百六話 決意
宰川殿の言葉を聞き、大広間には緊張感が漂い始めた。
すると、久遠さんが立ち上がる。
久遠「皆、勝ったということはどういうことかわかるか?」
これはアレだ。間違いなくアレだ。
俺「おいおい久遠さん! 一体どういうことなんだい!!!」
久遠「飯だ! 宴だ! 飲み会だ!!!」
全「おぉ・・!」
ストーンハート「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」
どうして一番盛り上がるのがお前なんだ。
アストリア「まぁ、きっと今日は僕たちが酒を酌み交わす最後の夜になるでしょうから・・楽しみましょう!」
蒼月「今宵は拙者も張り切って料理を作ってくるでござるよ」
蒼月が厨房へ歩いて行った。
宰川「宴が始まるまで、ここでくつろいでいてくれ」
俺「アストリア~」
喋りたかったのでアストリアの近くに座った。
アストリア「どうしたの?」
俺「結局、あの作戦を考えたのはどっちなんだ?」
アストリア「僕に決まってるじゃん」
呆れ顔で言った。
俺「やっぱそうなのか」
アストリア「うん・・」
俺「もう俺たち、一緒に喋ったり食ったりすることはないんだな」
アストリア「どうした、寂しいの?」
俺「はあああ?? 全然寂しくなんかねーよ!」
アストリア「あー寂しいんだ~やっぱり歳下は可愛いな~」
俺「おい馬鹿頭撫でんな!!」
腰についたままの刀を抜こうとした。
アストリア「物騒すぎるよ・・そこまで怒ることじゃないじゃん」
俺「冗談だよ冗談。本当に抜くわけあるか」
アストリア「清次ならあり得ると思ったから」
俺「うるさい」
*
ストーンハート「もし俺たちに勝ったらどうしていくつもりだ?」
華城「星界術師団の領地も幕府の管轄になるだけだ」
ストーンハート「術師という存在はどうするんだ?」
華城「当然、使わせてもらう」
ストーンハート「そうか」
火蓮「それでどうなんじゃ? 勝てる自信はあるのか?」
ストーンハート「ああ、ある。お前たちはまだ星界術師団の一部しか見れていないからな。隠し武器はいくらでもあるのさ」
華城「戦場はどこにする?」
ストーンハート「宮殿だ」
宰川「室内か?」
ストーンハート「どちらでも構わん。宮殿の周辺で戦うというだけだ」
華城「受け身を取るつもりなのか」
ストーンハート「まぁな」
火蓮「宮殿は確かに海の近くじゃったな」
ストーンハート「そうだ。まぁ、崖になっているから海に落ちる頃には死も同然だ」
火蓮「こっそり機密情報を教えてくれてもいいのじゃぞ」
ストーンハート「対価があるのなら」
火蓮「そうじゃな・・五刻でどうじゃ?」
ストーンハート「少なすぎる。というかそもそもこっちはその通貨単位じゃない」
火蓮「しょうもないのう」
ストーンハート「何で俺が言われないといけないんだ」
華城「子供っぽい会話はよせ」
火蓮「最年少に近い華城が言うことじゃないじゃろ」
華城「心の年齢の話だ」
ストーンハート「四十二歳のおじさんをいじめるのはそろそろやめてくれ」
火蓮「えぇ・・四十二歳・・」
ストーンハート「何か言いたそうだな」
火蓮「にしては若々しいなと思ったんじゃ」
ストーンハート「一番年齢と見た目が釣り合わないのは獅電だろ」
火蓮「それは間違いない」
*
久遠「今日はたくさん飲んじゃうぞ~~~~!!」
伊海「一杯までです」
久遠「待ってくれ! そりゃあないぜ姉貴!」
伊海「姉貴・・?」
坂本「久遠、今日は俺と一緒に潰れようじゃねぇか」
久遠「坂本、まさか酒好きか1?」
坂本「この大陸で一番の酒好きはこの俺だ。何倍出てこようと一気飲みしてやるぜ」
久遠「お前・・・・」
久遠と坂本は肩を組んだ。
久遠・坂本「うおおおおおおおおおお!!!」
霧島「アホくさ。恥ずかしくねぇのか」
*
食卓にも料理が並び始め、宴の雰囲気へと変わってきた。
宰川「皆、そろそろ席につけ。宴を始める」
久遠「よっしゃ!!」
久遠さんと坂本が心配すぎる。
了斎「清次、どっちが先に倒れると思う?」
俺「久遠さんだろ」
了斎「わしもそう思う」
ストーンハート「今日の音頭は俺に任せとけ」
ストーンハートが前に立った。身長高いな。
ストーンハート「今日が終わったら、もう次会う時には敵だ。戦だ。殺し合いだ。でもな、俺はいつまでもお前たちのことが好きだぜ。正直なことを言うと、お前たちと争いなどしたくないが・・いや、副団長の台詞じゃないな、すまん。俺にとって宰川軍、いや、蒼天幕府の皆と過ごした時間は一生の宝物だ。決して無駄だったとは思っていない! 星武の乱でどちらの陣営が勝とうと、俺には一片の悔いもない! そして・・もし、俺やアストリアが死なないまま星武の乱が終わったら・・そん時はよろしく頼むぜ。宰川」
宰川殿が頷く。
ストーンハート「長く話しちまって悪いな、俺からは以上だ。今日は楽しもうぜ!」
全「おおおおおおお!!!!」
拍手と歓声が起こった。
宰川「悪い、ストーンハート。俺からも話していいか?」
ストーンハート「もちろんだ。おい、皆! 大将からの話だ。耳の穴かっぽじって聞けよ」
宰川殿が前に立ち、咳払いをした。
宰川「これは俺の決意表明だ。皆、心して聞いてくれ」
俺たちは息を呑んだ。
宰川「星武の乱は、俺も前線で戦う」
おい待て、無茶だろ。
俺「本気か?」
宰川「本気だ。星武の乱という今までで最も重要な戦いで、俺が先頭を走っていかなければ誰もついてこないだろう」
そんなことはない。
獅電「もし宰川が死んだら俺が継ぐ。俺は星武の乱で死ぬ気は無いからな」
華城「わかった」
坂本「俺も前線で戦うからな! お前らよろしく頼むぜ」
俺「坂本まで・・?」
坂本「まぁ、命をかけて宰川軍に協力するって言っちまったからな。やらせてもらうよ」
右京「俺も前線に出る」
華城「お前は駄目だハゲ」
右京「濃霧衆の士気を上げるためには俺が出る必要がある」
皆そればっかり言うな・・
華城「好きにしろ」
伊海「もちろんですが、私も前線に出ます」
宰川「わかった、もう総力戦だ。京夏、覚悟はできているか」
京夏「もちろん、父の意志を継ぎ、私も戦います」
宰川「ありがとう」
久遠「しんみりするのはここまでだ! 乾杯!!」
全「かんぱーい!!!」
またしても大宴会。楽しいからいいけどな。
俺「いただきます」
了斎「あと一ヶ月で決戦か・・」
俺「久遠さんに拾われて候補生になったのが去年の四月か・・そんで七月に初陣、山河軍との戦だな」
了斎「蔵兵衛と義和は本当に強敵だったな・・」
俺「でも、その二人を倒したことで幹部になれたんだよな。三ヶ月で大出世だな」
将英「本当だな」
微笑みながら言った。
霧島「同月末に反乱が起こったんだよな。そこで一気に幹部が減ったんだっけか」
火蓮「そんなこともあったな・・その後、信雄・美咲・蒼月・俊平が幹部に入ったんじゃな」
俺「俊平・・」
少ししんみりしてしまった。
翔斗「八月は、与根川・山河連合軍との戦だったな」
俺「うわっ、そんなこともあったな。確かあれって夜戦だったよな」
雷煌「確かに、暗かった覚えがあります」
華城「そこから数ヶ月は平和に暮らしたな。十一月に秋の祭典があった」
俺「あぁ・・与根川軍の残党と戦ったんだよな」
了斎「あの時に結城さんと亜美が死んでしまった」
俺「一月に確か伊海が来たんだよな。同名の申し出とか言って」
霧島「そうだったな」
久遠「最初は疑心暗鬼だったが・・今となっては必要不可欠な仲間だ」
伊海「ありがとうございます」
照れ笑いして言った。可愛い。
華城「この次が問題だ。『清次が天下統一を提案』」
俺「あ」
霧島「お前のせいなんだぞー。俺たちがこんなに大変な目に遭ってんの」
俺「え」
アストリア「宮殿に初めて来た時はびっくりしましたよ・・まず手紙では『明日来る』って言ってたのに、実際に来たのは一週間位あとでした」
華城「我は意外とお茶目なところもあるんだ」
ストーンハート「お茶目で済まされないだろ」
久遠「濱田軍との戦で真栄田が死亡、梶田軍との戦では繭が一度死亡、イサベルの裏切りが主な出来事か」
俺「俺が攫われた件は!?」
アストリア「今思い出してもイライラしますねアイツ。多分今頃地獄に落ちてますよ」
アストリアのイサベルへの怒りはとてつもない。相当溜まっていたのだろう。
華城「清次が攫われたことで濃霧衆と手を組むことが出来た。あれも悪い出来事ではなかったのかもしれない」
俺「悪い出来事だろ」
火蓮「直政と忠勝は、その時に仲間になってくれたんじゃな」
忠勝「そうだね」
俺「仲間も増えたが、俊平・美月・豊さんはその時に死んじまった」
獅電「豊は自分で死に場所を選んだ。最後まで男らしい武士だった」
久遠「そうだな」
華城「二月に尾田軍の奇襲。追い払って三月に、坂本軍・栗斗軍・尾田軍を同時に攻め落とした」
俺「今思うと結構無茶なことやってるな」
獅電「そこで坂本が入ってきた」
坂本「そうだな~ああああああ!!!」
もう酔ってるのか坂本は。
了斎「そして今月の初めに夏祭り。珍しくいい思い出だな」
俺「その直後に殺人事件なんだけどな」
久遠「そして今日、夜叉衆を討伐か・・・・」
俺「一年間、突っ走ったな」
獅電「本当にそうだ。今までで一番忙しい一年だった」
久遠「間違いない」
アストリア「清次さん、華城さんの与えた影響はとんでもないですね・・この二人が居なければ、絶対こんなことになってませんよ」
宰川「そうだな」
俺「あのとき久遠さんが俺たちを拾ってくれなかったら、未だに俺たちは孤児だっただろうな」
久遠「ああ。声をかけて本当に良かったよ」
華城「宿舎に入ってきた日はあまり芳しくない対応だったが」
俺「あの時の俺はまだ子どもだったんだよ」
火蓮「大して変わらんじゃろ」
将英「いや、清次はこの一年で明確に変わった。いい方向に進み続けていると思う」
俺「さっすが将英、わかってるな」
思い出話に花を咲かせながら、宴は終わりへと近づいていった。
久遠「うっ・・気持ち悪い・・」
坂本と久遠が大広間を汚したのは言うまでもない。




