百十五話 最終試合
戦場がめちゃくちゃで何がなんだかわからねぇ!!
誰が生きてて誰が死んでんだ・・!?
さっきあそこにいた彰たち・・彰は死んでるなこれ。
俺「茜! 死を嘆いてる時間はない! 体を動かし続けろ!」
心を鬼にせねば。
茜「清次・・! 助かる!」
正直、蒼月と茜だけでアストリアの討伐は厳しいな。
ただ、アストリアの特性を理解しないと討伐に誰が必要か割り出すことが出来ない。
そういうときに呼ぶのは・・やっぱりコイツだな!
俺「了斎!!」
アイツさえ来てくれたらアストリアにも勝てる!!
アストリア「いいバディを呼んだねぇ~。やっぱり最後までその二人は一緒か」
俺「どうだろうな?」
そんなに体が強そうでもないし、俺一人で勝てるのでは・・?
俺「結局、その杖がねぇと何も出来ねぇんだろ?」
杖ごと貫くように棘を生やした。
アストリア「その程度で封じられないよ!」
棘は一瞬で砕かれた。
了斎「呼んだか!」
血まみれの了斎がやってきた。
俺「呼んだけど大丈夫かお前は」
了斎「全部返り血だ、わしは無傷」
俺「よし・・俺らでアストリアを殺すぞ」
了斎「そう来ると思ってたよ」
俺達二人なら勝てる・・たとて実力で負けていようと、俺らが十年間磨いてきた連携で絶対に殺してやる!!
アストリア「悪いけど、雑魚が二人に増えたところでなんだよ!」
空から矢が大量に降ってきた。
間違いなくアストリアの仕業だな。そういう術も使ってくんのか・・・・
俺「弾いてらんねぇ!」
必死に降り注ぐ矢を避け続けた。
了斎「長いんじゃああああ!!!」
そう怒鳴りながら火球を放った。
アストリア「何そのちっぽけな攻撃」
杖を向けると火球が吸い込まれていった。
アストリア「ごちそうさま」
了斎「火球は効かないか」
アストリア「というか、僕に炎は効かないよ?」
そうとなったら物理攻撃の俺の術しかねぇ!
蒼月「雷はどうでござる?」
そう言ってアストリアのもとへ雷を落とした。
アストリア「言い忘れてたけど、雷とかも効かないよ」
何が効くんだよ!
坂本「おい! お前ら助けを欲しがってたりしないか?」
呑気に出てきた。
俺「そりゃ人が増えるなら助かるけど」
了斎「なんで来た?」
坂本「宰川の旦那が大暴れしてて手に負えねえんだ。俺は逃げてきた」
宰川殿が大暴れ!?
俺「詳しく聞きてえが・・それはアストリアに勝ってからだな!」
坂本「標的はアストリアだな、了解!!」
*
謎の『覚醒』を見せている宰川。庭園に出てからの戦闘でも猛威を振るい続けている。
元々前に出て戦っている印象はなかった・・というか、前線に立つのは今回が最初で最後ではないのか?
勢いで全てを補っているように感じるが、それだけで敵を倒し続けられるとは思わなんだ。
京夏「そろそろ宰川殿にも限界が来そうです。救援に向かうべきだと思いますが」
俺「それは俺もずっと思っている。ただ今の宰川はかなり大きな戦力になっている。今止めるのはもったいない気がするんだよな」
華城「あの黒い光の正体はわからない。ただ、あの光を目の当たりにした人間は一時的に術を使えなくなるようだ」
俺「何!?」
華城「先程までの戦闘でもそうだったし、今見ても宰川殿に斬られる敵は術を使っていない」
京夏「宰川殿の刀、ずっと黒いですね」
俺「じゃああいつの前じゃ術を使えないのか?」
華城「そうなる。それが主力の奴らにも適用されるのかは不明だ」
俺「今、ここまで順調に敵を蹴散らし続けられてんのは敵が術を使えないからってことだな」
伊海「念のため、私もやっておきますか」
華城「ああ。できる限り広範囲で頼む」
伊海「ええ」
術を封じる結界を、庭園全体が入るほどの規模で作成した。
華城「これで全員が術を使えなくなった。例外はないはず」
俺「武士の時間がやってきたな! 俺たちも戦闘に加わるぞ!」
*
俺「四人いるならもう四方向から攻撃を仕掛け続けるのが一番だろ」
坂本「了解だ。他の術師が絶対邪魔してくるから全員殺すぞ」
了斎「ああ」
蒼月「了解でござる!」
アストリアめがけて特攻した。
杖で容易く弾かれる、近づけねぇ!
ただ、アストリアの表情には若干の焦燥を感じられる。
何だ?俺が思っているより苦境なのか?
俺「地割れを起こす! ここで決めるぞ!!」
坂本「いけええええええ!!」
俺「・・あ」
了斎「は?」
俺「術が使えねぇ」
アストリア「君たち今更気づいたの?」
俺「お前は元々分かってたのか?」
アストリア「上見ればわかるでしょ、明らかに結界がある」
坂本「美紀姉がやったか!!」
伊海のことをそんな呼び方してるの坂本だけだよ。
俺「まぁ、伊海がやったなら俺達に不利に働くことはねぇか。全員平等に封印だもんな」
アストリア「術なしで杖だけで四人に勝つ? やってられないよ、さよなら」
振り返って走り始めた。
俺「おい、逃げるな!!」
坂本「うおおおおおおおおおおお!!!!」
綺麗な走り方で追いかけていった。何だあいつ。
蒼月「先週、右京殿と頑張って走ったらしいでござる」
なんで走りからやろうと思ったんだ。剣術じゃないのか。
俺「とりあえず、俺達も追うしかないよな」
了斎「行こう」
*
術師「あの男女を討て!」
僕「繭さんたちを狙ってます、逃げて!!」
繭「わたくしたちは戦うよ。逆に信雄は大丈夫?」
僕「まぁ二人が戦うならもちろん僕もやりますけど・・」
庭園西側はまだまだ術師が大量に残っている。
羽音さんと繭さんが居ればきっと大丈夫だ。
僕「去れ!」
少しの間温存しておいたからここからは出し惜しみしない!
敵がバタバタと倒れていく。
獅電「おい、こっちに来るな!」
まずい・・気づかないうちに獅電さんとストーンハートが戦っている場所まで来てしまった。
繭「私らに出来ることは何かないですか?」
獅電「ストーンハート相手に出来ることはない。大人しく他の場所へ移れ」
繭「了解。・・ただ、ストーンハートに言いたいことがある」
ストーンハート「一回ストップだ、獅電」
二人の戦闘が止んだ。
繭「ストーンハートは一度死んだのか?」
ストーンハート「ああ、さっき獅電に殺された。一回だけ生き返られるんだよ」
繭「ふむ・・ならば、もうお主は人間ではないという自覚はあるか?」
ストーンハート「何の話だ?」
繭「人は一度しか生きられないから人間なのであり、一度しか死ねないからこそ人間でもあります」
羽音「繭?」
繭「私も一度死んでいると聞いた。どうやら記憶を失って今二度目の人生を歩んでいるらしい。でも、やっぱり思うんだ。『その時死んでおけばよかったんじゃないか』って」
信雄「繭さん?」
繭「大丈夫、今から死ぬ気はないよ。ただ・・一つの人生として俯瞰で見た時に、美しくないと私は思ったんだ」
ストーンハート「はぁ・・そんな哲学みたいなこと考えて意味があるか?」
繭「ある。武士は道徳や倫理観も大切にしているのだ」
ストーンハート「ただ、それを今俺に説いたところで意味はないだろ」
繭「いいや、私はあると信じている。確かにお主も死にたくないだろうが、生き返るというのも勿体ないと私は感じる」
獅電「一回で死なないんだったらそれはもう人間じゃない。お前はもう化け物なんだよ」
ストーンハート「人間は一度しか生きられないなんて、誰が決めた?」
羽音「誰が決めたことでもないけど、そうあるべき理由が絶対にあるはずなの!!」
ストーンハート「ハッ、くだらない話を長々と・・」
繭「今、くだらない話と言ったか?」
ストーンハート「ああ、言ったが」
繭がストーンハートに斬りかかった。
獅電「早まるな!」
ストーンハート「おいおい、落ち着いてくれよ。戦場でする話じゃないだろってだけだ。言い方が悪かったな。別にお前の思想を否定する意図はなかったんだ」
繭「私の思想は関係ない。世界はそうあるべきだとここに居る全員が思っている。お主のような人間は存在してはいけない」
ストーンハート「お前らなぁ・・そんなこと言う割には蘇生の術だとか使ってやってたじゃねぇかよ」
獅電「蘇生の術はまた別だ。あれは死後三十分以内、そしての本人に生きる強い意志がある場合に使うことができる。つまりまだ完全に死んでいない」
ストーンハート「死んでるだろ」
僕「皆に忘れられない限り、人は心の中で生き続けます」
ストーンハート「何だ? 俺がもう死んでいると言いたいのか?」
獅電「お前の死を伝えたとき、術師は全員お前が死んだと思っていたが。『生きているはず』などと言っている人間は見当たらなかった」
ストーンハート「正直、俺は生きていようと死んでいようと、生き様が汚かろうと全てどうでもいい。俺はただ『ストーンハート』であり続けたいんだ」
繭「ならば死んでくれ。私には死にたくない理由がある」
ストーンハート「何だ?」
繭「愛すべき・・守るべき人がいる」
羽音さんか。
繭さんらしい理由だ。
僕「というか、あなたがやっぱりおかしいんですよ。世の中、死んでも良いと思っている人なんて滅多に居ません。僕だって生きたい理由がありますし」
獅電「俺もまだ、死にたくはねぇな」
ストーンハート「お前がそういう話をするのは珍しいな。何が理由なんだ?」
獅電「アイツの生涯を見届けないといけない。俺は宰川が死ぬまで死ぬわけには行かない」
ストーンハート「何だ、意外と情のある奴なんだな」
僕「ストーンハートの生きる理由はないんですか?」
ストーンハート「そうだな・・俺よりも強いやつに出会ってみたい、と思ってたんだが・・獅電に会ってからその野望もなくなっちまったよ」
獅電「都合のいい話に持ちこんでお前を倒そうと目論んでいる訳では無いが、そろそろお前の人生も潮時かもしれないな」
ストーンハート「最後に一花咲かせるまで俺は終われねぇよ。星武の乱が終わったら俺はもう・・ゆっくりしたいな」
僕「年齢も年齢ですしね」
獅電「繭、羽音、信雄。俺はお前らの意見を尊重する。ストーンハートとの最終試合、お前らも付き合うか?」
繭「もちろん」
羽音「私も」
僕「戦いましょう」
ストーンハート「感謝するぜ、お前ら!」




