九十九話 失踪
俺「真っ先に狙うなら間違いなく仁華だ。戦闘能力で言えば最下位に違いない」
三人衆以外に一人知らないやつが居るが・・まぁいい。とにかく仁華だ。
霧島「了解!」
仁華を一斉に狙って攻撃したが、豪己に全員弾き飛ばされた。
影狼「獅電という者を殺せば幕府の戦力は一気に落ちる。絶対に今ここで始末しよう」
さっきから後ろにいるこいつはひと目見ただけでとんでもないとわかる。
『天才肌』という言葉が似合うというか・・常軌を逸した風格と重圧がある。
仁華「僕が戦えない単なる戦略家だと思ったら大間違いだよ」
仁華が晃牙の正面に立った。
晃牙「はっ」
剣戟を繰り広げる間もなく、晃牙は仁華を追い詰めた。流石の実力だ。
豪己「どけえええええ!!!」
晃牙「ふっ」
時空術を使ったか。豪己は晃牙に触れられていない。
俺「俺が仕留める」
豪己を斬ろうとしたとき、美蘭が縄で俺を縛ろうとしてきた。
俺「クソ・・!」
雷煌「させませんよ!!」
縄を切り、俺は再び豪己に向かっていった。
繭「わたくしの出番が少ないな・・」
苦笑いして言った。
霧島「俺たち二人で美蘭を殺すぞ」
繭「承知した!」
俺は豪己との戦闘を続けていた。
こいつの殴打は絶対に食らってはいけない。一発でも受けると動けなくなるだろう。
しかし、それでは相手を死に至らしめることも出来ない。
つまりここでの最適解は・・・・
俺「退避!!!!」
霧島「え、は!?」
雷煌「理由を聞くのは後です!!」
全員が館から離れ、物陰に隠れた。
俺「五人であそこを制圧は絶対に不可能だ。犠牲者が出る前に引くのが正解だ」
晃牙「うむ」
俺「あと、館の中は狭くて全力で戦闘ができない。やはり何処かへ・・あわよくば地上へおびき寄せて戦いたいところだ」
繭「然り」
雷煌「これからどうしますか?」
俺「入口付近の騒ぎが起こるまで、ここで待機だ」
霧島「何で俺たちは行かないんだ?」
俺「ここであれば三人衆らの動きも監視できる。分散した本来の理由を忘れてはいけない」
霧島「なるほど」
*
俺たちは全力で地下街入り口までやってきた。
久遠「おそらく混戦になると予想される。しかし力の出し惜しみはするな! 絶対に敵を殲滅するぞ」
全「了解!」
茜「全員、動くのをやめろ!!」
俺「はっ?」
茜「見ろ。あそこに爆弾がある」
茜が火矢を放って爆発させた。
坂本「今のであそこに待機してた数人は死んだな」
茜「多分、他にも爆弾はある。私が処理するから気にせず戦って」
茜はひたすら設置されている爆弾を爆発させていった。
俺「そんな効率の悪いやり方やってねぇで、こうしようぜ。おい! 全員地上に逃げろ!」
了斎「まさか、あれをやる気か?」
俺「ああ、これが一番効くだろ」
入り口が崩れるほど大きな地割れを起こした。
そこら中で爆発が起こる。
俺「ああ・・やりすぎたかも・・」
岩が落ち、入り口が塞がった。
俺「あ」
剛斗「オラァァァァ!!!」
岩をひたすら砕いて入ってきた。
俺「助かった剛斗」
剛斗「おう!」
剛斗は手からかなり出血していた。
風雅「治すっすよー」
久遠「さて、あとは残ったやつを処理するだけ・・・・」
洞窟の中を見て久遠さんが固まった。
俺「わ、悪い。こんな大きい地割れを起こすつもりじゃなかったんだけどな・・・・」
将英「おそらく、近くに居た奴らは全員死んだだろう」
直政「前から思っていたが、清次、君の術は最強だ」
あ、褒めてくれるんだ。
叱られるかと・・
直政「ただ、使い所と程度をもう少し考えると良い」
やっぱり叱られた。
俺「すみません」
久遠「城に戻ったら宰川殿と華城に謝罪と修繕の依頼をするように。オレも一緒に頭を下げてやるから」
俺「はい」
春日「まぁとりあえず、当初の目標だった敵の殲滅は完了だね。ここからどうする?」
洞窟の奥から、獅電班が移動してきた。
獅電「ここに居た敵は仕留めたか?」
久遠「ああ。そっちは?」
獅電「やはり館の中に最精鋭が潜んでいた。五人で勝つのは困難と判断して退避した」
直政「それほどの強さなのか・・」
獅電「地下で戦うのであれば勝機はない。なんとかして地上に引きずり出すぞ」
久遠「引きずり出す方法は、また華城に相談してみよう。今日はとりあえずこんなところだな。城に戻ろう」
全「はっ!」
霧島「なんかこの辺ボロボロだけど何かあったのか?」
俺「爆弾がいっぱい仕込まれてたんだ」
火蓮「それだけじゃないが」
霧島「何だ?」
火蓮「馬鹿な清次が過剰な威力の地割れを起こした」
俺「言わないでよかっただろ・・」
霧島「結構被害出てそうだぞ。倒壊している建物もあった」
俺「ああ、後で宰川殿に報告するよ」
城へ戻ってきた。
獅電「華城は?」
宰川「別で用事があるらしい。そろそろ戻ってくるだろう」
獅電「わかった。報告することはいくつかあるんだが、まず館についてだ。館には最低でも四人の精鋭がいた」
宰川「華城が言ってた『三人衆』か」
獅電「ああ。一度班の五人で対峙したが、勝つのは困難と判断して退避した。特に注意すべきは仁華。あいつは華城が自分と同等と評価するほどの知恵と頭脳を持ちながら、こっちの幹部に引けを取らない動きを見せていた」
宰川「豪己と美蘭は?」
獅電「あの二人を倒すのにはそう苦労しないだろう。有効な術を持ったやつがこっちにいる」
宰川「そうか。では問題は仁華のみ・・」
獅電「まだ一人残っている」
宰川「誰だ?」
獅電「名は分からないが、かなり若いように見えた。あいつからは三人衆とも別格の何かを感じる。きっと一番の障害になる」
獅電さんのこういった予測はよく当たる。特に敵の実力を測る眼はな。
宰川「なるほど・・華城ですら知らない陰の実力者が居るのかもしれんな」
久遠「オレたちからの報告は殆どないが、まず入口付近の敵の殲滅は完了したが、その方法が少し手荒になってしまった」
宰川「具体的に教えてくれ」
茜「まず私が設置されてた爆弾をいくつか見つけて、火矢で起爆してたの」
宰川「うむ」
茜「そしたら清次が地割れでまとめて処理するって言ってさ」
宰川「なるほど」
俺「そしたら・・思ったより大きい地割れ起こしちゃって・・その・・」
宰川「はっきりと言え。今から叱るわけでもないし」
俺「岩が落ちてきて入り口が塞がり、建物もいくつか倒壊しました!!!」
宰川「・・そうか。入り口はどうした?」
剛斗「オレが岩を砕いて元通りにしたぜ!!!」
宰川「そうか、よくやった。建物はどうするつもりだ・・?」
俺「修繕をお願いしたいです」
宰川「まぁ、それしか方法はないか」
俺「そうですね・・」
申し訳ない。
久遠「地割れを起こすことを許可したのはオレだ。オレにも責任がある」
久遠さんが頭を下げた。
宰川「問題ない、建物の修繕等々の経費は全て俺が出す」
俺「いや、それは申し訳ないです!!」
宰川「気にするな、たまには大将に甘えていい」
久遠さんは無言で俺の方を見て頷いた。
とりあえず頷き返しておいたが・・
獅電「華城が戻ってから話したいことがある」
宰川「わかった。では、華城が戻るまでここで待機だ」
俺たちは足を崩した。
了斎「良かったな、清次」
俺「ああ。また飯抜きになるかと・・
宰川「聞こえてるぞー、また断食したいか?」
俺「したくないです!! お気遣い感謝します!!!」
宰川殿の笑い声が聞こえた。
茜「まぁ、実際今回は清次あんまり悪くないでしょ。ただ術を使うのが下手だっただけで」
剣術の鍛錬に重きを置きすぎたせいだな・・
*
夜になっても、華城が戻ってくることはなかった。




