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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
幕府編

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百三話 波乱

 城で夜叉衆との決戦の作戦を聞いてから四日が経過した。

ついに今日、こちらから仕掛けるのだ。


まず、地上に奴らをおびき出す必要がある。

そのエサとして最適なのはやはり『事件の匂い』だ。悪党はそういった出来事に関する嗅覚が優れている。

俺たちが何か地下街の入口付近でエサとなる事件を起こす。

そこで出てきた夜叉集の連中をまとめて引っ張り出すって魂胆だ。


そしてその事件とは・・・・


凜花「キャー!!! 誰か、助けてー!!」

そう、痴漢である。

これは物的証拠が残らない上に女性の意見が強い傾向があるので自演しやすい。


兵士「な、何もしてないですよ!!!」

いい演技だ・・ストーンハートの熱心な演技指導が実を結んでいる。


凜花「今間違いなく触ったでしょ! 嘘つかないでちょうだい!!」


周辺でざわめきが起こり始める。


そこで一人、凜花たちに近づいていく人影が見えた。


霧島「あれか!?」


ストーンハート「違う。あれはトッピングだ」

??????


霧島「は?」


ストーンハート「巡回中の兵士がやってくる・・というワンシーンもあったほうがリアリティが増すと思わないか?」


俺「アストリア、翻訳を」


アストリア「巡回中の兵士がやってくるという場面もあったほうが現実味が増すと思いませんか?」


俺・霧島「なるほど」


兵士と凜花たちが何かを話している。


久遠「間違いない。あれだ」

物陰から現場をずっと覗いている奴らが居る。


獅電「人数は」


久遠「一・・二・・三人だ」


獅電「仁華・影狼・美蘭の三人だろう。やはり美蘭は生きていたか」

クソ・・落とすだけじゃ駄目だったか。


京夏「ここからは全て作戦通りに動くように!」


全「了解!」


真栄田家はやはり武闘派の血が騒ぐようで、京夏は現場指揮をやると自ら名乗り出た。


霧島「じゃあ・・行ってくるぜ」

 

霧島が夜叉衆の背後へ瞬間移動し、仁華に刀を投げて気を引いた。


京夏「気づいた瞬間・・はい!!」

霧島と事件を演じていた二人が入り口付近に走ってくる。


俺「追ってきてるか?」


ストーンハート「来てるんじゃないかぁ!?!?」


アストリア「盛り上がりすぎです副団長!!!」


こちらへやってきたところで茜の出番だ。


茜「ほいっ」

予め決めていた位置を夜叉衆が越えてきたところで、天井部分に設置しておいた爆弾を茜の火矢で起爆する。


一発目で爆弾に矢は命中し、大きな爆発が起こった。

こういったところで間違いなく当ててくれる安心感が茜にはある。やはり弓の腕前は本物だな。


久遠「ここでしっかりと塞がるかは博打だな」

夜叉衆が地下街へ戻れないよう、天井部分の爆発で岩を落下させて入り口を塞ぐ。


獅電「大当たりだ。お前ら地上に出ろ!」

全力失踪で地上に出てきた。


数秒経って夜叉衆が地上に出てくる。


影狼「今回はきちんと準備を整えてきたみてぇだな」

準備といっても俺たちが用意してきたのは作戦だけじゃない。

俺たちの秘密兵器は、こいつらを絶対に殺すという覚悟だ。


京夏「では各自、自分の役割につけ! 一気に決着をつける!!」


全「了解!!」

伊海が影狼を囲むように広範囲の結界を作成した。


影狼との戦闘を担当するのは、獅電さん・俺・了斎・雷煌・直政の五人だ。

俺たちが結界に入った瞬間、伊海が新たにもう一つの結界を作成した。

二つ目は、外部からの干渉を不可とするものである。


影狼「ここまで入念にやってくるとは・・宰川軍の堅実さは変わらないな」


俺「変わってるぜ。今の宰川軍にはな・・全員が勝ちを確信するほどの作戦を立てられる参謀が居るんだよ。堅実さだけが売りの軍じゃねぇんだよ!」


俺たちも術を使えないので、ここで有効だとなるのは獅電さんの剣術・雷刀だけになる。

しかし、剣術の鍛錬を手がボロボロになるまでしてきた俺なら足手まといにはならないさ。


俺「はっ!」

獅電さんを除く四人でひたすら剣戟を続ける。

誰もまだ攻撃は喰らっていない・・あとは隙を突いて雷刀で斬ってくれたら・・!!


了斎「ぐぁっ!!!」

まさか!?


俺「了斎!!

了斎の腕から血が出ている。

待て待て待て・・もし影狼の必殺剣が結界で無効化されていなかった場合、了斎は・・・・


獅電「清次!! ぼけっとするな!!!」


俺「クッソ・・!!

今はそっちを気にしてる場合じゃないか・・とにかく時間を稼げ・・!!

獅電さんの準備さえ整えば・・勝てる!


獅電「フゥ・・」

深く息を吸い、獅電さんは目を閉じた。


静かに獅電さんが刀を抜くと、影狼の頭は地面に転がった。


直政「まさか本当に出来るとは・・」


獅電「何だ? 信じてくれていなかったのか。今まで何度も見せてきたというのに」

そう、これは獅電さんが新しく習得した剣術だ。

精神を統一し、刀の速度に全ての意識を集中させる。


その結果、雷煌すらも凌駕する速度で敵を斬ることが出来る。

この技の習得には獅電さんですら一年以上かかったという。

おそらく獅電さん以外の人類には成し得ない芸当だ。


獅電「フゥ・・」

刀をゆっくりと鞘に収めた。


了斎「治療班のところへ行こう、わしの傷も治してもらわねば」


俺「無事だったのか!!!」


了斎「ああ。必殺剣は封じられていたようだな」

よかった・・了斎が死んだら俺は・・


雷煌「良かったです・・!」

直政は黙々と影狼の死体を処理していた。


直政「これでよし。首だけ持ち帰ろう」


獅電「ああ」


      *


ストーンハート「美蘭が生きてたってことはそっちのプランで戦っていくってことだな」


京夏「ぷらん? がどうたらは知りませんが、そっちでいきます」


 はぁ・・緊張する。やっぱり戦うのって怖いな・・


将英「大丈夫か、忠勝」

僕の肩を揉んでくれた。


僕「大丈夫だって」

僕が変わるのは今日ここだ。

人を斬る恐怖に打ち勝たなければ、僕は一人前の武士になれない。


アストリア「にしても・・仁華との戦闘の最適解が術フル活用のパワー押しだったとは」


京夏「全員が術を使うとここは大混戦となると予想されるが、目標は仁華ただ一人! 決して見失わないように!」


 仁華の首を狙うのは僕・蒼月・信雄・美咲・久遠・火蓮・羽音の七人だ。


華城の指示は『術を出し惜しみするな』『汚いやり方でいいから殺せ』だった。

任せて、華城・・!


久遠と蒼月が延々と仁華のもとへ雷を落とし続ける。


火蓮「その調子じゃ!!」

彩色炎を仁華のもとへ放った。


羽音「あんまり意味ないと思うけど・・とりあえずね」

仁華を取り囲むように亡霊を呼び起こした。


信雄「これでどうだ!!」

大樹を仁華のもとに生やし、打ち上げた。


久遠「落ちてきたところを斬るのは忠勝、お前の役目だ!」


しっかりと仁華を目で追い、落下地点を予測した。


僕「ここだああああああ!!!」

落ちてきた仁華を真っ二つに斬った。


久遠・蒼月「おお!!!!」


き・・斬れた!!僕が斬ったんだ!!!


僕「で、でも・・丸焦げだ」

既に仁華は真っ黒になっていた。


久遠「あれだけ雷を落とし続けたらそうなるか・・」


ストーンハート「めちゃくちゃキモい勝ち方するんだなお前ら」


美咲「そこで梯子外すのは無いでしょ・・」

美咲が軽蔑の目を向ける。


京夏「ここまで計画通り! 伊海殿! 結界の解除を!!

見事な指揮だ。親の意志を継いでるね・・・・


伊海「承知しました」


美蘭「そんな早く二人も殺すのは無しでしょー!!」


特攻してくる剛斗たちを捌きながら言った。


京夏「総員、戦闘準備! 最後の指令だ! 美蘭を討伐しろ!!!!!」


全「はっ!」


      *


 了斎の傷は治った。

仁華も忠勝が斬ったらしい。今のところ完璧なのは嵐の前の静けさなのだろうか・・


『美蘭の弱点は縄を手からしか出せないところだ。つまり、複数の方向から攻めることで縄が足らなくなる。そこを狙え』


その説明通り、俺たちは美蘭を囲って討つ。


美蘭「卑怯だと思わない? こんな大勢で囲んで」


俺「思う」


美蘭「だよね~・・じゃなくてさ! 逃してくれないの!?」


霧島「無いんじゃね」

吐き捨てるように言った。


美蘭「それじゃあ、これでも同じこと言える??」


囲んでいた全員が縄で縛られた。


俺「うっ・・」

話が違うじゃねぇか・・何で十人以上を一気に縛れてんだよ!


霧島「よいしょ! 出てこい雷煌!」

瞬間移動で脱出した霧島が雷煌を脱出させ、全員の縄を雷刀で切ってもらった。


霧島「縄が途中で分岐してたな。さらに分岐先の縄を自由に操作できるみてぇだな」


俺「はぁ??」


伊海「では結界を・・」


美蘭「いや、もうそれはさせないよ」

伊海の首を縄で縛りやがった。


雷煌「伊海さん!!」

雷刀で縄を切ろうとしたが、分岐した縄で弾かれてしまった。


美蘭「お前の術はちょっと気に食わないから・・」

どんどん伊海が捻り上げられていく。


俺「このままじゃ死ぬぞ!!!!」

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