百四話 待つのみ
伊海「縛れば術を使えなくなると思っているのであれば・・あなたの認識は甘い!!」
美蘭と俺たちを囲むように結界ができた。
美蘭「どうして・・!」
縄がみるみる細くなっていき、最終的に消滅した。
伊海「げほっげほっ」
久遠「大丈夫だったか?」
伊海「ええ、なんとか・・」
美蘭「いいこと思いついた」
美蘭が全力疾走で結界の外へ走っていった。
霧島「おい待て!!」
伊海「この結界は外部からの干渉を防ぐものではないので、そのまま通過して出ることが出来ます!」
伊海はかなり消耗している。連続で結界を作るのは負担が大きかったか・・
霧島「間に合え・・・・!!」
霧島が走って美蘭を捕まえようとしたが、あと少しのところで美蘭が結界から脱出した。
美蘭「よし、これで!」
霧島が縄でぐるぐる巻きにされた。
霧島「俺はすぐに出れるんだっつうの」
瞬間移動で脱出した。
久遠「殺傷能力が高い訳では無いが、美蘭が一番厄介かもしれないな」
俺「久遠さん、ここから美蘭のところに雷は落とせないのか?」
久遠「伊海殿、結界を一度消してくれ」
伊海「御意」
結界がなくなり、久遠さんは美蘭のもとへ雷を落とした。
俺「当たったんじゃないか!?」
霧島「いや、普通に外れてた」
瞬間移動で俺たちのそばに戻って言った。
俺「命中するまでこの賭けをやる続けるか?」
久遠「オレの体力が持たない。落雷は一番消耗するんだよ」
俺「ん? あれ誰だ?」
地下街の入口付近に人影が見える。
ストーンハート「フハハ、どうせ羽音が呼び起こした亡霊だろ」
羽音「私、何もしてないけど・・」
嫌な予感がする。
獅電「そこの者! 止まれ」
謎の男が地上に出てきたところで獅電さんが刃先を向けた。
男は言われた通り立ち止まり、両手を上げた。
妙に従順だな・・・・
美蘭「首領!!!」
俺「首領だと!?」
あいつが・・?
だとしたら、俺たちを殺すために来たんじゃないのか?どうして戦わず俺たちの言葉通り突っ立っている・・?
?「もう生き残っているのは美蘭だけですか」
美蘭「はい、皆もう・・」
?「そうですか・・。幕府の皆さん、私の部下が迷惑をかけてしまい申し訳ありません。首領である私がお詫び申し上げます」
男が深く頭を下げる。
獅電「本当に首領なのか? ということはお前が・・」
影王「はい。私が影王です。正直、この名は子どものようで恥ずかしいと思っているのですが・・影狼が『これしかない』というものですから」
微笑みながら言った。
何なんだコイツ・・表面上はただの常識人にしか見えない。
コイツが本当に悪名高き夜叉衆の首領とは到底思えないが・・
美蘭「それで・・首領、どうするんですか?」
影王「正直、ここで私が戦ったところで幕府の皆さんには敵いません。私は皆さんとも平和に関わっていきたいと思っているのですが」
京夏「私たち幕府ならまだしも、民間人にも被害を出していることからあなた達の存在をそのままにしておくことは出来ません」
俺「そうだぞ。都合のいいことばっかり言いやがって」
影王「どうか、この通りです」
影王が土下座してきた。
京夏「頭を下げればどうにかなるような問題じゃない」
獅電「ふっ」
即座に影王のそばへ近づき、刀を首元に突きつけた。
しかし、影王は動じなかった。
影王「私は皆さんと話がしたいのです」
獅電「ここまでしても反撃してこないということは、とりあえず俺たちを騙すつもりではないらしい」
京夏「とはいえ、この男を城へ招き入れるのは危険すぎます。使用術も謎に包まれていますし」
俺「ていうか、お前ら地べた座れよ。何ちゃんとした場所で俺たちに話を聞いてもらおうとしてんだ」
こっちが上だということを分からせておかなければ。
影王「地べたでも構いません。拘束された状態での会話でも構いません」
獅電「ではお言葉に甘えて。春日、この二人を拘束しろ」
春日「わかった!」
二人の手足を縛り、正座の体制で固まらせた。
獅電「このまま動くな。ここに宰川と華城を呼び、話をしてやる」
影王「私のこのような我儘を受け止めてくださり感謝いたします」
誠実そうだな・・いつ化けの皮が剥がれるか。
宰川殿と華城が馬に乗ってやってきた。
宰川「何か話したいことがあるらしいな」
馬を降りて早々、宰川殿が言い放った。
影王「ええ。少し、過去の話もさせていただきたいと思いまして」
霧島「めんどくせーな」
影王「皆様は見事天下統一を成し遂げられ、ここに蒼天幕府という新体制を築き上げました。実際、その影響は計り知れず、この世の中は間違いなく変わりつつあります」
華城「つまらない話だな。帰っていいか?」
影王「そこで大切になるのは単なる力や頭脳だけではないと思うのです。『ずる賢さ』や『裏社会への理解』なども必要だと思いませんか?」
俺「華城がいるから間に合ってる」
影王「しかし、私たちの存在に気づくのはかなり遅れていましたよね」
痛いところを突かれた。
華城「裏社会の情報なんて必要ない。だから『裏社会』が成立するんだろ」
確かに、表があるからこそ裏が存在する。
その結論をこの場で導けるのも流石だな・・・・
影王「では・・私たちと協力はしないということですか?」
最初から俺たちは協力する気ないけどな。
華城「無い。それどころか、ここでお前たちを処分したいとまで思っているんだが」
影王「そうですか」
影王がそう言い放った直後に、獅電さんが固まった。
久遠「何だ!?」
了斎「何をした!」
影王「分かりません・・何故でしょうか・・」
アストリア「このタイミングで術を使うなんて、影王の仕業以外考えられません」
宰川「ああ。間違いないだろう」
そう言った宰川殿も固まった。
華城「結界を作成してくれ」
伊海に耳打ちした。
伊海「はい。しかし今は体力を消耗していて完全なものを作れるか・・」
華城「力を振り絞ってくれ、頼む」
伊海が結界を作る直前にまたしても固まった。
華城「あいつの使用術は石化だ。おそらくあいつが解除するまで、もしくはあいつが死ぬまで石化は終わらない」
俺「クッソ・・どうすんだよ!」
雷煌「もう斬るしかありません!」
高速移動で影王に近づいたが、影王の首に刀が触れた瞬間石化した。
美咲「まずい・・主戦力をどんどん失ってる」
俺「おい、ストーンハート! どうにかしてくれ・・」
・・って、どこに居るんだ!?
術師の二人が消えた。まさか尻尾巻いて逃げたなんてことはねぇよな・・?
この大事な場面で消えてんじゃねぇよ・・!!
火蓮「離れたところから火を放つしかない!!」
火球を放とうとしたが、やはり石化された。
俺「攻撃を仕掛けるのは悪手だな。今は一旦耐えるしかねぇ」
華城「ああ。何かいい方法は・・」
了斎「凜花、虎影を呼んでくれ」
凜花「りょうかい!」
凜花の足元から虎影が出てきた。
了斎「虎影、アイツらを噛みちぎれ」
虎影「御意」
俺「どうして虎影に行かせた?」
了斎「術で生み出された虎影なら、石化できないんじゃないかと思ってな」
俺「なるほど」
虎影が吠えながら美蘭の首を噛みちぎった。
影王「何故石化しない・・!!」
いける!!
美蘭は死亡したようだが、影王を殺す前に虎影が消えた。
俺「虎影!」
華城「凜花が石化された。その影響で虎影も居なくなったんだな」
もう凜花の術だって気づきやがったのか。
殺す順番を間違えたな・・
将英「あとは影王だけか・・どうする?」
繭「羽音の亡霊だったら・・」
華城「いや、凜花と同様に羽音が石化されるだけだ。おそらく殺せない」
繭「ではどうする・・?」
理不尽な術ばっかりだな。必殺剣やら石化やら・・
直政「石化されているだけで、まだ全員生きているのが唯一の救いだ」
久遠「そうだな・・」
ただ、このままでは全員が石化される。
霧島「どれくらい離れたら石化できなくなるんだろうな?」
確かに、範囲が分かればこちらにも勝機はある。
華城「大砲を運ばせる。射程の最大距離からであれば石化もできないと信じて」
将英「オレが伝えてくる」
大砲が来るまでは何もせず耐えよう。
俺「ていうか、術師のやつらどこ行ったんだよ!!」
春日「そういえば居なくなってるじゃん!!!」
華城「今は気にしている場合じゃない。ただ待つのみだ」
茜「射ればよくね?」
俺「離れても当てられるか?」
茜「私の腕を舐めてんの?」
俺「舐めるって・・ペロペロするってことか?」
茜「きっしょ。二度と話しかけないで欲しい」
華城「とりあえず、離れたところから狙ってくれ」
茜「了解」
茜が石化した。
何で行動を起こそうとする人ばかり・・・・
華城「石化以外にも何か術を持っている可能性が高い。ここまでこっちの意図を見透かしているのは不自然だ」
坂本「だな」
俺「真栄田に似た何か・・心を読むとかそういうやつか?」
華城「もしくは、かなり離れた場所での会話も聞こえるというものか」
坂本「全部筒抜けって訳か・・」
どうする?言葉での連携はおそらく無理だ。先手を取られて石化される。
しかし、言葉無しであいつを完全に倒し切るのは不可能に近い。
なんせ、近づくだけで石化されるんだもんな・・
地割れでどうにか出来るとは思えない。火球も放つ前に石化。風刃も放つ前に石化されるだろう。瞬間移動では人を殺せないし、水術だけで人を殺すことも出来ない。
俺「数十人の兵士を突っ込ませるか?」
坂本「数撃ちゃ当たる戦法をやるにはまだ時期尚早だろ。大砲とかを全部試し切ってからやろうぜ」
俺「確かに」
意外と堅実だ。
アストリア「もしもし?」
華城「ん? アストリアか?」
俺「おい! 今どこにいるんだ?」
アストリア「今、宮殿に居ますよ」
俺「嘘つけ、こんな短時間で行けないだろ」
アストリア「団長の術です。とにかく、もう少し耐えてください!!!! そしたら、僕たちに任せてもらったいいので!!」
強引に通信が切られた。
俺「はぁ・・・・?」




