しあっただろうに」
清次「考えるの嫌いなんだよ。めんどくさいだろ」
清次もいつも通りか。
宰川「これで・・終わったのか? 星武の乱は・・・・」
久遠「いいや、戦ってないのオレたちだけだぞ? あっちを見ろ、皆まだ戦っている」
獅電「さっさと残党を片付ける。術師を幕府の手駒に加えるのは諦めるしかない」
我「致し方なし」
坂本「じゃあ、まだ動ける俺達で片付けてくるか!」
我「ああ」
宰川「同行する」
火蓮「妾も~」
茜「いこっか」
繭「行きましょう」
*
久遠「本当によくやったよ。お疲れ様、清次」
俺「あぁもう本当に怖かったああああ!!!!」
霧島「宰川殿たちが居なくなって本音が出てきたな」
俺「嫌だって考えてみろよ、死ぬんだぞ? 死ぬ覚悟を決めるんだぞ? 見てみろよこの崖」
霧島「ああ、確かに俺じゃ足がすくんで出来ねぇ」
俺「だろ? だろ!?」
右京「チラチラと俺の方を見るな。同意を求めたいのか知らんが」
伊海「革命を起こしましたね、清次が」
俺「やめてくれ、革命は荷が重い」
そんな大それたことはしてないんだよ。
了斎「生きててよかった」
急に抱きついてきた。
俺「おいなんだよ気持ち悪いな!!!」
了斎の肩を押した。
霧島「うわ、ひっど」
右京「清次、人の優しさを・・」
美咲「今のはない」
俺「わかったよ、悪かった了斎」
渋々了斎を抱きしめた。
俺「今気づいたけど・・片腕だから俺、人を抱きしめられねぇ」
霧島「馬鹿だろ」
久遠「大丈夫だ清次、オレも今回の戦で片腕を失った」
俺「やってらんねぇよな武士とか」
右京「本音が漏れてるぞ」
了斎「ただ、これで本当に終わりだ。もうわしらが戦うことはない・・と信じたい」
俺「この一年で一生分戦をした気がする・・もう平和に暮らしたいよ、俺は」
しばらくゆっくり休んでいると、獅電さんたちが戻ってきた。
茜「おしまーい」
俺「おかえり」
火蓮「ただいま、寂しかったじゃろ」
俺「勘弁してくれ、傷が痛む」
火蓮「ひどいのう」
しょんぼりするな。
宰川「術師はおそらく全員殲滅した。今回、勝利のきっかけを作った清次に問おう。今からすぐに城へ戻るか、全員で庭園に残って数日間休んでから帰路につくかだ」
俺「ふっ、一択だぜ」
霧島「どっちだ・・?」
俺「おい、久遠さん、坂本。城じゃないと酒が飲めねぇだろ?」
久遠・坂本「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
右京「終わったな」
伊海「どうして・・」
霧島「終わってら」
宰川「清次の意見を尊重し・・今から帰還する」
坂本「おい清次、一生仲良くしような」
俺「当然だ」
久遠「流石はオレの見込んだ男、分かってるな」
俺「へっ、あたりめぇだ」
華城「今の一件で清次の評価はかなり落ちた。今後、仕事を任せる機会は減るだろう」
俺「お、仕事しなくていいのか俺!!」
華城「その代わり、部屋は没収する」
俺「すみませんでした」
華城「まぁそれは冗談として、おふざけも程々にな。今回は祝勝会ということでお酒も許可するが」
坂本「ありがとうございます、華城さん!!!!」
前に倒れそうなくらい頭を下げた。
伊海「お酒は許しましたが、お城は絶対に汚さないように。もし次汚したら・・分かっていますね?」
久遠・坂本「ひ、ひぃ!」
伊海「返事は?」
久遠・坂本「は、はい!!」
ようやく日常が戻ってきた気がして、嬉し涙が出そうだった。
駄目だ、今泣いたら変な人だと思われる。
既に変な人だと思われてしまっているが。
剛斗「一個不思議なことがある!!!」
華城「どうした急に」
剛斗「オレが飛び降りて清次を上に投げる時、下から若干の浮力を感じた!!」
俺「たしかに俺も感じた。風とかだと思って気にしてなかったけど・・よく考えると不自然だよな」
華城「まさか」
俺「まさか?」
華城「レオナードはもう死ぬつもりだったのかもしれないな」
俺「じゃあ・・」
華城「最後の最後に、清次たちを助けようと悪あがきしたのかもな」
俺「あの野郎・・」
根っからの悪人は居ないな、とつくづく思う。
真栄田、お前もだよ・・・・
庭園に残った全員を整列させた。
宰川「命を賭して戦ってくれたここに居る全員の兵士、そして残念ながらこの場に立てていない兵士、全員のおかげで今回、星武の乱で我々武士陣営・蒼天幕府は勝利を収めることが出来た! 本当に、心の底から感謝している!!!」
全「はっ!」
今回はみんなが言いたいことを好きに話させてもらう。
華城「正直、ここに居るほとんどの人間は我よりも歳上で、我よりも武士歴は長い。にも関わらず、我を信頼し、我の作戦に従い、我に期待をしてくれたこと。本当に感謝している。これからも長い付き合いになるだろう、よろしく頼むよ」
拍手が起こった。
こちらこそ頼むぜ、華城・・!
右京「あー・・話すことを考えていなかったな」
咳払いの後に話し始めた。
右京「天下統一の途中で棚からぼた餅的に手を組ませてもらったが、まさかここまでのことを成し遂げる集団だとは思ってもいなかったよ。君たちと仲間としてともに戦えたことを光栄に思う! 俺はもうこの先長くないがよろしく頼む!!」
再び拍手が起こった。
右京らしい話だ。
坂本「俺か・・どうしようかなっと」
少し考えて口を開いた。
坂本「悪い! 話すことねぇわ! お前ら全員いい奴らだ、愛してるぜ! これからもよろしくな!!」
拍手が起こった。
良くも悪くも坂本らしいな。
京夏「長年敵対していた真栄田軍を味方として受け入れてくれた宰川軍、そしてきっかけを作ってくださった華城殿に心の底から感謝いたします。この恩は今後の仕事で返していきたいと思っております。これからもよろしくお願いいたします!!」
すげぇ・・戦闘の士気を上げるときとはまるで別人の喋りだ。
ここまで状況に合わせられるんだな・・
伊海「皆様のご活躍を一番近くで見ることが出来て本当に嬉しく思います。私の人生、そして伊海軍は宰川軍によって明確に変わりました。新たな景色を見せ続けてくださり、本当にありがとうございます。これからもお願いします!!!!」
久遠「オレも宰川軍ではわりかし古参の幹部になってきたわけだが・・この一年は他と比にならないくらい濃かったぜ! これは本当に皆のおかげだ。いい仲間に囲まれてオレは幸せ者だよ!! あの日、清次と了斎を拾ったオレの判断は正しかった! オレの人生を変えてくれて本当にありがとう!!!」
獅電「とにかく大変な一年だったな。普段は気を抜かないためにこういうことは言わないようにしているんだが・・皆よく頑張った、お疲れ様」
かつてない優しい口調で言った。
駄目だ、泣いちまう!!!
獅電「まぁ・・俺も死ぬまでは宰川を・・いや違うな。幕府を、そして皆をこの刀で守っていきたいと思っている。これからもよろしくな」
全「うおおおおおおおおお!!!」
やはり獅電さんの人気は凄まじい。
坂本「最後はお前しか居ないぞ、清次」
俺「本当に俺が喋んのか・・!?」
了斎「いくんだ、清次」
俺「わかったよ・・」
重い足取りで前に出た。
俺「勝ったああああああああああああああああああああ!!!!!」
全「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺「最高だったぜ、この一年間。まさか俺の腐った人生を変えるのが武士の道だったなんてな、思ってもみなかったぜ。でも、武士になることでこんなに最高の仲間に出会えて、最高の敵と最高の勝負ができた。後悔なんてあるはずもねぇよ! これからも楽しもうぜ!!!!」
全「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
拍手と歓声が巻き起こった。
へへ、我ながら良い喋りをした。
宰川「総員、整列! 只今より城へ帰還する! 直ちに出発準備を!!!」
全「はっ!!!!」
今日の天気は、快晴である!!!!!




