高校三年生編(15)
「ねえ、花岡。本当に大丈夫なの」
控室へ戻る途中、高瀬が心配そうな表情で聞いてきた。
「なにが」
「何も覚えていないんでしょ?」
「そうだな、覚えてない。でも、おれが戦って、勝ったんだ。それがわかれば大丈夫」
「腕は?」
「何とかなるよ」
これは強がりだった。本当は筋肉がパンパンに張っていて、少し感覚もおかしい。
「包帯巻いて圧迫しておいた方がいいんじゃないかな」
「大丈夫。圧迫をしてしまうと自由に動かせなくなっちゃうから」
「そう……」
やっぱり高瀬は心配そうな顔をする。
「決勝まで来たんだ。神崎がいなくても、おれは優勝するよ。優勝したら、去年の約束を――」
そこまで言った時、場内アナウンスが流れて、おれは呼び出された。
「え、なに?」
おれのいった言葉が聞こえなかったらしく、高瀬は聞き返して来た。
「いや、何でもない。優勝するって言ったんだ」
「頑張ってね」
おれは高瀬の言葉に背中を押されるように、試合会場へと向かった。
試合会場の反対側、相手陣営には東京M学園が詰めかけていた。
やはり、どこにも神崎の姿はない。
そして、防具を着けている男は、さきほどおれに声を掛けてきた坊主頭の男だった。
たしか、神崎よりも強いとか言っていたな。
奇遇にも、おれも神崎より強いんだ。
だったら、この場でどっちの方が強いのか決めようじゃないか。
おれは心の中でそう声を掛けると、面を装着した。




