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吠えよ剣  作者: 大隅スミヲ
高校三年生編

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高校三年生編(2)

 高校三年の春ともなると、学年全体の意識が受験や就職といった今後の進路へと向くようになる。

 普段であれば、真面目に授業を聞いていなかったような連中でさえ集中をしているし、先生の方も気合を入れた授業を行うようになってきていた。

 そんな周りの空気に、おれは完全に取り残されていた。

『進路相談会のお知らせ』

 教室の掲示板には、そんなプリントが貼られているが、おれは見て見ぬ振りを続けている。


 放課後、部活に来るメンバーも三年生は少なくなってきていた。

 木下は大学受験のために学習塾に通うようになり、部活にはほとんど顔を出さなくなったし、前田も週に2回か3回顔を出せばいいぐらいの出席率になっていた。


「花岡は進路を決めているのか」

 ある日の放課後、剣道部の顧問である小野先生から聞かれた。

 正直、なんて答えればいいのかわからなかった。

 何となく、ぼんやりとは決めているような、決めていないような。

 自分の進路を決めることも大事かもしれないけれども、おれはその前にやらなければならないことがあるのだ。


 インターハイ優勝。

 それは一年生の時から掲げてきた目標だった。

 進学するのか、それとも就職するのか、それについてはインターハイが終わったら決める。

 おれはそう決断し、いまは剣道にすべてを捧げることにした。


 S高校剣道部は、県大会出場常連校となって知名度も上がって来たのか、今年の新入部員は男女合わせて30人もの応募があった。

 剣道経験者はもちろんのこと、竹刀を握ったこともない初心者の入部も相次いだ。中には剣道をやりたいからS高校を志願したというツワモノまでいるというから驚きだ。


 大所帯となった剣道部が体育館に集まって練習する姿は圧巻だった。

 何だか、強豪校になったような気分だ。


 50人近い部員たちが列になって並び、部長であるおれの号令で素振りを行う。

 打ち込み稽古などは人数が多いため、数人の部員で元立ちを行っても、なかなか終わらない。


 紅白戦もチームをいくつかにわけて行う。

 どうやってチーム分けをしようか。

 おれは女子の主将である羽田と事前に相談して、いくつかのパターンを作ってチーム分けをしたりと、色々と頭を悩ませながら練習メニューを考えたりしていた。

 これも、大所帯となったからこそある、贅沢な悩みだった。


 そんな剣道部の部長という役職も、あと一か月もすれば代替わりをする。

 おれは後任の部長として、二年生の鍋島を指名するつもりでいた。

 鍋島は、去年は地区予選の二回戦で敗退しているが、ここのところ力をつけてきており、今年は県大会も狙えるのではないかとみている。

 そして、なによりも先輩にも後輩にも慕われているという点だろう。

 部長という役職は、いくら剣道が強くても、部員たちに慕われていなければ務まらない。


 きょうもヘトヘトになるまで部活で汗を流し、帰宅後は警察署でやっている剣道教室へ出向いて、大人たちに混ざって稽古をする。

 警察署の剣道教室は、色々なタイプの人がいて、試合稽古などはやっていて面白い。たまにめちゃめちゃ強い人が来たりするのも楽しみの一つだ。

 何よりも、自分よりも強い人と稽古をしていかなければ、成長はしない。

 以前、高瀬兄に教えられたことを忠実に守って、おれは稽古に励んだ。


 すべては、インターハイで優勝するために。

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