百十二話 あちらを立てれば
俺(宰川)・忠勝・直政・京夏・華城・伊海・右京・梶田軍兵士・神楽で一号館にやってきた。
華城の予想では、ここにはレオナードもストーンハートもいない。
だが油断は禁物だ。その分、精鋭の術師をここに集結させている可能性もある。
華城「死亡する恐れの少ない宰川殿・忠勝・直政・梶田軍兵士は正面入口から入ってもらう。残った我らは窓を割って入ろう」
右京「了解だ。健闘を祈るぜ」
神楽「ご武運を」
俺「ああ」
正面から入ると、当然の如く、大量の術師が待機していた。
俺「戦闘開始いいいい!!!」
乱戦だ。俺は敵の攻撃などお構い無しでひたすら突撃した。
即時回復がここまで活きてくる戦いは初めてだな。
忠勝「宰川殿! あまりご無理ならさず!!!」
俺「問題ない! この程度の傷はすぐに治る」
直政「術師の使う術はおそらく武士より洗練されている。注意しよう」
梶田軍兵士「はっ!」
忠勝や直政の活躍は当然なのだが、想像以上に梶田軍兵士が善戦している。流石は俺たちを最も苦しめた軍だ。
梶田軍兵士は直政や忠勝との信頼関係もあるのが良かったな。
忠勝「順調に敵は減ってるね、精鋭はまだ出てこないのかな?」
すると、二階から声がした。
右京「増援を要請する!!!!」
俺「直政、上に行くぞ。忠勝、ここの指揮は任せた!!」
忠勝「御意」
直政「強敵でしょうか」
俺「おそらく、そうだろうな」
二階まで駆け上がり、京夏が手招きする方へ走った。
すると、華城が『華城のような人物』の戦闘が広がっていた。
京夏「おそらくこちらの人間を複製し、操り人形にしています」
俺「何だと!?」
右京「俺らが介入すると俺たちの複製も作られるかもしれねぇから・・傍観しか出来ん」
直政「私が行こう」
俺「待て」
直政「はい?」
俺「見てみろ」
皆が華城と複製の戦闘を凝視する。
右京「んー????」
京夏「本物の華城の方が優勢ですね・・・・」
俺「そうだ。おそらく以前に習得した自動戦闘の術のおかげだ」
右京「つまり、敵の術師の操作よりも華城の自動戦闘の方が優れているってことか?」
俺「そうだ。ここは華城に任せておいて問題ない」
神楽「流石です」
京夏「まぁ、身体能力がトントンな状態なら、戦闘技術が全てですから本物が勝つに決まっていますね」
俺「ああ」
俺たちは戦闘を静観していた。
直政「そろそろ決着が付きそうだな・・」
本物の華城が複製を斬った。
術師「なかなかやるじゃないですか。まぁ、何度クローンを倒そうと意味はないですが」
右京「自分で戦わないのか? 後ろで突っ立って人形を操るだけか? 陰気なやつだな」
術師は無言で俺のことを見た。
華城「まずい!」
敵が俺の複製を作ってきた。
華城「間に合わなかったか・・」
俺「望むところだ。やってやる」
俺は、俺の複製と全力で戦った。
直政「華城に比べて苦戦してる・・助太刀に入るよ」
右京「待て、自分には自分で勝ちたいはずだ。助太刀は余計なお世話だろう」
分かってるな、右京は。
直政「今の私たちに出来ることは?」
華城「出来る限りの応援だ。応援は、その人の力を最大限引き出す」
右京「やったれ宰川!! 偽物に負けるんじゃないぞー!!!!!」
華城「宰川殿なら勝てる」
直政「頑張れ~!!!!」
俺が若干優勢になった。
京夏「父上の認めた宰川殿なら、問題ありません」
神楽「頑張ってください!!!!」
そうだ、俺は幕府全員の思いを背負っている。
全ての責任は俺にある。ここで死に、責任から逃れることなど許されない。
そしてこの先、どれほどの地獄を味わっても構わない。
俺は絶対に勝つ!!!!
俺「うおおおおおおお!!!!」
複製の体を斬るとき、一瞬俺の刀が黒く光った。
術師「おかしい、宰川は即時回復を使うはずじゃ・・!!!!」
俺が一発で複製を仕留められた理由は分からない。
ただ、この機は逃さん!!!!!
俺「はああああああっ!!!!!」
術師の元へ突撃し、四肢を切り落とした。
敵「撃て!!!」
焦って敵が術を乱射してくるが、俺には即時回復がある。
体を貫かれたとて、なのだ。
俺「お前ら! 残った敵を殲滅しろ!!!」
全「はっ!!!」
部屋に残った敵を討伐し、皆が俺の元へ集まってきた。
華城「最後、刀が黒い光を放ったのは何だ? 術か?」
俺「分からない。何かしらの術なのか?」
華城「ここで新たな術を獲得したとは考えづらいが・・あの瞬間、何かしらの『覚醒』が起こったのかもしれない」
覚醒?
急に嘘くさくなってきた。
俺「あり得るか? そんなこと」
右京「根拠はないとしても、この状況で宰川が覚醒したのはかなり熱い。他には何も考えなくていいよな」
京夏「別の部屋も片付けましょう」
俺は直政とともに三階へやってきた。
直政「まずはここから攻略しましょう」
部屋を覗いた瞬間、すべてを悟った。
ハズレだ。敵が多すぎる。
俺「なる・・ほど・・」
直政「引き返しますか?」
俺「いや、今の俺なら勝てる気がする」
あまり大将が調子に乗るのは良くないが、本当に勝てると思っている。
術師「宰川だ!!!! 殺せ!!!!」
うむ、直球な指示だな。
直政「私もできる限り敵を減らします」
頼りになるな。
皆に応援されたときに感じた、あの力が漲るような・・湧き出てくるような感覚は不思議だった。
どこまでも速く動ける気がしたし、いくらでも力を出せる気がした。
人って意外と単純なのかもしれないな。応援の言葉一つでここまで戦えるとは。
敵「駄目だ! いくら攻撃しても死なねぇぞこいつ!!!」
敵「押して駄目なら引いてみろ!!!」
もう指示がマトモではなくなっている。
行けるぞ・・!!
忠勝「頑張れー!!!!」
入口付近まで駆け込んできた忠勝が叫んだ。
華城「我も共闘する! 生き残るぞ宰川殿!!!!」
俺はいい仲間を持ったな。
心からそう思う。
単純な応援で何故ここまで力が湧いてくるのか、今はっきりと分かった。
俺は、勝ちたいんだ。お前たちと一緒にあの景色を見たい。
だからこそ、ここで死ぬ訳にはいかない。
そして、応援の言葉を聞いて皆も同じ気持ちなのだと実感する。
俺「ああ、華城も気をつけろ!」
忠勝と華城の参戦によって敵は順調に漸減していき、残るは三人となった。
直政「おそらく精鋭が残った。気をつけて」
華城「ああ」
別の部屋での戦闘を終えてきた神楽と右京もやってきた。
右京「うむ・・目測でしかないが、一番左の野郎は気をつけたほうが良いな」
一番左の術師は、持っている杖が禍々しい。
何か変わったことをしてくるに違いないな。
直政「では、私と忠勝で左の人を倒す。残った二人は皆様に任せた!」
俺・右京「了解だ」
華城も刀を抜いた。
俺「俺は真ん中を殺る」
細身の術師に向かって走り出した。
かなり近づいても攻撃をしてくる様子がないのでそのまま斬ろうとしたところで、俺は跳ね飛ばされた。
俺「くっ・・衝撃波か・・!」
傷は治るとしても、痛みは感じる。
今の痛みは動きに影響してくるかもな・・
術師「お前じゃ近づくことすら出来ん。諦めろ」
俺「まだまだここからだ。そう焦るな」
先程の感覚を思い出せ。
刀が光った時の感覚を。
体中から力が湧き、どこまでも行ける気がした。
今の俺なら勝てる!!!!
俺「はああっ!!!!」
また、刀が黒い光を放った。
術師「なにっ!?」
今度は俺が近づいても、敵は衝撃波を使ってこなかった。
俺「覚えておけ。俺が宰川軍総大将・宰川上午だ」
敵の首を斬った。
術師「クッソぉぉぉぉぉ!!!」
残った二人の術師が、大きい溜めの後に大きな光線を放った。
華城・直政「はっ・・・・」
助ける間もなく二人は地面に倒れた。
右京「おい華城!!!!」
まずい、この傷は即死モノだ。
今すぐにでも治療を・・しかし、おそらく助けられるのは一人だけだ。
治療をしているうちに、もう一人は死亡するだろう。
どうする俺・・!幕府の今後を考えるのであれば華城の頭脳は間違いなく必要になってくるし、重要な存在だ。
しかし、戦闘能力であれば直政。ここで直政が死亡すると、そもそも星武の乱で敗れるかもしれない。
大事なのは今か、未来か・・・・
クソ、こんな事を考えているうちに刻一刻と『そのとき』は近づいているというのに!!!
忠勝「大きな術を使った後が狙い目だよ右京さん!!! 僕たちで倒そう!!!」
たくましいな・・この状況でも変わらず目標を狙い続ける。
・・・・俺は決めたぞ。
華城を助ける。
俺「神楽! 華城を治療しろ!!!!!」
神楽「はっ!!!」
一瞬、戦闘中の忠勝が寂しそうな表情でこちらを見ていた。
すまない・・直政はおそらくここで死亡する。
しかし、俺はやはり宰川軍総大将だ。優先して宰川軍の者を助けたい。
そして、俺は未来を大切にしたい。
『今を生きる』『大事なのは今』『その未来が訪れるかすら分からない』すべて承知の上だ。
どんな未来が待っていようと、未来が訪れなくても、責任は俺にある。
直政もここで死なせるにはあまりにも惜しい存在だが・・・・ひとつ確かに言えることは、ここで華城を選んだことに後悔はない。それだけだ。
華城「か・・ぐら・・」
少しだけ、華城が天井へ手を伸ばした。
神楽「まだ動いてはいけません!! 傷口が広がります!!」
続けて神楽が手を当て続けると、華城の傷が塞がった。
右京「どんなもんじゃああああああ!!!」
右京が片方の術師を斬った。
俺「おおおお!!!!」
やはりまだまだ強いな・・右京!!!
華城「一体どうなってる・・?」




