百五話 完了
とにかく、今は待ちの場面だ。
俺「春日の鋼糸が丈夫で良かったな。並大抵のことじゃ切れないおかげで今耐えられてる」
華城「ああ。本当に助かる」
*
全員、何もしなくなってしまった。
何故だ?私に石化されるのを恐れて仕掛けるのをやめたか?
では、もういっそのこと全員を石化してしまうか・・・・
私「ふんっ!」
視界に入っている全員を石化させた。
懐かしいな。昔を思い出す光景だ。石化で村を滅ぼしたときを・・
しかし、影狼も三人衆も居なくなってしまった。このまま私が生き残っても夜叉衆はもう駄目だな。
まぁ、離れたところでまた何か組織を作るとしよう。
ただ・・私を巻いているこの糸は何なんだ?硬すぎる。
体に力を入れた程度じゃ切れないし、身動きもほとんど取れない。少しはゆとりを持たせて欲しかったな。
私「ん?」
背後に何か気配を感じる。というか、微かに声も聞こえてくる・・誰だ?
*
僕「え、全員石化してません?」
ストーンハート「本当だな・・やりやがったか」
近くにいるにも関わらず僕たちが石化されていないのは・・視界に入っていないからかな。
父さん・・いや、団長の術で転送してもらい、僕たちは二人の術師を連れてきた。
正直、団長の星界術は出来ないことのほうが少ない。
この二人がいれば勝てるはず・・って、どうしてここまで協力してるのかはわからないけど。
一人目はリゲル。二番隊隊長で、衝撃波の術を使う。これを活用して、全員を影王の視界の外に追いやりたい。
二人目はケプラー。特に役職はないけど、上層部に認められた上級星界術師だ。星界術師団の中では上位の実力がある。
ケプラーの術は少し特殊なんだけど・・オセロで駒を返すことで術を発動出来るんだ。
例えば、一枚返すと物理攻撃。二枚返すと刺突攻撃。三枚返すと暴風が巻き起こる。
角を取ると、敵の術を一定時間封印というものだ。
少しランダム性が高くて、実戦で使える場面は少ないんだけど・・秘めてるポテンシャルはあると思うし、今は活かす最大のチャンスだと思って連れてきた。
最大の弱点は、オセロの相手が必要ってことだね。
僕「リゲル、影王をあっちに飛ばして欲しいんだ」
リゲル「わかりました!」
衝撃波で影王を吹き飛ばした。
影王は200m近く飛んでいった。これでみんな影王の視界より外に出られる!
ストーンハート「あとは簡単なお仕事だな。リゲルとケプラーがオセロで勝負するんだ」
そして、ケプラーが角を取った瞬間、影王の術が封印されて石化が解かれる。
石化が解かれても皆は影王の死角にいるので、再び石化されることはない。完璧じゃん。
ちなみにこの作戦は僕が考えた。皆が石化から解き放たれたら褒めてもらおっと。
リゲル「真剣勝負でいくぞ!」
ケプラー「うん」
ケプラーはずっとニコニコしていて何を考えているのかわからないが、オセロをするときだけは目をしっかりと開く。
それはそれで怖いんだけどね。
二人の真面目なオセロ勝負が始まった。
ケプラーがオセロで駒を返すたびに術が暴発するので、この辺はグシャグシャになっちゃうだろうけど・・いいよね。僕たち関係ないし。
幕府ならどうにか出来るでしょ。
ストーンハート「きた!!!」
ケプラー「角、いただきます」
ケプラーが角に駒を置いたそのとき、全員の石化が解かれた。
僕「全員、影王の視界に入らないように攻撃をしてください! 視界に入ると石化されます!!」
術を使って全員に伝えた。
全「了解!」
全員が一斉に立ち上がり、影王のもとへ走っていった。
僕「ようやく、この騒動も終結しそうですね」
清次「了斎、こいつを斬るのはお前がいい。お前の兄さんを上手く言いくるめて悪い方向にもっていったんだぞ」
了斎「騙されてしまう兄さんも兄さんだ。完全にこの人が悪いわけでもない」
清次「いや、俺が許せねぇんだよ。お前があんなに元気ないの久しぶりに見たからな。探してた兄さんにあんだけ言われといて・・クソ腹たってきた!!!」
了斎「落ち着け、わかった。わしがけじめをつける」
ストーンハート「清次のやつ、なかなか熱いじゃないか」
僕「あの二人の絆は凄いですね・・苦難を一緒に何度も超えてきただけのことはあります」
影王は為す術もなく、了斎に首を刎ねられた。
*
俺「はーあ。ようやく終わった・・・・・・」
よくやった、了斎・・!
アストリア「石化されてる間って、どんな感覚なんですか?」
俺「何か・・ぼんやりと意識は残ってて・・夢を見てるみたいな感じだったな」
アストリア「体験してみたかったです」
俺「冗談はよしてくれ、俺はもうあんなの御免だ。石化されたことを理解したときの絶望感たるや」
久遠「正直、今回の戦いは達成感なしだな。ひたすら安堵だ」
坂本「何かを賭けて戦ったわけでもないしな。ただ負けないために戦っただけだ」
こういう戦いは嫌いだ。身も心も疲れ果てる。
宰川「それで、その二人は?」
ストーンハート「宮殿から連れてきた。現状を打開するために必要だと思ってな」
アストリア「ちょっと、そう判断したのは僕ですよ! あたかも副団長が考えたみたいに・・」
ストーンハート「『俺が』思いついた」
アストリア「僕です」
ストーンハート「いーや俺だ」
アストリア「いーーーーーーーや僕」
宰川「どちらでもいい!」
二人ともだんまりだ。子どもみてぇ。
宰川「しかし、どうしてそんな短時間でここと宮殿を往復できた?」
アストリア「団長の術で転送してもらいました」
何でそんな事ができるんだよ。
霧島「はぁ? あんな長距離を一瞬で???」
アストリア「はい」
獅電「とりあえず、地下街の入り口を塞いでる岩をどうにかするぞ」
ストーンハート「俺の得意分野だ。行こう」
入り口へやってきて、ストーンハートが岩を砕き始めた。
華城「そんなに軽々と砕いていく物じゃないんだが」
気づいたら入り口は元通りになっていた。岩はもう塵になった。
ストーンハート「なんか言ったかー?」
無事、地下街入り口が
華城「城に戻り、また今後についての話をしよう」
俺たちは大広間に戻ってきた。何度見た光景だ・・・・
宰川「全員揃っているか?」
久遠「ああ。確かに」
宰川「夜叉衆の残党がまだ地下街に残っている可能性はあるが、清次が全滅させた分、そして今回討伐した分を考えると、もう以前のような力を持つことはないだろう」
右京「また新しい組織が出来る可能性はないのか?」
宰川「影狼や影王のような力を持った者がそんな頻繁に現れると思うか? しばらくは大丈夫だろう」
右京「そうか。しかし、地下街の巡回や治安維持はもう少し手を入れるべきだと思うが」
華城「ああ。その方向で考えている」
宰川「そして、またしても星界術師団に借りを作ってしまったな・・」
ストーンハート「お前ら、何回俺たちに助けてもらってるんだ」
苦笑いして言う。
アストリア「敵に何回も何回も助けてもらって・・情けないですよ?」
宰川「ああ。俺たちが一番わかっている。ストーンハート、アストリア、駆けつけてくれた二人の術師もありがとう」
俺たちは頭を下げた。
アストリア「あれ、団長がいなければこの二人を連れてくることは出来ませんでしたよ?」
宰川「団長にも、俺たちからの感謝を伝えておいてくれ」
ストーンハート「ああ」
そして、いよいよこの話をする時となった。
獅電「これで、星武の乱を始める準備は完全に整ったと言える」
ストーンハート「そうだな。邪魔者は一切居なくなった」
だいぶ時間が経っちまったな。そして、仲間も数人失っちまった。
結末を、皆と一緒に目にしたかったんだけどな・・仕方ないか。これも武士の定なのかもな。
久遠「連絡は、アストリアの術で宰川殿もしくは華城へ頼む」
アストリア「分かりました。開戦はどれくらいを目処に?」
宰川「一ヶ月後だ」




