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戦国の術師  作者: 葉泪 秋
幕府編

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百二話 心

 城に戻り、宰川殿の待つ大広間までやってきた。


宰川「華城! 無事だったか?」


華城「詳細は後で話す。全員、会議室へ集まれ」


全「了解」


重い足取りで会議室へやってきた。

華城失踪の一部始終、夜叉衆の攻略法、影狼の謎の術、晃牙の死亡。

いい話が一つもないじゃないか・・・・


宰川「全員、自席についたな」

宰川殿が部屋を見渡し、晃牙の席を見て視線が固まる。


宰川「ん?」

そりゃ気づくよな。


獅電「晃牙は夜叉衆の奴に殺されたが、その説明はまた後でする。とりあえず会議を始めてくれ」

来賓の席にはストーンハートとアストリアが座っている。


伊海「では、ただいまより蒼天幕府及び星界術師団による会議を始めさせていただきます」

定型文である。


伊海「一つ目の議題である『華城殿が攫われてしまった件の報告』については、華城殿にご説明をお願いいたします」


華城「ああ。まず事件現場の蕎麦屋で仕事があると聞き、豪の兵士とともに蕎麦屋へ向かった。店に入ると何者かが我めがけて飛びついてきた。それを引き剥がそうとした豪の兵士も同じく拘束された。できる限りの抵抗はしたんだが、我以外は射殺され、我は攫われた」


俺「でも、華城に外傷はないよな。拷問とかは受けてないのか?」


華城「そこは少し人の心理を使ったんだ」


右京「というと?」


華城「自分で言うのもあれなんだが、我はまだ子どもで見た目も案外可愛い。そんな奴が怖くて泣き出したらどうなる?」


坂本「まぁ、罪悪感が湧いてくるわな」


華城「そうだ。だから我はひたすら泣いたんだ」


俺「そんなやり方で見を守れんのか?」


華城「実際、守れただろう。館に連れ込まれたあと尋問を受けたが、基本的には夜叉衆への勧誘だったり宰川軍の機密情報を吐かせようとしてくるだけだったな」


宰川「逆になにかそこで得られた情報は?」


華城「夜叉衆の最精鋭は五人だ。首領の影王(えいおう)、影武者の影狼、三人衆の仁華・豪己・美蘭だ。影王は一切姿を現しておらず詳細不明だ。しかし影狼の術に関しては多少の情報を得た」

影王・・・・そいつが夜叉衆を作ったってことか。

さっさとそいつの喉元を掻っ切りたいところなんだが。


将英「必殺剣ってやつか?」


華城「ああ。あいつの刀に少しでも触れる、正確に言うと傷をつけられるとどれだけ小さな傷であろうと死に至る」

ズルだろ。


獅電「その術を恐れてあまり攻めることが出来なかったのは俺の落ち度だ。すまない」


坂本「あそこで突っ込む方が命知らずの馬鹿だ。気にしないでいいだろ」


獅電「次は必ず仕留める」


華城「そして最後に現れた黒い光だが・・あれは我も想定外の事態だ」

影狼の術のはずなんだが・・・・どうして晃牙がそれで死んだ?


伊海「その話は次です。お待ち下さい」


宰川「わかった。次の議題に移ろう」


伊海「二つ目の議題は『夜叉衆にどう打ち勝つか』になります」


獅電「豪己はストーンハートが仕留め、美蘭は安否が不明だ」


ストーンハート「一人殺したぞ!」

白い歯を輝かせて笑う。


俺「美蘭は、俺が地割れの派生で生み出した渓谷に落とした。まだ生き残ってる可能性は十二分にあるからなんとも言えねぇな・・」


宰川「そうか。仁華の実力はどう感じた?」


剛斗「あいつ、避けるのが上手かった!!」

確かに剛斗の打撃はほとんど避けられていた。


将英「術を使えないのも相まってそれほど脅威ではなさそうだった。獅電さんのような実力者だったら問題なく倒せる」


宰川「そうか。影狼の話はまた次の議題か?」


伊海「はい。三つ目の議題は『影狼の術について』になります」


ストーンハート「あの黒い光は・・おそらく術の使用者の意思によって多少のコントロールができるんだろうな。しかし、伏せることで問題なく避けられていたとなると・・」


アストリア「y軸の調節は出来ないのでしょうか」


ストーンハート「ありえるな。となると初手の黒い光を避けてしまえば、高さを変えて容易に避けられるかもしれない」

ずっと何言ってるんだ????


華城「つまり?」


ストーンハート「明確な攻略法が見つかるまで、とにかく伏せて避けるのが最善策だということだ」


華城「その通りだな」


伊海「しかし、光は肉眼で見てから避けることは出来ません。実際に晃牙さんは避けられず亡くなっています。私の結界を使うのが良いと思うのですが」

その手があった!!!


俺「そういえば、範囲内では術が使えなくなる結界を作れるって言ってたよな!!」


伊海「そうです。それによって戦いを有利に進められるかもしれません」


宰川「次は結界を作ってから戦い始めよう」


ストーンハート「そんな便利な術があるなら早く言ってくれよ」

それは少し思った。


獅電「しかし、その結界の中だからと言って必殺剣まで無効化できるかは不明だ。雷煌の雷刀のように、前もって術を使ってから入るのであれば使用不能にならないからな」


俺「必殺剣は術じゃなくてあいつの『性質』かもしれねぇってことか」


宰川「そうだな。俺の即時回復が結界で封じられないのと同じだ」


了斎「だとしても、あの黒い光がないだけ活路はある。じっくりと作戦を考えて戦おう」


華城「その作戦に関しては我に任せておけ」


久遠「ああ、頼りにしてるよ」


宰川「役職が老中以上の者は会議室に残って作戦を立てる。悪いが、星界術師団の二人にも残ってもらいたいのだが」


アストリア「ここまであなた達のサポートをするとは・・おんぶにだっこじゃないですか?」


ストーンハート「アストリアは素直じゃないんだ。つまり『いいよ』と言いたいらしい」

アストリアが怪訝そうな顔で頷く。


華城「すごく助かる。ありがとう」


久遠「じゃあ、オレたちは各自家に戻ろう」


宰川「ああ、ゆっくり休め」


 城に戻ってきたが、まだ眠くなかったので広間でくっちゃべることにした。


俺「将英、本当に危なかったな~・・」


将英「正直、死ぬと思ったよ」


霧島「了斎、大活躍だな」


了斎「大げさな」

恥ずかしそうに笑う。


火蓮「にしても、影狼の奴卑怯じゃろ! 今まで一番理不尽な術じゃ」


翔斗「ああ、全く同意見だ。あんなのが生まれてきて良いのか?」


了斎「わしはこれっぽっちの炎しか出せないというのに・・」

寂しそうに、指先についた炎を見つめる。


俺「元気だせよ・・その炎で沢山の人を救ってんだから」


雷煌「剛斗さん寝てます?」

そういえば静かだ。


霧島「あー寝てるな・・まぁ疲れてるんだろうな。仕方ない」


俺「俺たちも部屋で寝るか」


将英「そうしよう」


全「おやすみー」


      *


 二日後、招集がかかった。

作戦が固まって来たのかな・・?


清次「九時までに城って言ってたっけ?」


僕「そうです! まだ一時間程度あります」

広間にいるのは清次さんと僕だけだ。

みんなまだ寝てる。


僕「清次さん、天下統一をしようって提案したことに後悔とかってありますか?」


清次「どうしたんだ? 急に」

あくびをしながら言った。


僕「えーっと・・大変だったじゃないですか。天下統一」


清次「まぁ・・そうだな」


僕「それで、真栄田さん、俊平さん、美月さん、豊さんだったり・・大切な味方を何人か失っちゃいましたし」


清次「結論は?」


僕「総合的に考えて、後悔はありますかってことです」


清次「んー・・微塵もないな。確かにあの四人を失ったのは辛いよ。でもな・・得たものも数え切れない程あると思わないか?」


僕「得たもの・・・・領地とかですか?」


清次「まだまだ子どもだな、雷煌は」

僕の頭を撫でながら言った。


僕「なんですか」

頬を膨らませた。


清次「領地ももちろんだけど、仲間が沢山できたじゃねぇか。忠勝も直政も、右京も坂本も。しかも天下統一中の連戦で俺たちは間違いなく強くなった。そう思わないか?」


僕「確かに・・かなり成長できたと思います。精神面も」


清次「だろ。だから俺は、あのとき『時代を変える』と豪語したことに後悔はないよ」


僕「すごいですね・・・・」


清次「雷煌はどうなんだ?」


僕「僕は正直、天下統一をする必要はないと思ってました。僕は皆さんと一緒にいるだけで幸せなので・・でも、今はしてよかったと思ってます」


清次「そうか。ちなみに理由は?」


僕「この達成感です!! 僕たちは本当に幕府を開いて時代を変えたんだと思うと、本当に誇らしくって・・」

駄目だ、少し口元が緩みすぎてる・・


清次「ああ、でももうひと踏ん張りだぞ。きっと夜叉衆を倒したらついに星界術師団との決戦だ。ここで負けるのはありえねぇよな」


華城「負けは絶対に許されない。持ちうる全ての力をもって夜叉衆の奴らに引導を渡す」


清次「起きてたんだな」


華城「いま起きたんだ」

盗み聞きをしてたわけではないのかな。


了斎「おはよう」


僕「おはようございます!」


清次「お前の意志は固まったか?」


了斎「ああ。兄さん・・いや、影狼の首はわしが斬る」


華城「皆が大口を叩きがちなのは清次の影響だろうな」


清次「俺関係ないだろ!」


華城「ただ、了斎はそう言うだろうと思っていた。既に了斎は影狼と戦闘する班に入っている」


了斎「やっぱり華城には敵わないな」

 

      *


 少し、全員が前向きな気持ちになった気がする。

俺たちは希望を抱きながら・・それでも地に足はつけて城へと向かった。


武士の心構えが最近になってようやく分かってきた気がする。

冷静かつ大胆に、決して投げやりにはならないこと。

常に相手に敬意を払い、純な心で戦う。


そして、天下統一で学んだ中でいちばん大切なことは

『想定外の事態』になることを想定しておくことだ。

全てが計画通りに進んだことなんて一切ない。敵の情報が少ない時は尚更だ。大切なのは常に最悪の事態を想定し、いざ何かが起こった時に混乱しないようにしておく。


きっと、次に夜叉衆と戦う時もこれが鍵となってくるだろう。

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