百十八話 もう一度
獅電さんに依頼される任務にろくなものはない。
基本的に一番困難かつ過酷な依頼だ。
俺「念の為聞きますけど・・その任務ってなんですか?」
獅電「ストーンハートは俺が殺し、アストリアはお前たちが殺した。レオナードを仕留めるぞ」
そう来ると思った~~~~。
ついに団長とご対面ってわけですか・・
俺「他にも何人か・・拾っていきませんか?」
流石に責任が重すぎる。
獅電「ああ、そのつもりだ」
霧島「もう動いていいかー?」
怒った口調で聞いた。
神楽「はい。でも、無理はしないでくださいよ? まだまだあなたは必要ですから」
霧島「わぁったよ」
周りを見渡しながら移動し、全体の状況を確認した。
俺「庭園内の術師はもう一握りしか残ってないですね」
坂本「その代わり、濃霧衆の忍も一握りになった」
俺「まぁ、最前線だからな・・」
霧島「仕方ねぇよ。死んだからって全部台無しってわけでもねぇ、アイツらは自分たちの任務を全うしてくれたんだ」
俺「そうだな」
翔斗・伊海・華城・右京のいるところへやってきた。
獅電「翔斗もこっちに合流していたか」
翔斗は濃霧衆の皆を守るために、俺達とは別行動をしていた。
翔斗「ああ。大仕事が残っているんだろう?」
伊海「レオナードと戦う際は、結界を解除しましょうか」
華城「それがいい。こちらも術を使える状態で総力戦だ」
俺「やりたいことがあるんだが・・皆、一回俺についてきてくれないか?」
坂本「次はどんな悪巧みだ?」
どうして俺の考えることは全部悪巧みだと思われるんだ。
俺「レオナードのところに行く」
坂本「はぁ? 気が早いぞ清次」
華城「待て。清次がこうやって唐突な言動をする時は何か明確な策がある時だ。それで悪い結果になったことは少ない。信じよう」
俺は無言で頷き、走り出した。
レオナードを複数の術師が取り囲んでいたが、俺は直談判に向かった。
俺「おいレオナード! 俺から提案がある」
レオナード「君の名前は?」
俺「清次だ」
レオナード「そうか。また会えて嬉しいよ。宰川軍内で起きた革命の原因だったかな?」
俺「革命を起こした覚えはないし、そんな話をする気はない」
レオナード「ずいぶん急いでいるみたいだね。どうしたんだい?」
俺「庭園内の術師も減ってきたところで、一度仕切り直そうじゃねぇか」
レオナード「ほう?」
俺「ストーンハートもアストリアも死んだ。主戦力で残されたのはお前だけとなった今、一度お互いに兵を整理して明日、決戦を始めようぜ」
レオナード「ふむ・・悪くない提案だ、受けてもいい」
俺「んじゃ決まりだな。華城!!!」
華城「話は聞いていた。一度お互いに退くとしよう」
レオナード「了解、全員を転送させるよ」
庭園にいる術師がまるっと消えた。
一体どこに転送されているのやら。
その後、生きている全員を集めて説明をするのはかなりの苦労だった。
まず、宰川殿が状況に理解してもらえなかったしな。
宰川「どういうことだ?」
俺「だから、一回仕切り直すために一日空けようってこと」
宰川「ん? 今日はもう戦わないってことか?」
俺「そうだ! ていうか見てわかるだろ! 敵いないでしょ!?」
宰川「なるほど、理解した」
本当にしてんのか・・・・?
獅電「とりあえず全員に伝わった」
華城「このあと駐屯地を見つけて全員分の飯を配給することは可能か?」
京夏「お任せあれ」
京夏を先頭に馬で俺達は駆けていった。
広い草原に出たところで、京夏が凜花とともに伝達を始めた。
坂本「あのー・・俺たちは何をすればいいんだ?」
京夏「戦闘でお疲れでしょうから、今はゆっくりしていただいて結構です。準備などは私に任せてください」
父親に似ないな・・こんなに仕事ができる人なんだ。
華城「真栄田、育児の才能は飛び抜けていたのかもしれんな」
忠勝「惜しい人を亡くしたね」
俺「本当にな」
本当に全員に行き渡っているかは良しとして、全員が休める場所と飯を手に入れた。
大量に補給物資を持ってきた甲斐があったな。
そのせいで若干移動は遅れたが。
右京「夕飯の準備をしていたらあっという間に夜か・・明日の作戦はいつ考える?」
華城「明日の作戦はない」
俺「ない!?」
あの華城が!?
華城「最後の最後だ。作戦で勝つのではなく、我ら一人ひとりの『心・技・体』で勝つ」
坂本「いいじゃねぇか! そういうの好きだぜ俺!!!」
華城の肩をこれでもかというほど揺さぶった。
華城「なら良かった」
俺「なるほど・・心技体、か・・」
俺に足りていないのはおそらく『技』だ。
了斎は『心』か?
久遠さんも『心』かな・・
そう思うと、獅電さんって本当に欠点がないよな・・
ストーンハートに二度も勝った兵士だ、強くて当然か・・
飯を貪ったあと、華城から『明日の作戦はない』という前例のない作戦会議を行い、全員に伝えた。
将英「あまり気は乗らないが・・死者の報告は」
獅電「雷煌が俺を庇って死亡した」
悲しい。
ただひたすらに悲しい。
あの真っ直ぐな雷煌の目をもう一度見たい。
あの元気な声をまた、聞きたい。
俺「雷煌・・・・」
宰川「直政は精鋭の術師によって殺された」
忠勝「そろそろ僕も、直政さん頼みじゃ駄目ってことだね・・」
寂しそうな目で言った。
茜「彰が私の代わりに術師の攻撃を受けて死んだ」
俺「最後まで心優しいやつだったんだな」
茜「茜の面倒は俺が見るって言ったでしょ、とか変なこと言ってて・・」
泣きながら言った。
了斎「最後まで彰らしい発言だな」
本当に良い奴だったんだな。
繭「信雄と羽音は死亡した。信雄は『皆にありがとうを伝えてください』とわたくしに言った」
翔斗「ありがとうを伝えたいのはこっちの方だよ」
宰川「その通りだ」
羽音を失った繭が心配だが、きっと大丈夫だ。繭は強い。
しんみりとした空気になった。
俺が変えるしかないか。
俺「絶対にこれ以上犠牲を払わずに勝つぞ! 明日はもう誰も死なせねぇ! 死ぬとしたら俺だ! わかったな!!!」
了斎「馬鹿野郎」
頭を叩かれた。
俺「痛って」
了斎「清次も死なないし、誰も死なない。もう完全勝利とは言えないが・・必ず勝とう」
全「おう!」
華城「明日の朝も早い。早く寝よう」
俺達は草にそのまま寝転んだ。
剛斗「起きろおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
今回の起床もやはり剛斗だったか・・
俺「うるっせえふっ飛ばすぞ剛斗おおお!!!」
宰川「朝から元気そうで何よりだ」
華城「朝飯は軽いもので済ませて、早速宮殿に向けて出発するぞ」
握り飯を食べ終わったところで、例に漏れず『士気上げ』の時間となった。
俺「宰川殿、今日は俺がやっていいか?」
宰川「もちろん」
美咲「変なこと言わないでよ・・?」
信用がなさすぎる。
俺「ついに今日、決着となる!!」
一気に緊張が走った。
俺「俺たちは今、自分たちだけのために戦っているわけではない! 今、不安を感じながら帰りを待っている、民衆の思いも背負っているのだ!!!
俺達を信じて待っている人らの期待を裏切りたいやつなんて居ないはずだ。全員、民衆の笑顔を見たいんだろう?
皆の未来は俺達にかかっている! そして、俺らの未来も俺ら次第だ!!
今日は作戦などない、俺たち自身で術師に打ち勝つ必要がある!
決して甘えは許されない! 全員、気を引き締めていくぞ!!!!」
全「うおおおおおおおおおお!!!」
火蓮「意外と清次は何でも出来るんじゃな」
意外と?




