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吠えよ剣  作者: 大隅スミヲ
高校二年生編
69/98

高校二年生編(42)

 三回戦の相手は沖縄県代表の具志堅ぐしけんという選手だった。

 具志堅と聞くと、どうしてもちょび髭を生やした元プロボクサーを思い出してしまいがちだが、おれの対戦相手である具志堅は彫の深いハンサムだった。


 具志堅の構えは正眼だったが、剣先をゆらゆらと揺らす不思議な構え方だった。

 おれは正眼に構えて、具志堅の出方をうかがった。


 一瞬、具志堅の体が沈んだように思えた。

 来る。

 おれは具志堅を迎え撃つために竹刀を握りなおした。


 具志堅の姿が消えた。

 おれは自分の目を疑った。

 次の瞬間、胴に強烈な衝撃を受けた。


「胴あり、一本」

 死角からの胴打ちだった。

 そのために、おれは何の反応も出来てはいなかった。


 具志堅が消えたように見えたのは、おれの死角に具志堅が入り込んだからだった。

 相手の死角がどこにあるか。

 それは簡単に見つけられるものではない。

 相手の死角に入り込むということは、相手の間合いに入り込むということである。一歩間違えば、相手の打ち込まれてしまう。

 それだけリスクのあることにも関わらず、具志堅は飛び込んできた。よほどの自信がなければ出来ないことだ。


 一本先に取られてしまったが、おれは冷静でいられた。

 まだ始まったばかりだ。一本取られたところで、取り返せばいい。

 おれの中には、妙な自信があった。


 自分でいうのも変な話だが、どこかおれは変わっていた。

 いままでであれば、一本取られると焦ってしまい、相手の術中にはまってしまうのだが、なぜかいまは心に余裕がある。


 おれは竹刀をぐっと構えなおすと、具志堅のことを見据えた。

 先ほどと同じように、具志堅の剣先はゆらゆらと揺れていた。

 おそらく、この剣先に目を奪われているうちに死角へ入り込まれてしまうのだろう。

 死角に入り込まれてしまったら、もう打つ手がない。

 そうなると、いかに死角に入らせないかということになってくる。


 どうすれば、いいのだろうか。

 おれはゆらゆらと揺れる具志堅の剣先を見つめながら考えていた。


 具志堅が動いた。

 またしても、目の前から姿が消える。


 まずい。

 おれは咄嗟に後ろに大きく引いた。


 具志堅の放った横面打ちが、面金を叩く。

 浅かったため、一本にはならない。

 おれは引きながら、具志堅の小手を狙って竹刀を振った。


 具志堅はおれの小手打ちを竹刀で払いうける。

 間合いが開く。


 おれは呼吸を整えながら、具志堅のことを睨みつけた。

 くそ。また死角に入られた。どうすればいいんだ。


 また具志堅は、剣先をゆらゆらと動かす。

 待っていても、死角に入られてしまうだけだ。

 こちらから攻めるしかない。

 おれは意を決して、小手打ちを狙いにいった。

 ゆらゆらと揺れる具志堅の竹刀に自分の竹刀を叩きつけるようにしてから、その反動で具志堅の小手を打ちに行く。


「小手あり、一本」

 自分でも拍子抜けしてしまうほど簡単に取れた一本だった。

 どういうことだ、これ。もしかして具志堅って攻められ弱いんじゃ……。

 そう気づいたおれは、具志堅に猛攻を仕掛けた。


 面打ち、小手打ち、胴打ちと様々なバリエーションで打ち込んでいく。

 そうなると具志堅も防戦一方となり、死角に入り込むことができなくなる。


 一瞬の隙を突いて、おれは具志堅の胴を打った。

「胴あり、一本」

 少し苦戦はしたものの、おれは勝利を掴み取ることができた。


 次は準決勝だ。

 神崎が勝っていれば、神崎と当たることになる。

 待っていろよ、神崎。

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