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吠えよ剣  作者: 大隅スミヲ
高校一年生編
8/98

高校一年生編(8)

 夏休みに入り、おれの剣道ライフはさらに苛烈を極めていった。


 学校で授業を受けることがなくなったため、朝起きてから夜寝るまでの間が、常に剣道と向き合っているという状態になっていた。


 唯一の休憩といえば、食事とトイレ。それ以外は常に竹刀を握っているという状態だった。


 夏休みになると、後輩をしごくために剣道部のOBたちが部活へとやってくるのだが、おれはそのOBたちが勘弁してくれと泣きを入れるまで、練習に付き合わせた。


 そして、社会人の剣道大会で上位にランクインするようなOBと試合をしても、五試合やって三試合は勝ちを取れるぐらいにまでなった。


 ここまでくると、剣道部員たちからの期待も必然的におれへ掛かってくるようになってきた。


「花岡、お前なら新人戦で優勝できるぞ」

「県大会でも、上位入賞できるんじゃないか」

「インターハイも夢じゃないぞ、花岡」


 同級生や先輩部員たちが口々に言う。OBたちもおれに対して一目を置くようになってきていたし、顧問の小野先生もしきりにおれのことを褒めるようになってきていた。


 そんなおれの成長を佐竹先輩はどうみていたのだろうか。おれは彼女の心の内を知る由もなかった。



 市の剣道連盟によって行われる夏の新人戦は、蒸し風呂のような暑さの中、市立体育内で行われた。


 新人戦に出る資格があるのは、今年一年生として高校に入学した一年生部員だけであるが、大抵の剣道部員は中学時代や幼い頃から剣道を学んでいることが多く、それなりに基本は出来ている人間が出るため、新人戦という感じはあまりなかった。


 新人戦はトーナメントで行われ、優勝するには六回も勝ち上がらなければならなかった。


 トーナメントに出場するS高校剣道部員は、おれを含めて男子が五人、女子が三人だった。


 おれは試合前のアップをするために胴だけを着けた河上先輩と向かい合って、打ち込み稽古をしていた。


 他の部員たちも先輩を相手に、思い思いのアップをしていたが、そんな中で一番目に付いたのは木下だった。


 木下は緊張のせいか、いつものような動きがまったく出来ていない様子で、アップの相手を努めていた二年生の鈴木すずき先輩から怒鳴られながら、必死に打ち込み稽古を行っている。


「なあ花岡、お前は緊張とかしないのか?」


 河上先輩の言葉におれは、どうしてそんなことを聞いてくるのだろうかと疑問を覚えた。


 おれは最初からこんな小さな大会など眼中にはないつもりだ。市の大会などインターハイで優勝する通過点に過ぎない。もちろん、そんな言葉は口にはせず、軽口を叩いておいた。


「別に緊張しませんね。河上先輩との試合稽古の方が緊張しますよ」

「お前は大物だよ」

 河上先輩は笑いながら言うと、おれの胴を竹刀で小突いた。



 試合が始まった。


 おれの出番は後半の方だったため、他のS高剣道部員たちの試合を見ながら「ああでもない、こうでもない」と他の部員たちと一緒に、戦評をしていた。


 残念なことに、試合に出場したS高剣道部員たちは、次々と一回戦で姿を消していってしまった。


 もし、次におれが負けるとすれば、S高校剣道部は全員が一回戦負けとなってしまう。そんな状況でおれの出番はまわって来た。


 もちろん、おれは負ける気などはさらさらなかった。


 一回戦、おれは電光石火でんこうせっかの速さで勝ち星を掴んだ。小手と面で一本を取り、相手には一本も打たせなかった。


 幼い頃から厳しい祖父のもとで剣道の練習を積んできた。色々な剣道の道場へ通ったこともあった。だけれども、今回はここ数ヶ月の練習がおれを飛躍的に変えたといってもいいだろう。


 おれはお前たちよりも多く練習しているんだ。お前たちが練習を休んでいる間、遊んでいる間、寝ている間、その間におれは練習をしてきたんだ。だから、おれがお前たちに負けるわけがない。そんな気持ちがおれを支えていた。


 二回戦、三回戦とも、おれは相手を電光石火の速さで負かしていった。


 小手、面、胴。この三種類を使い分けて、相手に攻めるタイミングを与えずに攻め込んでいく。大抵の相手はその攻めに圧倒されて何も出来ないまま、おれに負けていった。


 そして、決勝戦までおれは進んだ。

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